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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
人外魔境に咲く花
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B041.邪道ボス戦

敵の一つしか無い補給路を分断する、これを成し遂げれば絶望的状況にある覇王軍を勝利に導く事も出来、更には敵要塞の攻略への橋頭堡をも確保出来る状況になる。自軍からの名声が欲しいから指揮を執るのかと言われればそうかもしれないし、自分を試しネットという世界に挑みたいという思いもある。敵に戦術的完勝を収めれば勿論楽しい、そしてなによりも数年続いているこの精鋭部隊を手足の様に扱える指揮官というポジションの承認欲求の満たされ具合は半端じゃない、脳みそから醤油がにじみ出てきてるんじゃないかと思えるくらいにハイテンションで爆撃の雨を避けながら復帰狩りをしていたが、その脳みそ製醤油は酷く辛口になったと目の前に群がる暗黒の群れを見て感じる、味見せずとも分かる辛味だ。


敵との距離30m、一部のスキル以外は射程範囲外のギリギリを目算で見極めた俺は暗黒軟体へ声を掛ける。キャラクターの遠近感覚で1m単位の距離が判別出来るのはPvPをしなれた人間なら持っていて当然の技能だ。

「あっれー、がりさんじゃなーい。奇遇ですねー、なんでこんなところにいるのかなー。」とVCを指向性大音量モードMAXにして白々しく尋ねてみる、こいつの目標が補給路の維持じゃなければ戦わずに素通りして貰いたいので続けて、「東の戦列にはかわいいエルフやノースマンがいっぱいいるのになー。」と大きくアピールするが、奴等の強さの原動力は『自分に正直』な所なのでこういう誘惑をすれば効果はあると思ったのだが、この棒読み三文芝居は奴の一言でフィナーレを迎えた。


「なぜ俺達がいるか?簡単さ、そこに恐怖の悲鳴が上がるからだよ!後は嫌がらせも好き。」とこれまたサドマゾヒズムたっぷり溢れる返事が敵から届き、クククッと重なる笑い声と共に触手の群れは素早く残りの5mをヌチャリと音を立てて踏み込みに来るが、これを味方は全員後方へ下がり敵の射程外へ逃れる。

その直後に天から鋭い光の一閃と激しい衝撃音が敵の方角へズドンと落ちるのを見た、恐らくマグミさんが『神の杖』を発動したのだろうが、このタイミングでそういう必殺スキルぶっぱは実にもったいない。


ローパーにハズレ特性無し、とエルフ達から評された様に奴等は自己回復能力と毒による攻撃力とCC、触手による機動力と追撃力、更にはステルス性能も備えられた種族である。

そして何よりは目の前のローパー達は全てが変異済みのレベル20超えである所だ、こちらの部隊もゴールデンウィークを利用してレベルを効率よく上げてるので全員がレベル20超えを達成しているが、レベルが互角くらいならば頑張れば勝てるんじゃね?と言われればそうもいかない。

戦術において、戦う前から敵と五分以下の状況には持ち込むのは下策である。では練度の差で勝てるか?と問われれば、奴等はダンジョン内で他の種族に頼らず密集して戦っていた奴等だ、連携力はもしかするとこちらよりも上かもしれない。


「なんだよ、逃げるのかよこの腰抜け野郎!」「僕達も腰とかないプルけどね。」とがりるんとクラゲの様なローパーの変異種が漫才をしているが、本気でこいつらの対策を考えなければならない。我慢できずに遠距離魔法を仕掛けに行く吸血鬼が遠距離攻撃とほぼ同じ射程の触手に絡め取られ敵陣内でなぶり殺しにされていく。

俺はドッペルゲンガーだが敵の指揮官であるがりるんに化けて騙すという手は絶対に通じない、俺達人間系の外見をしているキャラクターに比べて人から離れている種族程に操作性というか戦い方や動き方が人型とまったく違うので一瞬でバレてしまうのである。

陸上で活動していたドップが敵の亜竜に化けたが飛行モードが難しくて袋叩きにされていたシーンも過去に何回も見た様に、俺がローパーに化けて敵を騙しきる自信もない。変身してすぐに殺されて、「なぜ一瞬で俺の変装を破った!?」なんて三文芝居もしたくないからな。そもそもドッペル指揮官は生き延び易い指揮官としての効果が期待されている。

