第4話『拒絶される優等』
バーベキューは楽しかった。
肉はうまいし、みんなの話も面白い内容ばかりだったし。
野菜が一切ないのがちょっとだけ不満だったが。
「さてと」
立ち上がる。
「どこに行くんだい?四季」
長身の黒い肌の男性――『ターハー・アグアス』さんが話しかけてくる。
「明日の朝には出ようと思って準備をしに。この世界について、もう少し情報収集をしたいので」
辺りは完全に暗くなったいたので、今日中の出発は無理だ。
「どこか寝られる場所、ありますか?」
バーベキューなんてしているが、元の世界と同じくこちらも季節は冬のようで、そこら辺で寝るわけにはいかない。
「あるよ。11人しかいないのに家は20ちょいもあるからね」
外国の人が『ちょい』なんて言葉を使ってくる。
「じゃあ、その中の一つをお借りしますね。それと、日本語お上手ですね。」
アーロンさんには聞かなかったが、『ちょい』という言葉が気になって聞いてみる。
「カナミも言っていたけど、やっぱりそう聞こえるんだね」
アグアスさんが答える。
「そう聞こえる?と、言いますと?」
「僕は日本語なんて喋ってるつもりはないんだよ」
日本語を喋っていない?
つまり、
「あなたに聞こえてる言葉も日本語じゃない?」
「うん、そう」
てことは、
「言葉が自動的に翻訳されている?」
ということになる。
「すごいだろ?僕も1週間前にここに来た時、周り違う人種ばかりで、恐る恐る話しかけたら、言葉が通じあってびっくり仰天したんだよ!!」
結構明るい性格のようだけど、
――恐る恐るだったんだ…。
初対面の印象じゃ人はわからないものだ。
そこでふと思い出す。
――さっきの剣って、地面に刺さりっぱなしだったよね?
剣道部ってだけあって、剣には興味を惹かれるものだ。
「では、また」
「あぁ、また明日」
アグアスさんに挨拶を告げ、田子を探して歩き出す。
すぐに見つかった。
「なぁ、田子さん」
「うん?どうしたの?」
「さっきの剣ってどうしたの?」
田子に尋ねる。
「それだったら、まだ動かしてないよ」
――よし!!
「じゃあそれ俺が抜いてもいい!?」
少し興奮気味に尋ねる。
「いいよ。剣好きなんだ?」
「うん、好き!!剣道部にも入ったぐらいだからね!!」
興奮度が増していく。
「へぇ……」
田子が少し引き気味に答える。
「じゃあ、行ってくる!!」
そんなことには気づかず、四季は剣の場所に向かって走り出す。
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同じ形の家ばかりなので、方向が分からず、逆の方向に行ってしまっていた。
目の前にはさっきの剣か刺さっている。
「……やっと見つけた」
思ったより大きい村だった上に、走っていたので、少し息を切らしている。
――田子さんが銃を見つけたって家も、本当は違う家だったんじゃないか?
そんな事は考えながら息を整え、体を剣の真正面に移動させる。
さっきは驚きや空腹で、あまりよく見れてなかったが、なかなかにいい剣のようだ。
全体的に細身のデザインであり、刃は薄い蒼銀色で淡く輝いている。
「……かっこいいな」
思わずそんな言葉が漏れる。
「んん〜〜!!早く触りたい!!」
もう、言葉の制御ができなくなっている。
とうとう見ているだけでは我慢できなくなり、剣のグリップに手を伸ばす。
そして、触れようとしたその時。
――ッ!!??
気づいた時には剣から手が遠ざかっている。
「なんだ、今の!?」
もう一度剣に手を伸ばす。
今度は剣と手の間にとても強い電気が流れ、四季は体ごと剣から離れる。
「なんで!?」
「あー、拒絶されたかぁ」
後ろから声が聞こえた。
振り向くと田子が立っている。
追いかけてきたのか、今の電気の音で駆けつけてきたのか分からないが。
「よく見るといい剣だし、コストが高いのかも、あるいは君のキャパが極端に低いのかも」
「コスト?キャパ?何を言ってるんだ?」
その質問を無視し、田子が剣の前に歩み寄り、手を伸ばす。
「危な……!!」
が田子がグリップに触れても何も起きなかった。
「なんで!?」
「着いてきて」
田子が剣をそのまま引き抜き、四季を誘導する。
四季は何が起きたかも理解できず、言われるままについて行った。




