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黒猫ニャンゴの冒険 ~レア属性を引き当てたので、気ままな冒険者を目指します~  作者: 篠浦 知螺


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クィーン討伐

 ゴブリンクィーンが産み落とした卵は、通常のゴブリンの胴体ぐらいの大きさがある。

 二頭のゴブリンが抱えて運んで行った先は、ゴブリンクィーンが居た場所から程近い別のホールで、探知ビットで探ると大量の卵が置かれているようだ。


 卵一個にゴブリン一頭が寄り添い、暖め続けているらしい。

 ざっと探っただけだが、ここだけでも百個以上の卵があるようだ。


「勿論、卵も処分しないとね」


 Gは根こそぎ駆除しないといけないが、冒険者を巻き込む訳にもいかない。

 ゴブリンどもが静かに卵を温めているのだから、ここには冒険者は居ないと思うが、それでも念のために空属性魔法でスピーカーを作って呼び掛けた。


『あー、あー、誰か冒険者の方は居ますか? 居たら返事して下さい』

『グギャ? グギャギャギャ!』


 集音マイクを通して聞こえて来たのはゴブリンの鳴き声だけだったので、部屋の入口をシールドで封鎖して駆除作業に取り掛かる。


「粉砕……雷……粉砕……雷……粉砕、粉砕、粉砕……」


 卵は粉砕、ゴブリンは雷の魔法陣で倒し始めたけど、途中から面倒になり、まとめて粉砕してやった。

 途中から身の危険を感じたゴブリンどもが、卵を抱えて右往左往し始めたが、俺としては動いてくれた方が探知しやすいので助かった。


 俺が卵部屋を処理している間にも、新たな卵を抱えたゴブリンが現れたが、そいつは通路で粉砕してやった。

 部屋を封鎖していたシールドを解くと、すぐに通路の方が騒がしくなった。


 通路で粉砕したゴブリン、そしてホールの中に充満していた血の臭いが流れていったのだろう。

 通路に集まって来たゴブリンを空属性魔法のラバーリングで拘束し、ナイフで突っついて鳴き声を確認して討伐していく。


 巣の内部にいるゴブリンは、一頭でも多く倒して冒険者の負担を減らしたい。

 俺が卵部屋周辺でゴブリン討伐をしている間に、突入した冒険者たちも態勢を立て直したようだ。


『なんだか分からねぇが、ゴブリンどもが混乱してやがる。今のうちに、一気に片を付けるぞ! 突っ込めぇ!』

『うぉぉぉぉぉ!』


 一斉に突入した冒険者たちは、混乱するゴブリンどもの間に突っ込んで、滅茶苦茶に暴れ始めた。

 さっきは洞窟を崩して撃退したゴブリンどもだったが、その後、俺が数を減らすように遠隔で攻撃を行ったことで、冒険者たちへの注意が逸れていたようだ。


 突っ込んだ冒険者たちは、身体強化した肉体を駆使して高速で動き回り、目についたゴブリンを手当たり次第に切り裂いていく。

 ホールの中程まで突っ込まれて混乱するゴブリンを後続の冒険者が更に切り捨てる。


 ゴブリンの中には魔法を使うゴブリンメイジも交ざっていたが、冒険者の動きが速すぎて攻撃を当てられない。

 しかも外れた魔法が味方のゴブリンに命中し、混乱は更に広がっていく。


「いいね、いいね、いい感じじゃない?」


 乱闘が繰り広げられているホールには、更に別の冒険者パーティーが辿り着いて戦闘に加わっていく。

 この調子ならば押し切れそうだと思った時だった……。


『キィアァァァァァ……』


 突然、黒板を爪で引っ掻いたような、不快な叫び声が響き渡った。

 反射的に集音マイクを切ったのだが、それでも叫び声が聞こえて来るような気がする。


「クィーンの叫び声なのか……って、マジで洞窟の外まで聞こえてるのか?」


 集音マイクを切ったのに、不快な叫び声が聞こえているように感じたのは俺だけではなく、地上にいる冒険者たちも一斉に洞窟の方向へ視線を向けていた。

 洞窟の奥深くから外まで聞こえて来る叫び声は、ゴブリンクィーンが居るホールでは、どれほどの音圧なのだろう。


 先程まで大混乱に陥っていたゴブリンも、突入した冒険者さえも動きを止めていた。


「声だけで混乱を静めるなんて、流石にクィーンと呼ばれるだけのことはあるな……って、感心してる場合じゃないぞ」


 ゴブリンどもを混乱に陥れて、優位に戦いを進めていた冒険者たちだが、単純な人数ならば半分以下だろう。

 驚いて足を止めてしまったのは失敗だ。


『ぐぁぁ……しまった……』

『止まるな、動けぇ!』


 一部の足を止めてしまった冒険者が、冷静さを取り戻したゴブリンどもに追い詰められているようだ。

 さらに悪いことは続く。


「おいっ、森の方からゴブリンどもが来るぞ!」

「ヤバいぞ、凄い数だ!」

「まさか、さっきの叫び声なのか?」


