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5話 いざギルドへ

「うわぁ」


「これは凄いな」


ギルドへ着いたホモとリュウ。

ギルド全体を見渡した二人は、空いた口が塞がらないといった様子で、ポカーンとしている。

このギルドは、まるでどこかの小さなお城だろうか。

そこらの村の建物とは違う、一際目立つ建物に目を奪われる。


「ボサッとしてんな、入るぞ」


全くもって興味なさげに、ユーリはギルドの扉に手を触れた。


ーーグッ…。


何故か開かないギルドの扉。

ユーリは押したり引いたりを繰り返すが、ビクともしなかった。


「…チッ。ソレイユか。また中から扉に捕縛魔法を使いやがって」


「?…ようは入れないのか?」


機嫌が悪くなるユーリに、そっと話しかけるリュウ。


「まぁな。だが、速攻で開けれる」


ユーリはそう言うと、ポケットからハーブを取り出した。

そのハーブからは独特の甘い匂いが漂う。

すると、数分も経たない内にギルドの中から騒音が聞こえてきた。

その音はどんどんこちらに近づいてくる。

何かを察したユーリとリュウが扉の前から退く。


「あれ?何の音かな?」


それなのに、ホモだけはあえて扉に近づく。


今さらだが、どうしてこのギルドの扉はこんなにも綺麗なのか。

新品とほぼ変わらない扉に違和感を覚えたホモ。

だが、それに気づいた頃には時すでに遅し。


突如、勢いよく開かれた扉…いや、勢いよく破壊された扉。

爆風と同じような衝撃を受けたホモは、真後ろに吹っ飛んでいってしまった。

幸い飛んだ先にはゴミが山積みになっていたため、ホモが怪我をすることはなかった。



「あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!!ごっ、ごめんなさいぃぃぃぃ!!」


朦朧とするなか、意識がハッキリしてきたホモは目の前で土下座している少年を見下ろす。

この声といい、この少年といい、以前どこかで見覚えがある。


「あ、もしかして前に変な生き物に乗って街で暴れてた…」


「あ゛ぁぁぁっ!!あのときもいたんですか!!本当にごめんなさいぃぃ!!」


先ほどから謝ってばかりの少年に、ホモは何故か自分と重なる部分を感じた。


「言い訳に聞こえるかもですけど、俺の担当している飼育モンスターが急に目の色を変えて…そのままドアをブチ破ったんです…」


実は月に何回かこのようなことがある、と少年はまたもや申し訳なさそうに頭を下げる。

近くで会話を聞いていたリュウは、横目でユーリを見た。

すると、少年が飼育しているモンスターだと思われる生物が、ユーリに懐いている。

ユーリの手には先ほどのハーブがあり、それを見たリュウは視線を落とした。


「扉も開いたし中に入るぞ」


正確に言うなら開いたというより壊しただが、そこを突き詰めると反論という名の罵倒をされそうで、ホモたちは静かに後を追った。


「ソレイユ!!出てこい!!」


中に入るなり、ユーリがギルド全体に聞こえるくらいの声で叫ぶ。

…が、そのソレイユと呼ばれる人物は現れない。

ましてや見渡した限り、ギルド内にいるのはホモ、リュウ、ユーリ、先ほどの少年を含めてもたったの7人であった。


「あ、ユーリさん!ソレイユさんなら入口に捕縛魔法したあとは、裏口の方から出て行きましたよ!」


「チッ…まぁいい。ギルドマスターは…お、いるな。じゃあ一人一人を紹介するのも面倒だし、今いるメンツだけでも並んでくれ」


ユーリはギルドのメンバーに声をかけていく。

そして声をかけらた者たちが、ぞろぞろと中心に寄ってきた。


“ぞろぞろ”集まってきた、とは言っても、この場にいるのはホモとリュウとユーリ、少年を合わせて7人………すなわち、ホモたちをカウントしなければたったの3人である。

その3人は、いかにもかったるそうな顔をしていた。


ホモは、集まった3人と謝ってばかりの少年を、上から下まで軽く目をやった。


ホモから見て一番の左に立っている男は、顔の左半分を、まるでこの世の全てを悟ったとでもいうような顔をしたキツネの面で覆い隠していた。

面の間からのぞく髪と目は、この辺りでは珍しい黒色だ。

そして、服も黒。

全体的に黒い男は、どこを見ているんだ?と聞きたくなるほど遠いところを、乾いた目でぼんやりと見つめていた。



これ以上この男を見ていると、魂的な何かを吸いとられそうな気がしたホモは、スッと目をそらして、その隣にいる女性を見た。


その女性はアッシュグレーの髪を、腰まで伸ばしていた。長い髪は、不思議と絡まることはなくサラサラだ。

長いまつげは物憂げに伏せられており、その奥からは深海のような色をした瞳が二人を……どちらかというと、リュウを見ていた。

