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黒猫ニャンゴの冒険 ~レア属性を引き当てたので、気ままな冒険者を目指します~  作者: 篠浦 知螺


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発見

 二度目の休憩の後、発掘作業を再開して暫くすると路面の段差が見つかった。

 段差の高さは十センチほどで、赤く色が塗られている。


「何かの装飾みたいじゃな」

「馬車と人とを分けていたのかもしれないな」


 ガドとライオスが眺めている段差は、俺には駐車禁止を知らせる色のようにも見える。

 それと、たぶん馬車は使われておらず、全て魔導車だったと思う。


「やはり、こっちは人が歩くためだろう、モザイクになっているな」


 ライオスが掘り出した歩道の部分を見たら、背中の毛がゾゾっと逆立った。

 それは、前世の東京で良く目にしていたタイル状の歩道に見えたのだ。


 道路用のタイルの多くは、可燃ごみの焼却灰をリサイクルして作られていると聞いた事があった。

 この時代の文明でも、どこかにゴミの焼却施設があって、そこで出た灰を活用して作られたものなのかもしれない。


「おっ、なんだ……ここは土みたいだぞ」


 ライオスが更に掘り進めていくと、タイル状の路面が切れて土の路面となった。


「なんだ……空洞があるぞ。ガド、方向が合ってるか探ってくれ」

「了解じゃ」


 路面が土になり、その先に直径四十センチほどの縦穴が上に向かって空いている。

 たぶん、植え込みがあって、街路樹が立っていたのだろう。


 縦穴は、朽ちた街路樹の跡のような気がする。


「大丈夫じゃ、方向に誤りはない。もう少しで建物に突き当たるはずじゃ」

「よし、続けるぞ」


 この辺りが観光地だったとすると、歩道は広く作られていただろうし、街路樹なども植えられていたはずだ。

 土の路面から再びタイル状の路面に変わり、またライオスが掘り進めるペースが上がった気がする。


 いつも冷静で落ち着いているライオスだが、やはり気持ちが逸っているのだろう。

 すでに休憩を入れる距離を過ぎているけれど、手を止めようとしない。


 ダンジョンで大きな発見をした者は、ギルドの記録に名を残す。

 ダンジョン自体を発見した者、七十階層の底に辿り着いた者、未知の横穴を発見した者や、魔導車の基となる魔道具を発見した者などは名前を残している。


 新しい発見をして記録に名前を残すのは、ダンジョンに関わる冒険者として一種のステータスだ。

 俺達チャリオットは、ダンジョンが海上都市であった事を解き明かし、対岸の存在を発見したから既に名前を残している。


 名前を残したから虚栄心は満たしてはいるのだが、やはりダンジョンに潜るなら金になるお宝を発見したいと思うのが冒険者というものだ。

 特にライオスは、やっとダンジョンに潜りたいという念願が叶ったから、なおさら何かを発見したいという思いが強いのだろう。


 それでも、ダンジョンは逃げたりしないのだから、そろそろ休ませた方が良いんじゃないかとガドと目配せをした時だった。


「出た、空洞だ! ニャンゴ、照らしてくれ!」


 扉や壁が壊れているのだろうか、土が建物の中まで斜めに入り込んでいるようで、ライオスがザクザクと土を崩すと内部の空洞に出た。


「これは……何かの店なのか?」


 空属性魔法で明かりの魔道具を作って照らしていくと、そこは吹き抜けになっている店の入口のように見えた。

 敷地の角には二階の天井までの太い柱が立っていて、奥には斜めに二階へと上がるエスカレーターがある。


 壁面はガラス張りだったようで、ひしゃげたフレームが二階の天井からぶら下がっていた。


「ライオス、とりあえず入り口を広げたらどうじゃ」

「そ、そうだな」


 ガドの声を掛けられるまで、ライオスは魂を奪われたかのように建物の内部を見回していた。

 ライオスとガドが入り口を通路と同じ幅まで広げたところで、一旦作業を中断して休憩を取る事にした。


 ダンジョンの入口まで戻ると、モッゾが興奮気味に駆け寄ってきた。


「建物があったのですか?」

「あぁ、あったぞ。かなり大きな建物みたいだ」

「出土品も期待できますかね?」

「まだ手つかずの状態だから、期待できるんじゃないか」

「おぉぉぉ……これでまたダンジョンが栄えますよ」


 旧王都のギルドの職員とすれば、ダンジョンからお宝が出るか出ないかは大問題だ。

 このところ目ぼしい品物が出なくなり、旧王都から他の街へと移籍する冒険者も増えていたところだから尚更だろう。


「ダンジョンが栄えるのは良いとして、俺達は余程気を引き締めないとお宝を横取りされちまうぜ」

「そう、チャリオットの権利の確保が問題……」


 興奮が抑えきれないモッゾとは対象的に、セルージョとシューレは冷静だ。


「俺らも覗いていないから何とも言えないが、今回掘り当てた建物に関してはチャリオットが権利を主張しても良いんじゃねぇのか? モッゾ、どういう扱いになるんだ?」

「そうですね、これまでのダンジョン探索とは異なる状況ですね。とりあえず対岸までの通路の拡張工事が終わるまでは、他のパーティーには新しい区画への立ち入りを許可しません。チャリオットの皆さんは、その間に建物の全体像を把握してもらえませんか?」