チラリと横を見ると苛立たしげな顔をしながら多腕で腕を組むチビパンさんがいる、「あいつら軟体だから物理通り難いんだよな。」と言い、反対側を見るとヤイコとルナが「いやーきついっす。」幽霊や人狼の首を横に振った。


敵の補給戦線はビータ君という指揮官と異様に優秀な航空部隊が居なくなった今では覇王軍70vs魔王軍90。せめてその内の魔王軍30ユニットの奴等がローパーでなければ余裕で轢き殺せた物をこいつらのせいで台無しである。

唯一の救いは敵の復帰組みが味方のはずのローパーを見てから「うわ、気持ち悪い。」と言いながら真っ先に最前線へ向かっているので敵兵力が増えない事だが、ここは覚悟を決めるべきなんだろうな。

「カウント取ります、5秒後に突撃、目標は敵の通過。」と俺は吸血鬼隊に潜り込ませた身内に突撃のタイミングを伝え、補助魔法の展開と密集隊形を作るように要請する。

その突撃の構えを察知した敵のローパー達はこちらとは逆に散開し、こちらの突破狙いに構わず包囲を狙いに来る。


「…3.2.1.0チャージ!」と掛け声を上げてから突撃を開始する、吸血鬼やドッペルゲンガーは闇に溶け込み、その外はタンクを正面に置き敵の中心へ突撃をしかける。

「『反歌』発動します!」と歌神を信仰していたギルメンが敵の触手と毒によるCCからの防衛を展開するが、散開していた敵の狙いはこちら中央突破の包囲殲滅ではなく、Dot毒ダメージによる嵐であった。

こちらからの突撃は散開したローパー達が互いに触手で味方を安全な位置へ引っ張り、突撃先の中央をがら空きにしてからこちらを包み込むように移動しながら毒による遠距離攻撃でこちらのリソースを確実に減らしてくる、毒の解除には血神や果神信仰魔法が必要になるが、敵は無論それを備えているも全員が持っている訳ではない。しかし、敵のローパーは全員が毒攻撃を所持している。

予備のアクセサリに毒耐性の装備を用意しておけば良かったと思えたが、火や風や光や暗黒や衝撃属性なら兎も角、毒属性対策をしている人間はあまりいない、理由は今までほとんどのアラクネとローパーが一箇所に固まっていた為に我々と毒属性は接点があまり無かったからだ。

「『風火』を切らすな、ローパーの唯一の弱点は機動力だ!」と味方にスキルの展開を促すが、ローパーにも策神信仰がいるだろうから打開策とはならない。


そして、正面に見えるのは敵の最大手ギルド天魔の補給線防衛隊、その数はおよそ60人。左右や後方からローパーの毒攻撃を食らう中で訓練と装備の整った部隊を突破しなければならない。止まることは即全滅を意味する。

しかし、正面敵はローパーという特殊な種族ではなくデビル、オーガ、ゴブリン、マミー、リザードマン、マーマン、ネレイドといった最前線や飛行、高機動、特殊部隊からはぶれたユニットばかりであるが、こちらの突撃を予め察知する練度と異様に整った装備を確認出来た為にこいつらの戦闘も避けたい。


「連続『雷影』用意、『反歌』が切れた瞬間に決められた順番で発動!」と予め設定しておいた全力での退却作戦プランを突撃作戦へと切り替える。

「1番発動。」「2番発動。」と策神を持つ味方が順次グループの瞬間ステルス化をしながら敵の素通りを狙う。それを見た敵のローパー達はステルス看破である光神信仰の曳光弾を発動させるも、ローパーから看破される位置はもう通り過ぎた。敵ギルド天魔の防衛隊はこのステルス突撃に対して即座に看破をする事は出来なかった、なぜなら看破スキルは光神信仰がメインなのでそれを今まで取れていなかった魔王軍に対してステルススキルはとても有効である。


策神のグループステルス化スキルの『雷影』が出尽くした頃には敵の主力とこちらはすれ違い終わる頃であった、敵は我が軍団が目の前から消えた事よりもすぐ後ろ側に出現した事に驚きの反応を見せ反転攻撃を図るが、我々はそこへ幻惑、光神、血神、果て神の視界妨害を連打し決戦を回避する。

