B037.戦争をする為の戦争
覇王軍の奇襲攻撃は確かに成功した。10レイド240人分に及ぶ兵力を確保し敵の要塞へ肉迫する距離までに至った。それに対して敵の防衛隊は半数程度、攻守三倍の法則なる攻め手は守り手の三倍の兵力を用意しなければならないという法則はMMOでは確実に成り立たない。防衛側は施設の防御力を攻略人数に換算しそれプラス防衛に当たる兵士という戦力判定が無難になるので、見積もり的には現時点では覇王240対魔王160といった所である。
この大戦を行うに当たって我々は準備しなければいけなかった物は策神信仰のプレイヤーを増やす事であった。戦争に不可欠な砲兵、覇王軍ではのこれらはエンシェントエーテロイドやテクチャル、ラットマンといった特殊なスキル持ち種族の役目であるが、それは信仰魔法で補えて更にその信仰する為の神像を独占している魔王軍に比べると我が軍の砲撃力は格段に落ちる。更に制空権は敵が遥かに優位、そうなれば必要になるのは敵の砲撃と爆撃対策である。
これはリアル近代史における無難な手法で解決する事にする、戦車と塹壕による浸透戦術である。
無論、この世界には戦車が存在しないが、エルフホームの南に位置する覇王軍でも取り易い策神には『木馬』と『塹壕』というスキルが存在する。塹壕はそのまま地面に穴を掘り敵の水平や範囲攻撃を一時的に回避する地形塹壕を作成するスキルだが。木馬の方は歴史的なトロイの木馬というよりは、前進する城攻塔という兵器に近い、更に木馬には衝角やテクチャルが作る砲兵器を搭載出来るスロットがあるので戦車未満で攻城塔以上の火力を有する。
敵要塞からの砲弾が光の半円を描きながら地面へ着弾し魔法の炸裂を広げる。その光の波に怯えるように覇王軍は進んでは塹壕を掘り、進んでは掘るを繰り返し、策神を持たない者はその後に空を恐れながら続く。策神は挑発スキルを含む信仰魔法なのでもっぱらこの役目はタンクになる、最大MPや防御力を底上げしているタンクには最前線に出て塹壕を作るには打ってつけの仕事だ。それに覇王軍には冒険者が多いので冒険に必須なタンクの数には困らない。
味方が少しずつ前進する姿を魔王軍は放置するはずもなく、陸や空からはモンスターと言える異形の軍団が要塞砲の支援を受けながらこちらの前線と衝突する。塹壕に篭った覇王軍のタンクをあぶり出そうと接近攻撃を仕掛ける魔王軍に対し、更に後方にある塹壕から覇王軍兵が顔を出し、襲撃者に魔法や矢を集中して放つ。敵味方の砲弾の荒れ狂う塹壕外では自らの運命を試す様に飛び出して行く近接戦闘職が互いに死に所を求め合う。そして、その味方の群れは私のいる海の上から遠く離れていく。
「提督、空軍の出動許可を。」とクソ真面目なテクチャルの娘が敬礼をしながら報復の戦いを望むが、彼等にして欲しい事は戦闘ではない。
「ルサミナさん、戦場を把握出来る様に偵察隊の用意をして欲しいのだが、頼めるか?」と私はこの血気盛んなテクチャルの娘に頼む、断られたら困るなあと内心思っているがどう言い包めたものか。と考えていたら、「了解しました、テクチャル航空隊は偵察の任に当たります。」と素直に承諾してくれたがこれはこれで危うので、「貴方達、空からの視点がこの戦いの勝利を左右するのですから、くれぐれも偵察を優先して行うように。」と釘を刺さねばいかないが、戦いに出るだろうな。
テクチャルの娘は再度敬礼をした後に仲間のテクチャルと共に空へ飛び立っていった。テクチャル達の背中にあるジェットパックの激しい音が南の空へ遠ざかっていく。
