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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
人外魔境に咲く花
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B017.恐怖、逆野球拳

ダンジョンの通路の先から激しい足音と悲鳴が近づく。

「どうかお助け下さい!」「この先に敵がいるぞ!」とダークエルフとノースマンの女性コンビがこちらへ向かって叫びながら走ってくるのが見えた。

ノースマン、外見はでかい白人さんなのでイケメンや美人なキャラメイクに拘る人はよく使うが個体数は少ない。ダークエルフは世の中にエルフマニアがいるようにダークエルフマニアもいるらしいので個体としては珍しく無い。

突如としてこちらに走り寄ってくる落ち武者冒険者こと落ち冒険者はモンスタートレインをこちらに処理して貰おうという算段かもしれないが「はい、縛り草。」と杖を振りながらサトリは森林魔法のCCあしどめをこのコンビに発動させた。

「なんで助けてくれないんだよ!」と敵から逃れてきたと主張する二人を取りあえず拘束した冒険者一同はその初歩的なやり方に模範解答で返事をする。

「なんで攻撃判定があんだよあんたら。」とグンベイは腕を組みながら足止めされた二人組を睨みつける。

「あ、うーん。敵のスワンプマンに変装されてるんだよ。ホラ!後ろから敵が来るぞ!」とダークエルフのが後ろを指差すと確かにゴブリンの群れが近づいてきている。

「あ、その背中いただき!」とノムラは容赦なく振り返り指をさしたダークエルフの背中に両手斧を叩き込んだ。

バックスタブ成立。ノムラは何気に一番DPSの高いメンバーだったりする、その代わりに防御力は低いがプレイスキルでそれを補っているタイプだ。

「ちょっと何をするだー!同じ覇王軍じゃないですか!」とノースマン女は激しく抗議するも、一撃で倒れたダークエルフの相方はその姿を泥状の本来あるべき姿に戻っている。

「いやー、もうちょっと頭使いましょうよ。せめてダークゾーンで入れ替わるとか。」とサトリは苦笑いで彼等の問題点を指摘してやる。

「その手があったか、でもダークゾーンってこっちからも見えないからなかなかうまく行かない気がするんだよな。」とノースマンに化けたスワンプマンは試行錯誤の末に考えた策の失敗を悟り、後方へ緊急回避を行い迫り来るゴブリンの群れに混ざり化けた。

「集団戦に長けたゴブリンに紛れた方が強い、良い判断ね。でも、私達も弱くないわよ。」とラニは長槍をぐるんと振り回して背中に構えカッコイイポーズを取る。

遭遇戦、冒険者4人vsスワンプマン2とゴブリン3、うちスワンプマン1戦闘不能により数は互角。


「サムとライミーのコンビは駄目っすね。」「あいつら演技力低いからなー。」

「だって口元笑ってたよ。」「お前もよく笑い堪えてるの分かるから人の事言えないぞ。」

会議室に映し出されたダンジョンカメラの動画は眠気を堪えた若者達の娯楽番組と化している。

ダンジョンマスターの良い所はこうやってダンジョン内の色々な人々を神の視点じみた眼で見れる所だ。

世の中には常に何かしらのドラマや冒険や愛憎劇や喜劇が転がっている。特にネットゲームという空間は現実よりも特殊である、主にプレイヤーが変わった人多いからなあ。

今回のゴブリンとスワンプマンの集団戦はこちら側の仕込みではない。恐らく暇つぶしの発端だろう自発的かつ発作的にモンスターとなった彼等も冒険者に対する脅威としてロールしてみたいものなのだ。人は仕事を得るとなんだかんだいって演じる者である。とはいえ、学芸会や学園祭のお化け屋敷程度のクオリティからプロ俳優顔負けの演技力の差がゲーム中にもある為に、これもプレイヤースキルなんだろうなと思って彼等の失敗も喜劇に捉える。

