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8話 戦士の才能

僕がエリスさんの弟子になると決まってからのライデン家はとても騒がしかった。妹のナナとリリは泣き出すし、旅立つのに必要な準備も大急ぎで行われた。


それもなぜかというと、旅立つのがエリスさんの弟子になると決まった日から3日後だったからだ。


3日後にちょうどリヴァイア大陸に出発する船が出るという事で急だが準備を進めている。


だがその準備も父さんと母さんがあらかじめ準備していてくれていたので思った程もたついていない。


(父さんと母さんは僕がエリスさんの弟子になると分かっていたんだろーな)





時間が過ぎるのはあっという間で旅立ちまであと1日となった。


それで今日は旅立ちの前にエリスさんに僕の魔法の実力がどの程度か見てもらうらことになっている。


僕は火魔法のファイヤーボール、水魔法のウォーターボール、土魔法のロックバレット、風魔法のウインドカッターを使って見せた。


「素晴らしいわね。本当に4大属性全ての下級魔法を扱えているし、魔力量も上級魔術師には敵わないけどそれに近い保有量だわ」


下級魔法を一通り見てもらったがなかなか高評価みたいだ。


「それにしても、1番凄いのはその魔力制御ね」


「魔力制御ですか」


「貴方の魔法を使用するところを見せてもらったけど10の魔力で10の魔法を発動できている。しかも魔法の発動から使用まで全く無駄が無い」


「でも魔術師なら下級魔法くらいならこれくらいできて当然なんじゃ」


「普通は自らの力だけで魔法を発動させると、どこかで魔力を余計に使用してしまったりするものなの。10の魔力で5の魔法しか発動できなかったり、10の魔法を発動させようとしたのに15の魔力を使ってしまったりとね。だから私たち魔術師は魔法をもっと効率的に使う為に魔術を扱うのよ。ゼウス、貴方普段どんな魔法の練習は何をしているの?」


「練習ですか?僕は基本的に魔力循環しかしていないですよ。下級魔法の練習は危ないからと母さんが見てくれる時しかできなかったので」


そう僕は、魔法の練習は基本的に魔力循環しかしていない。下級魔法の練習は母さんが見ている時しかできなかったし、周りに何もない広い場所でないとできなかったためだ。


「え、それだけ?ちょっと今やって見せてもらっていい?」


「わかりました」


僕はいつもやっているみたいに魔力循環を行う。魔力が血管に沿って流れるイメージで魔力を体内で循環させる。


転生直後は上手く出来なかったが、今では呼吸をする様に自然にできるようにまでなった。


(魔力量を上げるためにこれだけはサボらずに、毎日やってきたからな)


「え!ちょっと貴方、気功術まで使えるの!?」


僕が魔力循環を行うと、エリスさんは急に大声を上げ驚いたような態度をとる。


「気功術?なんですかそれは?」


「貴方が、今やっていることよ!私は魔力循環を見せてと言ったのよ!」


「だから、魔力循環をやっているのですが」


なんかエリスさんの様子がおかしい。


「えーとねゼウス、魔力循環とは精神を集中させ体内で魔力を循環させる事なの。胸の内側で魔力で円を描くようにね」


「はい、僕も最初はそのようにしていたのですが、毎日練習していたら徐々に体の隅々まで魔力を張り巡らせる様になりました」


そう言うとエリスさんは呆れたようにため息をついた。僕何か変な事したかな?


「普通、魔術師は魔力循環を全身で行う事が出来ないし、やらないわ。それが何故か分かる?」


「いえ、分からないです…」


「その方が大きな魔力を練り上げる事ができるからよ。同じ量の魔力を、体の一部位だけで循環するのと体全体で循環するのを比較すると一部位だけで循環した方が濃密な魔力を練り上げられるわ」


「そうだったんですか、じゃあ僕のやり方は間違っていたのですか?」


「いえ、体全体で魔力循環をしないのは効率が悪いからって理由もあるけど普通は余程魔力制御が上手くないと出来ないものなの。でも貴方はそれが出来ている。だからこれからも同じ様にやっていっていいわ」


エリスさんは僕が全身で魔力制御が出来た事に驚いていたみたいだ。つまり、気功術とは全身で魔力循環を行う事なのだろう。


「分かりました。これからも同じように鍛錬を続けます。それにしても気功術とは魔力制御を全身で行う事がだったんですね」


「違うわ」


え、違うの!?エリスさんに違うと即答で答えられた。


「魔術師は精神エネルギーである魔力を武器にして戦うけど、魔法を使えない剣士や武闘家は身体エネルギーである気力を武器にして戦うの。そしてゼウス貴方は気力を扱う事が出来ているわ」


「僕がですか!僕、気力なんて使えないですし、気力なんて言葉初めてききましたよ」


「無意識に使用しているのね。おそらくそれは貴方がバート殿の血を引いているからでしょうね」


たしか、父さんはリヴァイア大陸にいるある戦闘民族の血を引いているらく、父さんや僕にはその血が色濃く引き継いでいる。


「バート殿はライドラ族というリヴァイア大陸に住んでいる戦闘民族の血を引いている。ライドラ族は黒髪、黒眼の見た目に生まれながら高い戦闘能力を持っていて、部族で傭兵を生業にしているわ。魔法を使うのは苦手だけど、気力の扱いには長け肉体強化しての近接戦闘は凄まじいわね」


「父さんが戦闘民族の血を引いているとは聞いていましたが、ライドラ族と言うのですね。初めて聞きました」


「まあ、リヴァイア大陸に住んでいる部族だから知らなくても仕方ないわ。それで気力という力は基本的に肉体強化に用いる事が多いの。魔力は胸の内側か手の先に集めて魔法を使用する事が多いけど、気力はその性質上、全身に張り巡らせて肉体を強化する。そして気力の扱いに長けた人はただ全身に張り巡らせるだけでなく、全身に流れている血液と一緒に張り巡らせ循環させる。これを気功術というの」


「つまり気力とは戦士の魔力みたいなものなのですね」


「簡単に言えばそうね。気功術なんて簡単に覚えられるものではないのだけど。しかも貴方の場合は気力と一緒に魔力も循環させている。こんなの見た事も聞いた事もないわ。貴方、魔術としてだけでなく戦士としてもやっていけるわよ。」


なんか知らない間に凄いことが出来るようになっていたみたいだ。


エリスさんに魔法の実力を見せただけなのにまさか、戦士になれると言われるとは思わなかった。


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