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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
人外魔境に咲く花
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B035.かつあげLord

『マオウ軍ラジヲです。今回は新しく就任した魔王様による就任演説がございます。では、魔王様どうぞ。』


『新魔王に就任した下法竜ビータです。私が就任した経緯はSympaxiに掲載されていますのでは省略させて頂きますが、魔王として我が軍に求める事は3つです。1つは軍の統制、各所に発生する戦争にはお祭りに参加するくらいの気軽さで良いですから、レイドグループの募集とそれに参加し敵のカモにならない事を考えて動く事です。2つ目は装備の充実です。統計的に装備の良し悪しでキャラクターの性能が変わる比率は装備が無頓着な人とガッチリ固めた人では1.4倍の性能差がでると言われています。これらが魔王軍に浸透されれば覇王軍に負ける事はありません。3つ目は連絡網、もし各々のギルドのマスターでギルド枠に余裕があれば、魔王軍HQというギルドがありますので、そちらに加入して頂ければ戦略的な会議が開催出来ます。今後我が軍勝利の道のりは皆様の双肩に掛かっております。良い戦いの日々を。以上。』


『はい、魔王様ありがとうございました。細かい質問等は当ギルド、マオウ軍ラジヲやギルド天魔広報部さんで受付けておりますので、皆様のお便りお待ちしております。』


暗い緑と明るい緑に包まれた森の中にある里、巨大な木のうろを拡張し作られた小さな料亭。

入り口だろうドアの横に付いてる看板にはエルフ語で『カブト虫の溜まり場』と書かれている、らしい。

その店内の隅のテーブル席で光神輝石が放つほんのりとした明りに照らされたエルフ達は敵国からこっそり輸入したご禁制の四角い箱を囲みながらそれから発せられる音声に長い耳を傾ける。


「なんか魔王っていうより総理大臣って感じですね、大統領より押しが弱い系の。」と長い金髪を束ねたエルフの私、サトリが仲間達にこの演説の感想を伺ってみました。

「言ってる事が真っ当なのが気に入らないな、ファンタジーで魔王なんだぞ?世界を暗黒に包み込み人間共の安寧や平和など許さぬわー。とか言えばおもしろいんだがな。」と銀髪ツンツン頭のエルフ男が落胆した表情で溜め息を付き。

「魔王といっても負のエネルギーを得る為に人間苦しめるね派と創造主が気に入らないから世界滅ぼすね派がいるからなんとも言えませんねーこれ。」とライトブラウン髪色でショートヘアのエルフ少女が相槌を付く。

「分かった事は新魔王は準廃程度の人間だなってことだ。狂ったような廃人プレイヤーはこんな真面目な演説なんてしねえよ。」と青髪ショートヘアのエルフ男は忌々しげに感想を口に出す。

ここのメンバーのリーダーであるフィートスさんに忌々しく評価された新魔王は一部のプレイヤー間では有名な人だ。亜竜のビータ、綽名は悪竜、果たし状の人、フライトシムゲーマー。大人しくネットゲームをプレイしていれば絶対に付かない様な綽名ばかりであり、私達がこのゲームで一番最初にPvPをした敵です。

「普通より多めのプレイ時間で皆レベル20以上には到達はしましたけど、私達はエルフの冒険者チーム。周囲はそれ以上の認識はありませんからね。それに比べてあっちは魔王。」と私はテーブルに頬杖を付きながら目の前にある紅茶を混ぜ混ぜする。

それに対して「イベントのフラグ数が違うんじゃないでしょうねー。」とセンチメルちゃんが投げやりに応える。


そこへ、バン!という激しい音と共に店のドアが開かれ緑髪の美しい顔立ちのエルフが現れツカツカと私達のテーブルに近寄り、魔王軍の回線と繋がっている小箱を持ち上げ「これは没収対象ですよ。」と言いながら持ち去ろうとする。そのエルフの背中に向かってフィートスさんが、「ギルマスー、たまにはエルフで主役張りましょうよ。」と声をかけメルちゃんに続いてまたメタな発言をするが、それに対してギルマスは、「エルフのヒロインはいるけど主人公ってあまり聞かないね。ああでも、それっぽい事がしたいなら今日の20時頃に大戦争が起こるからそれに参加するといいさ。」と振り返り答えた。