成功と失敗、その差は傍観者からすると貴賎無く喜劇や悲劇である。何より、この懐の痛まない戦いは勝っても負けても楽しめる。

「あの冒険者結構強いっすね。」

「ロールがきっちりしているな…冒険者ごっこの延長が堅実なパーティー構成になっている…。」

「ゴブリンズとスワンプマンは騙す事までしか考えてなかったでしょうからね。」

「あっし思うでやすが、魔王軍側ってモンスターというロールを現実の人間から一枚挟んでプレイすることになるからレスポンスが悪いんじゃないかと思うでやすよ。そこが裏目に出てるんじゃないかと思うでやんす。」

「アレキシさん、結構哲学的?な時ありますよね。」

「言いたい事も分かるし、ありえない話でもない。」

「いや、バイトで一度、売り子をしながら着ぐるみの中の人やった事があるでやすが、その時違和感がハンパなくて、その時のモヤモヤがこのゲームでも蘇ってくるでやすよ。」

「オイラが思うに激しいアクションゲームなんかは明らかに人体より優れた機動をしているけど、その領域くらいまでにロールが達すれば違和感は無くなるんじゃないかな?」

「あーわかる、でもそうなると今度は現実のトロイ体にイライラすんだよなあ。筋トレして誤魔化すけどよ。」

「ゲームが人間の枠からはみ出ているのは昔からの事ですが、一日の半分以上の時間がモンスターになってる現状で私達は人間たりえるんでしょうか?」

「でもデビルは人間よりっぽいよね。」「触手の人達からの意見を参考にした方がいいぞ、それ。」

「それでモンスターの生き方の方が好ましかったらその人間はどうなるんですか?」

「以前いたギルドのマスターがまさにその状態だったらしい。「人を殺さない山賊みたいな暮らしがしたい。」って一度ポロっと言った事がありました。」

「遠い未来でそういう仕事も出来るかもしれないっすけど。って、そいつ私の親父じゃねえっすか!」

「ヒーローに憧れる少年が大人になった時にヒーローになれるか、みたいな問答に近いものになって来たな…。」

「そう考えるとニッチな願望を少し叶えるRPGって偉大だと思いませんか?」

「社会的には逆なんだよなあ。夢は毒なんだよ、きっと。」

「あ、さっきの勝負は冒険者側の勝ちみたいですけど、なんか半壊ですね。」

「モンスターといえど相手も人間なんだ。変な事言ってるかもしれないが、人同士が演じるってそういう事なんだろう。」


激しい戦闘だった、正直に言うとメンバーにサトリがいなかったら間違いなく負けていただろう。彼女はこのダンジョンの案内人である以前にこのダンジョンで『デスランニング』と呼ばれる現象を半日近く経験したらしい、最前線帰りのエルフである。

まず動きが違う、俺達は自称冒険者だが死ぬ事に命は掛かっていない、だってゲームだもん。

だがサトリは違う、これはたかがゲームなのに何かに怯えるような必死さが戦闘中ににじみ出ているのが分かる。死んだら再出撃ボタンポチでいいやという感覚ではない、その証拠にサトリだけは一度も戦闘不能になっていない。

敵もモンスターといえど中に人がいる、味方が倒れればリカバリーに入るし、弱っている味方の盾になる為に強行策に出る奴もいた。皮肉にならないなら拍手を送りたいし、奴等がすぐに立ち上がるなら肩を抱き合ってお互いを称えたいくらいだ。

そう考えるとこれはスポーツだ。マギラシリーズはMMORPGなのでプロゲーマーを意図的に作りはしないが名勝負というのはいくつもある。個人的に今度の戦いは自分的には名勝負だった。

その点くどいがサトリの戦い方は殺し合いそのものだ、的確にクールタイムを計り敵を足止め、弱っている敵を追撃するが深追いは避ける、蘇生が間に合わないと判断したらすぐに距離を取る、必ず囲まれない状況を作る、柱や壁を巧妙に使う。

