1話 異世界転生
皆さんは異世界転生というものをご存知だろうか?
そう一度死んで異世界に転生するという、漫画やアニメでお馴染みの異世界転生だ。
私はどうやらその異世界転生をしてしまったらしい。
なぜ異世界かと分かるかというと、人間じゃない人がいるからだ。
猫耳、犬耳がついている女の人を見たときは飾りかとも思ったが耳がピクピクと動いているし尻尾までついていた。
それと魔法?の存在だ。
明らかに物理的に説明がつかない現象を目の前で見せられれば異世界だと信じるしかない。
これでも若い頃は漫画やアニメをよく見ていたし、会社を息子に譲った後もひ孫とよく見ていたものだ。
異世界転生については漫画やアニメで見てそれなりに知識はあるがまさか自分がその立場になるとは思わなかった。
そんな私はというと
「おぎぁあ、おぎぁあ」
赤ん坊の姿である。
もう生まれて一週間がたったが、自分で行動する事は出来ず、喋ろうとすれば泣いてしまう。
当たり前か、まだ一週間だ。
この一週間で分かったことといえば、
●この世界は地球ではない異世界
●この世界は人間以外にも他の種族がくらしている
●言葉は日本語で通じる
●私の生まれた家はライデンという商人の家
●魔法が存在する
●私は赤ん坊で動けない
やはり情報が少ないな。
転生したばかりだから仕方がないが、自分の住んでいる国の名前も分からず両親がどのような商売をしているのかも知らない。
インターネットの普及した基の世界では検索するだけでどんな情報もいくらでも調べられた。
この世界の文明がどの程度か知らないが基の世界とは比べようが無い。
魔法があるとはいえ、現代日本のように生活の中に情報がありふれている環境ではないので知らないことばかりだと不安になる。
「あら、どうしたの?」
そんなことを考えていると、私のところに茶色い髪の毛を腰くらいまで伸ばした綺麗な女性がやってきた。
年のくらいは18〜20歳くらいだろうか。
「ダイヤ様、お子様のお世話は私達メイドにお任せ下さい」
「いいのよ。あなたた達ばかりに任せていたら私の顔を忘れてしまわないかと思って。それに私の子供だもの、私自身で面倒をみたいの」
そう、この女性ダイヤはこの世界での私の母親である。
「本当に可愛いわ。まるで天使のよう」
「ええ、そうですねダイヤ様。口もとなんかはダイヤ様にそっくりですよ」
「そうね、でも目もとはバートにそっくりね。将来はきっとバートに似て知的でカッコよくなるにちがいないわ」
私がこの世界に生まれてからずっとこの調子だ。
本人を前にそう褒めるのはやめてほしい。
見た目は赤ん坊だが、中身は100歳のお爺ちゃんなんだ。
この世界ではまだ生まれて一週間とはいえ、年下の若い女性たちに「可愛い」やら「将来は女性にモテる」など褒められても恥ずかしさしか無い。
「はあ、早くバート帰ってこないかしら」
それと今の話で出てきてるバートとは私の父親だ。
父親とはいえ、私の生まれた日にまだ一度しか見てないが。
細身で高身長の知的な男性ってイメージだったな。
「ダイヤ様、バート様も今が商売の勝負どきで忙しいのです。出産の際、時間をつくって戻って来てくれただけでも感謝すべきだと思います」
「それは分かってはいるのだけど、やはり初めての子供なのよ。2人でこの子の教育方針とか話したいし、それにバートもこの子を可愛がりたいじゃないかと思って」
「可愛がりたいのは分かりますが、教育方針ですか?それはさすがにはやすぎるのでは?」
「私とバートとの、子供なのよ、将来を見据えて教育の方針を考えるのに早すぎることはないわ」
私の母親ダイヤはなかなかの教育ママらしい。
「それと私とバートとの子供なだけあって魔法の才能もあるのよ。この商会を継がせてもいいけど魔術師として大成するのならば魔法の道に進ませてもいいかなって」
「ダイヤ様…さすがにもう少し成長してからでも遅くはないかと…」
「いや、そんなことはないわ。子供に立派に成長してもらいたいなら小さい頃からしっかりとした教育が必要なのよ」
「そうでしょうか…」
「そうよ!」
いや、さすがに早すぎると思う。
赤ん坊にどう教育しようとしているんだ。
だが、今の話にあったように私には魔法の才能があるらしい。
実はすでに魔力を感じることができ、魔力を体内で循環させる練習をしている。
魔法の才能があるとはいえ、赤ん坊では魔力が少なく少し魔力を動かすと魔力切れでねてしまうが。
だが前世で見た漫画やアニメでは小さい頃からの訓練で魔力量に大きな差がでる話が多かった。
実際この方法で合っているかわからないが、赤ん坊でやることが無いため魔力循環で魔力量を上げる事を今の目標とすることにした。