「くらえ、『放浪熱』。」と味方のラットマンが前作での反則魔法を最後っ屁の様に敵へ振り撒き、「『スパゲッティーコード』発動します!」と果神というマニアックな信仰を取ってくれた人が更に敵を混乱状態に陥れてくれる。

敵中からは「なんじゃこりゃあ!」「敵後方に出現!」「BC兵器!ガスマスク着用!」「敵のスパコ!回復職はダメージシールドと自然回復向上へ切り替え!」と混乱と対策に追われる声が響く。


さて、ここで俺は大きな決断を迫られる。

プラン1、ここで反転して戦う。その場合はもしもの撤退先が更に南東になるので次の戦線復帰は遅れこちらの復帰組みとの合流は困難となる。

プラン2、このまま北東へ向かい敵の東側軍団の後方へ乗り込み突き進み味方の東軍へ逃げ込む。

これはー、プラン2かなぁ。「このまま北東に突っ込んで味方と合流を目指すよー。」と俺は味方へ連絡を入れるも既に味方からは20名が脱落している、脱落者は主に吸血鬼である。

しかし、吸血鬼ギルドのマスターであるジャロニモは有名なだけあってしぶとくも生きているし、死神信仰を取る吸血鬼は多いので一回倒れても意外とまた起き上がって戦線に復活してくる者もいる。

我々の様な特殊な戦闘訓練を受けずに残ったのはたいしたものだと思うが、味方でもドン臭い部類のマグミさん等は案の定もう倒れていて「死んだ~、合流したい~。」と復帰地点から泣き言を口にしているのでやはり更なる敵中の突破を目指さなければならない。そうなると必要になるのは味方東軍の突撃による支援である。

俺は素早くゾーンチャットにて「東軍敵後方かく乱す、10秒後突撃用意ヨロシク。」と伝えると、ノトーさんが「突撃カウント開始します、カウント10.…。」と打てば響く反応を返してくれる。

こちらは敵の補給線を叩くという重要な任務に従事していたので無碍むげには扱われないはずだ。

俺達は残り50人で敵東軍後方への突撃と敵ローパー達や補給線防衛隊の追撃を受けながら生き延びなければならない。




味方の艦砲と木馬の射撃と重なり敵の空爆や味方の自爆攻撃が天より降り注ぐ、陸上は既に地獄に成り果てているので敵味方で翼や砲を持たない種族は地下にダンジョンを作る時の地下坑道を掘り進むか陸上で塹壕を掘り進めお互いに戦うしかない。

「グンちゃん、塹壕でも良かったんじゃない?」とラニがあの陸上に戻ることを提案してくるが、オネエキャラは大体メンタルが強すぎる。俺はあんな地獄に戻るのは御免なのでこうやってツルハシで坑道を掘り進めて敵との遭遇戦に備える。ノムラも「おんもは地獄なのだー。」と言って一緒にツルハシを握ってくれる。


敵も坑道を掘り始めているという情報がゾーンチャットから得ていたので、お互いの精神衛生上の為に一部のプレイヤー同士は陸上戦闘を放棄してこうやって地下に篭って戦い合っている。

既に数回敵とは遭遇しているし、周囲にも同じ様にツルハシを振りかざす味方が多く見られる。

坑道を進めるだけ進んだらダンジョンコアと復帰地点を配置し味方の援軍を増やしているが、問題はそのコアと復帰地点がフラッグディフェンスのあるFPSの様に置いては破壊されをお互いに繰り返している様子だ。

今居る場所の近くでコアが破壊されたという報告がログに流れた。近くに敵がいる、俺達は戦う為に来た、そうなればその壊されたコアの位置へ向かおう。獲物をツルハシから武器に持ち替えて恐る恐る進む。


コアの破片の上には奇妙な紋様の入った目付きの鋭いアラクネが佇んでいた、その周囲にいる敵もまたアラクネとネレイド、ハーピーといった異形の娘達である。その中身が人間であるはずの女怪達が一斉にこちらを見た、その眼は本当に人間なのだろうかという疑問を持たせる狂気の瞳瞳瞳。


