ギルドと栄光の翼 part23
ひと段落かと思いきや……
どうなるのやら
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多くの者が歓声を上げている中、それに対し納得していない者もいた。
「私たちはAランクパーティー、栄光の翼なのよ!」
「雑魚どもが! 調子こいてんじゃねぇぞ!」
フォールたち栄光の翼のメンバーである。彼らはギルド長のモストの決定に対し、文句を言い始めたのだ。
「こいつはあの無能なんだぞ! そんな奴が変異種撃破? そんな事ありえないだろ!」
彼らからすれば、つい最近まで自分たちより遥かに格下。見下して当然の無能だった俺が、予想できないような功績を挙げた事を認められないのだろう。
「あいつ何言ってるんだ?」
「実際オークの変異種を倒してるしなぁ」
今まで事の成り行きを見守っていた者たちがその言葉に対し疑問を覚えている。
「だから言っているじゃない! あの無能が何か不正を」
「不正って言っても……」
「変異種を倒すのに不正も何もないんじゃないか?」
いくら彼らが何を言っても、周りの者たちは聞く耳をもたないでいた。
「というより本当にあいつ無能なのか?」
「無能っていうかむしろ大した奴だよな」
「むしろ逆じゃないか? 本当に無能なのは実際の所あの男じゃなくて栄光の翼の」
「俺たちの事を無能だと!? 今言った奴はどいつだ!」
一方で彼らはこのような予想もし始めていた。栄光の翼が無能と呼んでいる男。実はその男こそ本当の実力者で栄光の翼こそ無能なのではないか。これまで活躍できていたのは無能と呼ばれる男のおかげで他のメンバーこそが、彼に寄生していたのではないかと。
さすがにそれを大声で指摘する事に抵抗はあるのだろう。その事を聞こえないようにひそひそと話している者たちがいたが、彼らの声がドヴォルの耳に入ってしまい、それを聞いたドヴォルはたまらず怒りの声を上げる。
「こうなったらめんどくせぇ! てめぇら全員ぶちのめしてやらぁ! 俺たちの恐ろしさを見せてやるよ!」
「無能が認められるなんてありえない! 私たちがそれを証明してあげるわ!」
ドヴォルが指をポキポキと鳴らし、ステラが自身の杖を構えていつでも戦闘の態勢に入れるよう準備を始めたのだ。
「ギルド長! あなたは間違いを犯した。まさかこのような無能の擁護をするとは思いもしなかったですよ。あなたもどうやら相当無能だったようだ」
ついにはフォールまで剣を抜き、構えを取っている。まさかここにきて実力行使に出てくるとは。いくら自分たちが追い詰められたとはいえ、このような行動に出る事はよりいっそう自分たちの立場が悪くなるというのに。最早、今の彼らにはそんな事を考える余裕すらないのだろう。
「このギルドから俺たち栄光の翼が消えるとなれば、あなたにとっても大損害のはずだ。それを理解できないとは……」
「はっ! 所詮相手は無駄に歳をとってるジジイ! ただの老害だ! 何ならここでお前を潰して、俺がギルドのトップになってやるよ!」
彼らの行為は最早ギルドの規約違反だ。モストから謹慎処分を言い渡された事は彼らにとって、相当許せないものだったのだろう。
「まさか……ここまでとはのう」
「爺さん、あんた部下の教育にもっと力入れた方がいいんじゃねぇか?」
それを見たモストは大きくため息を吐き、騎士団のヴァルトがそれを見て笑っている。
「あぁ!? 何余裕ぶっこいてやがる!」
「私たちを前にその余裕! 大したものね!」
その様子を見たドヴォルとステラはさらに怒りの感情を増幅させる。舐められている。そう感じとったのだろう。
「後悔してももう遅い! Aランクの実力、その身で味わうんだな!」
そしてついに、フォールが手に持った剣で斬りかかり、ドヴォルが拳で殴りかかり、ステラが二人に補助魔法をかけその力を強化し襲いかかる。
しかし、そんな彼らの攻撃は二人に届く事がなかった。
「なっ!」
「えっ!」
「くっ!」
三人それぞれ自分の手を止めざるを得ない状況になってしまったからだ。
ステラの胸元にはミラーナの剣が突き付けられ、
ドヴォルの喉元にはレイシアの刀が突き付けられ、
フォールの目の前に俺の拳が突き付けられたのだ。