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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
人外魔境に咲く花
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B033.デモニックストーリー

炎上するヘヴシンキから逃げるように南下した私達が次に目指すのは「山かなー、砂漠かなー。」と分かれてしまいましたが、ここでちょっと特殊なチャット回線から『魔王軍緊急会議の招集を要請します。』というログが流れてきた。このちょっと特殊な回線は、このゲームではギルドを3個重複して加入出来る為に、私はギルド『天魔』と『マオウ軍ラジヲ』と『魔王軍HQ』というギルドで3枠を使っています。HQは司令部って意味らしいですけど、私が作ったギルドではないので「名前のセンス悪いなあ。」と本心を言ったことは一度もありません。今回はそのHQという所からのチャットでした。

「是非『現』魔王様には出席して頂きたい!」と次に魔王になれそうなギルド『DDD』のギルドマスターのイゾログ君がちょっとしつこいので、私の腹心ことナイトウィンドさんと腹心二号のビータ君に「ビータさん、ナイトさん、ログを見ての通りなのですが、会議しないといけないみたいですね。」と伝えると、「飛行ユニットはオートラン?パイロット?難しいから陸地でNPC倒しながら会議に加わろうか。」とビータ君は砂漠と連山の今は安全な分岐点である亜竜のホーム『プラウドスカイ』から陸地へ舞い降りた。


陸地につくとまたビータ君とロドリコさんがまたオチの薄い漫才を始める。

「先輩、突っ込み所があるんすけど。」「なんだね、ロドリコ君」「亜竜のホームって連山の西なのか上空なのか分からないじゃないすか。」「そりゃまだ占領された事無いからな。」「もし、ダンジョンでの制圧が可能であったら、その場合空スタートの亜竜がキャラメイク不可能になるのはおかしくないっすかね?」というロドリコさんの発言にもビータさんはめげずに「そりゃーお前、亜竜はプライドが高いからナワバリになんか作られたらショック死して絶滅って事だよ。」と無茶な論法を通そうとしますが、実はそれで正解です。「合ってますよ、プライド高さによる絶滅。」と設定好きの私はフォローを入れると。

「亜竜メンタル弱すぎだろ。」とビータ君は呟いた。


「お兄ちゃーん、亜竜ホームの名物ってなーに?」と無邪気なエリーンちゃんが兄のビータ君へ尋ねると、ビータ君はアレキシさんの方へ首を向けてアイコンタクトを取り「「そりゃーマンモーでやすね。」」と言葉を合わせてきた。

陸地をたむろする巨獣マンモス、マンモス、マンモス。マンモスのレベルもピンキリでレベル1マンモスからレベル30(!?)マンモスまで選り取り見取りです、マンモスしかいないですけどね。

「捕食者が亜竜だからマンモーしかいないのは設定か手抜きか判断し兼ねる。」「まんもーまんもー!」

「オイラ等のレベルなら30のマンモスでも勝てそうだね。」とゴブリンのレオさんが群れの中で大きいマンモスを見て言うけど、マンモスってリンクしないんですかね。

「一匹に攻撃仕掛けたら周囲のマンモスがリンクするかどうかを見極めてからから考えましょう。」とインテリオークのバッシーさんは冷静に戦い方を考えてくれる。

それを見て安心した私は、「ナイトさん、ビータさん。いつも通りにフォローお願いします。」と頼れる仲間にお願いをしてから『魔王軍HQ』へ挨拶と発言を開始する。


愛微笑:こんばんは、今日はどうしました?

シャンコ:こんばんDeath!

イゾログ:こんばんは、じゃねえよ!ネレイドとマーマンがホームが無くなったじゃねえか!魔王としてこれは防げなかったのかよ!

スマグウ:亜竜代表から言わせて頂きます、現魔王様は我等とノースマンホームのヘヴシンキの破壊活動に参戦しておりました!よってご多忙に付き仕方の無い事だと思われますが。

イベリウス:『黄金のシロッコ』が北東へ船団を派遣した情報は予め流しておいはずたが?

※イベリウスさんはPvPギルド『砕覇』のマスターさんです。

ビータ:天魔サブマスとして言わせて頂きますが、貴方方は我々天魔がシロッコの攻撃を阻止する作戦を立てていたら参戦して頂いたでしょうか?当方には現在の魔王軍は兵力の拡散により戦略的防衛は少々厳しいと推測しますが。

スマグウ:魔王軍元帥の言う通りです、手勢すら満足に操作出来ない現状ですぞ。

イゾログ:でもよー、俺等DDDは『地楽園』を制圧したぞ。それに比べて現魔王様は嫌がらせしかしていらっしゃらないぜ?

