B031.心の魔物が踊った跡で
敵の全軍突撃が来るみたいDeathが、予め迎撃方法についてはビータ氏と松本SANが打ち合わせをしていた通り、西門から続く通路の石橋3つを基点として、スケルトン対策が万全な元ヘヴシンキ防衛隊に融通の利く亜竜やハーピーやギルド天魔さん達が当たり、スケルトン対策を別にしていないギルド名の長いヤクザ共に、我々スケルトンギルド骨骨骨の文字通り気骨を見せるという無難かつ柔軟な作戦で挑む事にしました。
皮肉にも攻める時に苦労したあの石橋のお陰で敵の戦力一極化は防げています、バリケードも絶賛炎上中で残ってます死ね!
しかし、「松本SAN、我々であのヤクザ共を止めれますかね…。」とつい弱気な発言をしてしまいますが。
「シャンコぼん、あんたが大将ぼん、シャンコせんかい。」と励ましてくれましたが、
「もしかして、しゃんととシャンコかけました?」と相棒のスケルトンの顔を覗くと松本SANは首をコキキッと横180度回転させて視線を逸らせた。
そんな掛け合いもバリケードのお陰で出来てたものの、ついにそのバリケードが敵の兵器攻撃により吹き飛ばされる。空を舞う大八車や馬車の破片、花火の様に巻き上がる火の粉の影として、多腕の怪物と青白い影、人狼、エルフ、獣人、といった人ならざる人々が目の前に浮かび上がってくる。敵は攻守共にバランスの取れた精鋭だが、こちらには地の利と数がある。
「全員、橋の端まで敵を引きこんで暗黒魔法で袋叩きにするんでDeath!照準は松本SANの狙っている敵に集中してください!」と念を入れておく。
敵先頭の羅刹如き単騎突撃で迫ってくるアシュラの変異種だろう女戦士へ松本は暗黒魔法を放ち、周囲がそれに続く、暗黒魔法レベル0『暗黒球』弾速は遅いが追尾性高い遠距離攻撃魔法。レベル2『夜の闇』敵を一時的に盲目状態にする。※ダークストーカーには無効です。等の暗黒魔法の基本を叩き込むと、
「やっべやっべ、盲目だけは駄目だわ。」と言いながらアシュラは緊急回避をし回復魔法を受けながら後退し、それに代わる様に黒装束の死神、鋭い爪の人狼、重装備のドッペルゲンガーがぬるりと距離を詰めてスケルトン達へ切り込むが、3人程度で我々の骨盾を突破出来るはずがない。となると、こいつらも目くらまし!更に言えばこの3人はダークストーカー種なので盲目は通じない。となると本命はアーチ状の石橋の中央真上に兵器を置く事!
「同胞総員!逆突撃用意Death!」と私は音頭を取り、今度はジャミングを受けるリスクを警戒して、「カウント取るぼん、目標は石橋の真上の兵器のみ、深追い禁止。3.2.1.0チャージ!」と松本SANにチャージカウントを取って貰う。
「ちっ、釣れない奴等だな。」という言葉を拾いましたが、貴方方に構っている余裕は無いんDeathよ!
スケルトンの集団は石橋中央である一番砲撃のしやすい位置に展開中であり、敵砲兵は我々の逆突撃を見て怯んだのか、ろくに照準も合わせずに機械神魔法エーテルモーターを発砲したが、それは頭上を通り過ぎて後ろの地面を叩くだけであった、マシンボルトを咄嗟に発射した敵砲兵からは水平射撃攻撃なので、運が悪いと頭に命中し致命傷となる高さだが、そんな機転良く迫撃砲で面制圧する予定から直射へ変更の出来るプレイヤーはあまりいない。理由は簡単だ、砲兵は突撃したりされたりする事に慣れていない。案の定、石橋真上のエーテロイドやラットマンは転がる様に後方へ逃げるが、問題はこれが罠であった事だ。
石橋の中心の砲兵を掃討したと思ったら、そこへ更に後方で展開されていた敵砲兵が視界に入り、石橋の中心へエーテルモーターや土魔法を一斉に放った。目の前に光と土塊が放物線を描き、その後の炸裂音と共に視界がふさがれた。
「島津名物、釣り野伏せですか?」と隣に並び飛ぶ偵察隊長のテクチャルが尋ねてくると。
「いや、あれは昔ナポレオンの漫画で見た作戦と今まで何度もネットゲームで食らった作戦じゃ。」と応えてやる。
威力偵察の後に砲兵を前進、それ見てチャージしてくる敵を味方砲兵ごと更に後ろの砲兵で吹っ飛ばす。どんなにキャラクタースペックの高いキャラでもこの作戦を防ぎ切る事は出来ない、なぜなら兵器攻撃は防御力、魔法防御力とは別のダメージ換算がされるのが兵器のあるネットゲームの常だからだ。
