ギルドと栄光の翼 part26
ふぅ
栄光の翼のメンバーたちが去っていった事で、とりあえず一区切りつく事となった。
(ふぅ。とりあえずだが何とかなったな……)
フォールたちの様子を見る限りこのまま黙っておとなしくするつもりはなさそうだが、彼らもギルドから謹慎処分を受けた以上今までと同じように活動する事はできないだろう。
「すまぬ。迷惑をかけたのう」
ほっと一息ついている俺に、モストが労いの言葉をかけてくる。
「本来ギルドのランクというのは高いものほど実績を多く積み、多くの信頼を得た者に与えられるもの。まさかあのような者たちがAランクにまでなっているとはのう」
そう言いつつ、視線を受付嬢に向ける。モストはギルド長という立場であるが、受付の処理はほぼ受付嬢たちに任せていた。そのため、一定の判定基準というものはあれど、昇級の判断についてもほぼ彼女たちが行っていた。そしてある程度話をまとめた上で、ギルド長に報告するという形を取っていたのだ。
「今回の騒動の件。全てはワシの管理不届きが原因じゃ。変異種の件も本来であればワシがキッチリ確認しておくべきじゃった。本当に申し訳なかった」
モストは頭を大きく下げて謝罪する。
「おいおい……」
「ギルド長が謝罪してるぞ」
ギルド長が謝罪するという事は、ギルドとして今回の件については全面的に非があったという事を認める事になる。この行動に多くの者が驚きの表情を浮かべていた。
「無論、お主個人に対してもじゃ。先ほどまでの様子を見るに、お主はあの者たちからぞんざいな扱いを受けていたのじゃろう。その件に関しても本当ならギルドが動くべきじゃった。それどころかお主の嫌がらせに加担する者までいたと聞いておる。本当に申し訳ない」
再び大きくモストが頭を下げる。どうやら俺が栄光の翼にいた時の嫌がらせの件、そしてその行為に対してギルドの受付嬢が加担していたという事実。それらを耳にしたのだろう。
「その上オークの群れ。しかもオークエンペラーまで退治してくれた事、本当に感謝しておる。お詫びというのもあれじゃが、それ相応の補償をさせてもらいたい」
受付嬢たちは栄光の翼に対して補償すると言っていたが、モストはどうやら今回の件で被害を被ったもの、また功績を上げた者に対してそれ相応の対応をすると決めたようだ。
「俺は報酬目当てにやったわけではないので気にしないで下さい。そちらの騎士団の方々とパーティーの方々。そしてそこにいるレイシアが力を貸してくれたおかげで何とかなったと思っていますから。補償は他の方々に回してあげて下さい」
確かにフォールたちに対しては今でも思う所はある。最初は追放された時はどうしたものかと思ったが、今は逆に追放してくれた事に対して感謝している。
彼らに追放されなければ、ミラーナやレイシアと行動を共にする事ができたかどうかも分からないし、オークエンペラー相手に勝てたかどうかも分からない。それどころか彼らのようにAランクパーティーという肩書を使って好き放題する輩になっていたかもしれない。
俺としてはフォールたちの鼻をへし折り、自分に対して自信を持つ事ができたという結果だけで十分満足であった。
「おいおい兄ちゃん。それはねぇぜ。あんたがいなけりゃ俺は今ここにいなかったかもしれねぇ。謙遜のしすぎは逆に迷惑だぜ?」
Bランクパーティーの男の一人がそう言い、遠慮するなと言ってくる。
「俺たち騎士団も今回は活躍したとは言い難いしな。何せ主戦力はほとんどワイバーン変異種の討伐のために渓谷に向かってたからな。魔の森に入った奴らも、何人かは勝手に逃げ出したみてぇだしな」
気まずそうにヴァルトが頭をかいている。
「その上、騎士団もあんたには迷惑をかけたしな。領主の屋敷での件。騎士団として改めて謝罪させて頂きたい。申し訳なかった」
モストに加え、ヴァルトまで頭を下げてくる。そしてそれに続くようにしてミラーナ、そしてローナルも頭を下げる。騎士団として謝罪するという意思表示なのだろう。
「色々あったとはいえ今回は間違いなく君の"勝ち"だ。間違いなく"英雄"になれたと思うよ」
レイシアがふっと笑みを浮かべ頷く動作を取る。どうやら俺は他の者たちから、今回の件について最大の功労者と認められたようだ。これまで散々無能だの寄生だの言われてたが、ついに自分の実力を多くの者に認められる事となったのだ。
「……分かりました。皆さんの好意。ありがたく受け取らせて頂きます」
こうして俺はついに栄光の翼の無能という肩書から解き放たれる事となった。まるで鳥が羽ばたくかのように。
という事でついにタイトル回収?
ようやくざまぁできたかと思います
これで完結です……
と言いたいところですがまだまだ続くんじゃよ
明日からは栄光の翼のその後を書いていきます
お楽しみに!