やれやれ、多少経験はあるものの大規模な戦争の総指揮を執るのは今回が始めてなんだ。今までは戦術単位の戦闘で優位を保てていたが、それは海上や水辺のみの話である。陸戦における戦績は私個人ではゼロスコアである。よって現在最前線の指揮は吸血鬼ギルドのマスターであるジャロニモ氏に執って貰っているが、完璧な実績のあるカラシニコブ氏やエールート氏はこの戦いに深く関与して来る気が無いのか、戦力の提供はあっても指揮は人任せでご本人達は好き勝手に活動しているようだ。
私はゲームのアドオンであるサブウィンドに写る動画と音声を聞きながら深い溜め息を付いた。
『カラシニコブと!』『エールートです。』『マギラ3世界大戦実況ー!』『パーフーパーフー。』
ご覧の通り、覇王軍で期待されていた二大指揮官クラスは動画配信と解説に回って働くフリを決め込んだ様子だ。
『エールート、アドミラルの奴が初手に指定時間外からの奇襲攻撃をしたがこれは成功すると思うか?』
『んー、出だしと動員は完璧ですし、魔王側との約束を反故しても外交的評価は下がりませんからね。アクションとしてはプラス要因しか無い様に見えますが。問題点はこの戦況を見る限り既にいくつか起こっていますね。』
『うむ、双方の激しい兵器攻撃。それを警戒しながら進むにしても砲弾の直撃が怖くて、特にヒーラーが突撃をしぶっている様に見えるな。』
『はい、味方を死なせない事をメインとするヒーラーには確実にダメージを受け続ける状況は地獄ですからね。これは何ショックでしたか。あれに近いのではないでしょうか。』
『シェルショックじゃな、砲撃がトラウマになり行動や戦後に支障が出る精神状態じゃ。』
『いくら現実に死なないと言えど、これだけの砲弾の嵐でストレスを感じない理由はありません。これだから世俗は嫌なんですよ。』
『まぁ、やる方はいいがやられる方は嫌じゃな、となると今後は砲撃に修正が入る可能性が高いか?』
『しかし、それをやるとプレイヤー個体の戦力均一化が難しくなるのでこのままじゃないでしょうかね。』
『DPS職がPvPでは完全に山賊特化でよろしくやるか、PvEでガンバッテネみたいなパターンになる系じゃのう。』
『よくある話じゃないですか、後はDPS職をどれだけ間引きして新しいロールである運び屋等を混ぜるかですよ。』
『ダンジョンやワールドボスギミックも三次元的になったからなあ、所で覇王軍の指揮官なんじゃが。』
『真っ先にそこから抜けておいてよくもぬけぬけとそんな話題を振れますね。』
『だって、ワシ勝てそうな戦いしかしたくないもん。後方は戦略と艦砲支援にアドミラルが居て、最前線が吸血鬼のジャロニモ、西側右翼はウチのSIVA公で東左翼は覇王軍二番手ギルドの指揮か。』
『覇王軍はアドミラル以外これといって評判が薄いですが、ジャロニモさんはサーバ開放直後に起こったスワンプマンとのファイトクラブで最優秀スワンプマンキラーを達成した武闘派吸血鬼ですよ。レベルも31とかなり高いですね。』
『31か、睡眠は一日5時間くらいのペースで達成出来るくらいじゃな。』
『丁度そのジャロニモ隊が魔王軍のア・ヨグ率いるレイドと衝突したらしいですが。』
『ヨグか、マギラ2ではノーザンライツに所属していた生粋の廃人じゃな。でも、アラクネと吸血鬼の対決ってお互い人外種だから泥沼じゃねえの?』
『いえ、見る限りこれは吸血鬼隊が幻惑魔法のステルスで後ろに回り込もうとしてアラクネが守りに回る状況ですね。』
『なんだよ、あいつらステルス看破スキル持ってないのかよ。』
『というよりも、強い勢力だとお互いに気づいたから、やり過ごして弱い勢力を狙いにいっただけに見えますが。』
『となると混戦確定の補給路はズタズタ、塹壕の中でスコップで殴り合う様な戦いが決定か。ああ、しまった。』
『どうしました?』
『魔王軍側からの実況者を招くべきだったな、あっちの状況が分かり難くて困る。』