これは最古のRTSから伝わる伝統である。理由は単純、兵器操作という単純作業でも高レベルのプレイヤーを倒せるようにとの開発からの救済措置である。
基本的にワシはその初心者救済措置を利用してそれ基準に戦術を立てる。ただ、今回囮に使った砲兵はベテランを選んだつもりじゃったんだが、あの慌て方は少しなさけない、鍛え直しが必要じゃな。
「カラシさーん、次どすんのー?」と弟子筋の一人であるSIVAが尋ねてくるが、教えないと思いつかなかったかー。しょうがない、教えてやるか。
「敵が味方を蘇生するタイミングを見て突撃じゃ。」と応えると。
「今やっちゃ駄目なんだ?」と質問を更にしてくる気持ちはわからんでもないが、これには理由がある。
「味方を蘇生開始したプレイヤーにはヒロイズム、つまり義務感みたいな感情が出る。その最中プレイヤーは蘇生を優先するので反撃は出来ないでそのまま犠牲を重ねていくんじゃよ。」
「おお、悪党だなあ!さすがギルマス!」と褒められている気はしない賛辞が飛び交うが、これは現実でも使われる手だ。戦争で使う銃の口径を小さくして威力を弱め、敵の怪我人を増やす事でその介護人が増えて敵の勢力が弱体化していく。若いもんは知らんだろうが、知らん方がいい場合もあるが。
弟子として育てるならそこまで教えるか悩ましいなあ。
「お、敵が少し引いたけど確かに蘇生しようとギリギリの距離でウロウロしてるね。」
「よし、SIVA。再突撃のカウントを執れ。今度は全砲兵も突撃させる、事故死した敵とそれを蘇生するプレイヤー、その二つが発生した時点で兵力はこちらが勝る、少数で敵に勝つというのは気持ちよいだろうが、確実に敵より多数の戦力を用意して決戦に挑むべしじゃよ。いいかいユリアン?」とワシは皮肉な笑顔を作ったが今悪い顔をしている自覚はある。
「ところで。」と隣のテクチャルが口を挟んでくる、「うん?」と応えてやると、「スケルトンも蘇生ってマズイ薬飲ませるんですかね。」とワシを困惑をさせてくる質問をしてくるが、「直接聞いてきたら?」と暗に攻撃命令を下しておいた。覇王軍は兎も角、ワシ等ギルドの勝ちは最初から確定しているのだから好きにするといいさ。
「スケルトン、公会堂まで後退したらしいでやす。」とアレキシさんがさっきから猛スピードで空を駆け巡り情報を仕入れてくれる。
現状、ハーピーと亜竜とギルド天魔の混成勢力であるこちらはどうかなーと思ったが、敵の元ヘヴシンキ防衛隊の突撃はそれほど激しくは無かった。理由は単純である、地形とガスと数の差である。
現在の戦闘地区は西門から港口に通じる石橋の周辺、敵と味方は小競り合いが続く、戦況優勢。
数が勝っているならなぜ我々はカラシさんの部隊とぶつからなかったというと、単純にあのギルドには砲兵が多い。ラットマン、テクチャル、エンシェントエーテロイド、側近こそ変わった種族が多いあのギルドでは、ギルマスが言葉巧みに「国が滅ぶぞ!」と言いながら実際に滅んだ2種族と滅びつつある種族のまとめと懐柔に成功しているらしく、魔王軍に対して一番厄介である対空と野戦砲兵のユニットを着実に登用し集めている。
以前、「札束ビンタして祖国奪還を煽る勢力って歴史でありませんでした?」と魔王様愛微笑がふと言った事があるが、この発言に対しては「愛、大人になってからその話はしないようにしろ…。」とナイトウィンドさんが釘を刺していたのには複雑な心境である。今回滅ぼしたの俺等じゃん。
ヘヴシンキ防衛隊から奪還隊に変わっただろう敵は健気にも犠牲を出しつつ突撃を繰り返すが、なにぶん彼等は本当にスケルトン相手特化であったのだろう、対空手段はたまにカラシ軍から飛んでくる支援射撃と射程の短い光神魔法ばかりである。それに敵がガスマスクを装着すると視界が悪くて更に夜だと戦闘にならないというのも承知である、夜は魔王軍が圧倒的に強くなる時間帯だ。諦めろ。
「お、低レベルのかわいこちゃん発見っす、そーれまっきまきー!」とロドリコがちょっと前線に顔を出したノースマンのお姉ちゃんを的確に狙い宙吊りにしてから倒そうとするが、その趣味はちょっと変態ローパーズっぽいから止めて欲しい。
