第7話『新たな改変』
この話からナレーター結構ノリノリになります!!
「…へぇ〜、お姉ちゃん、いるんだ」
「うん、すごいんだよ!射撃で私、勝ったことないんだから!…」
村を出てしばらく歩いた。かなり歩いた。
何かの獣に遭遇するでもなく、植物を見つけるでもなく、他の地域を見つけるでもなく、ただひたすら太陽と時計を確認しながら北へ。(といってもこの世界の太陽が地球と同じ法則で上がっているとは限らないし、方位磁針などもないので、本当の方角はわからないのだが)
「…水、もう少し待ってくればよかったかなぁ…」
村を出るときはまさかこんなに歩き続けるとは思わなかった。しばらく歩き続ければ他の地域に着くものだと思っていた。
朝の7時に出て何時間歩いただろう?当然休憩は挟みながら歩いたが、それだけでは足りないらしく、疲労が蓄積している。
時計を確認すると時計は3時を示していた。
――このまま野宿かなぁ。食料と水はある程度…
「クシュんッ!」
田子が小さくくしゃみをした。
季節は元の世界と同じく冬のようだ。
――寒い。野宿なんてしたら…、
「死ぬ!!」
「…え!?」
思わず声に出していた。
田子も途端に驚いた。
「え? なに急に?」
そりゃ聞くよね。
「ごめんごめん、寒いなぁって思って」
「まぁ寒いね」
この気候に合わせられているのか、服装はそこそこの厚着になっているが、それでも寒さは感じる。
「じゃあ田子、疲れてると思うけど少し早く歩こう。その方が早くほかの町、あるいは村に着けるし、体温も上がるしね」
――流石に凍死なんて結末は嫌だよ。
ふと田子の顔を見る。よく見るとかなり可愛い。
「可愛い女の子と一緒でも嫌だよ」
「…え!? なにいきなり?セクハラ??」
声に出た。
「え?あ、ごめん。でも田子さんってよく見ると可愛いね」
「…エロじじぃ」
田子がぼそりと呟く。
「ひどい!!」
おいおい少し口調が変だぞ、四季くん。
「オネェか!?」
「違ぇよ!!」
「変態か? オネェか? どっちか!?」
「だから違ぇよ!! どっちでもねぇよ!!… ゴホゴホ!」
寒い時に大声出しすぎるとのど痛くなるよね。
その時だった。大きな陰が四季と田子を覆ったのは。
周りを見渡す。何もない。空を見上げる。あった。空が消えていた。
空が見えないのだ。雲があるわけでもない。太陽が沈んだわけでもない。
あたりを見渡す。
――なんだ。何が起こってる?
見渡して見つかった。空と消の継ぎ目が。
――間違いないだろうな。
四季は察した。田子の手を取る。
「走るよ!!」
田子も呆気にとられるていたらしく。顔は驚くが声は出ない、という感じで手を引かれるままついてくる。
「……え?」
遅れて驚きの声が出てくる。
「あれは落ちてくる。その落ちてる範囲から出るんだ!」
その範囲の外側まで目測で見積もっておよそ5キロ。
「…間に合うか? ペチャンコなんて凍死よりひどいぜ?」
走る。走る。走る。走る、走る、走る走る走る。
上を確認する。まだ抜けない。
「クソッ…!」
田子の腕を引っ張りそのまま背負う。
「…!」
「捕まっててよ!」
走り続ける。走る走る走る走る走る!
「…!!」
背に圧を感じる。
もう、目前までそれは迫ってきていた。
――加速しろ!!
しかしもう体は限界だ。これ以上スピードは乗らない。ここまでほぼ全力だった。いやそれ以上だ。きっとこんなスピード今まで出たことはない。
それが迫る。空を消したそれが2人をも消滅させようと迫ってくる。
――仕方ない!!
田子を頭上に抱える。
「ちょ!ユウト!?」
そして全力で…、
「あ"あ"ぁぁ!!」
投げた。
田子が飛んでいく。そして着地する。
腕を擦っていくが、頭からの着地は免れたらしい。
多分これで田子は助かった。田子は。
「ユウト!!」
今ので体がもう動かない。もう出しきった。そのまま後ろに倒れこむ。
「あー、いってぇ…」
わずかな力を振り絞り、田子の方を確認する。上も確認する。さらにそれが迫ってきている。だけど…、
――これなら絶対だな。田子は生きる。生きられる。
「ユウトォーー!!」
田子が叫んでいる。再び田子の方を見る。厚手だったはずの袖は大幅に破れ、腕も大幅に擦りむいている。
「痛そう…」
思わずそんな言葉が出る。
「ねぇ田子さん!5キロメートル走の世界記録って知ってる?」
「…!? そんなこと聞いてる場合じゃ…」
「世界記録、更新できたかなぁ? やっぱありえないか、ハハ…」
四季をそれが覆い潰す。