分かり難いなら結構、俺はその実況動画を見ながら安堵する。左翼の敵がSIVAさんの指揮なら完敗はないだろう、あの人は俺より少し指揮経験がある程度だから。対するPvPギルドのマスターであるイベリウスさんの方が強い気がする。
中央で塹壕と木馬を使い進撃している敵指揮官は完全に自己中心的な人だ、それを今は要塞付近で防衛に回っているギルドDDDにカウンターチャージで押し返して貰おう、自己中やイノシシ武者の指揮官は真っ当な戦争の前ではカモでしかない。例え指揮官個人が倒れなくても周囲の味方がそれに付いていけないからだ。
右翼野良連合の相手は想定外だが覇王軍2位のギルドが出てきた、でもこちらの指揮官が歴戦アルカントスさんなら大丈夫だろう。恐らくこの戦場で一番統率力が高いのはこのオークの老将軍だ。
とはいえは全ては未だに画餅の如し、要塞に迫りつつある敵の塹壕と木馬による侵攻を後退か足止めをして一気に我が軍団を作戦通りに布陣しなければならない。時は19:50、戦況は不利。
点呼とは言わないが魔王軍の集まり具合を確認すると、兵力は前線とDDD要塞で130名のままだが、要塞後方には既に100人近くが集まっている。状況は悪いが一応兵力は互角に持ち込んだ、後はサーバーが落ちないことを祈るだけだ。
完全に予定兵力が出揃ってないこの状況で切り札を切るか無難に押し切るかは悩みどころだ、敵中央の指揮官がステルスを使っちゃうって事はその敵中央戦力はかなり動揺してるだろうなあ、だって指揮官が前にも後ろにもいないんだぜ?
と言う訳で、「要塞の北門を開放して正面突破しましょう。」とゾーンチャットで宣言をする。それに対して要塞の主であるイゾログ君も「ああ、敵の塹壕と木馬にはうんざりしていた所だ。」と快く承諾。
「ではカウントとりますよ。」と俺は20から始まる長いカウントダウンを開始する。その間に味方は要塞内の北門前に集中し始める。周囲を見渡せば人ならざるプレイヤーばかりで混沌の様相を呈しているが、集まってくれた以上は大事な仲間である。勝つ戦いを、勝つ戦いをしなければならない。
ここで俺はチャットをギルドに切り替えて、「我々は突撃するフリをして要塞と最前線の間に陣取ります。」と言い含めておく。これも勝つ為だ。
「デスペナルティーがきついゲームだったら間違いなく叩かれる作戦っすね。」とロドリコは言うが、戦場への補給路が現状DDD要塞からしかない魔王軍がそれを分断されるという事は我が軍の即敗北に繋がる。
敵はコビット庄や覇都や海の民のホームから続々と再出撃できる状況なので敵補給路の分断はこちら側からはまず出来ない。これは会戦地を定めていた時点で分かってはいた事だ。
こちらの勝利条件が大湖に浮かぶ敵の艦隊砲射撃の射程範囲に入るギリギリまでに敵を押し込めば戦略的な勝利である。
勝利とは我が魔王軍の軍事訓練の成功とシェルショック慣れと魔王権威の確保にあるので、この場合は拠点を取れば勝ちと言う訳でも無い。
常日頃ゲームで戦争三昧だった俺にとっては分からない事だが、戦争慣れしていないプレイヤーの軍事演習は大事らしい、それに総指揮官というポジションも自分に修行として課さなければならない。
「わたしは何をすればいいのー?」とエリーンが隣で首を傾げるが、「お兄ちゃんを守ってくれ、割りと真面目に。」と応えると「イエッサー!」と敬礼モーションを取ってから俺の姿に化け始める。
今回指揮を執るに当たっては色々悩んだ末に人間タイプの姿で挑む事にしたのだが、これを見たイゾログ君から「ごくり、お、お前女だったのかよ!」と今まで何度も言われた発言を受けるし生唾を飲み込む音まで拾うなよHMD、そこへ彼の副官であるハリュオン氏が「彼?にも色々事情があるんですよ。」とフォローを入れてくるのが逆に痛い。次は絶対男アバター選ぶかんな!