外見は純朴そうなエルフだがまるで戦闘機械の様に戦う。それ程にこのダンジョンの案内人は仕事として割り切らなければならないのだろうか、無理を言って連れ出した事に少し罪悪感を覚え「サトリ、いつもすまない。」と声をかけると。

「いえ、気にしないで下さい。これも勤めですから。」と笑顔で応じる、勤めねえ。

アイテムをドロップしながら大の字の転がっているゴブリンとスワンプマンの姿に俺は一礼をして通り過ぎる、すると彼等も再出撃に戻ったのだろうか煙の様に消えた。


「ワープ2のJ、その場で右に曲がり突き当たりを左の扉、この部屋です。」

「ついに地下二階のラストステージ、第二の触手部屋ね。」

「全フロアに触手部屋って何か意図でもあるんかね。」

「はい、そこが重要なんですよ。」

「うそだー。」「本当ですよ。」

「では、プランがもう無いので、今回も服を脱いで進みます。」と言いながらサトリはエルフのローブを脱ぎ装備を一枚一枚はずし始めるが、これからお風呂に入りますねといった感じに淡々と脱ぎ始める。

「二度目になるけど、今度容赦なく攻撃されたら間違いなく即死するわよ?」ラニはブラジャーとパンツ姿にいち早く脱ぎ終える。

「この部屋へガチで挑んでも即死する戦力がある言われています、そこはもう些細な問題です。ダンジョンボスより強いという戦力評価もギルドから出ています。」下着姿になったサトリはぎこちない笑顔で半裸になった仲間を確認してから。

「では入ります。」と言いながらドアに手を当てると、中から「どうぞ。」という声が返って来た。

今度は万全の対策をしているみたいですね。


「どうしよっかな!」「そうぢよっかな!」「!#!""#"!\・・」

前回はしてやられたが、思い返すとトキメキが止まらない!だって、半裸のねーちゃんあんちゃんが真顔で横切ってきたんだぜ!?次はどんなおもしろ作戦なのか気になるのが触手魂ってもんだろ!

「同志セルフバンジー君!次はどう来ると思うかね!」「同志がりるん触長!半裸に靴とショルダー装備だけで来たら私は通す自信があります!」「ああ、いいねその組み合わせ。半裸に靴は基本だけど、ショルダー有りってのがまた微妙でいいね。」

とローパー達はニッチな性癖に話を咲かせていると、扉の向こうで声が聞こえてきた。

ダンジョンマスターに頼んでここの扉の防音性は低くして貰っている。理由は勿論敵の足音を聞く為もあるが、何よりドアを破られて突入されるシチュエーションも結構好きなのでわざとしょぼい扉にしてある。

『では入ります。』と可憐なエルフ声が扉の向こうから聞こえてきたので、つい「どうぞ。」と応えてしまった。それくらいに我々はドキドキなのだ。

扉を潜って来たのは例の冒険者だ。そして今回も半裸だ。うーん、捻りがないぞ。

「また無課金アバターかー。」「ウルトラCは二度ならず。」「プランAか、惜しいな。」と我々は半裸の冒険者にその自慢の触手を伸ばそうと動くが突然、半裸の体つきが貧弱エルフが。

