ギルドと栄光の翼 part17
証言開始です
騎士団としての考えが発表される事となったため、俺を含めて周りの者たちが静かに息を呑む。あのドヴォルですら口を閉じているのは意外だったが、それだけ騎士団の影響力が強いという事なのだろう。
「騎士団としては今回の件。実際にはオークの群れと遭遇、並びにそれの対処にあたったと報告するつもりだ」
「ほう。それはつまり」
「まぁそういうこった。騎士団はオークの群れがいたっていう意見に対して賛同する」
今回のオークの件はあったものとみなす。騎士団はそう判断したのだ。
「まぁそうなるよな!」
「実際にそこの姉ちゃんには助けてもらったしな!」
「お堅い奴らだと思ってたが言う時は言うじゃねぇか!」
Bランクパーティーの男たちが喜びの声を上げる。自分たちの証言の裏付けとして騎士団が味方をする。これほど心強い事はないだろう。彼らが喜ぶのも無理はなかった。
「なっ!?」
「おいおい! ありえねぇだろうが!」
当然フォールたちはその言葉に驚く。騎士団の行動は逆に考えればそれはフォールたちの発言に賛同できないという事も意味している。
「待ちなさいよ! どうしてそうなるのよ!」
「どうしてって言われてもなぁ。部下から報告上がってきている以上無視もできねぇだろ?」
「はぁ!? 私たちよりその部下を信用するの!?」
「信用も何も俺たちはそういう組織なんだが」
ステラの理不尽な発言にヴァルトもこれは困ったという表情を浮かべている。というより何故ステラがそのような言葉を発しているのか理解できないという状態だ。
というより俺も理解できない。いくら相手が栄光の翼とはいえ、自分の部下たちと異なる報告をされてもはいそうですかというわけにはいかないだろう。
これも自分たちはAランクのパーティーなのだから優先されて当然という驕りから来ているのだろうか。本当に分からない。
「現にうちのミラーナとローナルが何匹ものオークを見てるし、それに予想以上に"ヤバイ"奴がいたみたいだからな」
そう言いつつヴァルトが二人の女性騎士に視線を向ける。
「ヴァルト隊長の言う通りです」
「あの森にあのような化け物いるなんて聞いてませんでしたわ!」
それを見た二人がオークを見たという発言をする。そしてヴァルトが言うヤバイ奴。おそらくあの魔物の存在の事なのだろう。
「元々私はウッドモンキーの変異種の討伐だと聞いていましたわ! それなのに実際いたのはオークばかり! しかもオークナイトやオークメイジのような変異種まで! 一体ギルドは何をしていましたの!」
ローナルが怒りの声を上げながらギルドを批判する。ローナルはオークジェネラルに追い回されていた。おそらくかなりの恐怖を感じたはずだ。彼女が怒るのも無理はないだろう。
「わ……私たちの元にはそのような報告がなかったものですから……」
「本当に信じられませんわ! あなた方のパーティーはろくに役に立たない! 特にウィズ様……、いえあの男は論外! 私を置いて先に逃げ帰るなんて……許せませんわ!」
そういえばミラーナからウィズは自分たちを置いて真っ先に逃げ出したという話を聞いていたな。しかし話をすればするほどフォールたち栄光の翼の悪い話ばかり出てきている気がする。
「ウィズはああ見えて頭も切れるし才能もある。何かの勘違いじゃないか?」
「勘違い!? この私が勘違いしているとでもいいたいですの!?」
「ちょっとあんた! さっきから偉そうに! 一体何様のつもりよ!」
フォールとステラが反論するが、ローナルはそれを気にも留めず話を続ける。
「まさか栄光の翼がこのような方ばかりだったとは思いもしませんでしたわ! あの時もあの方が来てくれていなければどうなっていたか……。ああ、やはりあの時私を助けて下さったあの方こそ真の」
「という事でこれが私たち騎士団としての意思表示です。実際に私もそちらのローナルもオークと遭遇していますし、変異種とも戦闘をしています」
何やらぶつぶつ言いだしたローナルの言葉を遮るようにしてミラーナが口をはさむ。
「そしてなにより、そんな状況の中、Bランクパーティーの彼らが率先して指示を出してくれました。彼らがいなければ被害はもっと大きくなっていたでしょう」
「おいおい、よしてくれや」
「照れるじゃねぇか」
ミラーナから褒められ、男たちもまんざらではない表情を浮かべる。やはり彼らも男、美人の女性に褒められてうれしいのだろう。同じ男としてその気持ちは分からなくもない。
「一方で栄光の翼のウィズ様。Aランクパーティーを自称するだけあって大したものでした。指示は適当。戦力になるどころか場をかき乱す。挙句は真っ先に敵前逃亡。本当に"優秀"な方でした」
ミラーナがわざとらしく優秀という単語を強調する。おそらく俺が無能と呼ばれている事に対する意趣返しのつもりなのだろう。
「以上が私たち騎士団からの報告になります」
「ふむ。ご苦労じゃった」
これで騎士団からの証言は終了する事となった。