顔立ちはとても美しく、生まれてこのかた一度も女性に興味を持ったことのなかったホモですら、しばらく見ていたいと思うほどだ。

落ち着いた色のタートルネックにチェックのロングスカートという、シンプルな服装がとても似合っていた。



「ああぁ………また、不採用…………お祈り………」



ホモが女性を見ていると、ふいにすごくいい声がきこえた。

いい声の方に目を向けると、そこには長椅子に座りこんで項垂れている無精髭を生やした男がいた。



「もうだめだ………俺は…俺は……」



いい声の男は、がっくりと俯いた。

男は、吸盤のついた足を8本持つ海の生き物を茹でたような色をした自分の髪を、ぐしゃぐしゃとかき回した。


ああ、これは関わってはいけないやつだと本能で悟ったホモは、謝ってばかりの少年の方に顔を向ける。



少年の髪は、焦がしたキャラメルのような色で、清潔感のある長さで整えられている。目は、クロネコと同じ色をしていた。


ふいに、少年がホモの方を見る。

目が合うと、少年はひまわりのような笑顔を見せた。


あっ、コイツいい奴だ。

ホモとリュウはそう思った。



「何黙ってんのよ。ギルドマスターでしょ」



女性が口を開く。透き通るような凛とした声だった。



「……………」



しかし、誰も返事をしない。

女性は、イラッとして隣にいたキツネ面の男をはたいた。



「ちょっと、マスター!」


「痛っ……」



マスターと呼ばれた男は、おそらくホモとリュウの方を見た。焦点は定まっていない。

マスターは、人形のような無表情で言った。



「ああ、いいんじゃないですか。………ハァ。どれもこれもみんな、あの子がなかなかギルドマスターになるって首を縦に振らないからだ。クソッ、どこに行ったんだ?今日こそギルドマスターになるって言わせてやる」



ホモにはマスターが何を言っているのか聞き取ることはできなかったが、ブツブツと何やらボヤいている。

しかし、ドラゴン並みの聴力を持っているリュウにはマスターの言ったことが全て聴こえており、これはとんでもないところに来てしまったと、改めて戦慄した。


再びバシッと音がして、マスターは「痛い」と声をあげる。

マスターをはたいた女性は、そのままマスターの首根っこを掴んだ。



「どこに行こうとしてんの?アンタが挨拶しなきゃ、誰がすんのよ」



マスターを完全に尻に敷く女性。

そんな様子を見て、リュウはドラゴンの父を完全に尻に敷いている自分の母親を思い出した。



「うぅ……ジユージュのギルドマスターです」



「ハァ………こんなのがギルドマスターで悪いわね。」



女性はため息をついて、一歩前に出る。



「はじめまして。私はセーナ。このギルド一員で、主に経理担当をしてるわ。二人とも、今日はどうしてここに来たの?」


「ギルドに入りたいんだとよ」



ホモとリュウのかわりに、ユーリが答える。



「ユーリの紹介なのね。じゃあ、いいんじゃない?ねぇ、マスター」


ジユージュは、原則として魔道士は受け入れていない。

理由としては、少数精鋭の『量より質』の理念を守るため………というのを建前として、実はギルドの魔道士たちの人見知り・人嫌い率が高いからである。

しかし、誰かがスカウトしてきたり、誰かの紹介があると一気にハードルは下がり、すんなりとギルドに入れるのだ。その辺りは、ジユージュはガバガバである。



「ああ、いいんじゃないですか。」



マスターは言った。やはり、ガバガバである。



「わぁ~!じゃあ、新しい仲間ですね!よろしくお願いします」



謝ってばかりの少年が、『大歓迎!嬉しい!』という感情を全面に滲ませた笑顔で、ホモとリュウの手をとり、ぶんぶんとふる。



「俺、エディっていいます!」


「ぼく、ホモっていいます!」



どこか似たような雰囲気を出す二人に、リュウはこのダブルセットは厄介そうだぞ、と思った。

新入りであるホモとリュウに、先ほど項垂れていたいい声の男が言う。



「俺は、トパスダヨ」



「トパスさんですね!よろしくお願いします!」



「よろしくお願いします、トパスさん」



「いや、俺はトパスダヨ………はぁ、まあいっか」



トパスは力なく立ち上がると、そのままフラフラと奥へ消えていった。



「ともかく歓迎するわ。仲間は他にもいるけど、うちは少数精鋭だから焦らなくても直ぐに会えると思うわ」


セーナからそう聞いた途端、ホモはその場で嬉しそうにぴょんぴょんと跳ね、リュウの方に顔を向ける。


「楽しみだなー!ね!リュウ!」


「まぁ…うん」


だが、リュウはどこか曖昧な返事をする。

ホモはそんなリュウを心配そうに見上げた。


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