ギルドと栄光の翼 part8
ご感想頂きありがとうございます!
先の展開を予想されたりと楽しんで頂けているのなら作者にとって非常にうれしい限りです
ご期待に沿える展開をできるかどうかは分かりませんが見守って頂ければと思います
かなり腹を立てているのか、冷たい声色でレイシアが受付嬢の喧嘩腰の言葉に対して反論した。
「あ……あなた正気ですか!? ギルドを敵に回すんですよ!? それがどういう意味なのか本当に分かっているのですか?」
どうやら受付嬢もあのような返され方をされるとは思ってもいなかったのだろう。レイシアの予想外の発言に戸惑いを覚えている。
「分かるも何も喧嘩を先に吹っ掛けてきたのは君たちの方だ。だからそれに乗ってあげるよ。最も君たちがそう来るなら、こっちもそれ相応に"返し"をさせてもらうけどね」
一方、レイシアの方は受付嬢に対し、恐れる素振りを見せるどころか、いつでもかかってこいという態度を見せている。恐れ知らずというべきか、完全にやる気になってしまっている。
「さて、まずは誰が相手になってくれるのかな? やっぱり最初は高ランクの君たちかな?」
レイシアがスッと目を細め、その視線をフォールたちに向ける。栄光の翼、快進撃を続けているギルドで最も注目されているパーティー。彼らが最初のターゲットになってしまっている。
「ちょ……ちょっと! 何なのよこいつ! 頭おかしいんじゃないの!?」
戦いの相手として指名された事に対しステラが激しく動揺する。別のパーティーと今回の討伐の件について揉めていたと思ったら、いつの間にか得たいの知れない相手と戦わないといけない状況になっている。
理解できないのも当然だろう。
「おいおい……正気かよ! なぁ! 今すぐ謝った方がいいって!」
この光景を見ていたBランクパーティーの男の一人が謝罪を促す。
「信じられねぇと思うけど……。この姉ちゃん。今回の討伐でオークどころか、オークナイトやメイジ、オークジェネラルすらぶっ倒したんだぜ! それも一人で!」
そうこの男は俺とレイシアが魔の森で救出した男性だ。当然、森の中で俺たちの戦いぶりを見ている。
また俺が先行してオークエンペラーの元に向かった時、彼女はその場の魔物の相手を引き受けてくれた。その中にはオークの変異種たちがウヨウヨいた。おそらく彼女の実力をその目で見ていたに違いない。
「はっきり言って格が違う! 今の俺たちどころか今のギルドの最高戦力をぶつけても姉ちゃんに勝てるかどうか分かんねぇ! 謝るなら今すぐに」
「うるせぇぞ! 雑魚が!」
そんな中、男に対し大声で怒鳴る者がいた。ドヴォルだ。
「こんなガキ相手にビビっちまうとはそれでもギルドの一員か? こんなカス野郎がいるパーティーがBランクとは情けねぇ!」
「お……お前何言っているんだ? 鎧まで斬られたのにまだそんな事を……」
「あんなのマグレに決まってるだろうが!」
どうやらドヴォルは未だに自分と相手の実力差を分かっていないようだ。ここまで来てまだ自分の方が上だと思い込んでいる。ある意味その性格に関心を覚えてしまうほどだ。
「ステラ! てめぇは俺に補助魔法を! フォール! てめぇもいつまでもボーっと見てないでさっさと加勢しやがれ!」
仲間たちにも加勢するようドヴォルが指示を出す。
「そうね。こんな茶番さっさと終わらせましょう。こんな頭のおかしい奴。いつまでも相手にしてられないわ」
「ギルドの敵に回ると言ったのは彼女だ。それ相応の責任は取ってもらわないとな」
その声に答えるようにしてステラとフォールも戦闘の態勢を取り始めていた。
(まさかレイシア相手に本気で戦う気か!?)
ドヴォルはともかく、ステラやフォールは何かしら理由をつけて戦いを避けるだろうと考えていた。だが、まさか二人とも戦闘に加わってくるとは。これはさすがに予想できなかった。
「今を以って彼女はギルドの指名手配人物。それでいいんだな?」
フォールの問いに受付嬢はコクコクと頷く。なるほど。戦闘の決め手になった理由はこれか。ギルドという後ろ盾を得たからこそフォールは強気になっているのだ。
万が一ここで何が起こったとしてもギルドが上手く後処理をしてくれる。彼らにとっては破格の優遇対応だ。
「ただここでの戦闘は控えて……できれば外で」
「そうと決まればまずは大人の怖さを分からせてやらねぇとな!」
ドヴォルがポキポキと指を鳴らす。
「行くわよドヴォル!」
「おう! ほら喰らえや!」
ステラの強化魔法を受けたドヴォルの渾身の一撃。それが放たれる事となった。