ギルドと栄光の翼 part2
サブタイトル良いの思いつきませんでした
どこかで変えるかもしれません
「おい、あれって」
「栄光の翼のドヴォルじゃねぇか?」
ドヴォルの登場に周りにいた者たちがザワザワと騒ぎ始める。彼もフォールやステラ同様、栄光の翼の一員。Aランク昇給に貢献したトップクラスの前衛として名を馳せているのだから。
最も俺からすれば力任せで戦うだけの脳筋で、平気で他人に暴力を振るうゴミ野郎なのだが。実際性格もそれ相応に粗暴だが、実績もあるため誰も口を出せずにいた。
「何やら騒がしいと思えば、Bランクの雑魚どもがAランクの俺たちに説教とはな。良い度胸してるじゃねぇか」
クククと声を漏らしながら笑みを浮かべる。
「邪魔だ! どけ!」
周りに集まっていた野次馬たちを力任せにどかし、ドシドシと足音を鳴らしながら歩を進める。ドヴォルに無理やり体を押され、倒れこむ者も中にはいたが、相手が相手なため誰も言い返せずにいた。
「おいフォール。よく分からねぇがコイツらが俺たちにケチをつけたって事でいいんだよな?」
「ああ。彼らは討伐隊に参加、しかもリーダーとして指揮をとっていた者もいた。だが彼らの指揮のせいでウィズが大怪我を負ってしまった。その責任は取ってもらわないとな」
ドヴォルの問いにフォールが間違いないと返答する。栄光の翼内において、どうやらウィズが大怪我を負ったのは今回討伐隊の指揮を取っていた彼らに非があるという風に考えているようだ。
「だからそれは」
「しかもコイツら自分たちの実力の無さを認めず私たちのせいにしてくるのよ。本当に信じられない!」
反論しようとする相手の男の言葉を遮り、ステラが口をはさむ。自分たちの弱さを認めず、指揮が悪かったという非も認めず、挙句こちらのせいにしてくる。こういう考え方をしてくるBランクパーティーの彼ら相手にステラも怒りを隠せずにいる。
「はっ! ようは雑魚どもがケチをつけて俺らからおこぼれを貰おうとしてるってわけだ! 情けねぇ奴らだなおい!」
「んだと!?」
「俺たちより先にパーティー結成したのに抜かれちまって面子丸つぶれだもんな! まぁそれがお前らの限界って事だ。」
笑いながらドヴォルが相手を罵倒する。その発言に相手のパーティーの者たちも黙り込んでしまう。確かに彼らの言う通り、自分たちは栄光の翼が結成されるよりも先にパーティーを結成していた。
自分たちもBランクという決して低くはないランクまで上り詰めたが、上には上がいた。それが栄光の翼である。彼らはとんでもない速さでどんどん昇級していき、気が付けば自分たちよりも上のAランクという地位に上り詰めていた。
その実績は誰から見ても明らかであり、そこを突かれると彼らも反論する事ができないでいた。
「……よく言うぜ。あんたらだって人の事言えないんじゃねぇか?」
「ああ?」
そんな中、一人の男が反論の言葉を口にする。その人物は俺たちと一緒に魔の森から帰還した男であった。
「今回の討伐で俺、いや俺たちはあんたらのとこのメンバーの男の動きを見させてもらった。だがとてもじゃないが実力があるようには見えなかった」
「……何が言いてぇ?」
「俺はこう思ってるんだよ。あんたら実は大した実力を持ってないんじゃないかってな」
その言葉を男が言い放った途端、ピリッと空気が変わる。男の言葉を聞いたドヴォルの表情が怒りのそれに切り替わったのだ。
「噂に聞いたが、あんたらパーティーメンバーの一人を追放したんだってな。しかも追放した後にウッドモンキーやワイバーンの討伐に失敗したんだろ?」
どこで知ったのか男は俺が追放された後の情報を入手していたようだ。確かフォールたちは俺を追放した後に魔物退治に向かったがいずれも失敗。ワイバーン戦に至っては自身が怪我を負う事になってしまうほどの大失敗であったと聞いている。
「それは追放したあいつが!」
「ふと思ったんだよ。本当はあんたらが凄いんじゃなくて追放された奴が凄かったんじゃ」
ドゴッ
男が言葉を言い終える前に口が閉じられる。ドヴォルが男の腹を目掛けて殴りかかったのだ。男もいきなり殴られるとは思っていなかったのだろう。腹に一撃を叩き込まれうずくまってしまっていた。
「あの無能が俺たちより上? 冗談にしちゃ笑えねぇな」
ドヴォルが鋭い目つきで男を睨みつける。完全に怒りのスイッチが入ってしまったようだ。
「ドヴォル!」
さすがにマズいと思ったのかフォールが制止するよう名を呼びかける。周りにいた者たちもついに暴力沙汰になった事で騒ぎ立て始め、身の危険を感じたのか悲鳴を上げながら逃げ始めた。
「雑魚の分際で! もういい! カス野郎はここで潰してやるよ!」
「やめろ! ドヴォル!」
フォールの言葉を無視し、ドヴォルが背負っていた斧を手に取り、うずくまる男に追撃しようとする。すぐさま男の他のパーティーメンバーがそれを止めようとするがドヴォルの方が動きは早い。
斧の一撃、それは確実に男に命中するはずだった。
「ぐっ!」
だがそうはならなかった。斧で殴りかかる寸前に何者かに介入され、腕を振り降ろす事ができなくなったのだ。
「そこまでだ、ドヴォル」
あまりの横暴を見ていられず、俺が割って入り腕を手で掴み無理やり制止させた。