「大戦争か。」「言われてみると俺達、冒険はするけど戦争は全然してないな。」「戦争に加わるエルフはイメージ的に駄目なんじゃないかなあ、ギルマスが勧めるならいいんだろうけど。」と心配していると。

「よし!」とフィートスさんが決意の立ち上がりを飛び出すようにしながら、「装備の新調、信仰の構成チェックと仲間集めを今の内にしてその戦争に参戦するぞ!」と参戦の意を表した。

戦争かー、お友達に連絡しておこっかな。「あー、グンベイさん?」と私は勝てる戦いの為に頼れる友人のツテを手繰り始めた。



「あー、グンベイさん?おはようございます。今日の20時頃に大戦争があるらしいですよー。もしよろしければご一緒に参加致しませんか?」とエルフの友人であるサトリからささやきチャットがあった。

この事を冒険仲間のラニとノムラに伝えた所、「よろしーならばッ戦争なのらー。」「あーら、野蛮ねぇ。」と相変わらず方向性が曖昧な返答が来る。

覇都南東の森見地区の酒場バースワイルド亭でいつもの様にだらだらとしている3人は今日も冒険者として世界中に増え続けているダンジョンの情報交換と攻略か荒らすだけかでぐだぐだと決めかねていた所にこのお誘いであった。

「戦争か、俺達みたいな専業冒険者にもお声がかかるってことはよほどの事なんだろうな。」と俺は呟くと、「世界地図を見ればすぐ分かる事なのだー。」とノムラが難しい事を言うが、ラニに「ノムちゃん、それちょっと賢い発言だからNG。」と続きを封じられ「なのだー。」としかノムラは言わなくなった。

「エルフの誘いって事は余程の事で、尚且つエルフ冒険者グループと合流になるけど参加していいかな?」と俺は二人に念を入れる。

別にPvPに不慣れなメンバーという訳ではないが、戦争とPvPは結構別物だと言われている。

何せこのゲームでは本当に背中から撃たれる可能性がとても高い。

「不安ならもう少し巻き込みましょうよ、ほら、大雪原行った時に知り合ったあのカッコイイノースマン!」とラニの発言で頭に浮かぶ金髪のノースマン、バギーラか。「そうだな、バギーラ達も誘ってみるか。」俺はフレンドリストからバギーラを選択しささやきチャットを送信した。

「おはよう、グンベイだけど、今日の20時頃に戦争が…。」



グンベイ、確か冒険者マニアの人だったな。彼はストライダーという珍しい種族なのでよく覚えている。

彼の仲間も一癖あるので記憶にある。戦争の誘いか、それはいいんだけど俺は昨日の夜に新しくソミュアの紹介で入ったギルド『ジェノサイドパーリー』の活動に加わって親睦を深めたいのだが。

「ソミュア、今日の20時頃に戦争があるってフレンドから聞いたけど、参加出来なさそうか?」と俺達を覇王軍2位のギルドにねじ込んでくれたノースマンタンク見習いに尋ねると、「それどやって分かったん?」とソミュアは首を傾げて尋ね返してきた。

「フレンドのフレンド、エルフ経由らしいけど。何かおかしかったか?」と俺はソミュアに尋ねると、彼女は少し考えてから「なー、ノトー。提督経由からの戦争の情報って20時頃とちゃうよね?」とギルドマスターに確認を取り始めると。

「あ、それは魔王軍経由の情報ですね。覇王経由の情報は少し違いますよー。」とノトーさんは答えた。

その返答に俺は少し考えたがイマイチぱっとした答えが出なかったが、そこへ俺等の頭脳担当であるガストラフェテスが「情報をわざと不一致にさせて連絡網の浸透具合のデータを探っているんじゃないか?」と流石にダークエルフを選ぶだけあってクールな答えだわ。

「そやねー、ちな覇王の提督さんからの情報では19時半集合の覇都北西と場所まで指定されとるで。」と教えてくれた後に、「この情報を逆流させて反響を調べてみてもええで。」と言われたので、グンベイへささやきチャットで、「グンベイさん、正確な情報は…。」と伝え始めた。



