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2話 ジユージュ

暫くして、食材を買い終えた二人。

ともに料理を作り、ともに食事を楽しみ、そろそろ寝ることにした。


「家主なんだしホモがベッドで寝ればいいのに」


「いいんだ!リュウはお客さんだし、今日くらいゆっくりしてよ!」


リュウはお礼を言うと、疲れていたのか、あっという間に寝てしまった。

リュウの寝息が聞こえると、ホモは立ち上がり彼に近づく。


(リュウ、風邪ひくかもだから布団を掛けてあげよう!)


まだ真冬でもないのに、ホモはたくさんの布団やタオルをリュウの上に被せていった。




リュウは布団を掛けられてから、少しずつ苦痛の表情を浮かべたあと、


「あつい…!!!」


と、はんばキレ気味に布団から飛び起きた。

自分の置かれてる状況を把握して、大きなため息をつく。

額には冬だというのに、汗が出ているほど体温が上昇していたようだ。


彼はいつもこんなに布団を被って寝ているのか

と、ホモの方を見る。

すると、自分とは逆に暖かそうな毛布一枚で、快適な眠りについてるホモの姿がそこにあった。

一瞬、この重たい布団をいくらか投げつけてやろうかと思ったが、ホモの幸せそうな寝顔を見たリュウは、もう一度小さなため息をついて、再度眠りについた。




次の日、目覚めたホモは、リュウがいなくなっていることに気がつく。

トイレや風呂場、家の周りも軽く探してみたがどこにもいない。

もしかすると昨日のことは、夢だったのかと思い始めた。




しかし、綺麗に折りたたまれた布団がリュウが存在していたことを示す。


きっと、まだ遠くには行っていない


そう思い、ホモはリュウを探すため、勢いよく家を飛び出した。




昨日出会った海、一緒に買い物をした町、村人が集まる広場、ありとあらゆる場所を駆け巡る。


「なんだかお腹がすいたな…」


いつの間にか市場へ来ていたホモは、周りから溢れる食材の匂いにつられる。

そんな匂いのなかでも、特別惹かれる匂いを辿っていく。

すると、とある大きな家が見えてきた。


あそこからいい匂いがする…!


近づいていくと、一人の女性が花壇に水やりをしていた。




「あの…」


「あら…どなた?」


栗色のふんわりとした巻き髪の女性が、不思議そうにホモを見ている。


「いや、えっと…な、何をしているのか気になって…」


さすがに匂いにつられてきたとは言えず、苦し紛れの言い訳をするホモ。


「いまギルドで使うハーブを育てているの。大切に育てたらそれだけ良いハーブに育つから」


「…ギルド?」


聞き慣れない言葉にホモは質問を投げかける。

女性は

これがギルドの証

と言って、小指にはめている指輪を見せてきた。




「私はヒノマ。魔道士ギルド、ジユージュにいるから、興味があったら訪ねてきて」


そう言って、ヒノマは大きな家に入っていった。

残されたホモは、また市場の方へと向かう。




市場は、たくさんの人で賑わっていた。果物や野菜、肉や穀物がカラフルに市場を彩っている。

もしここにリュウが来ているとして、リュウを見つけ出すのは大変そうだとホモは先が思いやられる気持ちになった。




あの人混みの中を歩くのは勇気がいるが、仕方ない。

ホモは、覚悟を決めて市場へと一歩を踏み出した。と、その時


「ホモ!!」




普段はあまり出さない大きな声で、リュウがホモを呼び止めた。


「………!リュウ、どこに行ってたんだよ」


ホモは、開口一番にポツリと言った。その声には安堵が滲んでいた。


「それはこっちが言いたい。ちょっと昨晩やたらと暑くて?ホモの家の裏にある泉に水浴びに行ってたんだけど」


やたらと暑くて、を強調して言うリュウに、ホモは首をかしげた。何はともあれ、リュウが見つかって、昨日のことが夢ではないと改めて確認して、ホモは嬉しかった。




どうせ市場まで来たから、と一人増えた同居人の分の家財道具や生活必需品を買うことにしたホモは、リュウと町をうろついた。


「歯ブラシは買ったし、コップも買った。バスタオルも買ったし……」


やけに洗面具ばかりを揃えたがるホモに、リュウは言った。


「ハンモック」


「ベッドじゃなくて?」


「ベッドは重いし、高い。それに、俺はハンモックの揺れが好きだ」


空を飛んでいるみたいで、とは言わなかった。どちらかといえば自分は人間だと思っているリュウだが、ドラゴンの姿のときはその辺の草の上に転がって寝るのだ。あまり寝ることに関してはこだわりはない。


「じゃあ…ハンモック買うか」


ハンモックを売っているのはどこだったか、とホモは市場をキョロキョロと見渡す。

すると、突然

「うわぁぁあああ!!!どいてくださぁぁああい!!!」

よくわからない生物の背にまたがった青年が、孟スピードで市場に突進してきた。




豚のようなイノシシのような、つまりはホモの見たことのない生き物を、上に乗っている青年は制御しきれないみたいだ。

市場にいる人は慌てて謎の生物の軌道からそれ、その軌道上にある店の主人は、急いで商品を安全なところにどけた。


「ごめんなさぁぁああい」


そのまま、ものすごいスピードで青年をのせた生き物は市場の中を駆け抜け、やがてその姿は見えなくなった。


「なんだ、今の」


リュウはボソッと呟く。

すると、すぐ近くの店主が声をかけてきた。


「ありゃあ、ギルドの連中だろうな。この辺りだったら魔道士ギルド、ジユージュに違いねぇ」


「またジユージュか…」


店主の答えにホモが割り込む。

リュウは知り合いなのか?とでも言いたげな顔をした。

それに対して、今朝のヒノマとの出来事を話すホモ。


「なるほど。魔道士には色んな人がいるんだな」


「いやいや!兄ちゃん!ジユージュはそこらの魔道士ギルドと格が違うぜ!!」


難易度高めのクエスト中の敵全滅は、ほかのどのギルドより優れている。

だが、いつもそのオマケで村壊滅まで追い込んでいる。


一方で、一般的なクエストでも、たかが掃除や買物や採取でも、何かしらの破壊活動を行なっているも、本人たちはわざとしているわけではない。


ギルドには多額の請求書が後を絶たないみたいだが、数代に渡る伝統的なギルドだからか、それともどんなクエストでも一応の達成はしてくるからか、依頼が減ることはない。


「…まっ、やることは派手だが信頼のあるギルドって言やぁいいかな」


と、店主は苦笑いして話してくれた。




その話を聞いて、面白そうだと言わんばかりのホモとは対照的に、リュウは嫌そうな顔をしていた。


「って、忘れてた。残りの家具も揃えないと!」


「あ…」


本来の目的をすっかり忘れていた二人は、市場巡りを再開したのだった。


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