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黒猫ニャンゴの冒険 ~レア属性を引き当てたので、気ままな冒険者を目指します~  作者: 篠浦 知螺


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魔力充填

 新区画や居住区に現れたネズミの大群は一応追い出せたようだが、全滅させられた訳ではないようだ。

 それどころか、食べ物があると覚えたらしく、どこからともなく忍び寄って来て盗み食いをはたらくようになったらしい。


 ギルドが設置した居住区は侵入経路を塞ぐなどの対策を行ったので、大群で現れた後は大きな被害は出さずに済んでいるらしい。

 一番ネズミの被害に頭を悩ませているのは、通路に出店を設置してる人達だ。


 ダンジョンの中だから雨が降る心配は要らないので、出店といっても本当に簡単な造りで、料理場との仕切りすら無い。

 生の食材は魔道具を使った冷蔵庫に入れているが、野菜や乾物などはそのまま積んだ状態らしい。


 それでは、ネズミ達に食べて下さいと言っているようなものだ。

 そうした食材を木箱に仕舞っておくようにしても、油断すると木箱を齧られて盗み食いされるそうだ。


 食害だけでなく、ネズミの糞尿によって衛生環境が悪化している。

 もともと、怪しげなものを出す店もあったようだが、ネズミが出没するようになったせいで、出店全体が怪しくなっている。


 ちゃんと火を通したものならば、まだ安心できるのだろうが、ダンジョン内部では薪や炭を使った煮炊きは禁止されていて、魔道具のコンロを使うしかない。

 魔道具のコンロでは魔石や自分の魔力を消費するので、コストを考えると極力火の使用を抑える必要がある。


 そのため、加熱が不十分であったり、汚染された乾物などをそのまま提供することになり、腹痛を訴える冒険者が増えて出店の売り上げにも翳りが出始めているらしい。

 今のところ、コレラとか赤痢みたいな疫病は発生していないようだが、密閉に近い環境なので一度流行すれば一気に感染が広がる恐れがある。


 俺達のベースキャンプでは、食材はガドと兄貴が作った頑丈な倉庫で保管するようにした。

 食事も時間を決めて一斉に済ませて、ゴミもまとめて処分するようにした。


 今のところ体調を崩した者はいないが、今後も衛生環境の維持は徹底していくつもりだ。

 うみゃうみゃタイムの安心をネズミごときに揺るがされてたまるものか。


 ディスクの再生環境は、タブレットを発掘してきたので大幅に改善……とまではいかない。

 確かにスマホよりも画面は大きくなったが、それでもタブレットなので10インチ程度の大きさしかない。


 大画面で視聴するには、新品の液晶モニターに魔導線を通じた魔力の供給体制を構築するしかなさそうだ。

 ただ、タブレットや外部ディスクドライブへの魔力の充填は出来るようになった。


 これまで、魔力の充填は俺が空属性魔法で作った魔力回復の魔法陣を使って行ってきたが、これでは俺以外の人は自由にディスクの視聴ができない。

 そこで、建物二の売り場に残されていた魔力充填用の機器を集めて、比較的状態の良いものを選んで使えないか試してみたのだ。


 検証作業は、レンボルト先生が主体となって行われた。

 雷の魔法陣の検証の時に変態っぷりを見せつけられている俺としては、ちょっと……いや、かなり不安ではあったけれど、どうやら大丈夫だったようだ。


 検証の結果、被覆を剥いだ魔導線に魔力を流し込むと、機器への魔力の充填が可能になるらしい。

 ただし、かなりの量の魔力を必要とするようだ。


「レンボルト先生、かなりの量って、どのぐらいなんですか?」

「そうだね……例えば、このディスク一枚を再生できる程度の魔力を貯めるのに、水の魔道具で例えると、湯舟三杯から四杯ぐらいの水を出す魔力が必要みたいだ」

「それって、結構な量ですよね」

「そうだね。ゴブリン程度の魔石だったら、二、三回程度しか充填できないだろうね」


 前世の日本の記憶から推測すると、外部ディスクドライブやタブレットなどは極端に大きな容量ではないはずだ。

 つまり、この時代の世界には、膨大な魔力を供給するインフラが整っていたのだろう。


 猫人ニャンゴとして転生してからの経験からは、そんなに膨大な魔力は危険ではないのかと感じてしまうが、前世の日本でも膨大な電力は普通に供給されていた。

 そう考えると、魔力はあくまでもエネルギーであり、どう使うかは人間次第だったのだろう。


 ディスクの再生体制、魔力の充填方法が一応ではあるが確立したので、機材やディスクと一緒にレンボルト先生が地上に戻ることになった。

 旧王都の学院で、ディスクの内容を研究するための環境構築にあたるらしい。


