B058.人外テストの卒業生
「よくぞここまで来たな勇者達よ、俺がこのダンジョンと今回お前達の物語のラスボスであーる!」と最後の間とやらの扉を潜った後にはテンプレートに有ったモデルの玉座とその上に鎮座する黒く丸めなボディー、複数の牙だらけの大口と人と同じくらいの目が全身に敷き詰められ、その目と口の間には長く蠢く触手を躍らせるように動かすモンスターが不定形な声で我々を出迎えた。
がりるん、レベル42シアエガ、このプレイヤーはここ2年程で有名になった廃人である、一日の睡眠は5時間。夜更かし深酒はあまりしない様にする、栄養を考えた三食規則正しい食事、一日40分の散歩と筋トレは欠かさない。
規則正しく健康的な生活こそが最強のプレイヤーとなると謳う混じりッ気なしの廃人とSympaxiのプロフィールと日記に書かれていた。無論、私はその日記に対し全て「駄目だね!」評価を付けている。
「お前等はこのダンジョンコアとリスポーンコアの破壊を目前に倒れて全滅した挙句にそこに備えたキッチンでドロップアイテムを最近料理に興味を持たれたホミミンさんに調理されてサーバーダウンの時を迎えるのだ!しょーくしゅっしゅっしゅ!」と高笑いを上げるシアエガの触手先には確かにキッチンが備わっている。
それ以外の床や壁も天井も全てが鍾乳石が突き出しており、最後の間は明らかにローパーが優位な地形となっている。
「木馬展開は無理だな、砲撃はダンジョンコアまで届くか?」とカシヲが槍を構え近くの鍾乳石に隠れながら少し前進し、周囲を素早く見回す。
「奥行き90mって所だけど、コアの配置がいやらしい、エーテルモーターは鍾乳石に当たるだろうし、ダンジョンコアを盾にしてリスポーンコアが配置されている様に見えるわ。」とミットが自慢の目の良さで白く輝き緩やかに回転する結晶体の奥にもう一つのピンク色の結晶体があるのを確認した。
ミットがその結晶を見る為に少し横に歩いた瞬間、天井や壁から無数の触手が飛び出してきたが、ミットはこれは歴戦の勘で緊急回避に成功する。
「触手慣れしてますね。プロの方ですか?」と暗闇から失礼な発言が聞こえてくるが、「誰のせいで対ローパー戦のプロになったと思っているんだ!」とミットは悪態を付く。
ローパーの触手やマミーの包帯等の引き寄せ系スキルは確かに強力だが、発動を見てから回避は不可能ではない。ただし0.5秒以下の反応速度が求められるので、歴戦のプレイヤーでも大体は「このタイミングで来たらヤバイな。」と思った時に回避運動をする。
「さて、どうする?」とカシヲが周囲を見渡しながらタンクのエイザスとヒーラーのヤマチャンで固まりながら味方の前進か行動を促す。
そこへロンメルファントムの木馬乗りが「やれやれ、夢が無いけど仕方ないな。」と言いながら木馬に備え付けるはずだった大砲を地面に設置し始める。
「あ、ちょっとそれナシ、タンマ。」と暗闇の中から抗議の声が聞こえるが、何せ大砲は木馬に積む予定及び木馬から取り外した物が15門もある、霊炉は一度備え付けた後に取り外しての再利用は修理をしないと使えないが、大砲の類は普通に使える。
「砲座には使わなかった木馬の木材があるから問題ないな。」と大量に設置されつつある大砲に対してローパー達からの焦りの攻撃が始まった。
「ウヒョオオ!来たぞー!」と叫びと共にローパー達は大砲の展開を妨害しようと必死に毒や触手を飛ばしてくる、この状況になると我々の目標は大砲を守るという事になる。
ユウファイやカシヲが器用に砲兵へ伸びる敵の触手をはじき落とし、その触手の発射元へエンシェントエーテロイド達が砲撃モードとなった姿から光線を撃ち出しローパー達を焼こうとするが、ローパー達も鍾乳石から攻撃時のみに顔を出し回避、もし大ダメージを受けた場合は後方へ下がりその自己再生能力及び信仰魔法により回復を図る。
「よし、大砲一発目いくぞー!」という声の直後にドカン!という音が響き青白い光の砲弾が部屋の奥にあるダンジョンコア、その隣に飛び出していた鍾乳石を粉みじんに砕いた。
