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【3章完結!】  ステータスダウンしかできない無能デバッファー。追放宣告を受けてしまったが実は最強デバッファーでした。  作者: 追放されるけど何だかんだでハッピーなのが好きな人
一章 無能と呼ばれる男
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刀使い 思い起こす

タイトルが違う通り、

今回とある方の心情回です

少しでもそのキャラの思いを描写できればと思います

(やれやれ……本当に甘いなぁ)


彼女はまずそう思った。あれほど自分の事を無能だの何だの言われたにも関わらず、それでもなお彼は冷静な態度を崩さなかった。


前日に魔の森での探索を終えてまだ一日しか経ってない。にもかかわらず、まさかいきなりギルドで厄介ごとに巻き込まれているとはさすがに考えもしなかった。


しかも戦闘真っただ中。見るとドヴォルという男が斧を振るって攻撃しようとしていた瞬間に立ち会ってしまった。


(でも彼なら何とかできたんだよね)


一緒に行動していた事もあって、彼の強さはよく分かっている。実際、あのオークエンペラーですら倒してしまった。そんな彼が今更ただのウッドモンキーを変異種扱いするようなパーティー相手に遅れを取るわけがないと頭では分かっていた。



だが、考えるよりも先に何故か体が動いてしまった。それも彼を守る形で。本当なら斧をバッサリ切り捨てるつもりだったが、咄嗟の事だった事もあり、刃と取っ手の部分を切り分ける事しかできなかった。


とまぁ思った結果にはならなかったが、相手の攻撃を防ぐことはできた。しかしその後の相手の対応が問題だった。相手パーティーの一人が甲高い声でこちらを非難してきたのだ。


思わずおばさん呼びしてしまったが、それがさらに相手を怒らせてしまう事となってしまった。そこからはお互いに口論を繰り広げる事となった。


しかも壊した斧の持ち主がこちらの体をいやらしい目つきで見つめてきた。さすがに耐え切れず、これならオークの方がマシだと反論したが、これまた怒りを買う事になってしまった。


最早、言い争いでは決着はつかない。そう考え力の差を見せつけるために刀を振るい、今度は相手が来ていた鎧をスパっと切り裂く事にした。さすがの相手もこれだけやれば引っ込むだろうと思っていたが、これまた間違いであった。


今度はギルドの受付嬢が出しゃばってきたのだ。挙句、相手のパーティーの肩を持ち、悪いのはこちらであると一方的に決めつけてきたのだ。


「費用は相手の方にキッチリと請求しますので」


まずこの言葉が引っかかる。こちらはただ相手が襲い掛かってきたから反撃しただけである。なのに費用の支払いをしなければならないという事に納得できなかった。そのため当然否定の言葉を口にした。


「……これはギルドの決定です。従わないのであれば」


あろうことか今度はギルドの名前を出して、脅してくるという形を取ってきた。さすがにこれは見過ごす事ができなかった。そもそもこちらには非がないのに言い分を聞かず、一方的に悪いと決めつけてくる。我慢ならなかった。当然これに対しても反論した。


「ギルドに逆らうという事は要注意人物としてリスト入り。最悪指名手配される可能性もありますよ?」


最終勧告のように注意してきたが、最早脅しだった。だがその要求に答える義理はない。そもそも自分より"弱い"者の言う事を何故聞かなければならないのだろうか。


だが相手はそう来るならこちらも手加減はできない。自分の中にも譲れない一線はある。権力を武器に相手を脅してくるやり方も気に食わないが、自分自身は大した実力を持っていないのに"つけあがってくる"輩を見ると腹がたって仕方なかった。

だから相手の言葉に則って、こちらもそれ相応の対応をしようとした。


「レイシア……。それは駄目だ……」


だがそれを止める者がいた。それが彼だ。栄光の翼に寄生する無能のゴミがいるという噂は自分の耳にも入ってきていた。そんな噂が流れるくらい、悪い意味で注目を浴びていたに違いない。

これまでに自分には想像がつかないほど罵倒され、馬鹿にされていただろう。時には死にたくなるほどつらい思いをして来たに違いない。


それでも彼は決して腐らず、それどころか規格外の魔法の力を見せてくれたのだ。まさか栄光の翼の快進撃の秘密が、無能と呼ばれるとんでもない男にあったとは思いもしなかった。


それが発覚し、彼も自身の魔法と向き合う事となった。あれほどの力を手に入れたとなれば、真っ先に復讐を考えてもおかしくはない。


しかし彼は決してその力を他者を痛みつけるためには使わず、むしろ町を守るために振るったのだ。彼がいなければ今頃この町はオークの群れに蹂躙されていただろう。


英雄になれと言った自分の言葉を彼は見事に遂行した。だが彼を無能扱いしていた者たちは、未だそれすら見抜けず無能と呼び馬鹿にしている。それを自分は許す事ができなかった。


「レイシアは大切な"仲間"だからな。そんな君の将来をこんな奴ら相手に潰させたくないからさ」


怒りに震える自分をまさか当の本人に心配されるとは思ってもいなかった。


「頼むレイシア。抑えてくれ。君が言ったんだろ? 俺に英雄になれって。それで見返してやれって」


自分の言葉をしっかり覚えており、忘れないでいてくれた。


「レイシア!」


あれだけ馬鹿にされてもなお、人を思いやる気持ちを忘れないのか。


(やれやれ……本当に甘いなぁ)


そんな彼だからこそ"契約"を無視してでも、彼の意思を尊重しようとしたのだから。


気が付けば自分の刀を握る手の力が抜けていた。こうして彼の願い通り、自分の手を止める事となった。


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