 森に散らばっていたゴブリンどもが、一斉に巣穴を目指して駆け戻って来ているようで、上から見ると、森のあちこちに土埃が立っていた。

 特に、第三砦から続いている道は、駆け戻ってくるゴブリンどもに埋め尽くされて、深緑色の濁流のように見える。


 さっきの不快な叫び声は、身の危険を感じたゴブリンクィーンが仲間を呼び戻すためだったらしい。

 今でさえ、数では劣っている冒険者たちが、洞窟内部で戻ってきたゴブリンどもに挟み撃ちにされれば、いずれは体力の限界が来てしまうだろう。


「ここは任せます。俺は他の出入り口を塞いできます!」


 下にいる冒険者たちに声を掛け、俺は他の巣穴への出入口を空属性魔法のシールドで塞ぎに行く。


「マズい、もう戻って来てる。粉砕!」


 出入口の付近にいるゴブリン諸共に、粉砕の魔法陣を使って吹き飛ばして塞いだ。

 更に崖を崩して、完全に出入口を防いだ。


 大小合わせて七ヶ所ほどの出入口を塞ぎ急いで戻ると、既に冒険者達は防塁を放棄して洞窟に立て籠もってゴブリンどもの侵入を防いでいた。


「駄目だ、下がれ! 狭い場所まで下がって迎え撃て!」


 既に、洞窟の前にはゴブリンどもの行列が出来ていた。


「粉砕! 粉砕! 粉砕! シールド!」


 洞窟前のゴブリンを吹き飛ばし、出入口をシールドで塞いだ。

 これで洞窟に逃げ込んだ冒険者たちは大丈夫だろう。


「さぁ、まとめて片付けてやろうかね……」


 吹き飛ばしても、すぐに集まってきたゴブリンどもの頭上に、特大の火球を降らせてやる。

 直径三十メートルほどの火球が真下に向かって撃ち出され、地面にぶつかると洪水のように広がっていった。


「グギャァァァァ……」


 断末魔の叫び声をあげながら、火達磨になったゴブリンがバタバタと 倒れていく。

 火の勢いに恐れをなしたのか、クィーンの声がやんだからか、押し寄せてきたゴブリン達が足を止めて後退りした。


「他の入口にも落としてくるか」


 守っている入口への圧力が緩んだので、塞いだ入口を確認しにいくと、ゴブリンどもが崩した土砂を掘り返していた。

 周囲に他の冒険者が居ないのを確認して、そこにも特大の火球を落す。

「キィアァァァァァ……」


 呼んでも戻って来ない手下に痺れを切らせたのか、再びゴブリンクィーンの叫び声が響いて来た。

 その声を聞いて森に居るゴブリンどもが動き始め。自ら火球の炎へと突っ込んで来た。


 燃え盛る炎に対して、何か策でもあるのかと思いきや、すぐに火達磨になってバッタリと倒れ込む。


「うわぁ、クィーンの声にはゴブリンを操る力があるのか?」


 ゴブリンクィーンは救援を求めて鳴いたのだろうが、結果としては手下のゴブリンに自殺を強要した形だ。

 声が聞こえている間、俺は上空をグルグルと飛び回り、火の勢いが落ちた所には新たなる火球を落として回った。


「声が止んだ……?」


 気が付くとゴブリンクィーンの声が止み、炎に飛び込むゴブリンも居なくなった。

 ゴブリンクィーンが居たホールに集音マイクを作ると、冒険者たちの声が響いてきた。


『もう一押しだ! 前衛、離れろ! 今だ、魔法を叩き込め!』

『食らえぇぇぇ!』

『ギェェェェ……』



 集音マイクを動かして探ると、戦いが行われているのはホールの一番奥と壁際だけのようだ。

 壁際にいる冒険者は、脇道から現れるゴブリンに対処しているようだ。


 もう一押しいう言葉は誇張ではなかったようで、聞き耳を立てているとゴブリンの悲鳴がだんだん小さくなっていった。

 そして……。


『よっしゃぁ! 倒したぞぉ! ゴブリンクィーンを倒したぞぉぉぉ!』

『うおぉぉぉぉぉ!』


 ホールに冒険者達の歓声が響き渡った。

 どうやら、やっとゴブリン騒動も終わりみたいだ。


 洞窟の入口を封鎖していたシールドを解除して、木に燃え移った火を消して回る。


「ゴブリンクィーンは討伐されたみたいだよ。そこらで焼け死んでるゴブリンの魔石は好きに取り出しちゃっていいからね!」


 洞窟から出てきた冒険者に声を掛けるとこちらでも歓声が上がり、魔石の取り出し作業が始まった。

 さて、俺も他の出入口を回って、魔石を集めてくるかな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主砲ニャンゴが最後まで支援に徹しボス戦に直接関わらない流れは斬新でとても面白かった! 支援戦自体もリアルタイムシミュレーションゲームのように忙しくあちらこちらと飛び回るあたりも臨場感がスゲ…
[一言] 5巻からは背表紙が変わりました。 赤い帯とニャンゴのイラストが目印です!  道着を着て赤い帯をしているニャンゴが目印かと思ってしまった
[一言] なかなかにえぐかった
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