「あんまり精度よくねえな。」「そりゃ普通大砲って土台をしっかり付けたり車輪を付けないと当たらないもんだろ?ナポレオンとかその時代より前の状況だぞこれ。」とロンメルファントムのメンバーは他人事の様にダンジョン内における設置砲台について議論をし始めるが、それに続けてドカンドカン!と味方に囲まれて比較的安全な大砲は砲撃を開始した。
「さすがにダンジョン内で大砲ぶっぱなす奴が出るとは思わなかったわ。」
「まぁ、ダンジョンコアがあるから崩落はしないので賢いプルね。」
「コアが壊れればあっちの勝ちだしな、地味だけど新しいダンジョン攻略方が生まれた訳ですな。」
と暗闇が囁きあう。
「エーテロイド隊、コアヘノ集中攻撃開始。」とパイスの号令と共に機械の兵士が大砲に続けてダンジョンコアへ向かい光線を集中させて放射する。しかし、これは当たりはするも効果が薄い。ダンジョンコアは物理属性攻撃以外には強いという研究結果が出ている為だ。
「駄目もとだけど駄目だったね。」とリニアがすぐに光線をまたローパー達を焼く使い道へ戻す。
「ジャー、ヤッパローパー焼コッカ。」とエーテロイド達は改めてローパーへの牽制へ当たる。
突如、この砲兵達へ近寄ったアブホスの一匹が「いただきマンモー!」とリニアの白い肌に触手を絡み付けるが、残念な事にエーテロイドは滅茶苦茶重いので逆にこのアブホスが壁から剥がれてリニアの元へ引き寄せられる事になった。
「あーれー!」と情けない声を出しながらそのアブホスは後方にいたこの軍団の中では弱い部類に入るテクチャルに囲まれ袋叩きにされるが、直後にそのアブホスは触手と肉をアイテムドロップしてからダンジョンコアの奥にあるリスポーンコアからにゅっと姿を現す。
「メカっこは重いから引き寄せは無理だぞー!繰り返す!あいつらは重いぞー!」と暗闇から叫び声が響く、これに対してリニアは「失礼ですね!」とぷりぷりと怒りながら光線を乱射する。
「大砲、て~。」とロンメルファントムのメンバーがやる気の無さそうな声で大砲をダンジョンコアへ向かって発射する。隅の方に展開した砲手は敵の攻撃を受けやすいので既に数名が強力な毒や触手引き寄せからの転落ダメージで戦闘不能に陥るが、これを素早くミツバチの様に飛び交うテクチャル達が救助しにかかる。
大砲は確かに無と衝撃か刺突の属性を持つのでダンジョンコアには有効だが、やはり精度が悪いのかなかなかコアに命中せずに決定打にはならない。
「当たらんな。んー、んじゃアレ壊すか。」と砲手の一人がこの部屋の隅にあるキッチンへ向かって砲撃を開始した。その少しファンシーだがなかなか良いデザインと利便性を考慮された可愛らしいキッチンは突如容赦の無い砲撃を受け、綺麗に並んでいた食器や調理器具が空を飛んだ。
「精神攻撃は基本だな。」と言いながらそれに続けてロンメルファントムの砲手は情け容赦ない砲撃をダンジョンコアより敵のキッチン破壊を目的として開始する。
「あああああああ!私のキッチンがああああ!なにをするだあああプルさん!」と叫びながらギガネクスの一匹が大砲に対して突撃を仕掛け、それに続けて他のギガネクスやアブホスが一斉に突撃を開始した。
「めっちゃ精神攻撃効いてるデチュね、はい放浪熱。」とラットウーマンのイトラがその突撃し密集しかけたローパー達へ情け容赦ない伝染病を発射する。
「ぐわ!またか、マスクと浄化急げ!」「まだマスクを使うな!まだリスポーン出来るんだからもう少し堪えろ!」とローパー達は混乱状況に陥ったのを見て、砲手達はその突撃の失敗したローパー達へ砲弾の雨を加える。
これにより半数以上のローパーが戦闘不能になるも、ドロップアイテムは落としても死体は見せぬ速さでリスポーンコアより再出撃をしてくる。
「今だ!全員詰めろ!」とカシヲの号令と共に近接職と固定砲兵を除いた後衛は前進をする。
「くっそ!結構詰められた!」と暗闇が焦りの声を発した。
「大砲とエーテロイド!詰めろ!前衛は迎撃と時間稼ぎを継続!」とルサミナが信仰魔法を展開しながら敵の目前に出て緊急回避をしながら囮役に出ながら指示をする。
