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黒猫ニャンゴの冒険 ~レア属性を引き当てたので、気ままな冒険者を目指します~  作者: 篠浦 知螺


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ガチで飛ぶ

 漂流船の立像から見つけたジェットの魔法陣の情報を学院に伝えに行って、研究室の様子を見ているうちに考えた。


「やっぱり、ちゃんと飛ぼう!」


 俺が空を飛んでいる時は、空属性魔法で作ったボードに乗って浮いているか、レールの上やチューブの中を高速で滑っている。

 ボードやレール、チューブは見えないから、他人から見れば空を飛んでいるように見えるが、実際には浮いている、もしくは滑っているだけだ。


 ジェットの魔法陣の検証を続けて、その性能をコントロールできるようになったとしても、今の飛行技術ではその性能を十全に発揮させられない。

 旋回、上昇、降下、自由自在に姿勢をコントロールして、本当の意味で飛ぶ技術が必要だ。


 そこで、前世の知識を思い出して、いくつかの案を考えてみた。

 一つ目は、推進機を両手に付けてコントロールしながら飛ぶ方法。


 二つ目は、推進機を背負ってウイングスーツのように全身で風を制御して飛ぶ方法。

 三つ目は、機体まで空属性魔法で作って飛ぶ方法だ。


 一つ目の方法は一番作るのが簡単そうだが、飛ぶのにコツが必要だし、長時間の飛行には向いてなさそうだ。

 二つ目の方法は、一つ目の方法よりも長時間の飛行が出来そうだが、ジェットの本領が発揮されるような速度は難しそうだ。


 ただ、簡単に飛ぶ方法としては捨てがたい。

 ジェットの魔法陣を使うなら、やはり機体が必要だろう。


 ということで、ウイングスーツと機体の両方を試してみることにした。

 まずは、ウイングスーツからだが、単純に手足の間に膜を張るだけでは駄目らしい。


 前世の頃にネットで調べたのだが、ウイングスーツの膜は、飛行すると空気が溜まって張りが出来る構造になっているそうだ。

 ただし、実物を見たことが無いので想像で作ってみたのだが、全然上手くいかない。


「にゃぁぁぁぁ、落ちるぅぅぅ……」


 旧王都の上空二千メートルぐらいのところから、試作品のウイングスーツを身に付けて飛んでみたのだが、張りが保てなかったり、破裂したりして落下を繰り返した。

 最初に空属性魔法でパラシュートを作る練習をしていなかったら、地面まで落下してお陀仏だったかもしれない。


「うにゅぅ……上手くいかにゃい。そうだ!」


 十回以上失敗を繰り返した後、そもそも空気を固める空属性魔法なのだから、適度な硬さと厚さでスーツを作ってしまえば良いのだと気付いた。

 おかげで吸入口とか気室の形とか考えなくても良くなったので、作るのもめちゃくちゃ楽になった。


「あい・きゃん・ふら~いぃぃぃぃ!」


 壊れなくなったウイングスーツを使って、旋回、減速、加速などの体の動きを練習したが、実際には飛んでいるのではなく落ちているだけだ。

 慣れてくると急旋回もできるようになったが、急上昇しようとすると失速してしまう。


 その上、猫人の体が軽いせいか、思ったほどの速度も出ない。

 速度を上げようとすると、落下の角度を深くする必要があるので、飛行できる距離が短くなってしまう。


 そこで作ったのが……。


「にゃにゃにゃにゃっにゃにゃ~、風の推進機ぃ!」


 まだジェットの魔法陣は扱えないので、オフロードバイクで使っている風の推進機を使ってみた。

 背中に背負うには少々大きいのだが、空気を固めて作っているので重量は軽い。


 ウイングスーツの背中に取り付けて、風の魔法陣を発動させると上昇の機動が可能になった。

 飛行用に大きさや圧縮率、厚みなどを変えて、最適な形を探る。


 出力に特化すると魔法陣の直径が大きくなり、旋回がやりにくくなってしまった。

 そこで、オフロードバイク用よりも細くして、お腹と背中に二本ずつ、計四本の風の推進機を装着する形に落ち着いた。