「魔王81、覇王6。」と覇都エルスローン中心にある覇王城の玉座に腰をかけながらギルドメンバー経由で入ってくる情報の統計を集計している、地味な仕事だが誰もこういうことはやりたがらない。唯一協力的なメンバーと言えば、海賊プレイ大好きっ子のミズーリという名の海の民である。

彼はマメな男でダンジョン作りが大好きであるので大湖にある複数の基地司令に任命しているが、諜報部とかやってくれないかなあ。

空軍として雇っているテクチャル達も協力的だが、彼等は少し亡国のヒロイズムに酔っているので扱いが難しい。


集計結果からは連絡の秘匿性が魔王軍はわざとゆるくしており大軍の用意を形振り構わずしているのが分かり、覇王軍側はスパイ及び口の緩い人間が数人上層部に居るのが判明したが、別に粛清出来る訳でも無いし、それを特定してその個人を村八分にする訳にもいかない。たかがゲーム、されどゲームだ。

はぁぁーっと大きな溜め息を付いてしまう私だが、それは魔王側も同じ気持ちだろう。

よく物語である英雄や魔王、本気でやれと言われたら断固御免こうむりたかったが、ゲームとはいえ似た様な地位に就いたのは本意ではない、表向きには「覇王座我の物也!」と公言しなければギルドや国家の士気が保てなかったのもあるが、本音を言うともう少し楽をしたかったのだがな。


魔王軍は空と陸をその種族特性で優位に侵攻した。そしてプレイヤーは負けるのは嫌うものである、そうなると結果的に完全敗北したプレイヤー達は勝ち馬に乗れる勢力へ鞍替えをする。今回はその受け入れ先が海の民と我がギルドであった為に、難民流入とは言わないがそれに近い現象で相対的に私は覇王位に就任したのであって、実力かと言われれば「粘り勝ちである。」と答えなければならない状況だ。

魔王軍側の提示した軍事演習の話を聞いて私よりも遥かに歴戦の勇者であるはずのドワーフとエルフがまったくしゃしゃり出ずに身内で小さい世界を維持し続けている理由がよく分かった。

過去の偉人もトップに立てば後は追われるだけ、といった名言も残しているが、現状では覇王軍2位のギルドマスターは戦争好きではない、みんなでワイワイやりたい系のプレイヤーだ。

3位はPvPのプロ中のプロだが信用出来ない。そして両者は覇王位を追いかけては来ない。

信用出来ない所と責任感が無い所に頼らなければいけない時点にまで自軍を追い詰めれば責任はあちらに大きく傾くだろうか?私個人は別に保身がしたい訳では無いが、まだ短い期間だが共に歩んでいるギルドメンバーに敗戦の責任という負い目を持たせたくはない。

そうなると答えは単純な一つ、勝負に負けて試合に勝つしかあるまい。

ギルドメンバーには既に「造船と砲の作成を最優先にする様に。」と伝えているので私個人で出来る事はこういう地味な手回しと思案しかない。

「魔王106。」私は周囲に衛兵NPCしかいない玉座の間で小さい声の数字を呟き続けた。



「宣伝!クラフト!資金調達!」と俺はドラゴンの巨体で地を大きく踏み鳴らしギルドチャットで高らかに宣言する。

「先輩、魔王の威厳ないっすよ。」とロドリコが茶化してくるが、威厳で統制が取れるはずもない、これは古今東西過去リアル問わない、統制には宣伝と実績が必要となるのだ。

「クラフトなのですが、コモン、ハイ、レア、レジェンドで言うならばハイランクまでなら湖神信仰で作れるんですよね?」とジノーが確認をしてくる。

「そうだよ、じゃないとオークとエルフがクラフト品量産なんて出来ないからな!サブキャラで生産を作る殊勝な奴はベータじゃまだまだ出ない、エルフにはいるけど。」


という事で高い専用クラフトレベルを求められる竜心爆弾なんて物は敵味方で作れないと思っていたが、覇王軍の奴等は「報復用」に用意しているらしいとくる。ブラフで引き出したとしても知りたくない話だった。

「ねーそのりゅーしんばくだんってどんだけ強いのー?」とエリーンが質問してくるが、

「ギルメンのゴーレムに変身して生産ウィンドを見るかWikiを見て来い。頭おかしい威力だから。」と伝えておく。『竜心爆弾(丁)』起爆範囲200m周囲内敵味方プレイヤーが3回死ぬくらいのダメージを受けるバランスブレイカー兵器であり、ちょっとした街でも一撃で消滅させる威力である。