「大砲、移動には少し時間かかるぞー。」「木材が足りないか?」「あ、おかわりありますよ?」「この世界、馬っていねえから牽引がなあ。」「霊炉むき出しでもいいから軽自走砲とかあればいいんだがな。」とロンメルファントムの砲手達とゴーストのルナーンが必死さなしの表情で大砲の運用とコツについて話合いながら作業をしている。
「20メートルは詰められたな。」「マシンボルトの射程に入ったらもうコアは持たないプルよ。」「マシンボルト以前にあの大砲の精度が上がったらお手上げですな。」「ダンジョン内への大砲持込対策をするとしたら水場を用意。しかし、そうなると海の民が攻めて来たらお手上げだ。」「大砲持った海の民でダンジョン攻めれば大体どのダンジョンでも落とせる気がするプルね。」
「ローパーが全員ギガネクスになれば勝てるかもしれないが。」
「隠密性が落ちるから難しいですな。」「ステルスは障害物を配置して誤魔化すくらいプルね。」
ドカンドカン!とパシィ!という敵からの砲音が最後の間に響き渡る。
ローパー達は確実に追い詰められている、だがこれでいい。問題はこれからの我々の戦法の開発にある。
「こっちも大砲用意した方が良かったんじゃねえか?」「え?ローパーが大砲使うなんて駄目でしょ。」「魔王軍の弱い所はその辺プルよね。イメージ的にそれは駄目だろって物があるプル。」
「はてさて悲しいかな!勇者達よ!正々堂々我等を打ち倒してみろー!」と挑発した所で敵さんはガチなので砲撃の手を緩めないし前線にいる冒険者は防衛前進専念だ。うむむ!
「あ、もう11時ですよ触長。」とセルフバンジーは触手を動かし手元を叩く動作をする。
「え、マジデ?まーこのままでも負けるからなあ、エンディングの時間くらいくれてやるか。」とがりるんは息を吐き出した後に「突撃用意!目標は各々がこれだと思ったかわいこちゃん!野郎には目もくれなくてもいいぞ!」「「おおーーー!!」」と悪役を演じる為に残されたローパー達は最後の突撃を開始した。
「うおうおうおう!敵チャージ!全部来たぞ!」とカシヲが叫び声を上げて槍を構えるが、敵の動きが妙にバラバラである、浸透戦術!?とカシヲはヒーラーを守るように槍を構え攻撃の要である砲兵達にも視線を向けたが、敵の攻撃は散漫である。
「ひゃあああ!」「きゃああああ!」「いやああああ!」と黄色い悲鳴が響き渡るのが目立つ、狙われているのはテクチャル、ノースマン、死神でも「うん、かわいいよな!」とカシヲが心の隅で採点していた女性キャラクターばかりである、「うわ!俺はそういう趣味ないんですよ!」と最後列にいた観戦武官のゴーストですら襲われている。
「あら、セルフバンジーさんじゃないですか~。私なんて引っ張ってどうしたんですか?死にますよ~?」とユウファイが一体のアブホスと正面で見詰め合っている。
「いや、どうせ最後だからユウファイさんに倒されたいかなと思ったんですよ。」とアブホスは驚きの発言をした。「あら~光栄です~。と言う事はそっちはもう終わりでいいんですか?」とパンダ系の獣人少女はアブホスに上目遣いで伺うと、「ああ、もういいですよ。あれ壊しても。それにそろそろ全てが清算されるはずです。」と暗黒触手生物とパンダの獣人はお互いに手を取り握手をし始めた。
「んー、癪だな。エイザス、コアに向かうぞ。」とカシヲは無視されたのを察して無防備になった前線を進むが、「カシヲ、ヤマチャンが脱がされてるぞ。」と無情冷静な口調で伝えてくるが、「あいつ、ちょっとショタ受けしそうだからヤバイとは思ってたんだ。気にするな。」と言いながらダンジョンコアへ堂々と向かう、その後をローパーに相手にされなかったむさ苦しいロンメルファントムの砲兵達が溜め息や愚痴をこぼしながら続く。
「あー馬鹿馬鹿しい終わり方だったな。」「冒険譚としては最悪だな。」と苦笑いをしながら白く輝くダンジョンコアを各々の獲物で叩き割りにかかる。ダンジョンコアに亀裂が入り砕けると、視界は一転し周囲は金属の建物で包まれた風景に変わる。
ダンジョンが破壊されてもしつこく可愛い系のアバターの攻略メンバーに襲いかかるローパー達もしぶとく未だに生き残っている。
その中で異彩を放つローパー、シアエガとカシヲの目が合った。