 レンボルト先生には、タブレットのセットアップや外部ディスクとの接続設定などについては伝えてある。

 それ以外にも、大画面の液晶モニターや据え置き型のディスクドライブ、スピーカーなどの接続の仕方についても話しておいた。


 当然、どうして俺がそうした知識を持っているのか疑問を持たれたが、そこは冒険者の秘密で押し通しておいた。

 ただの猫人の冒険者だったら、もっと追及されていたとは思うが、そこは名誉騎士の地位が役に立つのですよ。


「エルメール卿、何か問題に突き当りましたらアドバイスをお願いすると思います。その時には、よろしくお願いいたします」

「はい、イブーロからのよしみですから、協力は惜しみませんよ」

「ありがとうございます」

「あぁ、でも王族や大公様からは呼び出しが掛からないように配慮してもらえると嬉しいです」

「了解しました。そちらの対応は、極力学院側で行うようにいたします」

「はい、よろしくお願いします」


 ディスク関係の一件が落ち着いた後、ケスリング教授と共に建物二の先行調査に戻った。

 五階のパソコン売り場の上、六階がゲームやオモチャなどの売り場だった。


 ディスクを再生できる携帯ゲーム機を探したのだが、残念ながら携帯のゲーム機は全て専用のカートリッジを使うタイプだった。

 ディスクを使うゲーム機は全て据え置きタイプで、モニターなどに接続しなければ視聴できなかった。


 目的にあったゲーム機は無かったが、別の発見があった。

 それは、オモチャや魔道具に広く使われている蓄魔器だ。


「こっちが使い捨て……こっちは充填できるタイプなのか?」

「魔力の器を使い捨てにしていたのですか?」


 使い捨てと聞いてケスリング教授が驚いていたが、今でも魔石は使い捨てだと話すと納得していた。


「そうなると、この時代の人々は人工の魔石を安価に作れていた訳ですね?」

「そうなりますね。これらを調べれば、魔力を蓄えておく仕組みが分かるかもしれませんよ」

「なるほど……これも今後の研究課題ですね」


 使い捨てのタイプは、どれも劣化していて使えそうもなかったが、充填タイプは固定化の魔法陣に守られた新品が少し残されていた。

 ただし、充填器が魔導線から魔力の供給を受けるタイプだったので、俺では上手く充填が出来なかった。


 魔力回復の魔法陣を使って魔力の供給を受けるタイプを探したのだが、残念ながら見つからなかった。

 今更オモチャで遊びたいとは思わないが、パソコンやカメラなど、電池に魔力を充填できれば使えるようになる物が沢山ある。


 火を着けるとか、水を出すとか、明かりを点けるとかならば、自分で魔法陣を作った方が速いし楽だが、蓄魔器に魔力を貯められれば高度な機能が使えるようになる。


「うーん……何か方法は無いかなぁ……」


 七階は、時計やブランド品、アウトドア用品の売り場だった。

 ここでも汎用の蓄魔器を使うランタンやコンロなどが展示されていたが、充填機は有線タイプしか残されていなかった。


「うーん……ここにも無いか」

「いっそニャンゴが作っちゃったら?」

「えっ? 作るって?」


 最初、レイラが何を言っているのか理解できなかった。


「ニャンゴは空気を圧縮した塊が作れるのよね?」

「うん、魔法陣の形にすることで刻印魔法が発動するんだよ」

「それを、この蓄魔器の形にしてみたら?」

「にゃっ、そうか、その手があったか」


 早速、アウトドア用品の売り場を物色して、固定化の魔法陣で守られていた懐中電灯の新品を見つけた。

 確かめてみると、汎用の蓄魔器を使うようになっていて、電池とは違い魔導線の接触部位は一つしか無かった。


 空気を蓄魔器の形に固めて、懐中電灯が点くか検証していく。

 ただ空気を固めただけでは無反応だったが、徐々に圧縮率を高めて検証を続けた。


「にゃっ! 点いた!」


 最初はボンヤリだったが、圧縮率を上げていくと懐中電灯は煌々とした光を放った。


「かなり明るいわね」

「うん、でも俺の場合は空属性魔法で明かりの魔法陣を作っちゃった方が楽かな」

「あら残念、あんまり意味が無かったのね」

「いや、そうでもないよ。これで蓄魔器を使った魔道具ならば、使えるようになるかもしれないからね」


 これで高画質なカメラなども使える可能性が高まった。

 セルージョだったら、早速ナンパに使う算段を始めそうだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] この過去の文明には発電所ならぬ発魔力所もあったかもしれませんね。 若しくは電力を魔力に変換できる装置とか。
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