「全体像ってのは? 何階建てで、広さがどの程度とかか?」

「そうです。広さや出土品の量にもよりますが、恐らくその建物の権利は認められると思います。それに、他にも建物は埋まっているんですよね?」

「どうなんだ、ガド?」

「ざっと探っただけじゃが、通りの反対側にも建物がいくつも建っておるようじゃぞ」


 ガドの見立てでは、対岸の通りを挟んで両側に建物が並んでいるようだ。

 一棟の規模は俺達が掘り当てた方が大きいようだが、町全体が埋まっていると考えるならば、建物を奪い合うよりも別の建物を掘り当てて権利を主張する方が割が良い気がする。


「そんじゃあ、さっさと建物の中を確認して、目ぼしい物が無かったら次を掘った方が良いんじゃねぇのか?」

「そいつは、建物の中を確認してみてだが、内部に危険が潜んでいない保証は無いぞ」


 セルージョの提案ももっともだが、一息入れたことでライオスも冷静さを取り戻したようだ。

 長期間に渡って埋まったままだった建物だから、何も潜んでいないとは思うが、おそらくダンジョンとは下水管などで繋がっているはずだ。


 フキヤグモやヨロイムカデなどが、潜んでいないとは限らない。


「探索は、どうやってやる?」

「そうだな、こっちの入口も守りを固めておく必要があるから、シューレとガドが残ってくれ。建物の入り口は、俺が確保するから、フォークスは周辺の土を片付ける作業をしてくれ。ニャンゴとレイラ、ミリアムとセルージョ、二組で建物内部の様子を確認してもらう。目的は建物の構造の把握で、お宝探しは後回しだ」


 探知の範囲が広いシューレは引き続きダンジョン側の入口周辺を警戒し、発掘作業が一段落したガドが守りを固めるために残る。

 建物内部は、探知魔法が使える俺とミリアムが、それぞれレイラ、セルージョとコンビを組んで探索する構えだ。


「あのぉ、すみません。私にも一目見させてもらえませんかね?」

「私も見てみたい……」


 休憩を終えて、さぁ動き出そうとした時に、モッゾが我慢しきれないといった様子で訊ねてくると、ずっと入口で警戒を続けていたシューレも手を挙げた。


「少しの間なら、ワシ一人でも構わんぞ」


 俺も残っていようかと訊ねたが、明かりが足りないと言われてしまった。

 確かに、広い吹き抜けの空間なので、みんなが手持ちにしている明かりの魔道具だけでは全体を照らしきれない。


 そして、実際に建物の入り口を目にすると、モッゾもシューレも目を輝かせていた。


「これは……凄いですねぇ」

「ふふっ、お宝の予感……」


 床も壁も、土埃で覆われてしまっているが、保存状態はダンジョン内部よりも良さそうだし、高い技術力で作られているのが見て取れる。

 しげしげとホールの様子を見ていたモッゾは、表情を引き締めてライオスと向かい合った。


「ライオスさん、申し訳ありませんが出土品の搬出は待っていただけませんか?」

「我々の権利をギルドが保証してくれるなら構わないが」

「そこは、お約束させていただきます」


 ダンジョンが見つかった当初、珍しい出土品がたくさん出たそうだが、ギルドの管理も行き届いておらず、価値も良く分かっていなかったので、多くの物が失われたそうだ。

 ギルドも何度か改革に乗り出そうとしたそうだが、ダンジョンは広く、出土品を独自に買い取る業者も現れていたせいで上手くいかなかったようだ。


「今回を逃したら、先史文明に対する学術調査は二度と行えないかもしれません」

「では、学者の立ち入り調査を行った上で、出土品の搬出を行う。建物内部の品物については、チャリオットの権利を認めるという事か?」

「はい、それでお願いしたいのですが、いかがですか?」

「権利さえ認めてくれるなら構わないぞ」

「ありがとうございます。それでは、私は一度ギルドに戻って状況説明をしてきます」

「一人で戻れるのか?」

「あっ、応援が来るまで待ちます」

「いや、セルージョ、ミリアム、モッゾを護衛してギルドまで行って、ついでに俺達の権利を認めさせてきてくれ」

「了解だ、行くぜ、ミリアム」

「仕方ないわねぇ……ついていってあげるわ」


 セルージョ達がモッゾに同行するので、建物の内部調査は俺とレイラが担当することになった。


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― 新着の感想 ―
想像力が足りないからかイマイチダンジョンと新ダンジョンの構造がわからない
[気になる点] 虚栄心はひどくない?せめて功名心って言ってあげてほしい。
[一言] 何でもかんでも掘り出さずに知識のあるニャンゴが技術を保護すればもっともっと発展しそう
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