俺の周囲にはエリーンを始めとするスワンプマンの生き残り達が俺に変装し指揮系統の分断作戦の対策に志願してくれる。この協力的な行動の理由を尋ねた所、「魔王の影武者っておいしいポジションじゃないですかね。」とこれまたニッチなプレイと解答を出すスワンプマン達はそんな種族を選ぶだけあって流石だと思った。
20秒のカウントが終わりを告げる、「3.2.1.0.突撃にー前へー!」と俺はゾーンチャットで号令を下す。
魔王軍ほぼ全軍が北門から出撃し要塞砲を凌ぎ続けた敵の塹壕や木馬に肉迫する、味方の要塞には最低限の砲手とNPC衛兵を大量に配置し、目の前の木馬からの砲撃と背中から飛んでくる砲撃が交差し炸裂して作られた浅いクレーターだらけの荒野を突き進む。
予め方面軍として展開するアルカントスさんとイベリウスさんの部隊は東と西へ広がり、残りの部隊は正面の塹壕と木馬を踏み潰しにかかる。
覇王軍方向から「敵チャァァアジ!」という焦りの混じった叫びが聞こえ、塹壕から顔を出した敵兵が遠距離攻撃をスコールの様に浴びせてくる。ステルススキル、風魔法、幻惑魔法、氷神魔法、タンク、これらの遠距離集中攻撃に対する防御スキルを持つユニットは率先して敵の塹壕まで進み、そのすぐ後ろに続く近接職が敵の塹壕内へ乗り込み凄惨な殴り合いを開始する。
塹壕内からスキルではじき飛ばされた後に砲撃を食らい倒れる不運な者、仲間を助けようと必死に回復魔法を唱えるもの、自身の防御力を過信し削り倒されるタンク、要領良く味方を囮に後退する者。
敵の戦線が大きく後退し、戦場の中心が魔王軍の手に落ちた頃には案の定その問題が起こった。
こちらの突撃にぶつからずステルスしていた敵の吸血鬼部隊がこちらの補給路の分断に来たのである。
それはこちらにとって予想通りの行動ではあるが、来るのが分かっていたとしても全てが防げる攻撃という訳でも無い。現時刻20:00ジャスト。
戦況は魔王軍が中央まで押し上げ、敵の吸血鬼隊が西より補給路の分断にかかる。ここまでは想定内だったが、ここに更に異変が加わった。
「西側SIVAさんとイベリウスさんの部隊が消えた?」と俺はスマグウさんのギルドから出して貰った偵察ユニットからそんな報告を受け取った。じゃあ西側はどうなってんだよ、と思えば答えは簡単に出た。
魔王軍の補給路を維持するギルド天魔、血の気の多い奴は人の話を聞かずに最前線へ出て行ってしまったが、聞き分けの良いギルメンは残ってくれた、そんな彼等が西より迫る軍団の襲撃をモロに受けた。
「先輩、西からギルド『Destiny trading』と吸血鬼の混成部隊、およそ70が来ます。」とロドリコが素早く戦力分析をしてくれる。
覇王軍では強い部類の吸血鬼軍団とSIVAさんのタッグかあ、イベリウスさん何やってんだろうと思ったら。
「ギルド砕覇、敵の後方を襲撃中です。」と危険な敵中へ強行偵察をして貰っていたハーピーから連絡を受ける。
「あれ?これってよ。」と俺は呟くと「SIVAさんとイベリウスさん、闘わずして暗黙の談合とかしてお互いの弱そうなとこ狙いに行ったんじゃないっすかね。」とロドリコが嫌な現実を説明してくれるが、たぶんそれで正解だろう。
西より遠目に阿修羅のお姉さんが多数の剣を振り回しながら迫ってくるのが見える。
状況、味方要塞砲はギリギリ届く位置ではある。この補給線を防衛してくれている現戦力は50。種族はスワンプマンとかそんなのばかりで戦力分析の結果はまず負ける判定。
「ここで切り札、使うか。もったいないが味方のモラル維持が最優先だ。」と俺は少し嘆いた後にスケルトンの頭領シャンコさんと亜竜のスマグウさんに、「爆撃隊お願いします。低高度、ガス有り。座標は要塞の北側200m地点よりやや西。」と連絡を送ると、「了解Death!」という返事と共に南の空から亜竜の群れがこちらに迫ってくるのを確認した。