ていって単語が恐ろしく気になるが甲乙丙こうおつへいと更に上がエンドコンテンツ兵器としてあるのだろうか。

俺は思うにこれがこのゲームのバランス崩壊を防ぐバランスブレイカーの一つなのだと思う。

以前には『選ばれし者システム』なる勢力劣勢時に発生するワールドオートバランス補助効果や、

『新王誕生システム』等といった分かり難いシステムを実装予定と公式のプロットには書かれていた。


「資金調達って、具体的にどこからするんですか?」と前魔王様の悪魔は一番難しい問題に口を出す、時代が時代なら武力で単純に出来るこの不道徳行為をどうやって合法的かつ相手に気持ちよく資金と物資を提供させるか、古来より時の権力者は考えた、法、税、徴収、通行料、かつあげ。

「うーん、まずはかつあげ。」と俺は小さく答えると。「それって一番悪手じゃないですかー。」と愛微笑は突っ込みを入れてくるが、アテはある。


『えるふ、さと、せめる。えるふ、こまる!』と俺はエルフギルドのマスターへ怪文書を送ると早速エルフの使者が天魔のダンジョンに来て武装一式を物納してくる。装備はありがたいが、こいつらには生産力はあるが資金力はない。味方殺しの難しいこのゲームでこいつ等エルフは武力で脅迫出来る分、既にこちら寄りの勢力であると見ても良い。覇王軍同士だと裏切りが出ても報復措置が内部告発でもして名誉を貶めるくらいしか出来ないからだ。

そうなると次のターゲットはオーク、味方だけど。『将軍、おかねちょーだい』とメールを送っておくとすぐにオークギルドとのパイプ役であるバッシーさんが金貨100万枚を上納してきた。


次にこの資金を元手として買い上げを保障してから魔都や覇都に潜入しているギルメンへ装備素材の買占めを行って貰う。その後それらの素材を湖神信仰に一時的に切り替えた人員で大量に装備へと変換しギルド倉庫に放り込み、装備が整っていないギルメンに受け取らせ武装させ、非武装メンバーをゼロにする。

余った物資は魔王2位のギルドDDDの倉庫へ掛け持ちのメンバーを使いあっちの金庫へ放り込んで使うように誘導させる。ギルマスは気に入らないがあの戦力は必ず必要になるからゴマすりをしておく。


一見これらが短い動作に見えるがこれを完了させる為にはリアル4時間を必要とした実につまらない作業であったが強大な敵と戦うに当たっては必要な行為だ。

なぜなら次の戦いは確実に勝利しなければならないからだ。

魔王軍勝利の実績、これが今の魔王軍全体に足りない物である。ギルド単位の勝利はあるが、それは現在魔王軍の勝利として評価がされていない。「上位ギルドがあれやったー。」「へー。」みたいな他人事で済ませる状況を改善しなければ魔王軍は今後間違いなく負け続ける。

負ける訳にはいかない、なぜなら勝つことは楽しい事だからだ、それ以上それ以下はない。

ゲームを楽しむ、その為には今は地味な内政ターンを積み上げ国力を底上げしなければならない。

・設定『新王誕生システム』

日本でMMORPG二大勢力ゲーが流行らなかったのはバタ臭いグラフィックの問題もあったろうが、様々な二大勢力洋ゲーが散っていった日本の中で長く二大勢力PvPで生き残ったゲームといえばマスターオブエピックだろう。

このゲームには二大PvPと見せかけて中立という山賊システムを導入していたので戦争コンテンツに選択肢が増えていたのだと思う。つまり、PvPが主体のゲーム延命を図りたい場合には二大勢力プラスその他か三国以上の勢力を配置しなければならないという統計がたぶん出ている。


本作の場合はギルド単位で覇王魔王軍から独立して勢力を作る事が可能になる『新王誕生システム』をベータ2辺りから採用予定であるが、その前にワールドオートバランサーを作動させる実験をしなければならない。架空のネットゲームで架空のシステムの稼動実験をしなければならない。なんだこれ。

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