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24話 エディの覚醒

さて、丁度ジユージュのメンバーがばらけたと同時に、試合開始の合図が鳴り、それぞれが動き出すなか、ホモとエディは戸惑っていた。


「んー…んーっ…どこ行こうかな?」


「どうしましょうかね?俺はホモくんに合わせますよ!」


「じゃあ、とりあえず歩こう!」


しかし、そうは言ったものの、二人とも歩くこと数分で飽きてしまい、筋トレがてら走ることにしたようだ。

なぜ、今から戦うかもしれない状況で無駄な体力を消費するのかと、観客席では騒ついている。


「あ!ジユージュ発見発見!」


「おっ!ほんとだ」




「………一体何を考えているんだ」


ホモとエディの奇行をスクリーン越しに見ながら、トパスは頭を抱えた。


「もしこれで賞金がとれなかったら、エディを指導したトパスさんのせいってことで」


マスターが呟く。トパスは静かにダメージを重ねた。


「………起きてなくてよかったですね」


そう言うマスターの視線の先には、テキーラのおかげで気持ちよく眠っているセーナがいる。眠っていてくれて良かった、とトパスは内心思った。


「ま、まあ………今は彼らを応援しよう」


頼むからこれ以上妙なことはしないでくれ。そう願いながら、トパスはスクリーンに目をうつした。




さて、ホモたちが走る先に現れたのは、マギョウのマリゾーとムリゾーであった。

咄嗟だったとはいえ、さすがに足を止めるホモたち。


「俺はマギョウのマリゾーだ!丁度二人ずつだし、バトルを申し込むぜ!宜しくな!」


「僕はムリゾー!宜しく宜しく!」


バトル前の挨拶が終わったところで、マリゾーたちは戦闘体制に入る。

早速のことでホモたちも驚いているが、お互いに目を合わせ、ゆっくりと構えた。


「さぁて!いくぜ!俺の音魔法を受けてみな!」


マリゾーは片腕をエディの方に向けると、その指先を無造作に動かす。



すると、エディの足元から段々と奇怪な音が鳴り響いてきた。

人間の耳には嫌な音にしか聞こえないような音ばかりで、その音魔法の領域に入ってしまったエディは、ともかく耳を塞いだ。

ホモはその領域から僅かに離れていたため、さほどのダメージは受けていない。


「エディ!大丈夫!?聞こえるかい!?」


「ぐっ…!」


耳を塞いでいるため、ホモの声は届いていない。

そこへ、いつの間にかエディの背後に回っていたムリゾーが、腕をエディに向けて構えていた。

それに気づいたホモが必死に声をかけるが、全く気づく様子がない。


「エディ!!後ろだよ!!」


「無駄無駄!まずは僕が一人目もーらい!」


ムリゾーが魔法を発動させようとしたときだった。



「うぉぉぉっ!!!」


突如、エディの叫びとともに音魔法が止み、近くにいたムリゾーが何故か後ろへ下がっている。

よく見ると、エディは地面に両手をついてなんらかの魔法を発動させていたようだ。


「ふぅーっ、危ない危ない」


そう言いつつも、ムリゾーは余裕がありそうだ。

そこへマリゾーが駆けつけてくる。


「ムリゾー!大丈夫か?」


「大丈夫大丈夫!…今のは、防御魔法の一種だね」


ムリゾーは少しヒビ割れた地面を見て、冷静に分析を続ける。


「自分の足元に軽い衝撃波を出すことで、音魔法を吹き飛ばし尚且つ近くにいる僕を一旦遠ざける」


ムリゾーの的確な分析により、状況を理解していなかったホモが、納得したように云々と頷く。



「でも防御魔法だけじゃ僕らには勝てないよ!いけ!操作魔法!」


ムリゾーがそう叫ぶと、彼の周りにあった石ころや木の棒などが、宙に浮かび上がる。

そして、ムリゾーが指を動かすと、ホモとエディそれぞれに向かって、真っ直ぐ飛んできた。


「うわぁっ!吃驚した!」


間一髪のところで避けたホモは、その拍子で尻もちをつく。

そこにトドメを刺すかのように、木の棒が真っ直ぐとホモの方へ飛んできた。


「危ない!ホモくん!」


エディは、ホモに目掛けて飛んでくる木の棒を止めようと、無意識のうちに手を大きく伸ばした。

木の棒はホモの顔の前でピタリと停止する。



勿論、それを止めたのはムリゾーではなくエディだった。

エディは木の棒を握り締めると、妙な違和感を感じた。

だが、すぐさま別の物が二人を目掛けて飛んでくる。


「ふっ!!」


しかし、まるで体が勝手に動いたかのように、エディは飛んできた石ころを木の棒で叩き落としていた。

そのことにホモも驚いているが、当の本人が一番驚いている。

エディは木の棒をまじまじと見つめ、大きく深呼吸をしたあと、両手でしっかりとそれを握った。


「ホモくん、俺、自分でもまだよくわからないんですけど、一緒に戦えそうな気がします!!」