「やば、ヨグなのだ。」とノムラが小さく呟いた。ヨグという名は聞いたことがある、魔王軍最大手ギルド天魔、その中で最強のプレイヤーと言われる『ア・ヨグ』レベル37。

匿名掲示板晒しスレッドにも悪竜ビータと並んで常連の有名プレイヤーである。

ア・ヨグの評価もまた有名である、何せこのプレイヤーは片っ端から敵にCCを掛けても全ての敵のCC耐性のクールタイムを暗記し計算し、CCに無駄な時間を作らず。敵の防御力とMPを一撃で見極め確実に弱い順から配下に攻撃指示をし潰しに来るのである。

配下、もしくは下僕扱いされている彼女の取り巻き達もこのマンイーターには従順で、一糸乱れぬとは言わないが、戦って死ね、わちの盾になって死ね、と言われれば喜んで身を投げ出すメンタルモンスター揃いである。


現状敵の数は12と少なく、こちらは陸上から逃れコアの破壊ログにより集まってきた20人と数で優位なプレイヤー達が武器を構えるが、不思議とこの敵に対して勝てる構図が思いつかず、HMD下の顔に脂汗が浮かぶのが分かる。


その瞬間、そのマンイーター達が森林魔法による一撃を素早くこちらを打ち付けてきた。その大したダメージでもない一撃を全員が不意打ちで食らう。まずい、これが噂のプレイヤー格付けか。

この一撃で敵から少し距離を取った味方は敵への突撃音頭を取る指揮官タイプがいない為に防衛に回ろうとする。

すると、女怪達の頭がノムラを指差して、「あれ。」と小さく呟いた。まずいノムラがやられる!守らないと!俺はタンクだ、仲間を守らないといけない。「ノムラ!俺の後ろから離れるな!『林山』『魚鱗』発動。」と俺は言うとそれに合わせてラニが俺の左手に回り込みノムラを庇うように光神魔法を唱えてから槍を構えた。


その直後に敵からのCCと森林、風、水魔法が雨あられの様に俺へ向かって飛んできた。

味方の20人はこれに対して一方的なCCと直後に一歩下がった敵により前進しての反撃が不能となる。

俺は冒険者のタンクだ、これらの属性はよくぶつかるので対策はしてある、種族もストライダーである為に属性防御はし易いが、ラニ以外からの回復がこなければもうすぐ沈んでしまうだろう。味方は何をやっているんだ、確かに敵は誘惑のスキルラインを持つ人間キラーな種族と言えど、味方を助けて諦めずに戦うべきだろう。お前達に勇気は無いのか!


そんな時に、俺が守るべきだったはずのノムラがスッと一人前に進み出た。

「しょうがないなのだ、グンちゃん背中を頼んだよ。」とノムラは呟いた後にそのステルス能力で姿を消した。単騎で暗殺しにいく気か!?相手はレベル37の化け物中の化け物、ノムラのレベルは20になったばかりだろう、この二倍弱ある経験の差を暗殺で詰めれるのか!?

と思った瞬間に、敵ネレイドの一匹が光神信仰魔法『曳光弾』を使用してノムラの位置はあっさり看破される。あれは死ぬぞ!と俺は思った直後にがむしゃらで「ノムラアアアア!」と叫びながら敵へ向かって突撃をするとノムラは歌神信仰魔法『反歌』を発動、直後に敵からの集中攻撃魔法を受けるがそれを緊急回避で前方に向かって回避した。


「こやつ!?」と敵の頭目が鋭い視線でノムラを睨むのが分かった、ノムラは前方への緊急回避直後に一番近くに居た敵に背中を向けて、コビットの特性である「背後に敵がいると移動速度が50%上がる。」という種族スキルを利用して一気に敵頭目のア・ヨグへ距離を詰めた。

「お姉さま!」「姐さん!」と敵周囲の配下がノムラの妨害にかかるが、歌神によるCC妨害によりその足は止まらない。

「何やってるの!今が突撃チャンスよ!」とラニが叫びながら味方を鼓舞し突撃を開始させる。

ノムラは敵の攻撃を器用に避けながらア・ヨグの背後を狙う、ちょこまかと小さなコビットが大振りな斧を振り回しながら敵の大ボスを圧倒している、緊急回避、『練歌』による敵への詠唱妨害、『デスボイス』による敵への恐怖状態付与、『狂歌』によるCC反射。はっきり言って動きがおかしい、俺の知ってるノムラじゃない。信仰魔法はどれも狂った性能をしているのはカタログスペックを見るだけでも分かるが、ここまで信仰魔法を使いこなせる味方がこんなすぐ近くに、毎日の隣にいるとは思ってもいなかった。

