無能 嫌がらせされる
いつの間にかブクマ10超えてた!
皆様ありがとうございます!
これからも何卒よろしくお願いします。
本日から再び主人公パートです。
「……どういう事でしょうか? 素材を引取れないというのは?」
「申しあげたとおりです。そこの彼、ヒューゴさんは謹慎処分の身。それが解けるまで素材の売買ができない決まりになっていますので」
魔の森から戻った後、討伐した魔物の素材を買い取ってもらうためにギルドに足を運んだ。しかし素材の買取を申し出るとギルドの受付嬢からそれはできないと言われたため、それに対しミラーナが反論の声を上げている。
「謹慎? おかしいですね。そもそも彼が謹慎になる発端となったのは栄光の翼の方々と確執があったからなのでは? それを確認するために、今こうして私が彼の動向を監視しているのですが」
「本来であれば謹慎期間中は外での狩り活動も禁止です。本来なら処罰の対象になるのですが、ミラーナさんの、騎士団という組織の顔を立てて狩りの件については黙認しましょう」
「話を逸らさないで頂けますか? 今は素材の買取についての話をしているのですが」
ミラーナがいくら説明をしても受付嬢はあれやこれや理由をつけ素材の買取を拒否している。フォールたちとの取り決めがあった事もあり、さすがに無下にはできないようだが間接的な嫌がらせはできる。素材の買取拒否もその一つなのだろう。
「ミラーナ。もういいよ。素材の買取は諦めよう」
「ですがヒューゴ。せっかく手に入れた素材をそのままにしておくというのは」
「ミラーナが俺のためにそこまでする必要はないよ。何か別の方法を考えよう」
ミラーナは納得していない表情を浮かべるが、俺の提案をしぶしぶ受け入れた。ここでいくら時間をかけても素材は買い取ってもらえないと判断したのだろう。
「この短期間でずいぶん仲良くなられたみたいですが……。ミラーナさん。素材の買取ができないのはあくまでそこのむ……ヒューゴさんの問題だからですよ。ルールをキチンと守っていただければ我々も適切な対応をさせて頂きますので」
なるほど。この受付嬢は遠回しに俺がいるから買取はできないと言いたいようだ。
「私どもとしてはいち早く栄光の翼の皆様と行動を共にし、当ギルドでの素晴らしき活動を見て頂ければと思います。時間は無限ではありませんので」
「……心遣い感謝いたします」
本当なら文句を言いたいが相手が騎士団所属のためあまり強く出る事もできない。そういった事情もあっていちいち遠回しな発言になっているのだろう。
「それでは私たちは失礼します。用事も済みましたので」
「ええ、我々は"いつでも"お待ちしておりますので。御用がありましたら是非」
こうして俺たちはギルドから立ち去る事にした。
「何なのあの人! チクチク嫌味ばかり言ってきて! あんな人が受付をしているなんで本当に信じられない!」
さきほどまで冷静な対応をしていた彼女はどこへ行ったのか。二人きりになった途端ミラーナの怒りが爆発していた。
「ヒューゴのいる組織の事をあまり悪くは言いたくないけどギルドにいる人たちって性格が悪い人ばかりじゃない?」
「うーん。まぁ切磋琢磨しあうライバル同士みたいな関係だからなギルドのメンバーって。受付嬢も自分が担当している人が活躍したらその分自分たちの評価にも繋がるし」
同じギルドに所属しているとはいえ仲が良いとは限らない。依頼を受ける際に別パーティーと被り、依頼が受けられない。魔物を倒そうとしたら横取りされ素材を奪われる。ギルドメンバー同士でもそういったトラブルはつきものだ。
全員が全員相手を蹴落とそうとしている訳ではないが、栄光の翼にいた時は俺たちの活躍に嫉妬した者たちから嫌がらせを受けた事も何度かあった。
ヤバイ組織に目をつけられた時もあったが、俺が上手い事立ち回って何とかした事もある。フォールたちは自分たちにビビって手を引いたと思っているようだが、まぁパーティーを追放された今となってはどうでもいい話だ。
「でもマズいわね。 素材の買取ができないとなったら懐が厳しいわ。まだお金はいくらかあるけど一週間持つかどうか」
「それなら武器屋のおっちゃんに相談してみるか」
武器屋を経営している人は自前で武器を作り、それを販売している。そのための素材はギルドから購入したりしているのだが、時折直接冒険者から購入したりしている事もあるという。珍しい素材や急遽素材が必要になった時などは武器屋からギルドに対し依頼を行っている時もあるのだ。
「もしかしたらおっちゃんなら素材を買い取ってくれるかもしれない。さすがに全部とはいかないだろうけど」
「決まりね。それじゃあ早速武器屋さんに行って素材を買い取ってもらえないか交渉してみましょう」
こうして俺とミラーナは魔の森で手に入れた素材を買い取ってもらえないか確認するために武器屋に向かう事となった。