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28話 新しい扉

丁度その頃、観戦者たちの注目を集めているスクリーンに、ソレイユが映っていた。

その目の前には、キカクとエーゾがいる。


「キカクさんってば」


「ええい!何度言われようとも、この私がリタイアするわけなかろう!」


「でも僕の分析魔法が外れてたことなかったでしょ?」


なにやら先ほどからチーム内で口論しているようだが、話が終わる気配は一向にない。

ソレイユも話が終わるまで、自分の造形魔法で作り出した椅子に腰掛け、いつものようにパレットを片手に絵を描いていた。


「2人で戦って勝てる可能性が21%、魔法の相性が悪すぎるんだってば。でも、やり過ごせれる可能性は3%」


「だからこの私に、リタイアしろと言うのだろう?初めから負けを認めるのは、男の恥だと思わないのかね?」


キカクは片方の手で髪に触れつつ、もう片方の手でエーゾを叱るかのように指差していた。

しかしエーゾは、キカクに対してさらに反抗的になる。

それでも、キカクは自分の意思を曲げる気はないようだ。


「もういい!それでも私は戦う!さぁ、そこのボーイ、構えたまえ」


「…」


キカクに声を掛けられないことに気づいたソレイユが無言で立ち上がると、それと同時に造形魔法で作られた椅子も消えた。


「いくぞっ、キカクカリバー!」


胸の方から足元の方に滑らせたキカクの手から、光の剣が現れる。

生きてるなかで様々な魔導士と出会ってきたソレイユは、一々技名を唱える変な魔導士たちには慣れていた。

だが、技名に自分の名前を入れる究極のナルシストには出会ったことがなかったため、珍しく一瞬だけ肩を震わせ驚いていた。


「さて、この私の剣から逃れられるか試してみるといい!」


光の剣…という名のキカクカリバーを構えたキカクが、一気にソレイユとの間合いを詰めてくる。

しかし、突然ソレイユが放った捕縛魔法により、キカクは縄に足を取られてしまう。

何を思ったのか、バランスを崩して今にも転けそうなキカクは、一度ステップを踏み体を右に一回転させたところで背中から倒れた。

そのせいで足だけでなく体にまで縄が絡まっているが、キカクは片足は曲げ片手で軽く目を覆い、儚げなポーズで倒れているのであった。


「…」


倒れるときにまで自分を美しく見せようとするキカクに、さすがのソレイユも軽く引いている。

だが気を取り直して、キカクを捉えている縄に魔法を加え、身動きを取れないように締め上げた。

苦手なタイプに認定されたのか、いつもよりも複雑で尚且つキツく縛られているようにも見える。


「ぐっ…やめたまえ!これでは美しくな…っ……?」


突然、首を傾げたキカクの動きがピタリと止まった。

それに対して、ソレイユは不思議そうな表情を浮かべる。

彼に一体何があったのかというと、


(縛られているこの私も、見方によっては美しさが増しているのではないか…?それなら一層のこと…)


などという思考が長々と渦巻き、今まさに新しい扉を開こうとしていたのだ。

しかし丁度そこへ、フィールド全体に審判からの音声が流れてきた。


「ギルド・ウンエトゥーカのキカク、戦闘不能によりただちに強制送還とする!」


「なっ?!」


驚いたキカクが反論しようとするも、魔法で待機場へと送られてしまった。

ソレイユは少し混乱しながら、先ほどまで近くにいたエーゾの方に振り返る。

だが、そこにエーゾの姿はなく、ソレイユはふと空を見上げた。

そこには、残りのギルドメンバーの名前が映し出されているので、ソレイユはエーゾの名前を探す。


「…え」


エイゾウの名前が書かれている横には、△のマークが書かれていた。

○はまだフィールド内にいることを示し、△は辞退やリタイアなどを宣言して待機場に戻されていることを示し、×は戦闘不能で待機場に戻されていることを示している。


「…」


色々と察したソレイユは、なんとも言えない気持ちで、遠くの方を眺めることしかできなかった。

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