プロローグ
異世界者が振るわないと思って打ち切りにして、また異世界を書くというなんともゲス野郎です。バトルなんていらないただ主人公が幸せならいいと思った小さい頃に書いた夢物語を今一度作品にしたものです。また、シリーズとは別でもう一つ新作を書く予定です。
皆さん、バタフライ効果という言葉を知っていますか? 理論を説明するのは難しいです。簡単に言うなら『ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?』という気象学者のエドワード・ローレンツの言葉を借りましょう。この問いかけは予測可能性とよばれているものです。では、なぜ私がこの言葉を唐突に聞いたかというと、私のこれからやることに由来しているからです。私はこれから時間を遡ります。理由は……まだ言えません。でも、これは私のあの人に対する贖罪を果たすために時を遡るのです。
■ ■ ■
目を覚ますと、そこは木漏れ日が落ちる森の中だった。いや、僕は森にも林にも入ったことがない。つまり、ここを森と判断できない。何故僕がここまで落ち着いているのか疑問に思う人もいるんじゃないかと思う。事実、森(断定)の中にいるのに恐怖を感じるのも間違いではない。しかし、物事には背景がある。ここは自分の家の敷地内でいつも遊びに来ていた、なんて背景があれば恐怖を感じないのもわかるだろう。しかし、先に言ったとおり僕は森や林には前世で入ったことがない。ん? 前世なんて入ってなかったって? 察しろ。
僕は別に転生とか、異世界召喚されたとか、そんな大層なものじゃない。ただ記憶を送る場所を過去の自分の頭だと思ったら空間数値をミスって別の次元に飛ばされたってだけの話だ。当時は驚いたが、自分の世界に未練が無く、ただただ憎かった為、記憶を植えつけてしまった三年前にこの世界の住人として生きていくことを決めた。現在齢9歳。どこから見てもショタである。
前世が憎いと聞くと大体大人に何かされたとか考える人もいるだろう。なのでこちらから明かしておく。ただ単に裏切られたのだ。親友にも、好きだった人にも、愛する妹にさえも裏切られた。だからこそ、その状況を打破するため過去に飛んだんだが……。
ん? なぜ読者に問いかけるのかって? 簡単な話だ。この世界が過去に僕を楽しませた世界だからだ。つまり、某脱出ゲームの小説ではそれがゲームの世界でした、みたいなものだろう。現実ではないといわれればそれまでだが、プレイヤーが見ているかもしれないだろ? なら、生い立ちとかいろいろ理由は言った方がいいだろうに。
そういえば、たらたらと話しているが肝心な情報を言うのを忘れていた。僕の名前はグラミ=フォン=トーラス。一人称は僕、好物はスターフルーツ。伯爵家の長男だ。存在がチートだが能力もいい。過去の自分よりはるかにスペックが上だ。友好関係は広く深く、夢にまでみた女の幼馴染もついているいわゆる勝ち組だった。
それに、彼の知力は計り知れず見たり聞いたりしたことは一度で覚えるという優れものだ。もしこの世界に魔法なんてものがあればきっと役に立つだろう。ん? 魔法は無いのかだって? そんな夢物語あるわけ無かろう。もし魔法があったとしてだ。僕はその魔法で魔王を倒したり、世界を冒険したりなどは絶対にしない。これは決定事項だ。
「なーに難しい顔してるの?」
「げ、姉様……」
紹介しよう。トーラス家の長女であり僕の姉である。活発でアウトドア派、服装も動きやすさ重視で着飾った服をきない。よく言えば元気な子であり、悪く言えば大雑把だ。
「グラミはすぐ庭の林に行って寝てるから不思議だよね。よくそれでメイドさん達を困らせるし!」
「僕は姉様が僕を見つけるのが早すぎて驚いているよ」
どうやらここは林だったらしい。しかし、森と林の違いとは何なのか知らないので今度調べてみよう。
「さぁ、早く帰ろ! パパもママも待ってるから!」
姉に手を引かれ、僕は林から離れる。もう少し自然と戯れていたかったが、親が呼んでいるというのであれば仕方が無い。僕は今の家族を好いている。……信用はしていないが。
さて、先ほどの言葉で何言ってんだこいつ、と思った人は少なくないだろう。確かに矛盾を感じられるかもしれないが、これは理にかなっていると思う。僕は確かに今の家族は好きだ。僕の行動や気持ち感情を汲み取ってくれる。前世界では親は気づいたときにはいなくて、妹と二人暮らしだったし。親戚もできてる妹の方がほしいと言って俺には目もくれず。好きだった彼女には浮気をされて、浮気相手は親友だった。しまいには妹も僕を罵り始めるといった始末。正直、滑稽としか思えないね。
