表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫ニャンゴの冒険 ~レア属性を引き当てたので、気ままな冒険者を目指します~  作者: 篠浦 知螺


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

453/783

危惧

 ドス……ドス……ドス、ドス、ドス……アースドラゴンの重たい足音が少しずつ遠ざかっていく。


「エルメール卿、離れていきました」

「南側に明かりの魔法陣を灯して誘ってみたんですけど、上手くいったみたいです」


 外に明かりが洩れないように、壁際の高いところに明かりの魔法陣を弱く灯すと、スロープの封鎖作業に参加した冒険者達は、ふーっと一斉に大きく息を吐いた。

 だが、アースドラゴンという危機は一旦去ったが、空属性魔法で作った壁の向こうにはヨロイムカデの大群がいる。


「ヘリングさん、とりあえず上の階にも、ここと同様の安全地帯を作りますから、そこまで移動しましょう」

「エルメール卿、魔力の残りは大丈夫ですか?」

「魔力回復の魔法陣を使っていますから、少なくとも今日中は魔力切れを起こす心配は無いです」


 この安全地帯を築く時に、魔力回復の魔法陣を組み込んだアーマーを装着しているから、魔力切れを起こす心配は無い。

 ただ、ヨロイムカデの大群が何階上までいるのかによっては、途中で魔力切れを起こさないためにも脱出を急ぐ必要がありそうだ。


「ヘリングさん、ちょっと上の様子を確かめて来ます。レイラ、通信機を残していくから、アースドラゴンが戻って来たら呼び掛けて」

「分かったわ、気をつけてね」


 レイラは俺をギュっと抱きしめた後で、チュっと頬にキスをした。

 冒険者達が羨ましそうに見てるけど、イブーロにいた頃のような怨嗟の視線ではないだけマシだろう。


 上の階までは、空属性魔法で作った球体のシールドに入った状態で移動した。

 呼吸が出来るように通気口は開いているが、ほぼ全周をシールドで囲った状態だから、フキヤグモの毒針なども怖くない。


 階段の上を飛びながら移動し、踊り場で折り返したところで明かりの魔法陣を発動させた。

 階段にも、上の階にもヨロイムカデがいたが、下の階に比べると密集度は低い。


 更に階段を上って、もう一つ上の階へと移動すると、ヨロイムカデの数は疎らになった。

 フロアへの入口を封鎖して階段を上がれば、発掘作業が行われている階層まで戻れそうだ。


 フロアの間に空属性魔法で壁を作り、階段にいるヨロイムカデをミニフレイムランスで討伐しながら最下層まで降りた。

 階段と安全地帯の間にいるヨロイムカデを新たな壁で押しのける。


「ヘリングさん、とりあえず二階上まで階段を確保しました。ヨロイムカデが群れているのは一つ上の階までのようですので、ここの階段で通り抜けてしまいましょう」

「分かりました。よし、みんな移動しよう」


 作業に参加した全員が階段まで移動した所で、フロアとの間に壁を作って安全地帯の壁を解除する。

 押しのけられていたヨロイムカデが、ウゾウゾと戻っていく様子は鳥肌が立つほど気持ち悪い。


「エルメール卿、また明かりをお願いできますか?」

「構いませんよ」

「よし、行きと同じ隊列に戻そう。全員、元の階層に戻るまで気を抜くな」

「おぅ!」


 一つ上の階を通り過ぎたところで、ヘリングが隊列を行きと同じ並びに戻した。

 気を抜くなとは言われたが、ようやくイレギュラーな状況から抜け出して、全員がほっとした時だった。


「グォォォォォ……」


 アースドラゴンの咆哮と共に、ズーン……と地響きのような振動が伝わってきた。

 階段の壁にビシビシっとヒビが入り、上からパラパラと土埃が降ってくる。


「何だ、何が起こってるんだ」

「やべぇぞ、崩れるんじゃないか」


 どこからか、ガラガラと何かが崩れる音が響いてきて、降ってくる欠片が大きくなった。


「この階にはヨロイムカデがいるから駄目だ。急いでこの上の階まで上がろう」


 全員で急いで階段を駆け上がり、最下層から二階上のフロアに向かう。

 前衛の二人がフロアに出た所で、警告を飛ばした。


「少ないけどヨロイムカデはいるから気を付けて!」


 前衛の二人は長剣を振り下ろし、ヨロイムカデの頭を叩き割って倒していった。

 俺もミニフレイムランスで、目についたヨロイムカデの頭を焼き切った。