「あ、今気づいたけど、お前天魔のキャバクラのお客様第一号じゃん。」とそのシアエガは馴れ馴れしく声を掛けてきた。
「馬鹿野郎!女子勢に聞かれたらどうすんだ!しかし、あの場所もこれで潰れたのは残念だ。責任者はまたアレ作っていただきたいもんだ。」とカシヲは残念そうに首を振り応える。
「アレ作ったの俺なんだよ!どうだった!?いいセンスだったろ!?」
「ああ、あれは良い場所だ、お前がオーナーだったならまた是非作って頂きたい。」
「よっしゃ任せろ!需要があるならやる気が出るってもんだ!所でなんだ。」
「そうだな、言いたい事は分かる。ラスボス戦、やらないか。」
「男の相手は趣味じゃねえが、ラスボス戦は消化しとくのもノルマだ、んじゃいくぜ冒険者!触手乱舞!」
こうして故国奪還隊は無事に機械都市グラハティアの奪還に成功しましたとさ。
「天魔のダンジョン陥落ー。」という報告が覇都をぐるぐる回りながら敵を轢き殺す集団に混じっている俺の耳に入った。画面上の時計を確認すると午後11時5分。
地楽園を制圧しているギルドDDDマスターイゾログに予め御願いしていた事への合図を、外部チャットツールでアドミラルへ短い連絡を入れる。
「終戦、各々の占領を解除されたし。」と俺は伝えると「承知した。」「しゃーねえな。」という返事の後に「ダンジョンコアを廃棄したぞ。」という連絡を受け取った。
次に俺がする事はこのお祭りの幹事として締めの挨拶である。
「全軍に告ぐ、魔王軍はこれより覇都から全員退却とする。これは強制ではありませんが、残り1時間も無い時間をお祭り騒ぎで過ごすも良し、占領されていた状況から開放されたホームをもう一度見ても良し。各々で有意義な時間を過ごして下さい。この戦いに協力して頂いた関係者の方のご協力に感謝します。これにて私魔王の活動は停止させて頂きます。皆様、良い終末を!」
と俺は挨拶をした後にノッシノッシと覇都エルスローンの城門を潜り外へ向かった。
東と西を見れば緑色の雪の様な輝きに包まれた土地が広がる、儚げな気持ちを持ちながら俺の鈍重な歩みを進めると、次々と共に戦った仲間達が集まってくる。
「魔王役お疲れ様でした、魔王とイチプレイヤーの境界線、なかなかの者でしたよ。」とインテリオークのバッシーさんはメガネをくいっと上げておだててくるが、少し気恥ずかしい。
南西の空より凄い速さで迫ってきた邪竜のアレキシさんが俺の頭上を旋回しながら、「良くも悪くも出来る事はやったでやすね。」と満足げに空を支配する。
「コビット庄は半壊して的の再出撃できなくなってるけど、ドワーフや海の民ホームからまだ敵が来て戦闘継続してるけど、オイラはもういいや。」とゴブリンのレオさんが走り寄って来る。
「んー、これといっておもしろい敵はいなかったな。」とレオさんの後ろからオーガの姉御が続いて来る。
「お兄さん、最後は何処へ行くんですか?」とジノーの声で思う、天魔のダンジョンという俺達の故郷、敵から奪った土地とはいえ心の残ったダンジョンは既に無い。
「いいところがあるっすよ!」とロドリコがまた悪い事を思いついた様な顔でその場所を口にする。
「いいね!わたしも一度行ってみたかった!」とエリーンは無邪気に笑う。
「じゃあ、集合地点はそこでナイトさんと愛微笑に連絡を入れよう。後はスマグウさんやシャンコさんや将軍とかも誘ってみんなで押しかけてみよう。」と俺は祭りの後の打ち上げ会場を決めて、大竜魔王の姿から人型になり、着陸してきたアレキシさんの背中に跨った。
「ノムラ、故郷ふっとんじゃったよ?」とアマゾネスの戦士はコビットの少女に残念そうに語りかける「形ある物はいずれ壊れるのだ。」とコビットの少女は達観した様に緑光の雪を見つめ続ける「そうは言うがな、酷いもんだなこりゃ。」とストライダーの男は吹き飛んだ牧歌的だった村を眺めて溜め息を付く
「この風景もすぐにワイプされるのだ、それよりも魔王軍が覇都から引き返したらしいからバースワイルド亭で宴会するのだ!」とノムラは最後の一時を既に瓦礫になっているかもしれない酒場で過ごす事を提案する。「まだ残ってるかしらねえ、あそこ。」とラニが心配そうに呟いた。
