ギルドと栄光の翼 part11
朝晩かなり冷え込みますね
みなさま体調にはご注意を
最初に入ってきた三人の騎士たち。全員の姿が見覚えがある者だった。まず先頭にいる騎士の男、確かヴァルトと呼ばれていた。レイシア曰く彼は騎士団の隊長の一人で、その実力はかなりのものらしい。
実際に手合わせしたが、普通の騎士たちとは違う強さを持っていた。そのためたった一戦やり合っただけとはいえ、その顔を覚える事となった。
その後ろにいる女性騎士は、先日魔の森で救出した人物で名前はローナルだったか。彼女も特別な人物なようで、とある国の貴族令嬢なのだという。これまたレイシアから聞いた話なのだが。
そして三人目は既に見知った顔であるミラーナだ。この三人がギルドに足を運んできたという事は、つまり"騎士団"として何かしらの行動をしにきたのだと意識させられる。
「き……騎士団!」
「何しに来たんだ?」
「奴らが来たって事は昨日の討伐の」
その姿を見たBランクパーティーの者たちもひそひそと小声でしゃべる。どうやら彼らも何かあるなと思っているようだ。
「私の聞き間違いでなければ、我々は口だけの存在と聞こえたのだが間違いないかね?」
ヴァルトがその視線をフォールに向ける。まさかフォールも今この瞬間に騎士団の者たちが訪れるなどと思ってもいなかったのだろう。非常に気まずい表情をしている。
「いや……それは何というかその」
「はっ! 口だけのてめぇらと違って俺たちの方が優秀だって言ったんだよ! だよなフォール?」
リーダーなのだからしっかりしろよと言いつつドヴォルがポンっとフォールの肩を叩く。それを見たステラは口を開けて信じられないという顔をしていた。
当のフォールもドヴォルの発言により、完全に弁明する事ができなくなってしまった。それが分かっているのか鋭い目つきでドヴォルを睨んでいた。
「いやいや、正直で結構。確かに私たちは君たちの言う通り口だけの存在だ。魔の森の討伐ではウッドモンキーの変異種を見つけられず、渓谷ではワイバーンの変異種を見つける事ができなかった」
その言葉を聞き、ドヴォルが鼻で笑う。確かに彼の言う通り、今回の討伐で騎士団が活躍したかと言えばはっきりいって怪しい所だ。というよりウッドモンキーとワイバーンの変異種など存在しないし、そんな相手を討伐できるはずがない。
そもそも成果の上げようがないのだ。
「その上、魔の森ではオークの群れが出たという報告を受けている。しかもその魔物相手に恐怖し、真っ先に逃げ出した者もいたとか。確かにそのような姿を見られては幻滅されても仕方ないだろう」
「へ! 本当にだらしねぇ奴らだ。ギルドからせっかく要請したってのに本当に使えねぇ!」
ヴァルトが自分たちの組織について自虐的に話すのを見て、ドヴォルが笑う。まぁ今の発言だけを聞けば騎士団として、今回の任務は失敗だろう。
「用件はそれだけか? 用が済んだならさっさと」
「ただ、確認したい事もあってね。まず一つは"変異種"という存在が本当にいたのか? それを教えて頂きたい」
まさか騎士団所属の人物から変異種が実在するかどうかの確認の言葉が出てくるとは。予想外である。
「それともう一つ。君たちがワイバーンの変異種と出会ったという渓谷。そこに向かう時に荷物持ちの男を雇っていたはずだ。彼はどうしたのかね?」
続けて荷物持ちの男の話題が出てくる。フォールたちが渓谷に向かったのは俺を追放した後だった。おそらく俺の代わりとして誰かを雇ったのだろう。栄光の翼の名を出せば、志願者はいくらでもいる。雇う人がいないという事にはならないはずだ。
「そ……それは」
「決まってる! あまりに使えねぇからよ。俺たちの役に立ってもらったよ」
言い淀んでいるステラより先にドヴォルがその質問に答える。
「役にね……。具体的には?」
「使えねぇ奴の使い方なんて決まって」
「ドヴォル! 口を閉じろ!」
これ以上余計な事をしゃべられるとマズイと思ったのかフォールが怒りの声でドヴォルに注意する。あの落ち着きのなさ。これは何かあるなと俺の感が告げている。
「いやな。実はその荷物持ちの男が俺たちの所にやってきてな。こう言ったんだよ」
すぅっと深呼吸し、ヴァルトが言葉を続ける。
「栄光の翼のパーティーメンバーに囮にされた。あやうく死にかける所だったってな」
この一言。ヴァルトのこの一言から栄光の翼がもがれ始めるという事はこの時誰も知らずにいた。