「なにすんやああ!」と叫ぶ美人なお姉ちゃんを「グヘヘー。」と言いながら手繰り寄せるロドリコの包帯をスパっと切り裂く一筋の剣閃!その窮地を救った犬っぽい剣を持つ獣人と躍り出てきた金髪のノースマン男ははお姉ちゃんを庇うように盾と短杖を構えながら俺とロドリコを睨みつけ「ソミュア!無事か!」と後ろに叫んだ。
その状況を前にしたロドリコは「うわ、すっげ、僕今めっちゃ悪役してたっすよ。」と呟いているが、安心しろ、俺らはもう完全に魔王軍だから。
「魔王軍元帥、東より船影です。」と野良亜竜の中で協力的な人が偵察結果を伝えてくれる、西の戦場はアレキシさん、東はこの竜に偵察を頼んでいたのだが、もう来たかー。ちなみに魔王軍元帥の称号はさっき魔王様が「じゃあビータさん総指揮官ですね、はい称号進呈します。かっこいいでしょ!?」とサブギルドマスターとは別に急遽称号が用意された。称号で底上げされてもカラシさんの知名度に負けるから恥ずかしいだけなんじゃないかなあ、と思ったけど。魔王軍元帥はちょっとカッコイイと共感してしまったので贈呈されておいた。
「でも、うーん、負けですね。」と俺は外部ツールチャットで士気が下がるのを承知でギルドに戦況を伝える。
「んじゃ、退却準備っすね。」「左様ですな。」「まぁ次があるよ!」と味方もこの発言に批判は無い、だって俺等の勝率悪くないけど良くも無いからな。
「あうぇーだから負けた!ホームなら勝ってた!」と妹がドワーフの姿のまま裸踊りをしているが、これは敵への挑発行動のつもりらしい。でも本物のカラシさんも普通にそういう事するので効果は無い。
「エリーン、ジャミングの10分が切れたら変装解除して逃げる準備するからな。」と念は入れておく。
俺が恐れたのはあの人の『声』の力だ、味方を奮わせ、人を誑かし、敵を竦めさせ、なぁなぁに持ち込む猫撫で声。
もし、能力バトル物の世界だったらアレは間違いなくスキルだと思う。なのでジャミング効果10分という時間はあの人と敵対した場合には効果は大きい。
全軍退却。しかし、そうなれば逃げられない種族がいるのは分かっている。共に戦った、苦難の魔王道を歩んだスケルトン達、出来れば彼等を輸送して離脱したいが。
『こちらグランデボーン!竜軍、敵の船団接近の報告は聞きました、我々はこの街を枕に総員突撃をし討ち死にするつもりDeath!終わり!戦いは終わり!また会いましょう、同胞達!』と気を使わせて申し訳ないと互いに思う通信が入る。
「こちら竜軍、出来るだけ港は焼いてから離脱開始します。グランデボーン、貴方方に夜の神と死の神、雪風の加護があらん事を。」
公会堂の石壁が敵の砲撃で崩されていく。皮肉なものDeathね、我等の破壊活動よりあちらの破壊活動の方が優秀なのDeathから。既に扉は破られ、敵散兵の突入は袋叩きに出来るのでやってはいるが、それは大体勝ち馬乗りに来た勢力であり、ヤクザ共のギルドエンブレムが入った装備は見当たらない。
突撃を仕掛けてこない奴等の狙いは公会堂ごと砲撃で潰す気なのでしょう、理由は恐らく砲兵の士気向上だと思われます、砲兵の大半がホームを魔王軍に奪われた種族Death、その因果は魔王軍に応報されるのは分かっていましたが、まさか我々がその餌食になるとはねえ。
松本SANも砲撃で倒れてしまい、今は大雪原で復帰組みと合流し突撃準備を考えているらしいDeathがそれは止めておきました。勝てぬ戦は骨折り損Deathからね。
バコン!という激しい音共に壁が崩れる、もう全てが崩れるだろう、上から降り注ぐ石材が発達した物理エンジンによりダメージ判定を赤い軌跡で示す。それは私の頭上に落ちず、肩を掠めただけ。
これで死ねなかったか、これで決まりDeathね。
「総員、突撃用意Death!」「よしきたー!」「スケルトンの意地を見せてやれ!」と死に損ないのスケルトン軍勢は公会堂の扉から全員で一斉に飛び出し、暗黒魔法を放ちながらその身に集中砲撃を受け砕け散っていった。