「もしバースワイルド亭が無かったら一度行って見たかった所があるんだが、そこへ行かないか?」とグンベイは提案する。「どこなのだ?」「そりゃーお前。」
ハイロン西の河を下り大湖へ向かう船上、「提督、これからの針路はいかがしますか?」と副官が尋ねてくる。我々は海の民であるがゲームの仕様上で北の海は竜神に塞がれて進めない、という設定である。
しかし、今我々には霊炉や竜炉を搭載した戦艦が30隻残っており、最後に一花咲かせる余力はある。
「そうだな、目標は北北西。大湖を抜けて大海に、竜神に挑む。異論はあるか?」とアドミラルは確認を取る。
「いえ、アイアイサー!船団!進路北北西に取れ!船団目標は竜神!繰り返す!我々は最後に竜神に挑む!」
カンカンカンと鐘の高い音が鳴り、と舵取り同士が船団の配置について連絡をし合う。
「玉座より甲板の方が落ち着くな。」とアドミラルは呟きながら、南東に去り往く緑光に包まれた都市の廃墟を見てから呟いた。
「待ってましたよー!」「我々の方が近かったからな…。」と悪魔の少女が手を振り、人魚が俺達の影をみながら呟いた。
「お待たせ、ヨグの姉御とがりさんは来れないみたいだなぁ、まだ戦ってるよ。」と俺は残念に思いながら口にする。
「シャンコさん達は大雪原、スマグウさんは世界一周の旅をするって言ってましたし、イゾログ君とイベリウスさんもまだ戦闘中らしいですよ。」と愛微笑が情報網から各々の小さなエンディングを伝えてくれる。
「もう少しゆっくり出来ないもんかねえ、そう思いません将軍、カラシさん。」と俺はすぐ近くの安楽椅子で寛ぐオークとドワーフに尋ねた。
「若いうちはそれでいいんですよ。」「ワシも若い頃はそんなんじゃったな、むしろお前さんはもう少し頑張れよ。」と二人のおっちゃんは今時の若いもんはと愚痴り合う。
無論、将軍やカラシさんの周囲には大量のオークや覇王軍所属のギルドメンバーが戦闘も起こさずに寛いだり情報交換をしているが、案の定「姉貴!しにくされやー!」と言いながら阿修羅の女チビパンさんに突如殴りかかるオーガ女のマリッドの姉御の姿がそこにあった。
「お、チビパン対マリッドか。結構ない対戦カードだからおもしろいぞ!よし!張った張った!オッズはチビパン2でマリッドが1.6だ。チビパンは最近対人戦してなかったか怪しいな!」とドワーフのおっちゃんは素早く作った賭け券を売って歩く。
「よし!俺も対戦相手を募集するぞ!我が名は野風!対戦相手募集だ!」とオークの戦士が立ち上がり武器を構えると。「ふむ、この私、ヤイコがお相手致そう。」と頭にリボンを付けたライカンスロープが受けて立とうとしたが、ヤイコさん人狼女だったんだ。
決闘と情報交換、どの勢力がどうでどの種族がおもしろくてダンジョンはどう攻めるか、ファーミングはどうだの会話がはずみ一面は和気藹々とした様子になるが、そこへ緑髪の美しいエルフ、エルフの女王エールートが両手で顔を覆いながら。
「なんでウチで、エルフホームで集まってやるんだよ…。」ととても嫌そうな声で嘆いた。
・目標
MMORPGとして成立するけど新開拓を創造したい、マイナーからメジャーな作品までのオマージュは容赦なく取り入れる。
対人要素は必ず入れる、人の最高の遊び相手は人である。
無理すぎるてこ入れは避ける。
でも怪しい要素は入れる。
半分以上は体験談である事。
自分よりネットゲーに人生を捧げている人間にも「なかなか。」と思われる内容を目指す。(筆者はおよそ20000~25000時間前後の人生ネットゲーに費やしている、それ以上かもしれない。)
毎日書いて自分の『流れ』を見つめる、どうせ働いて無いのだから働いている気持ちで書く。
・自身への指摘と戒め
長期連載にしなければ増やしたキャラと設定を生かせない。
寝起きから6時間以内に一話完成させないとつらい、つまりアフターファイブ副業としての執筆は難しい。
プロットを書き溜めても進行の上で不都合に気づく、後に大幅な改定が必要になる。
小粋なジョークがぽっと出ない、しかし言葉遊びで尺を延ばしてはいけないとする。
クロゴキブリの幼虫がまた2匹出たので本気で潰さなければならない。




