B013.アドベンチャーズハート
「触手のダンジョン?」「なーにそれ。」覇王軍のゾーンチャットで今日から囁かれる噂を耳にした。
曰く、難易度と内容が18禁であり、最奥にいるだろうはずのダンジョンボスドラゴンがB1Fで見かけられる。
ダンジョン内で散っていった味方陣営の数が大量にいる為にボーナスが付き宝箱の中身が異様の良い。
ただし、箱を開けた瞬間に魔王軍が大挙してそれをはがしに来るので夢も希望も無い。
しかし、逃げ切れれば間違いなく現在のゲーム中で最高ランクのアイテムが手に入る。
一攫千金、スリル満点、そしてなにより覇王軍領域に近い。
「でもベータテストだぜ?」「いるよね、ベータで本気出して燃え尽きる人。」「大体ベータ終わればデータリセットだしな。」「でも、ベータ2もやるってニュースサイトに書いてたぜ?」
覇都エルスローンの南東に位置する森見地区の酒場、バースワイルド亭の一角にあるテーブルを占拠する今時珍しいフレーバーを大事にするプレイヤーがこれまたステータスアップ効果の無い料理や飲み物を卓上に並べて冒険者を気取っている。なお、周囲には彼等以外に客はいない。
冒険者の侘び寂びがMMORPGから失われて45年くらい経ったと言われているが、効率効率ではせっかくの開発が作りんだフレーバーが可愛そうじゃないかと言う声も近年では出始めている。彼等もその一味だろう。
「ねー、今日はどうするの?噂のダンジョン挑むー?」とオレンジ色の巻き毛が目立つコビットの少女が仲間達を見上げるように木製のジョッキを両手で抱えながら尋ねる。
「なぁ、RPGってよ、本来こういう物なんじゃないか?」引き締まった体と顔立ち、長く茶色い髪を無造作に束ねたストライダーの男は遠くを見る様な視線で骨付き肉を手に持ちながら語り。
アマゾネスの男は「あーら、3人でどうにでもなる難易度じゃないらしいわよ。」とオネエ口調で鍋料理をスプーンでつついてる、ウェーブのかかったクリーム色の髪で褐色肌に刺青の目立つ彼はこの中で一番良い体格をしている。
「はぁー、世の中極端するぎよー。ソロの人が作った村やダンジョンは一瞬で滅ぶけど。こーきょーじぎょーみたいなくらいに人員もりもりの所はなんこーふらくすぎるし。」
「うむ、固定レイドで攻略情報を集めながら地道に攻めるなら勝てると思うが。」
「やーねぇ、ベータテストでそれやっちゃうと無粋じゃないかしら。それに、今こっちの勢力で一番大きいギルドはどこだか知ってるかしら?」
「どこなのー?」「現在の覇王か。」
「それが、『世界の謎追跡隊』ってギルドなのよー。それに対して魔王軍はその触手のダンジョンの主であるギルド『天魔』。」
「ふぇぇー!魔王軍は強そうなギルドだね。」
「両軍のゲームスタイルに方向性で違いがあるのは確かだな。」
「魔王は割りとガチで攻めてくる、覇王軍は設定資料の材料集めと考察、たまに冒険。」
「すごい!ちゃんと昔のRPGの悪い魔王軍とへたれな人間達みたいな構図になってるね。」
「だが、勇者様は不在だ。この世界に勇者はいない。自称勇者と名乗るのは蛮勇に狂う者だ。」
「さしずめ蛮勇者様ね、個の力には限界があるし、プレイヤーが人々である限りはそれは成立しないわ。」
「宝くじみたいにしてさー、勇者って能力付くようにするのはどうなのー?」
「昔だったらアカウントの売り買いや運営の癒着で泥沼だろうけど、今なら認証やコンプライアンスも厳しいからどうでしょうねえ。」
「俺達が生まれた頃にはもう既に英雄は一人じゃなかったゲーム世界観だったからな。」
「まぁ、覇王軍が追い込まれたらシステム的なてこ入れはきっとあるわよ、今までがそうだったわ。」
「それもそれで夢も希望も絶望もないね。夢も希望もないついでにどうせ倒されても死なないんだからそのダンジョンいってみようよー、リーリーちゃんも誘ってさー。」
「里里ちゃんはエルフの縛り、じゃなかったわ。ロールプレイでなかなか付き合ってくれないけど、一応緒誘ってみるわね。」
「エルフは個体数も多いが、何より防戦が多い為に戦い慣れている、熟練の防人は欲しい所だが。」
ガラッと酒場の扉が開き、そこへ明るい金髪で純朴そうな顔立ちと地味な衣に身を包んだエルフの少女が彼等のテーブルに着いた。
「おはようございます。コアタイム外ならそんなに動員されないので皆さんと一緒に冒険へいけますよ。」とサトリは笑顔で酒場のフレーバー大事組みの輪に入ろうとする。
サトリも生粋のロールプレイヤーだ、こういった特に意味の無い世界情緒は大事にしていきたいと思っている。
「リーリーちゃん、今日は噂のダンジョン見に行こうよ。ほら、触手の。」とコビットの少女、ノムラが純真無垢な笑顔で切り出すと、サトリの表情がビタリと固まったのを皆が見た。
「おい、そんなやべえとこなのか。」「やーねぇ、全滅させられても失う物なんてたいしてないじゃない。」と周囲はフォローと興味本位の質問を加える。