ナイトウィンド:天魔副官の者だが…その地楽園侵攻への橋頭堡は我等天魔が築いた機械都市グラハティアを制圧したダンジョンあって可能であった作戦だ…貴殿等の活躍は高く評価するが、持ちつ持たれつの関係をまず考慮する所から考えないか?覇王軍は既に強力な司令部を擁しているぞ。

イベリウス:覇王軍の首脳部はマギラ2からの移行か浮気組みだ、こちらの指揮系統と統率に問題があるのは分かるが、魔王の権威でなんとかならないものか?

ビータ:権威は所詮実績に過ぎぬ現状でどう生かした物でしょうか、覇王軍は完全実力主義で覇王交代が起こったが、魔王軍はその実力ですら天魔にアライメントポイント総数が届いていないギルドが全てでしょう。権威が欲しければ実力でなぜ奪えないのですか?

ハリュオン:DDDサブマスのハリュオンと申します。当ギルドの力不足も認めますが、魔王軍全体が一致団結とは言いませんが、もう少し協調性という物を考慮し啓蒙けいもう活動に勤しむのが現時点の妥協点かと思われます。後は当ギルドマスターの口が悪い事を前もって謝罪したい。

イゾログ:ハリュオン、恥をかかすなよ。

アルカントス:これは年寄りの経験からの忠告ですが、そういう事はささやきチャットでやる方がいいですよ。オープンでそれをすると後で人間関係がこじれますからね。

イベリウス:歴戦のアルカントス将軍は魔王軍に対して何かお知恵はございませんか?

アルカントス:そうですな。一つ言える事は、覇王軍にも穴はありますし、それを考えれば魔王軍の失地は今後無かれと思います。

シャンコ:オークの頭領、それを教えて貰えますか!

アルカントス:簡単な事です、魔王軍が防衛出動と指揮が執れない様に、覇王軍も侵攻出動の指揮が取れる人材は1-2人しかいないと言う事ですよ。

ハリュオン:つまり、魔王軍は勝手に戦争を起こせて、防衛は出来ず。覇王軍は攻めあぐねているが防衛には力を注いでる、という解釈でよろしいか?

アルカントス:その認識で正解でしょう。防衛用の指揮官を一人、地味な仕事になりますが指名して権威を与えてやれば宜しいのです。ビータ君の魔王軍元帥の様な肩書きを用意すればよろしかろう。



会議は私を通り過ぎて進む、体もアバターも会議場にはいない会議、近くではマンモスと殴り合いをする仲間達。あ、レオさんが吹っ飛ばされた、よく飛びますね。それをジノーさんがキャッチ、さすがですねえ。

私のすぐ隣に回復魔法ボタンをポチポチ押しながらでしょう、会議のログを見つめているのか無表情なナイトウィンドさん、この人にはお世話になりっぱなしです。好奇心と下心から親密になった私の友達、年上のお姉さん。

こう暇だとふと思い出すなあ。あれは去年、2036年の秋と冬の間でしたか。



「私、ナイトウィンドさんの事が好きです。」とデビルである青い肌の自分が紫色の顔になっている自覚はあった、春にマギラ2をプレイし始めてから初心者の頃にサブキャラ育成中であったダークエルフ男だったナイトウィンドさんとコビットの一人で殺れるもんさんにグループに誘われて、色々教わって。

ゲーム中最大手であるギルド『いんぺりある苦労する』に加入する事もOKが出ました。

ああ、その頃にビータさんと一緒にクエストボスと戦った事もありましたね。

私の近くでは常に年上だろうそのダークエルフのアサシンが私を守るように戦っていてくれました。

れるもんさんはメインキャラがギルドマスターなので組める機会はあまりなかったけれど、あの人もメインキャラクターはとても美形で戦場を駆け抜ける疾風の様な方でした。

私はそんな二人にネットゲーマーとして育てられたのは幸せだったと思います。


そして、ついに私はずっと一緒にいてくれているナイトウィンドさんに惚れ込んで、つい告白めいた発言をしてしまいました。それを聞いたナイトウィンドさんは小首を傾げて「悪い物でも食べたのか…?」と私をまじまじと見つめて来ますが、私は恥ずかしくて顔を背ける事しかできません。右を向けばそちらに回り込み、左を向けばそちらへ回り込む。あ、なんか昔そんな踊りありましたよね。

私が顔を背ける事を数回確認してから、ナイトウィンドさんは少し考え込み。

「愛微笑、これはゲームだぞ?しかも相手は顔知らぬ悪い男かもしれない。それでもお前は思いを成就させたいと願うのか?」と好きだの嫌いだのとは違うアプローチの返答が来た。