 空属性魔法で作ったヘルメットを被っているが、体に感じる風圧はオフロードバイクの比ではなく、相当な速度が出ている。

 最高速が出ている時に、変な動きをしたら手足が千切れるのではないかと心配になるほどだ。


 旧王都と新王都の間でテスト飛行を繰り返すと、これまでの三分の一程度の時間で到着できるようになった。

 日帰りどころか、半日でも楽に往復して用事を済ませられるほどの速度だ。


 出発する時は、体に重量軽減の魔法陣を貼り付けて空に向かって駆け上がり、途中でウイングスーツと風の推進機を発動させる。

 安全な高度まで上昇したら水平飛行に移行し、目的地に到着したら真上に向かって旋回して推進機を切り、落下が始まる直前にボードに乗り移り、後は滑って地上まで降りる感じだ。


 この飛行速度ならば、イブーロやアツーカ村にも日帰りで行ってこられるだろう。

 ただし、ウイングスーツでは人や荷物を運べない。


「うーん……これじゃあ兄貴を連れて里帰りできないな」


 ウイングスーツの運用に目途が立ったところで、機体の製作にも着手した。

 最初は推進機無しのグライダーを作ってみたのだが、これが想像以上に激ムズだ。


 ウイングスーツは自分の体でバランスを取れば良いが、機体は正確に作らないと真っ直ぐ飛んでくれない。

 一瞬で作った機体に乗り込み、ジェットの魔法陣で空を飛ぶ……なんて状況は夢のまた夢だ。


 ウイングスーツの時と同様に上空二千メートルぐらいまで上がって、そこで機体を作って傾斜を付けた助走路を走らせてテイクオフを試みたのだが……。

 空に浮かぶどころか、助走の途中でバランスを崩して墜落してしまった。

 

 その後、何度やってもグライダーはまともに飛んでくれない。

 毎年、琵琶湖で開催されている人力飛行機のコンテストをテレビで見て笑っていたが、実際に作ってみると半端じゃなく難しい。


 そもそも、前世でも模型飛行機すら作った経験も無しに、実物大のグライダーを作ろうなんて考えが甘すぎるのだろう。

 ちゃんと揚力が得られる翼の構造、それも左右対称に作らなければならない。


 キャビンの位置と翼の位置のバランス、尾翼の大きさ、機体の長さなど、考えることは山ほどある。

 フラップやラダーの大きさや動かし方などを考える前に、まともに浮かないのだ。


 ダンジョンで発見した百科事典に載っていた機体を真似して作れば浮くかもしれないが、正確に再現できる自信が無い。

 左右の翼の厚み、形状、長さ、取り付け角度などが狂っていると、たちまち機体はバランスを失って墜落するのだ。


「そうだ! 昔の複葉機みたいに一枚の翼の真ん中にキャビンを吊るせば……って、そんな形にジェットは載せられないか……」


 イメージとしてはジェット戦闘機のような形で、最終形態としては漂流船の立像みたいに変形できれば……なんて考えていたのだが、生きているうちに辿り着ける自信が無くなった。

 変形は無理だとしても、垂直離着陸ぐらいは実現したい。


「うーん……ちゃんとした図面を引いて、模型を作るところから始めないと駄目そうだよなぁ……」


 クブルッチ教授の研究室を訪ねて、翼に関する資料を見せてもらった方が良いかもしれない。

 まずは小さな模型で飛ぶのを確認して、徐々にサイズアップしていけば、そのうち乗れるサイズも作れるだろう。


 なんといっても、作って壊してが楽に出来るのが空属性魔法の長所なのだ。

 そうだ、猫人だからって冒険者になる夢は諦めなかった。


 空っぽの属性と言われていた空属性魔法だったけど、手にした瞬間にドキドキが止まらなかった。

 ジェットの魔法陣を手に入れたのだ、ならば音速の壁を超える夢にチャレンジしないなんてありえない。


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― 新着の感想 ―
ワクワク考えてるニャンゴさん、可愛いな♪
風の谷のメーベなら飛びそうじゃない?
[一言] 人数と魔法陣の内容的をカンガエタラジェット戦闘機みたいな形が一番なのかな?
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