エディは、緊張した声でホモに伝えた。

ホモは頷いたあと起き上がって、エディの横に並び、覚悟を決めたように敵に眼差しを向ける。



「ムリゾー、なんかお前のせいで相手さん、火がついたみたいだぞー?」


「大丈夫大丈夫、僕らなら勝てるよ」


とは言いつつも、マリゾーたちは少し警戒体制を取った。

だが、ホモたちはあえて距離を詰める。


「くらえー!必殺!クラッシャーパーンチ(破壊拳)!!」


いつのまにそんな名前を付けたのか、全くもってネーミングセンスのないホモの物理攻撃魔法が、マリゾーに目掛けて振りかざされる。

それと同時に、何を思ったのかエディも叫び出す。


「うぉぉっ!!秘技!!魔の一撃!!」


こちらも微妙なネーミングセンスで、ムリゾーに向かって木の棒を振り下ろす。


「うぉっ?!」


ホモの魔法をもろに喰らったマリゾーは、勢いよく体が吹っ飛んでいった。

ムリゾーも操作魔法で対抗しようとしたが、突如エディの手に魔力が宿り、想像していたよりも重くて速い一撃が、ムリゾーのお腹に食い込んだ。



「お、俺っ!いま魔法が…!!」


意識して発動された魔法じゃなかったため、エディは自分の手を見て驚いている。


「あは…は、まさかの覚えたての魔法だったりするんだ…」


お腹を抑えながら膝を付いているムリゾーは、苦しそうにエディに話しかけた。

横目でマリゾーの方に視線を向けるが、運悪く壁に頭をぶつけた彼は、既に気を失っている。


「そ…れ、剣術魔法の一種…だと思うよ…」


「剣術魔法??」


意識が遠のいていきそうななか、ムリゾーは親切に剣術魔法について語りだす。


「実はわりと珍しい魔法なん…だ、誰でも修得できるわけじゃないから…君、凄くラッキーだね…」


エディはムリゾーの言葉に、心の底から喜ぶ。

まるで自分が選ばれた魔導士かのような気分で、少し自分に対しての自信がついたようだ。


「で…も、奥が深い魔法だから、ちゃんと日々の努力が、必要だよ…ファイト…ファイ…ト…」


とても小さな声でそう呟くと、ムリゾーはゆっくりと意識を手放していった。



「やりましたね!!」


「うん!凄いよエディ!…って、あれ?」


よく見ると、つい先ほどまで居たはずのマリゾーとムリゾーの姿がない。

慌ててホモは周辺を捜索する。

その様子で察したエディが、ホモに笑いながら話しかけた。


「ホモくん、戦闘不能になった魔導士は、自動的に向こうに戻されるらしいですよ!」


「へぇー!知らなかった!エディは色々詳しいんだね!」


「というか、ルール説明のときに言ってましたよ〜」


そんな会話をしたあと、少し休憩を挟んでからホモたちはまた歩き…いや、走り出していった。



「エディ、あんなにも強くなって………!」


ここずっとエディの修行をみていたトパスは、感極まったように目頭をおさえた。心なしか、その声は震えている気がする。


「さっそく、俺も剣術魔法について調べよう。そうだ、もっとエディを強くするために俺も頑張らないと」


トパスはまるで自分のことのように声を弾ませ、ワクワクしている。その姿は、まるで父親のようだった。


各ギルドが試合の真っ最中、あるひとつのスクリーンが突然砂嵐になった。

見ていた観客たちは、突然のことにざわつく。


「あれっ、おかしいですなぁ。故障でっか?」


コーチの楽天的な声が、会場に響いた。


「大変ですが、まあそのうち直りますやろ」


いや、そんなわけない。多くの観客はどうせ自分の声など聞こえないだろうと、声に出して突っ込んだ。


「そんなに脆いものですかね」


マスターがひとり言のようにトパスに話しかける。トパスはその声を拾い、しばらく考えてから言った。


「たしかに、激しい戦闘になることは予想できたはずだよね。何も対策されてないはずはないんだけど」



砂嵐になったスクリーンが映していた場所では、クロスぺ、フージー、マツリの3人が倒れていた。もちろん、それは観客には見えていない。


ポテトはギルドの性質上、他の魔導士ギルドに比べ はるかに多くの魔導士が在籍している。しかも、その魔導士たちはマッキーのように現役を引退し、副業としてクエストに携わるベテランが多い。

そのポテトの魔導士3人は、カメラが破壊された後、一瞬で地面に倒された。


「もう少し苦労するかと思ったけど、全然そんなことなかったや」


「月」はえへへ、とはにかむ。その笑顔は、まるで花のようだった。


「じゃあ、次行こうか」


「月」が話しかけるが、スペースのメンバーたちは虚ろな目で下を向いたまま、反応を示さない。しかし「月」が歩き始めると、その後を機械仕掛けの人形のようについていった。


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