それに対して私は、「ナイトさんが悪い人なはずはありません、この半年でそこまで演技出来ているのなら、私は他の悪い男にとっくの昔に騙されています。」と困惑するナイトさんへ意志を示した。


「えと、待ち合わせ場所はハチ公横で、えっと、人が多いよー。ナイトさん早く来ないかな。」



内容はあるのだが、口出しする事が無い会議ログを見ながら、ふとあの時の事を思い出した。

あれは去年の寒くなり始める季節だな、あの時のコーヒーの香りも思い出と共に蘇る。


「おい、あの芋臭いガキがお前の弟子か?」と犬の像の横で右往左往する女子高生くらいの少女をコーヒーショップで買った熱々で香りの良いコーヒーをズゾゾゾと下品にすすりながら双眼鏡を構え監視する長身の女幼馴染は私に尋ねてきた。私はその双眼鏡を彼女から奪い目標を確認する。

「ああ、あの表情は間違いない、愛微笑だ…。」と少し陰気な少女を双眼鏡で覗きながら答える。

「磨けば光るかもしんねーが、芋だな。」

「芋?スナイパーには見えないが…?」

「お前も時々ポンコツだよな、ナイア。」

「マリ、私達も若いんだから古い?言葉は知らなくても良いだろう…。」

「まぁ、ナイアは一人っこだし、じっちゃんばっちゃんももういねえしな。」

「いや、一人生きてるがボケてる…。」

「長生きしてもボケ、悪くて早死にか。苦難の血筋だな。」

と幼馴染のマリは大笑いをした後にコーヒーをぐいっと一気に飲み干して紙コップを大きな手のひらで握りつぶした。

「よし、んじゃ行って来いよ。あたしは後で登場する。雰囲気が良かったら帰るよ。」

と笑顔で私の背中を押してから手を大きく振るが。

「私にそういう趣味は無い。」と念は入れておく。

「今日が目覚めの日かもしれないぞ!事務職から社長秘書になれって社長にパワかセクハラされてんだろ?いっそこの機会に、彼女がいるんで遠慮しておきますって言える女にでもなれば?」

「…同性に告白されたのはこれで3回目なんだが、そろそろうまい逃げ道を考えなければならないな。」

「結婚でもすれば?」「そういう時代じゃないだろ、お互いの有様を考えろ。」

はぁ、と私は溜め息を付き挙動不審になっている少女に向かって歩み寄りスリムフォンを耳に構えた。



私に向かって人影が真っ直ぐに向かってくる、スリムフォンを構えた大人のお姉さん、少し古いデザインの黒いパンツスーツを着たその人は一瞬性別の判定に悩んだけど、女性の方でした。

安堵と安心が心に湧きあがります。着信を受けたスリムフォンを耳に当てると歩いてくるお姉さんが口を形作る「愛微笑、会いに来たぞ…。」と。


立ち話も何だからと喫茶店まで連れられて歩くも、ナイトさんの中のお姉さんは入店直後に鋭く店の一角に目を留めるとスタスタとその既に女性が座っているテーブル席の一つに座って私を手招きした。

既にいた女性は大柄で今時珍しい革ジャンなんて着たテンション高そうな人です、これは陽キャラです。

「愛微笑ちゃんか、あたしは同じゲームやってるマリッドの中身だ。マリって呼んでくれ。」と陽キャラ風のお姉さんは自己紹介をしてくれた。

「あ、マリッドさんですか。いつもお世話になっています。」と私はペコリと頭を下げる。

「どうだ?ナイトウィンドが女でがっかりしたか?」とマリさんは試す様に私の顔を見るが、私の人間に対する初恋が破れたのだろう事は確定してしまったので正直に、

「少しですけど。でも、性別は違ってもゲーム上と現実のイメージがピッタリだったので私はがっかりしていません。私にも人を見る眼はちゃんとあって、そこに安心をしました。」ときっぱり言えた、いつも人と話すときはしどろもどろだった私も人の顔が人らしくないゲーム内から少しずつ人と対面出来る様になった。


「かーっ、二人とも真面目だねえ。ナイアなんて静岡から渋谷まで来るしよ!久しぶりにリアルで会ったと思ったら、サシでOFF会とか言い出してさ。」

「ナイア?」と私は尋ねると。

「ああ、私の名前だ。変な名前だろう、親の世代に流行ったサブカルチャーのキャラクターから取ったらしい。子供の頃は同世代よりその親世代にからかわれたよ…。」とナイトさんの中身は遠い目をした。

「あ、私の名前はアイです!藍色のアイです。ラブの方じゃないんです。」

「良い名前だな、しかも呼び方はそのままアイで良いのは便利だな…。」

そのやり取りを見たマリさんは、「お邪魔になるかな?普通になると思ってパフェ頼んでしまって申し訳ない。」と店員さんにキャンセルをしようとするが、それをナイアさんが「別に構わんさ、好きな物を頼め。」とゲームの中の様に奢ると言ってくれる。


