3話 魔術
僕は今、日課の魔力循環の鍛錬を終わらせて部屋で本を読んでいる。
本の内容は下級魔術について書かれているものだ。
僕は下級の魔法は使えるがまだ、魔術は使えない。
そもそも、魔法と魔術は同じものと考えている人が多いが厳密には違う。
魔法とは魔力を自分のイメージに合わせて現実世界に干渉させる力をのことをいい、魔法を扱う者の魔力と想像力によって発動する。
対して魔術はあらかじめ準備された魔術コードを使用して魔法を発動させる事をいう。
魔術コードとは、魔法陣に描かれた文字列や魔法を発動する際に唱える詠唱なんかのことだ。
この魔術コードを使用して魔法を使うと何が違うのかというと、たとえば10の魔力を必要とするところを5の魔力で魔法を使えたり、発動させるのに10秒かかっていたのが5秒で発動出来たりするようになる。
つまり魔法とは計算を暗算でするのに対し、魔術とは計算を電卓を使用してすることだ。
たとえが、分かりづらいが魔術とは魔術コードを使用することによって簡単にかつ効率的に魔法を使用することである。
まあそれでもある程度の知識や技術がないと使えないんだが。
それで僕は今魔術コードについて勉強中である。
基礎的な魔術コードは一般的な魔術の教本なんかで調べられるが、上級魔術師なんかが使用している魔術コードはその人のオリジナルだったりするので世間には広まっていない。
魔法そのものの腕では互角でも使用している魔術コードで差がつけばその差がそのまま魔術を使用した際の差としてでてしまう。
なので魔術師は自分の魔術コードを簡単には他人に教えないのである。
(しかし、魔術コードとは前世で言うプログラミングみたいなものだな。これなら基本さえ抑えられれば自分で魔術コードを組めるかもしれない。)
本を読みながらそんなことを考えていると
「にーちゃいた」
「にーちゃ」
部扉が開き同じ顔をした2人の小さな子供が、部屋に入って来た。
明るい茶色い髪をサイドテールにしている可愛らしい女の子達だ。
「ナナにリリ。そんなに急いでどうしたんだい?」
そう言うと女の子らは僕に向かって走ってくる。
「あのね、パパとママがにーちゃに用があるんだって」
「父さんと母さんが僕に?」
「うん、だから呼びにきたの」
そうこの子達は、僕の妹達である。
髪を右に纏めているのが双子の姉のナナリーで左に纏めているのが妹のリリーナである。
あーヤバイ、可愛すぎる。僕より2つ下の妹達は元気いっぱいで天真爛漫という言葉がよく似合う。
純粋無垢なその笑顔はまるで天使のようだ。いや、まさに天使だ。
異世界転生をして1番嬉しかったことが2人の妹ができたことかもしれない。
「ナナリー様、リリーナ様、屋敷の中では走ってはいけません。」
と、2人の後ろからメイドが部屋に入ってきて自分の世界から引き戻される。
「やあ、サーラ今日も大変そうだね」
「ゼウノス様、騒がしくしてすみません」
サーラは猫獣人で僕が生まれた時からメイドとしてライデン家に使えている。
「ナナもリリもサーラを困らせたらダメだよ」
「だってリリが走るから」
「ナナが1人でにーちゃのとこ行こうとするから」
僕に叱られて2人とも落ち込んでしまう。
「今度からは気をつけるんだよ」
「「うん」」
2人から元気のいい返事が返ってきたが本当に分かっているのだろうか。
「ああそうだ。サーラ、父さんと母さんが僕をよんでいるって」
「はい、バート様の書斎に来て欲しいとのことです」
「分かった、今すぐ行くよ」
(父さんと母さんが僕に何のようかな?)
僕は読んでいる本を閉じて父さん達のいる書斎に向かうことにした。