ギルドと栄光の翼 part6
PV30万達成してました!
感謝感激です!
一瞬の出来事。そしてパカーンという音が鳴り響いた事で、周囲の者たちがハッと意識を覚醒させる。
「「な!?」」
そして目の前で起きた光景に、思わず驚きの声を上げる。先ほどまでの争いで、ドヴォルはレイシアに向かって、殴りかかろうとしていた。言葉にすれば長く感じるが、その動作は一瞬で終わるはずだった。普通ならば目の前の人に殴りかかるのにかかる時間は僅か数秒。
まばたきをしていれば終わるくらいのものだ。
しかしレイシアにとってはそのまばたきすら"遅い"。ドヴォルが自分に殴りかかるよりも先に、目にもとまらぬ速さで刀を振るい一閃を放ったのだ。
その攻撃は命中。そして攻撃を受けたのはドヴォルが身に着けていた鎧であった。レイシアの攻撃に耐え切れず、鎧がパックリと真っ二つに割れてしまったのだ。
「なん……だと……」
「う……そ……」
フォールとステラもその光景を目の当たりにし、驚きのあまり呆気に取られてしまっていた。
(ドヴォルが着ていた鎧。あれも斧と同じでそれなりの値段だったと思うけど……。まさか一撃とは)
俺の記憶が正しければ、あの鎧もそれ相応の金額を支払って購入した品の一つだったはずだ。それをこの一瞬、たった一撃で使い物にならない状態にしてしまったのだ。
(何とか目で追えこそはできたけど……。あれを防げたかと言われると)
あの一撃。何とか捉える事はできたが正直防げたかどうかと言われると怪しい所だ。ステータスダウンの魔法を使えば威力こそ抑えられるだろうが、それより先に放たれてはさすがにどうしようもない。
(本当にとんでもないな……)
今回は彼女と契約を取り付ける事が出来たため、協力者として関係を結ぶ事ができた。しかし行動次第では彼女と敵対し、戦わざるをえない状況になっていた可能性もある。
ミラーナと戦った時もあくまで手合わせだったが、気が付くと手合わせとは到底言えないレベルの戦いになっていた。彼女が本気を出してきていたら自分たちもきっとただでは済まなかっただろう。
俺は改めてレイシアと友好関係を結べた事に対し、心の中で感謝の言葉を発していた。
「中々の一品かと思ったけど……。大した事なかったね」
どうやら本人としてはもう少し耐久性のある物だと思っていたようだが、簡単に割れてしまった事で落胆したのか、レイシアがやれやれと肩をすくめている。
「俺様の鎧が! あ……ありえねぇ! ありえねぇぞ!」
鎧を着ていたドヴォル本人は、何が何だが分からない。信じられない。ありえない、という表情を浮かべている。まぁ当の本人からすれば殴りかかろうと思ったらいつの間にか、自分の鎧がまっぶたつに割られていたという状況。到底理解できないだろう。
「ステラ! てめぇ! ちゃんと魔法かけてたのか!」
「かけたわよ! ていうかあんたちゃんと体隠しなさいよ! そんな格好いつまで見せてるわけ!?」
ステラの言葉を聞いたドヴォルが自身の体を見る。鎧が外れた事で今のドヴォルはシャツ一枚、パンツ一枚だけ履いた格好になってしまっていた。
「ぬぁぁぁぁ!」
あの栄光の翼の前衛がこんなだらしのない格好を晒している。その事実がドヴォルのプライドを大きく傷つける事となった。
「許さねぇぞ!」
ドヴォルが声にさらに怒気を込める。こうなっては止まらないだろう。それほどまでに怒り狂ってしまっていた。
「うるさいなぁ……。こっちとしては"腕"を狙わなかっただけありがたいと思って欲しいんだけど」
「いい加減にしてください!」
さすがにこの状況を放っておくわけにはいかないと思ったのか、距離を取って静観していたギルドの受付嬢が口をはさんできた。
「ここでの暴力行為は違法ですよ!」
「るせぇ! たかが受付嬢ごときが俺に命令するのか? 俺は栄光の翼のドヴォルだぞ! てめぇらが飯食えてるのは"Aランク"の俺たちがあってこそだろうが!」
「もちろん承知しています! だからこそ私たちもそれ相応の処置を取りますのでどうか!」
「そんなもので気が済むとでも思ってんのか!」
「もちろん栄光の翼の方々にはそれなりの補填をしますから。ドヴォルさんが持っていた斧、そして今壊れた鎧もです。費用は相手の方にキッチリと請求しますのでどうかここは」
何とかドヴォルをなだめようと受付嬢が甘言を口にしている。彼女なりに必死なのだろう。だがその発言はそもそもおかしい。今ここで暴れているのは栄光の翼の一員の男ドヴォル。斧や鎧が破壊されたのも、そもそも彼自身の自業自得でしかない。
それなのに責任を別に押し付けようとしてくる発言をした事に対しさすがに納得できない。
「えーー、それっておかしくないかな?」
当事者であるレイシアも全く納得した様子を見せず、疑問の言葉を口にしていた。