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見知らぬ世界で

誰かに呼ばれている、聞き覚えの無い声。

だけどその声には確かに感情がこもっている。その声に引き寄せられるようにして瞼を上げると、見たことも無い天井が視界内に入る。

その材質には見当も付かない、ヒノキのようにも見えるが明らかにヒノキでは無い。

そんな大工顔負けのことを考えていると、視界内に新たな情報が飛び込んでくる。

私が居た世界では見たことも無い、長い耳。それに、男性も女性も驚くほど肌が白い、生まれてこの方、美容と言うものに一切触れてこなかった私でさえも、嫉妬してしまうほどに美しい。

その時、一人の女性と目が合った。

「・・・!―っ!」

その女性は、私と目が合った瞬間、驚きに目を見開き、ポロポロと涙を流し始め、その場に座り込んでしまう。

そんな女性の様子に慌てて駆け寄ってきた男性が女性と何かを話す、こちらを指差した女性の視線の先に居る私を見つけると、男性も女性と同じように涙を流し始めた。・・・何がそんなに悲しいのか。

その二人に、医師と見られる男性が歩み寄り、深刻そうな表情で二人に話しかける。

しかし、二人は医師の言葉に不思議そうな顔をして、またもやこちらを指差す。

医師はそれに従いこちらを見ると、ワ○ピースもかくやという程のリアクションをして走り出した。

そして少しして私のいる部屋に飛び込んできた医師たちは、私を抱き上げ、廊下を抜け、物々しい部屋へと担ぎ込まれる。

「―!?―!」

ベッドに寝かされた私の周りで医師たちが大慌ててで看護師に何かを叫んで、看護師が部屋を飛び出していく。

って言うか、ここ日本じゃないわね。言葉がさっぱり解んない。

それからは、MRIみたいな機械に通されたり、心電図のようなものを測ったりしたが、一通り終わると医師たちは、お手上げだとでも言うように機械を片付けて、ああでもない、こうでもないと話し合いを始める。

その話し合いにも徐々に熱が入っていき、討論会のような有様になっていた。

するとそこへ、先程部屋を飛び出していった看護師が一人の老人を伴って戻ってきた。

医師たちはその老人を見るなり驚くほどの速さで跪く。

老人はその様子に驚く素振りも見せずに私の前まで歩み寄ってくると、懐から一粒の種を取り出した。

すると老人は徐に種を握りこみ、呪文を唱え始めた。

『生命の血族よ、我が呼びかけに応え、この種に大いなる息吹を!』

老人がそう唱えると、種は独りでに震え出した。

「!?」

震える種に、ヒビが入った。そのヒビは徐々に種全体に広がってゆき、ついには鮮やかな緑色をした双葉が顔を出した。

! 水も土も無い状態で芽吹いたと言うの!?

老人は咲いた花を私の手に握らせてくれる。

その花を見つめ私は先程老人が唱えていた呪文を思い出す。

『生命の血族よ、我が呼びかけに応え、この種に大いなる息吹を!』

周囲に居た人達は、皆一様に驚きの表情を私に向けてくる。

? 私が何で呪文を唱えられたかって?それは呪文の言葉が日本語だったから。

私の手の中の花は、赤かった花弁が徐々に茶色くなっていき枯れてしまった。

この呪文は二回目は駄目なんだ・・・

私が肩を落としていると、茶色くなっていた花がゆっくりと起き上がり、その花弁を蒼く輝かせ始めた。

周囲の人は蒼くなった花に更に驚き、目を見開いている。

老人は正気に戻ると、私の手からそっと花を取って、私を抱き上げた。

すると、部屋を出て行く。

何処に行くのか不思議に思っていると、さっきの抱き合って泣いていたカップルの前で歩を止めた。

カップルは老人を見るなり跪こうとしたが、老人はそれを制してカップルに何か話し始める。

二人とも真剣な顔をしていたが、話が進むと、顔を青くしたり、二人で抱き合ったり、実に忙しい人達だ。

話が終わると老人は私を女性に渡して去って行った。

二人とも老人の背中が見えなくなるまでお辞儀をしていた。

頭を上げると二人は私に、眩しいほど優しい笑みを向けてくれた。

・・・ってえ!?この二人って私の両親!?若っ!!

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