「ビータちゃんがいっぱいるじゃねえかああ!」と雄叫びを上げる阿修羅のお姉さんが突進してくる。「ウッス、チビパンさん。妹さんなら最前線いったからそっち行ってくれません?」とお願いをするもそれは激しい剣戟で否定される。このお姉さんが怖いから上空に逃げる手もあるのだが、それでは敵の砲兵が対空射撃モードになるので俺は陸地でこの阿修羅の攻撃を受け止める。
敵の後方からは激しい野戦砲撃が飛んでくるもそれ以上に。
ああ、やっぱこの人の攻撃力おかしいわ。と思いながらその連続攻撃を盾で防ぎ続けると、「先輩後ろっす!」と声と共に自分が吹っ飛ばされるのを感じた、これはジノーの魔法か。
横から受けたその風魔法は俺を吹き飛ばし、俺が元々居た位置には舌打ちをしながらまた闇へ消えていく吸血鬼の姿がチラリと見えた。
吹き飛ばされた俺を囲うように俺に化けたスワンプマン達が追撃をしてくる阿修羅に対峙するも、俺自体のスペックが下法竜という人型だとはっきりいって弱い種族の更にデッドコピーされたスワンプマンがその陸上最強クラスの阿修羅に挑むのだから相手になるはずもなく蹴散らされていく。
周囲にはPvP経験の差で倒れていく仲間もいる、PvP経験豊富な奴等は最前線に行っちゃったからなあ。
万事休す?いいや、もう間に合ったから俺達の勝ちだね。
エリーンが阿修羅に跳ね飛ばされる直後、俺達の頭上に黒い影が横切り、直後に緑色のガスと光の球体が地面を多い尽くし、更に空からは放物線を描きながら飛んできた砲弾が一気に炸裂する。
「なんじゃこりゃああああ!」「ガス!駄目だ、回復が間に合わない。」「くっそ、やりやがったな。」等と敵からの心温まる断末魔を受け取りました、ありがとうございます。
そりゃー亜竜一体に乗せたスケルトン8体全員が機械神信仰取って地雷魔法『バスケットヘルデッド』と時間差迫撃砲『エーテルモーター』と地形攻撃『踊るマキビシ』を全員が展開し、それを搭載した天空神信仰を取得した亜竜が高速飛行しながら毒ガスブレス吐いて一撃離脱したら予め対空砲兵を用意するか大量の空対空ユニットを用意しないと間に合いませんわ。しかも亜竜は5匹でスケルトンは40体の爆撃部隊、それの護衛は5ユニットのアーリーマンとシルフ達。
これが魔王空軍の第二段階、純正爆撃部隊でござい。
この手は本当に勝ちが確定した様な戦術的切り札だったのでここで使いたくは無かった。
砲撃の炸裂と地雷とマキビシに包囲された敵の精鋭もこれで半壊に陥った、全滅しなかったのが逆に驚きで仕方ないが、吸血鬼は奇襲と逃げが強いしチビパンさん達に関しては普通に強いから仕方ない。
「追撃はしますか?」と回復魔法を頑張ってくれたバッシーさんが尋ねてくる、悩ましい。
東から補給路の分断は来ないと見たら、士気向上の為に追い討ちを掛けるのは悪くないし、高速航空爆撃部隊という技も一度見られたならどんどんもう使っちゃおう。
「追撃開始ー。爆撃部隊も容赦なくやっちゃってください。」と俺達は北西に逃れる廃人集団の尻を追いかけ始めた。
・ゲーム内におけるシェルショック
ある、砲撃の嵐はゲームといえど怖いしストレスは起こる。激しい爆音、忌々しいエフェクト、回避出来ずにパタパタ倒れる味方達。個人的には死の恐怖や本能的恐怖よりも味方の警戒心のなさにストレスを覚える方が多いので自分の性格が良くない事が分かる。
HMDが普及したら間違いなくシェルショックみたいな事は起こると思うけど、間違いなく規制入るだろう。
・廃人PvPギルドは戦力にはなるが
廃人PvPギルドは自身より強い相手に挑むよりも弱い相手を一方的に蹴散らしてゲームを楽しむ方向性が強い。特にギルドの繋がりを主体として色々なゲームを飛び回るギルドやクランにこの傾向がある。
きっちり国力を底上げしてPvPで国家的に勝ちに行く廃人ギルドもあるっちゃあるけど稀である。
ゲームという架空世界内においてナショナリズムは育つか?という実験もMMORPGでは見られるからおもしろい。