一番足の速いガレオン船の上で「提督、敵飛行隊は撤退していきますが、追撃の許可を頂きたく思います!」とテクチャルの娘が敬礼をしながら意見具申をしてくるが、ここで我がギルドの空軍に敵からのヘイトを受けさせたくは無い。彼等の気持ちは分からないでもないが、空戦は現状では大体魔王軍に負けている。彼等が志願した所でもし覇王軍がまた空戦で負けましたというイメージが世界に増えること自体を避けたい、これはあのドワーフとエルフとで一致した見解だ。ドワーフ商人、エルフ秘密結社と海洋ギルドである我等『黄金のシロッコ』。これらの覇王軍上位勢力は結託し種族バランスの悪い現状でもうまくやりくりをしないといけない。
私自身も今では覇王と呼ばれているが、個人の戦闘能力は皆無だ。この世界には勇者も英雄も導く女神も居ない。ただ、黒と白が競い合い時に交わる状況だ。そう望まれて作られているのだ。
開発者のBlogにも書いていたしな。
甲板から燃えるヘヴシンキを眺めながら溜め息を付く、ヘヴシンキは造船所としてとても良い街であった、それが完膚なきまでに炎上しているが、それの復興予算、そもそも何処が一番困る襲撃であったかといえば我がギルドである。
戦闘の流れを防衛隊経由で聞く限り、あのドワーフが街の破壊に敵制圧と言う名目で加担していたのではないかという推測も出たが、それは恐らく当たりだろう。
壊して金を出させる、無いなら貸しにしてやる。有名ではあったが本当に腹黒いドワーフだ。
借金や貸しの踏み倒しは権威を持つ者の立場を大きく傷つける、これは古今東西リアル過去でも同じ事だ。その古典的なやり方に私はハメられている訳だ。
「覇王、魔王、か。勝利者では無いな。」と私は小さく呟いてから、まだ直立不動で敬礼し続けるテクチャルの娘へ「下がって有意義な時間を過ごすように。」と忠告をしておいた。
竜や女怪の群れが南の空へ逃げ飛んでいく、闇が闇へ帰っていく。
「バギーラ。」「ソミュア。」「「やったじゃん!」」「勝ったー!」「街は燃えたけどな。」
と半日前までは知らなかった仲間のバギーラに私は抱きついた、するとバギーラは顔を真っ赤にして「わ、ちょっと!」と慌てふためくが構わない。
そこへガストラフェテスが苦笑いをしながら「なあ、ヘヴシンキの復興までどうすんだ?復興手伝うのか?地味でつまらない作業だぞ。」と現実を突き付けるが、私の答えは決まってる。
「ねえ、バギーラ、ガストラフェテス、ゴンタ。」と呼びかけると、「なんだ?」と反応を示した。
「あのさ、もし良かったら、私達のギルドに加入して一緒に冒険とかしないかなーって思ったんだけど。どうや?」と精一杯の笑顔で彼等を仲間に引き入れようと思った。
「俺達PvP特化の半タンクとDPS二人だけどいいのかよ。」とバギーラが遠慮げに言うが、
「私の入ってたグループはタンクいなくてさー、私がメインタンクになるように頑張るけど、優秀なサブタンクとDPSが丁度欲しかったんよ!」と言い繕うが間違ってはいない。
「迷惑にならないならお邪魔しよう、これからよろしくな!」「よろしく!」と破壊の後に小さな芽が吹いたとさ。
・思いつき
本作の視点変更が細かい事で、視点リレーという単語を感想で頂きましたが、『ストーリーターン制』とかいう単語にしたらカッコイイのでそう自称しようと思ったのですが、似た様な作風があったら恥ずかしいので勉強しておかなければなりません。
・宗教の勧誘が来た!
これを書いてる途中に宗教勧誘が来たので論破しても可愛そうだから神様についての価値観だけは聞いておいたけど、これが実に曖昧で困った。ジーザスでもヤッハウェーでも八百万でも菩薩でも天帝でも無く「神様がいて輪廻転生させてるよ。」って言うんだけど、その教義が「健康で長生き」って言うもんだ。輪廻転生するなら健康にしないでもいいし、カルマプラスにしないで極楽にいけるなら信仰するメリット無い気がするんだけど、って言ったら勧誘おばさんが困っちゃった。
後、私スパモン教徒なんですよ。
実家は仏教だけど個人的に『末法思想』がすごい嫌いなので葬式以外の法要は出ない。
「もし、人間が不死になった場合は幸福か不幸ですか?」と聞いた時には、即断で「不幸です。」と答えたオバチャンの決意には敬意を表したい。