「いやー、サシでOFF会だろ、あたしは今回用心棒として幼馴染が心配だから来たんだけど、邪魔して本当に悪かったわ!」とマリさんは笑いながらナイアさんの肩をバシバシと叩く。

「アイ、大胆な行動をする時は今後は何かかしら布石は考えておく事だ、これはゲームでもリアルでも同じ…。保険や後ろ盾を必ず考えて動け…特に女子にとってオフ会は注意だ。」と背中を叩かれながらもチョコレートパフェを口にするナイアさんの手はぶれない。

そこへ「あの!」と私は意を決して尋ねる。「なんだ?」とナイアさんがパフェから目を上げる。

「お姉さまって呼んでいいですか!?」「駄目だ。」と私の二歩目は封じられた。



イゾログ:つまりよー!魔王の権威はヘヴシンキ破壊活動で多少は効果はあったんだろ!?じゃあそういうのをバンバンやったり作ったりしてよ!

イベリウス:ハハ、ソロモン72柱みたいに役職を設けるか?俺なら書記長は絶対に御免こうむるね。

アルカントス:年寄りの戯言と思って聞いて頂きたいが、今はベータ1程度なのだから頑張りすぎても後で燃え尽きてサービス開始には魔王軍劣勢になりかねませんよ。私は過去にそういったゲームをいくつも見てきました。

シャンコ:ベータで終わったゲームもありました死ね!


魔王位かー、駄目元でギルメン増やしてビータ君とナイトさんに引っ張ってきて貰って就任しちゃったけど、そろそろ駄目みたいですね。


愛微笑:分かりました、魔王の権威を活かせばいいんですね?

イゾログ:そうだよ!天魔がちょっとポイント稼ぐの止めれば俺が魔王になれるんだからな!

愛微笑:では、はい。

と私は応えてから私なりの解答を出す、魔王は悪の元へ、この選択ならば大丈夫でしょう。

システムワードとしてそれはマギラ3全プレイヤーの画面にでかでかと表示された文言。


『魔王位が愛微笑よりビータへ譲位されました。』


ビータ:ちょ、おま。

スマグウ:おお!元帥!いや、魔王!新魔王ビータ!いよっ悪竜ビータ!

イゾログ:なんでだあああああ!

シャンコ:新魔王様、御下知ごげちを!

イベリウス:ほー。

アルカントス:なかなか良い判断ですな。

愛微笑:では、私の務めはここまでとさせて頂きます。以後、魔王はビータさんに代わりますので、私はこの会議からの脱退をさせて頂きます。

ビータ:サブマスすらしねえの!?

愛微笑:いやー、マオウ軍ラジヲの方がおもしろいですし、魔王位は私には荷が重かったんですよ。では皆様さようなら、また何処かで。

アルカントス:お疲れ様でした。

イベリウス:乙、気持ちは分かる。


愛微笑がギルド『魔王軍HQ』を脱退しました。


あーすっきりした!後任もちゃんと決めたから逃げじゃないですよね。んーっと背伸びをする私に、

「アイ、良い顔になったな…。」とナイトさんが私に微笑みかけてくれた。

少し離れた場所でビータ君が「おまええええ!魔王がなああああ!辞任をなああああ!」と叫んでいて、周りの仲間達が指を刺して笑っています。これで良いんです。



・雑談 「俺には旦那がいるから。」

「俺には旦那がいるから。」と自衛隊時代にわりと仲の良かった同期を歓楽街の闇へ誘おうとした筆者が断られた文句。この言葉の意味に気づくまでは2ヶ月を要したという。ちなみに筆者の統計によると自衛隊内に同性愛者がいるのは隠れ表で確率は1/28であり、某学会信者の割合は1/21であった。ちなみに自殺者率は同期が100人いたらとしたらそこそこ良い所までに残る同期は23人でその内二人は自殺をするかそう処理される。反論があったら是非して欲しいものだ。え?国家機密?まさかあ。


・ネットゲーがきっかけで対人恐怖症が治るか

治った人もいるし悪化した人も過去に見たが、ネットゲーは確実に人の心を蝕む。

筆者の聖典漫画にもネットゲームでカウンセリングをするという試みがあったが、将来的には本当に出来ると思う。UOでやってた人は時代を先取りしすぎだよ!


現実のカウンセリングを筆者も経験の為に数回受けた事はあるが、カウンセラーは本当に良し悪しピンキリである。

なお判定はいつも「貴方の精神は正常です。」と言われるがその解答のお陰でちょっとカウンセリングは信用出来ない。

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