こんな人生を送ってきた僕は記憶だけを過去に送る某研究所の装置をくみ上げ、ここにたどり着いたわけだ。そんなこともあれば人を信用できなくなる所か、端から疑うだろう。だからこそ、裏切られたと感じないために僕は僕以外を信用しないだけだ。
その時、自室のドアを叩く音がした。姉さんが呼びに来たと考えたが昼の時刻にはまだ早い。誰だろうと思いドアの近くまで行く。
「はい、誰でしょう?」
「兄様、私だよ。ノアだよ」
「あぁノアか。今ドアを開ける」
まあ、聞いてのとおり僕の妹であるノアだ。双子なので同い年だし僕と同じようにゆったりマイペースだ。しかし、正直僕は妹という存在が怖くて仕方ない。過去のこともあるからな。
「ごめんね、兄さん私のこと嫌ってるのに来て」
「別に嫌っては無いよ。また勉強かい?」
「うん、今人の恋愛についてと科学についてやってるんだけど知りたいことがあって」
う、科学はまあ良いとして恋愛か……。正直僕にはわからない。自分のあれを恋愛と言っていいものか、それとも今回はパスしてもらうか……。
「兄様、ダメかな?」
上目遣いでこちらを覗き込み涙目になっている。ここまでされているのに僕も嫌だとはいえない。なので僕は勉強として科学と恋愛について勉強を見ることにした。正直、今の妹は可愛いので僕はシスコンになってもいいんじゃないかと思っている。――割とマジで。
勉強をしていると姉さんが昼食を食べると呼びにきたのでノアと一緒に食堂に来た。食堂には両親と姉さんがすでに座っており席の前には料理がおいてあった。僕たちは各々席に座り父をみる。
「みんな揃ったね。昼食を食べる前に午前中は何をしていたか教えてくれないか?」
父は仕事人間でありいかなるときも報告、連絡、相談を怠らないようにと言っている。食事の前はこうやってお互いに何をしていたかを言うのが常だ。はじめに姉さんが答えた。
「私は午前中グラミを探してグラミ成分を補給してからママの手伝いをしてました!」
「なるほど、エリーはほんとにグラミが好きだね。それとママの手伝いは偉いぞ」
父はいいことをすれば基本ほめてくれる。親の中でも最上位に位置するだろう。次は僕の番である。
「僕は林でゆっくりしてた。姉さんに見つかって屋敷に戻ってからはノアの勉強を見てたよ」
「グラミはいつも林に行ってるな~。なにかいいものでもあったかい?」
「特には。でも、木漏れ日の中で昼寝をするのは気持ちがいいよ」
「そうか、今度父さんも連れてってくれ」
父は笑いながら答えてくれた。あそこはほんとに気持ちがいいので今度は是非父を連れて行こう。最後にノアが答えた。
「私は部屋で勉強してた。その後は兄様と勉強してた」
「そうか、勉強熱心なのはいいことだよ。今は何の勉強をしているんだい?」
「恋愛と科学」
父は少し驚きながらも喜んでいた。母はあらあらと微笑している。ノアは少し頬を赤らめてこちらをみた。父は一つ咳払いをして話し始めた。
「午前中は各々楽しく過ごせたようでよかった。午後からも子供たちはゆっくりしなさい、と言いたいのだがグラミ、お前だけは父と一緒に来てもらいたい。いいか?」
「うん、わかった」
どうやら父は僕に用があるらしい。何か問題を起こしたことは無いが呼んでいるというなら行くしかない。
■ ■ ■
「姉様、姉様は兄様をどう思っているんですか?」
「どうってどういうこと?」
「私は兄様が好きです。異性として隣にいたいと思ってます」
「なっ、ノアには好きとかまだ早いって」
「早くありませんよ。私もあと二年で成人、なら思い人を探すのも普通です」
「うっ……、私は――だよ。グラミのことを異性として、私を一人の女の子としてみてほしい」
「なら二人で手に入れましょう。幸い去年に重婚が認められたので」
姉妹たちは握手しグラミを手に入れると誓った。しかし、グラミはそのことを知る由も無いのである。
ここまでお読みいただきありがとうございます。是非これからもご愛読いただければ幸いです。
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