第3話『邂逅2』
少女に連れられバーベキューの会場へ行くと、そこには不思議な光景が広がっていた。
人数は数えて10人しかいないが、人種が豊富なのだ。
白い肌の人もいれば、黒い肌の人もいる。赤い目の人もいれば、蒼い目の人もいる。
「色々な人がいるな」
「うん、不思議だよね。でも、言葉は通じるし、みんないい人だから安心して」
少女が答える。
「カナミ!その人はボーイフレンドかい?」
こちらに気づいた1番近くの金髪のおじさんがいきなりからかいを入れてくる。
「違うよ!この人はお客さん!」
「へぇ〜、カナミも隅に置けないなぁ」
一瞬肯定するように返事をしておきながら、再びからかいを入れてくる。
「だから違うってば!」
それに対してありふれた返しをしながら、表情1つ変えないこの子(カナミって呼ばれてたな)って凄いと思う。なんか落ち込むなぁ…。
「それで君の名前は?」
おじさんが聞いてくる。
少し狼狽える。
「どうした?」
「こんな感じで名前を聞かれたこととか無かったもので…」
名前を聞かれたら大体答えるが、名前を聞かれるのは基本的に、集団に入る。荷物を受け取るなど。名前を知らなければどうしても困るような時だけだった。
「それで、名前は?」
再びおじさんが聞いてくる。
「四季ユウトです」
「何年生?」
「高校三年生です」
「なんだ、ちゃんと自己紹介できるじゃないの」
おじさんがニヤニヤしながら言う。
「まぁ、そりゃ自己紹介ぐらいは…」
なぜか少し照れている。
「俺は『ユーリ・アーロン』だ、よろしく」
「ユーリ・アーロンさん、ユーリさんですね。よろしくお願いします」
よろしくと言われたのでこちらも返しておく。
「へぇー、『ユウト』って名前はそれほど珍しくないけど、『シキ』なんて名字は初めて聞くなぁ。どんな字を書くの?」
隣のカナミが聞いてくる。
「漢字は季節の『四季』だよ」
「へぇ〜」
わかったらしくカナミが返事をする。
せっかくだから、
「君の名前は?さっきカナミって呼ばれてたけど」
この子の名前も聞いてみることにした。
「私の名前は『タゴカナミ』。田んぼの『田』に子どもの『子』、カナミのカナミ。『田子カナミ』」
「何年生?」
さっきのおじさんの真似をして田子カナミに尋ねる。
「中学三年生だよ」
田子カナミが答える。
「初めて会った時から思ってたけど、田子カナミって無礼な奴だよね」
「なんでいきなりそうなるの!?」
おじさんのからかいには動じなかった田子カナミが、驚いたように聞き返してくる。
「だってさぁ、初対面の時点でタメ口だったし。俺が三学年上だってわかっても、タメ口のままだし。」
「3歳差ぐらい別に良いじゃんユウト〜」
ニコニコしながら田子カナミがいきなり呼び捨てで呼んでくる。
「そうかもしれないが、それ決めるの多分年上の俺の方だよ? まぁ、俺は良いけどさ」
「じゃあ最初から言うなよ」
ほんの一瞬、田子カナミから笑顔が消えた。
――ッ!
「ごめん、ちょっと細かい性格でさ」
「別に謝らなくてもいいよ」
再び笑顔になった田子カナミが答えてくる。
――なんだ今の…?
「とりあえず、しばらくよろしく。田子カナミ」
「うん、よろしく! てかフルネームはやめてよ」
「まぁ、そりゃそうか。田子さんよろしく」
「うん、ユウト」
この後、他の人たちとも自己紹介をしあったが、田子カナミとの自己紹介は随分と長かった。




