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第2話『邂逅』

 四季は走っていた。(時計なんてものは無いので)感覚的には30分ぐらいは走りっぱなしだ。

 なぜ走ってるのかを説明すると、1時間ほど前の話になる。

 ――――――――――――――――――――――――

 

 金属の街で大した情報を得られなかった四季は、街の外に出てみることにした。

 街の外というより、金属の部分から外に出てみた。

 もう太陽(?)が沈みかかり薄暗くなっていたが、好奇心やら探究心やらの欲望には勝てず、もう少し広く探索してみることにしたのだ。

 そして、街の外に出て30分ぐらい歩いていると何かにつまずいた。


「あっぶねぇ!!」


 ギリギリで体制を立て直すと今度は何かを踏んだ。


 ーーなんだ? この絨毯みたいなやつ?


 そしてつまずいた部分を確認してみるとなにを踏んだか察した。

 その部分には鱗のようなものが張り巡らされている。

 何か横から唸り声のようなものも聞こえる。

 そこにいたのは竜だ。

 具体的な見た目を説明すると、プテラノドンで有名な翼竜に近い。


「ご、ごめんよ! 君の翼を踏んだのは謝る! だから…!!」


 そんな言葉を竜が分かるわけもなく、今にも襲いかかろうとしてくる。


 ――逃げないと!!


 戦うすべを持っていない四季は、こうして30分も走り回る結果となったのである。

 ――――――――――――――――――――――――


 走っていると小さな村のようなものが見えてきた。


「やっべッ!!」


 そう、やばい。

 さっきの金属の街ならともかく、あのほとんど木の村にあの竜が入り込んだら大変なことになる。


 ――今はヘイトは俺に向いてる。ここで引き返せば……。


 振り返りながら考えていると、もうすでに後ろの竜が自分を見ていないことに気づいた。

 再び目線を前に戻すと、他にも獣たちが集まってきている。

 目を凝らしてよく見てみると、村の方から煙が上がっている。何か食欲をそそるようないい匂いもする。

 あれって…、


「まさかバーベキューか!!?? こんなところで??」


 太陽はほとんど沈んでいるし、もうそんな時間ではあるのだろう。だけどこんなところでバーベキューって…。

 匂いにつられ、竜がとうとう四季を追い越し、村の方に突っ込んでいく。


「おい!! そっちにいくなこっちに来い!! 俺を食った方がお腹いっぱいになるぞ!!」


 そんな叫びは虚しく竜には届かない。

 見ていられず、竜が村に突っ込む寸前に目を伏せる。

 瞬間、何かガラスが割れるような音が、前方で響く。


「なんだ?」


 恐る恐る目を開けると竜が何かに阻まれて、村に入れないでいる。


 ――あれは…、バリア…!?


 煙が上がっているということは中にいるのは人間?

 あのバリアが獣除けのようなものだとしたら……、


「あの中に入ってしまえば安全ってことか!?」


 それに気づいた瞬間、四季は駆け出す。

 竜を追い越し、滑り込むように村の中に入りこむ。


「ハァ…、ハァ…、入れた…!!」


 息を整える。


「疲れたぁ…」


 しかし、あのガラスが割れるような音はまだ続いている。

 振り返るとまだ竜が、村への侵入を試みている。


「どうするかなぁ、あれ」


 そんなことを呟いた時、


「あれは君が連れてきたの?」


 後ろから声をかけられた。

 振り向くとそこには長大なライフルを持っている中学生ぐらいの少女が立っていた。


「あぁ、ごめん。しばらくすれば諦めて帰っていくとは思うけど、流石にうるさいよな?」

「そうだね。だけどありがとう」

「へ?」


 耳を疑う。


「なんでお礼なんていうんだい?」


 彼女が少し微笑む。

 そしてライフルを竜に向けて構える。


 ――まさか!?


 その瞬間、さっきまでのバリアの音に負けず劣らずの音が響く。

 彼女がライフルを撃ったのだ。

 振り返ってみるとさっきまでいた竜がほとんど消滅しかかっていた。


「色々とありすぎて、脳の整理が追いつかねぇ」


 そんなことを言っている間に竜は完全に消滅し、少女がさっきまで竜がいた場所まで歩いていく。

 その場所には竜の代わりに肉の塊のようなものと、1本の剣が落ちていた。


 肉の塊を拾いながら少女が言う。


「ありがとうって言うのはこういうことだよ。バーベキューのお肉が増えた!」


 にっこり笑い、彼女が言う。


「そ、そうなんだ…」


 そこである言葉を思い出す。


「何が「これから起こることは幸運になる」だよ。散々な目にあったよ」

「何?」


 声をかけられた慌ててごまかす。


「いや、なんでもないよ。ところで君はここの住民?」

「違うよ!私の出身はこんな昔の村みたいなところじゃなくて、もっと発展した日本の都会だよ!」


 ――またハズレ…、なのか?


 手元のライフルに視線を戻す。


「そんなものを扱えるのにここの住民じゃない!?」

「これは昨日そこの家にあったのを拾ったの」


 少女が(四季から見て)右斜め前の家を指差しながら答える。


「拾ったっていっても、なんでそんなものが簡単に扱えるんだよ!?」

「普段ゲームセンターのガンゲーで鍛えてますから!!」


 手をピストルの形に変え、ウインクしながら彼女が答える。


「それで射撃はできるとして、そんな高威力なもの……」

「これ威力変えられる上にほとんど反動無いんだよね。今回は多分オーバーキルだったけど。調整難しいなぁ」


 今度は舌を出し、拳で自分の頭を殴るようにして彼女が答える。


 その時、四季のお腹が鳴った。


「あ…」


 お腹を抑える。


 ――たしかにしばらく動きっぱなしだったからな。


「お腹空いたの?」

「うん、そうだね」


 正直に答える。


「じゃあ君も食べたく?」


 少女が煙が上がっている、いい匂いがする方向を指差す。


「うん、食べてく」


 そうして彼女に連れられ、バーベキューの匂いがする方へ歩いていく。



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