ギルドと栄光の翼 part16
俺はアイテムボックスを開け、今回討伐した魔物たちを放出する。オークナイトやメイジは変異種でありながらも、群れが発生したという事もあってそこそこの数がいた。オークジェネラルはさすがにその数には及ばないが、それでも数匹と遭遇する事となった。
とはいえ解体して素材を手に入れるためならまだしも、この場で一気に出す必要はないだろう。そう考え、オークナイト、オークメイジ、オークジェネラルの三体だけを見える事にした。
「ふむ……」
「なるほど……」
ヴァルトとモストがあごに手をつけ、その姿をジーっと見つめる。
「確かに本物のようじゃな」
「ああ、オークナイトやメイジはともかくジェネラルまでいやがるとは」
どうやら彼らも話の全てを信じてはいなかったようだが、目に見える形でそれを見せられた事で納得する素振りを見せている。
「な! だから言っただろ! あの森はマジでやばかったんだって!」
「備えをしていたならまだしも今回はウッドモンキーの変異種の討伐と聞いていたからな」
「あの状況だとさすがに退却せざるを得なかった」
すかさずBランクパーティーの男たちが声を上げる。実際に彼らも実際に魔の森に入りオークたちと遭遇している。証言もあるし、証拠もある。これだけ揃えば俺たちが言っている事が事実であると普通なら信じてもらえそうではある。
「ちょっと待ってくれ」
そんな中でもやはり、納得できないという声を上げる者もいる。栄光の翼のリーダーのフォールだ。
「確かにこのオークたちは変異種のようだ。だが本当のこの魔物は魔の森にいたのか?」
続けてフォールが疑問の言葉を口にする。
「あいつが使ったのはアイテムボックス。あれなら別の場所であらかじめ討伐した魔物を格納しておく事もできるはずだろう? そんなもの何の証拠にもならないと思うが?」
「どうせ私たちをハメるために、あらかじめ細工したんでしょ! 嘘をつくならもっとバレない嘘をつきなさいよ!」
「そもそも本当に倒したのか? こいつはあの無能だぜ? この無能が変異種を倒せるわけがねぇ」
「確かにそうだ。となるとそこの無能がオークの変異種の死体を買い取ったという可能性も出てくるな」
様々な憶測をフォールたちがこちらにぶつけてくる。確かに彼らの言い分が全くの嘘であるとは言えないが、彼らの発言はそもそも憶測。何の証拠もない言いがかりだ。
「ふざけんじゃねぇ! こっちは何匹ものオークを退治してるんだ!」
「お前らのとこのウィズだって居合わせてたぜ! それなのにそんな屁理屈通るとでも思ってんのか!?」
「憶測でしゃべってばっかしてねぇでお前らこそ証拠を出せ!」
当然Bランクパーティーの彼らも反発する。彼らからするとお前たちの方こそ、嘘ばかり言っているではないかという思いがあるのだろう。怒るのも無理はなかった。
「オホン」
言い争いの空気を鎮めるようにモストが咳払いをする。先ほどモストが放った威圧。あれが再び飛んでくるのではないかと本能で悟ったのか、騒いでいた者たちが一斉に口を閉じる。
「両者の言い分は分かった。ワシの見解をと言いたい所じゃが、まずは騎士団のヴァルトに意見を聞きたいと思う」
「やれやれ、唐突だな」
モストに意見するよう言われたヴァルトが肩をすくめながら口を開く。
「あー、という事で指名されたんで俺の見解、いや騎士団としての見解言わせてもらうぜ。今回の討伐。俺たち騎士団」
「失礼ながら……。ヴァルト隊長。ここは公の場であるという事をお忘れなく」
声を出して話そうとしたヴァルトに対してミラーナが注意している。それを聞いたヴァルトが頭をかきながらコホンと咳払いし、改めて話始める。
「……私たち騎士団の見解。今からそれを言わせて頂こうと思う」
ヴァルトの声を聞き、ミラーナが注意したのが言葉遣いだったのだろうと推測する。ヴァルトは騎士団長、それなりの地位にいる人物だ。となればやはり、説明という動作一つでもそれなりの話し方や礼儀がある。騎士団としてそこはしっかりしろとミラーナなりの警告のだろう。
(そういえば再会した時のミラーナも普段とは違う雰囲気だったな……)
再会した時の彼女はギルドを相手に淡々と話をしていた。冷静に見えるが、冷淡であるようにも見える。そんな態度を取っているように見受けられた。あれが仕事をしている時の普段の彼女なのだろう。
「さて、私たちの見解だが……」
騎士団としての考え。それがヴァルトの口から紡がれる。
ついにお披露目完了です!
証拠を盾につぶしてやりましょう!