栄光の翼のその後 part1
本編楽しみにしてくださってる方ごめんなさい
今回は追放もの定番の別パーティー視点になります
「おいドヴォル! どういうつもりなんだ!」
フォールたち栄光の翼はギルドでのひと悶着の後、話を整理するために酒場に集まっていた。
「なーに怒ってんだよフォール。我ながらよくやったと褒めてやりたいくらいだぜ。俺が貰うのは怒りの声じゃなくて賞賛のはずだぜ」
「賞賛? 勝手にあんな約束取り付けるなんて、一体何を考えてるんだ!」
「まぁまぁ落ち着てくださいよフォール。ドヴォルは普段脳筋ですが、今回に関しては判断は間違っていないと思いますよ」
怒るフォールに対し、ウィズを落ち着くよう促す。彼らが揉めているのは先ほどギルドでミラーナという女性騎士と取付けた約束についてだ。
「んだよ! まさか栄えある栄光の翼のリーダー様があの女騎士様が言ってた事にビビってるのか?」
「そういう事をいっているんじゃない! もしあの無能君に対して俺たちがやってきた事がバレたら。俺たちのパーティーの評価がどうなるかくらいわかっているだろう?」
フォールたちが追放した青年、ヒューゴ。当初パーティーを組んだ時は、お互いの欠点をカバーしつつ、助け合う事で様々な依頼をこなしてきた。
その成果も傍から見てもかなりのもので他のパーティーよりも何倍もの速さで快進撃を続けてきた。
その中で、自分たちは数多くの魔法やスキルを覚え成長する中、彼は最初から覚えていたというステータスダウンの魔法以外、何一つ新しい魔法を覚える事はなかった。
その結果、徐々に彼は戦いについてこれなくなり、囮や荷物持ちくらいしかできないような存在になっていった。
ろくに仕事ができない彼を自分たちは無能と判断し、同じパーティーメンバーに到底するようなものではない行いを数多くやってきた。
報酬の分け前を与えない。宿の予約を一人分抜き野宿させる。新しい魔法やスキルの実験台にする。といった嫌がらせを数多く行ってきており、万が一それらがばれてしまえば、栄光の翼の名に傷がついてしまう。リーダーであるフォールとしてそれを避けたかった。
「いやいや、俺たちは正しい事をしてるんだぜ? 何で評価が影響するんだよ? 無能を追い出した。むしろ邪魔なごみを消した俺たちは評価されるべきなんじゃないか?」
何を言っているんだコイツはとフォールは頭を抱える。パーティーに加えたこの大男。ドヴォルは見た目通り、強力なパワーを持っており、自分たちのパーティーでもその実力を発揮してくれるだろうと思いスカウトした。
想像してた通り、ドヴォルは前線で自分と同じくらいの活躍をしてくれているのだが如何せん、考えが色々と浅い。
「それよりもあの騎士の姉ちゃんだ。ありゃぁマジで上玉だ。あの姉ちゃんの事を好きに出来ると思うと……。たまらねぇな!」
ドヴォルの言う通り、ギルドで出会った騎士団から配属されたという女性は誰から見ても美人、いやそれ以上の美貌を持つ存在であった。同じパーティーのステラも中々の美人だが、彼女が霞むくらいの存在感を放っていた。フォール自身も彼女が姿を見せた時、その美貌に思わず目を奪われたくらいだ。
そんな女性がどこから聞きつけたのか、フォールたちがあの無能に対し度重なる嫌がらせをしていると指摘してきた。彼女の指摘はあながち間違いではなく、もし無能にしてきた事が発覚したら。そう考えるとフォールは悠長ではいられなかった。
「フォールは心配し過ぎなんですよ。私たちはあの栄光の翼、そのものなんですから。そもそも私たちではなく無能の味方をする者なんて誰もいません」
自称、栄光の翼の頭脳担当のウィズが声高らかに宣言する。
「だがウィズ。そうもいっていられないだろう。あの無能は身内で足を引っ張ってきたが、俺たちの活躍に嫉妬するパーティーがここぞと動き出すかもしれない。下手をすると足をすくわれるぞ」
「そういった輩が出てきたら始末すればいいんですよ。それに万が一我々にとって何か不都合な出来事が発覚したとすればもみ消せばいい。ギルドにいくらか金を積めば十分でしょう」
ウィズはニヤリと笑みを浮かべる。栄光の翼は今やギルドで最も注目されているパーティーだ。多くの者は尊敬の眼差しを向けており、ギルドにとっても栄光の翼の活躍は自分たちの強みでもある。むざむざ自分たちと敵対するような真似は取らないだろう。それどころかここ最近は自分たちの機嫌取りに来ているくらいだ。
「そうそう。私たちがそこらの雑魚に負ける訳ないし、ギルドが何か言ってきたら抜けるぞって脅してやればいいのよ。気にしすぎなのよフォールは」
ステラが足を組みやれやれと肩をすくめる。フォールの彼女でもあり、パーティーの紅一点のステラは栄光の翼でもかなり目立っていた。見た目が美人な事もあって多くのファンがおり、彼女に貢ぎものを捧げようとするものが大勢いるらしい。その内面は気に入らない事があればすぐ癇癪を起こすような我がままな女なのだが、外面だけはいいためかなりの人気を誇っている。
彼女目当てでギルドに加入しようとするものも大勢おり、その功績は図り知れないものがあるのだ。
「だが……」
「あーもう私の彼氏がそんなのでどうするのよ! 私たちは胸をはっていつもどおり普通に過ごしていればいいのよ!」
「万が一、万が一にもあの無能が何かすごい手柄を立てたとしてもいくらでも言いようはあります。私たちは栄光の翼。あの無能が何を言ってこようが、世間は彼よりも私たちの事を信用するでしょうから」
既にあの無能の青年、ヒューゴに対する世間の評価は良くない。引き立て役、寄生虫、お荷物、こう呼ばれている事を知っている。現にギルドでも腫物扱いされており、追放宣告された時は笑わずにはいられなかった。
「……分かった。皆がそういうならこの件に関してはこれ以上俺からは何も言わない事にしよう」
「そうこねーとな。それよりあの姉ちゃんとどんなプレイをするか。手に入る金で何をするか。今からでもそれを考えようぜ!」
「ちょっとドヴォル! フォールに変な事を吹き込まないでくれる!? あの女、見た目は清楚ぶってたけどどうせ裏では男どもをたぶらかしてるに違いないわ」
「それよりももっと先の事を考えませんと。彼女は騎士団所属と言っていました。まずは彼女を足がかりに騎士団長と繋がりを作り、そこから国王に私たちの事を知ってもらわないと」
自分の汚名を返上しようと努力するヒューゴとは別に栄光の翼は未来先の事を話していた。
そんな未来が訪れる事はないという事も知らずに
あらすじを少し変えてみたのですがどうでしょうか?
ガッツリ書くとネタバレになってしまうから難しいですね……
また一度練り直してみます