 階段付近のヨロイムカデを排除し終えた頃、遠くから聞こえていた何かが崩れる音やアースドラゴンの咆哮も止んでいた。


「ヘリングさんよぉ、アースドラゴンが登って来ようとしてんじゃねぇのか?」


 冒険者の一人が話し掛けると、ヘリングの表情を曇らせた。


「たぶん……その可能性は高いな。餌を求めて、ヨロイムカデのいる所を崩しているのだろう」

「それじゃあ、スロープの登り口を塞いだ意味が無くなっちまうぜ」

「急いでスロープ全体を埋めるか、ヨロイムカデを最下層まで押し返すしか無いだろうな」


 ヨロイムカデを食糧としているならば、アースドラゴンは上へ上へと移動してくる可能性が高い。


「急いで居住区まで戻ろう。とにかく西側のスロープを埋めないと駄目だ」


 今上がってきた階段は、崩れる恐れがあるので、この階層を北側に向かって移動し、別の階段を使って上へ戻ることにした。

 移動中、疑問に思っていた事をヘリングにぶつけてみた。


「なんで地中で暮しているアースドラゴンが光に反応するんですかね?」

「エルメール卿、アースドラゴンはずっと地中で暮している訳じゃないですよ」

「えっ、地上に出て来ることもあるんですか?」

「ギルドの文献には、洞穴のような場所を好んで巣にして、狩りは地上でも行うと書いてありました」

「ってことは、横穴に迷い込んで、そのままひたすら進んでダンジョンにぶつかったって事なんですかね」

「その可能性が高いですね。つまり、横穴はどこかで地上に通じているということです」

「おぉぉ……」


 俺とヘリングの話を聞いて、冒険者達からどよめきが起こった。

 ダンジョンから、どの程度の距離があるのか分からないが、アースドラゴンが入り込んだ辺りには、別の遺跡が存在している可能性がある。


 それに、アースドラゴンが通り抜けて来たならば、他の魔物は押し出されて、以前よりも攻略しやすい可能性もある。

 ただし、アースドラゴンが横穴に戻る可能性もあるから、下手に突っ込んでいく訳にもいかない。


「エルメール卿は、他にも遺跡があると思いますか?」

「勿論です。このダンジョンは人工の島で、新区画の部分が陸地です。その先には、もっと他の街が埋まっているはずですし、文明を支えた魔力の供給施設なども存在していたはずです。これまでに発見された百科事典などを解析して、当時の文字を解読できるようになれば、他の街の位置なども分かってくるはずです」


 ヘリングに百科事典などの話をしていて、ふっと思い出したことがある。

 それは、スマホの中の地図データだ。


 落盤事故が起こった後で、街並みの様子が分かるように地図データを提供したが、その後、地図を良く確認していなかった。

 あの地図データを見れば、横穴の先にある次の遺跡……つまり、次の駅のある場所も分かるはずだ。


 それだけでなく、航空写真や衛星写真のレイヤーも見られるかもしれない。

 いずれにしても、それらを確かめるのはベースキャンプまで戻ってからだ。


 フロアを北に向かうほど、上の階層に向かうほどヨロイムカデの数は減り、どうにか発掘が進められている階層まで戻って来られた。

 居住区まで戻ったところで、改めてヘリングから礼を言われた。


「エルメール卿、お疲れ様でした。おかげ様で、なんとか生きて戻って来られました」

「いえいえ、僕とレイラだけ生き残る訳にもいきませんし、当然のことをしただけですよ」

「いいえ、エルメール卿がいらっしゃらなかったら、アースドラゴンをあんな風に誘導できませんでしたよ」

「とにかく、全員無事で戻って来られて良かったです」

「あの状況で、一人の怪我人も出さずに済んだのは本当に幸運でした」


 ヘリングは、今日の作業の報告を行った後、すぐさま西側のスロープを完全に埋める作業に取り掛かるそうだ。

 それと同時に、ヨロイムカデの大群をどうやれば排除できるか検討するらしい。


 そもそも、アースドラゴンに追われて最下層から上って来たのだから、それを押し返すのは簡単ではないだろう。

 ただし、このまま放置すれば、アースドラゴンによってダンジョンを崩壊させられてしまうかもしれない。


 ギルドがどのような決定を下すのか分からないが、俺達に協力できる事には積極的に力を貸していこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
[一言] ヨロイムカデの死骸を地下の連絡通路に捨てられたら良いんだけどな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