「イベントマルゴでお願いします!」と深々と頭を下げた。

イベントマルゴ、なんだっけな。しかし、よく見るとこのエルフの貧弱ボディーはなかなか拘りがあるな。あ、それより突破される前に確認取らないと。

「もしもし、ダンジョンマスター?ビータ君?」

『はいはい、どうしました触長。』

「イベントマルゴってなんだっけ?」

『マルゴですか、またマニアックなので攻めてきましたね。内容は、ジャンケンです。』

「ジャンケンじゃけん!」『無理に言い慣れない方言ジョークはしなくていいですよ。』

「はい、ジャンケンで勝負を決めます!」とエルフが勇気を出して宣言する。

「いいね、学生時代を思い出すよ。」

「同志触長。」「何かね同志セルフバンジー君。」

「パンチが足りません。ここは考えるべきでしょう、今度はこちらが相手を驚かせるのが触手道ではないでしょうか。」

「うむ、よく言った同志。んじゃこうしよう、ジャンケンでそっちが負けたら。」

「負けたらどうなるのお?」をアマゾネス男が体をくねらせるが、こいつもローパー並みにアレじゃねえかな。

「そうだな、服を着てもらう。というのはどうだ?」

「同志!それは!!」「素晴らしいアイデアです同志!」「触長!触長!」

「えと、こっちが勝った場合はどうなるんですか?」

「現在ここにいるローパーは10名しかいない、理由は君達以外で地下二階にいる冒険者がいないからだ。君達がジャンケンで勝ったらローパーが減る。そして、君達の防具部位、これを賭けて戦ってもらおう。」

「あの…それってそっちにメリットまるで無くて意味わからないんですけど…。」

「大丈夫だ、俺もよく分からんけど提案してる。」

「そんなのでいいのかよー。」「いいんだよー。グリーンだよー。」


こんなに緊張のするジャンケン勝負は生まれて初めてです。なにせ負けたら触手攻めですからね。スクショに取られたり動画撮影と公開は勿論するでしょう、例えハラスメントで訴えられてアカウントBANされても彼等はそれを実行すると思います。ギルマスのエールートさんも言ってました。「世界には必ず深い闇が出来る、あの場所にそれがある。その闇は保身をも飲み込む。」って。

「んじゃ、そっちがフル装備になったら襲うね。最初はグー、ジャンケンホイ!」

触手ってジャンケンできるんですね。器用に触手が私の腕の前で形作り、チョキの形を取る。

先鋒の私が出したモーションはパー、負けてしまった。申し訳ない。申し訳ないですが。

「負けちゃったかー。」「何、次は勝つさ!」「あら、装備何にしましょ。」

「最初の装備はどこにするのかな?防御力のあるアーマー?おすすめは靴だね、趣味だけど。」と勝利の踊りをする触手に急かされるように私が答えた内容は。

「指輪でお願いします。」「「!?」」

「同志!半裸から指輪ですよ!」「ごめん、笑ったわ。」「いや、これは大物だ触手。」

「本当に指輪でいいのか!?」「アーマーに変えないー?」「作戦があるのかなー?」

「冷静に考えればフル装備になったら襲われるのでしたら。別にどこ装備してもいいですよね。」

「…言われればソウデスネ。」

こうなればこちらが出来る事は相手を楽しませて有利な戦況を作るしかないんです。

ジャンケンで有利不利があると言われれば、実はあります。ジャンケンにおける法則と統計学、これを私は目を通しておきました。グループチャットでそれをこっそり仲間へ流します。

具体的に言うと、ジャンケンの速度を上げて相手にグーを出させるという統計に基づいた作戦を採用しようと思います。まずは時間をかけてから相手をじらす戦いをして連続ジャンケンの提案をし勝利へ持ち込みたいと思います。


二戦目、冒険者代表ノムラ。触手代表セルフバンジー氏。

「んじゃいくよー。」「どうぞ!」「「最初はグー!ジャンケンホイ」」

「あっち向いてホイ!」「!?」ジャンケンを繰り出すタイミングで被せられたその声にバンジー氏は釣られて単眼を背けその瞬間にノムラの低い身長による下段から繰り出されたグーはチョキへ変化しバンジー氏の触手で作ったパーを破る。

周囲から見ればその明らかな不正は一目瞭然なのだが。

「ぶははははは!」と周囲の触手達が大笑いをしたのでノムラは「えへへー。」と可愛らしい顔をして誤魔化そうとする。

その状況を見たセルフバンジー氏は自身が不正によって負けたと察したが。

「受けてるならいいですよ。」と抗議はしなかった。


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