だって、お前いつも一緒に笑って一緒に苦しんで一緒に戦って一緒に全滅したじゃんか。


「まずは一発なのだあ!」とノムラがア・ヨグの背中に強力な一撃を加える、20人いた味方の中でノムラが最初に敵から指名を受けたのにはきっちりした理由がある。ノムラは防御力がほぼ無い攻撃特化なのだ。この構成をするに当たって俺とラニは心配をしていたが、ノムラは「だから守って欲しいのだ。」と無邪気な笑顔で俺達を頼りにしていた。そうだ、俺は頼りにならなければならないんだ!


俺はノムラを囲んで叩こうとするハーピー達へ策神信仰『囮作戦』を使用し遠距離攻撃以外を封じにかかる。ア・ヨグの軍団は近接職が少ないという情報があったのでハーピーを封じれば後はノムラの腕前次第でなんとかなる。更に曳光弾を発動しようとするネレイドに対してノムラは素早く詠唱妨害を加えた直後にステルススキルにより闇へ逃れる。ノムラの一撃を受けた敵の頭目ア・ヨグは壁を背にしながら自己回復と反歌効果の切れた味方へCCをしながら次の獲物を指定し配下に攻撃を指示する。

「あの動き、あやつノーザンかそれともあやつか!」とア・ヨグは強力な一撃を受けたからか激高の表情を表しながら味方の削りかかりに入る、味方のDPS系も敵の正確な集中攻撃を受けて倒れていくが、リソースの兼ね合いで持久戦になればなるほど敵は不利になるはずだ、敵はこれだけCCと毒と魔法を展開しているのだからDPSは高くてもタンクやヒーラーが多めの陸上覇王軍は持久戦においてとても優位である。


「チッ、下がりんす!」と言いながらゲーム中最高峰の怪物は撤退の構えを見せた、その背中に向かって暗闇から姿を現したノムラが大きな斧を振りかぶる姿が見えたが、これにア・ヨグは気持ち悪い速度で反転し人間の足に当たる位置で蠢く茨で体を包む様なガードモーションを取りながらこの重い一撃を防ぐ。

直後に敵集団は森林魔法と血神信仰魔法の視覚妨害魔法を展開し坑道の奥へ引き下がっていった。

我々はそれを追撃はしたものの、それも先にあった分かれ道により追撃を阻まれた。

敵がどちらの道へ進んだかの痕跡はまったく残っていなかったのだ。

「逃した、けど生き残れたわね。」とラニが大きな溜め息を付くが俺もそれに同意の溜め息を付き、「ノムラ、よくあんな動きが出来たな。今の戦いは間違いなくMVPはお前だよ。」と言うと、ノムラは「何の事なのだー?」と小首を傾げて知らぬフリで押し切ろうとした。


・雑談

純粋ニートゲーマーと大学生廃人が戦った場合は意外と良い勝負するのだが、決闘物は大学生が勝つ場合が多い。

スコアやレートで計ればニートが総合的に勝てるのだが、大学生は勉学への情熱や義務感がそのままゲームへ転化する場合が多いので爆発力が半端じゃない。


現在登場したキャラで個体『中の人』強さ順設定はノムラ(黄金期終了大学生)>イベリウス(大学生)>ア・ヨグ(ニート)=Sevenchar(?)>がりるん(元社会人ニート)=エールート(大学生)>ロドリコ(駄目高校生)=マリッド(廃人社会人)>チビパン(駄目社会人)=ビータ(駄目高校生)=ノーザンライツ入会最低条件

といった所で、30歳を過ぎるとネットゲーは無職でも一気に弱くなる。主人公ランク10以下なのか…。

とはいえ最近のゲームは時間をかけたり反射神経が強ければ勝てるという訳でもないし、人間関係構築による集団戦闘や装備集めの効率によりアバター強化やチームワークの強さが重要になるので社交性とかが一番重要なステータスかもしれない。

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