それの反応を見たサトリは固まった顔から溜め息をつき、渋い表情を作りながらアメリカ製品の説明書の様にペラペラと分厚い文句を語りだす。
要約すると、「いいですか、戦闘不能は確かに失う物はすくないです。しかし、戦闘不能よりもきつい事があのダンジョンでは起こります。持ち上げてから落とす、後一歩の所で成果が得られる時を見計らって全滅を狙いに来る。ローパーが多い。それでも行きますか?私なら北東のスワンプマンの沼の先に出来たスワンプマン奪還村を攻略した方が楽だと思いますが。」
「そうはいうがな。」「だいぼーけんだよ。」「制圧は無理にしてもお宝狙うくらいわねえ。」
「お宝とは言いますが、現在エルフギルドでは生産体制が整いつつあるので敵より良い装備は作られ始めています。確かにあのダンジョンの宝箱からは強力なアイテムが出ますが、労力に見合いませんよ。」
「秘宝探しと産業革命、ゲームならどっちを取るかと言われれば前者なのだー!」
「ノムちゃん、頭悪いロールが切れかけてるわよ、もっとひらがなっぽく喋りなさいな。」
「なのだー。」
「サトリ、そこまで言うなら詳しいんだろ?古き良き時代の復古を目指す者としてこの冒険に付き合ってはくれねえか。」
「エルフプレイと冒険者プレイの二束わらじも大変なんですよ。いいでしょう、付いていきますよ。」
と言いながらサトリはエールのジョッキを一気に飲み干すモーションをした。
「ただし。」「「うん?」」「何か変なの見かけたら警戒するか逃げてください、間違いなく罠ですから。」
天魔のダンジョン地下八階、会議室にて。
「はーい、プランDの改定をするべきでーす。」
「プランD改定、と。具体的にどうする?」「リアリティがイマイチじゃありません?」
「んー、演技力?それとも発動タイミング?」
「前者は仕方ないとして、後者はもうちょっと遅らせれますよね?」
「んじゃ、プランDは冒険者の信用を勝ち取る必要はなしで勢いで押し込む、かな。」
「次はプランFを改定しよう…。」「プランFってなんだったっけ。」
「回転床と迷路を合わせて敵の退路にステルス系を置く作戦だな。」
「これは一種のぐるぐる作戦だったが、敵の数次第では回転床一個目に攻撃しても良いと思う…。」
「このダンジョンの難易度はもう知れ渡ってるのに少人数で来る馬鹿が多いっすからね。」
「神の加護が自分にあると信じてるんでやすよ、世の中甘くない事を早めに教えてやるでやす。」
「とはいえ、何も考えないでノリで動くZergはもう攻略不能な迷路だし、本気で攻めに来るレイドギルドはいない、何より最高峰の勢力であるエルフギルドが近寄りもしなくなったのが大きいな。」
「宝箱を開けた後に全員倒すのはちょっと問題かもしれないっすね。ナメプします?」
「それで足元がすくわれても大丈夫な階層なら構うまい…。」
そんな午後2時の作戦会議中に少し早い就寝からの復帰組みが顔を見せる。
「おはようございまう。」「おほよお。」ジノーとエリーンが6時間弱の睡眠からゲームへ復帰、これは駄目なパターンだなと思いながら会議を進めるが。しまった、忘れてた。
エリーンとジノーは俺を見てパチクリと目を瞬かせた後にジノーはエリーンと俺を見比べ、エリーンはマヌケ面のままその場に固まる。
「お兄さん?」とジノーが首を傾げながら顔を近づけてくる、めっちゃ近い。それに嘗め回すように見ながら周囲をくるくる回り始め、ピタリと止まると顎に手を当てて考え込むポーズを取った。
「おう、お嬢ちゃんの考えは分かる。今度アタイのお古の服でも着せてみようか?リアルで。」とマリッドさんが怖い事を言い出すが、ジノーもそれに加えて。
「メイク次第ではいけそうですね。」とこれまた怖い事を呟いている。
「例え事故でゲーム内で女になろうとも、女装等は死んでもしないぞ。」と俺は念を入れる。
こいつらとオフ会だけは絶対にしないでおこうと俺は心に誓った。
状態変化マヌケ面から復帰した妹は「お姉ちゃん!」と叫びながら満面の笑顔で俺の不本意にでかい胸元に飛び込んで来ようとするが、これは緊急回避連打で後方に距離を取る。
「まて、このネタは2、いや3度目だ。もう駄目だ、昔のコメディアンも言ってる。」
と俺は片手を前に開き二人に抵抗の姿勢を見せる。
「そういえば、先輩はその姿になってから全然戦ってないっすけど、性能どうなんです?」とロドリコが実に効率厨の様な疑問を口にするが、これの答えは未だになんともいえない。
「正直に言うと、こうやってドラゴンの姿には戻れる。」と言うと俺は黒い霧に包まれた後に元の巨大なドラゴンの姿に変じた。外見も以前よりもドラゴンっぽい、亜竜の頃はもうちょっとワイバーンっぽかった。
「おお、お兄ちゃんだ。」「その変身がギミックっすかね。」
「うん、変身中は攻撃不能で被ダメージが減るので緊急回避に使えなくもないが、問題は装備に互換性がないのでドラゴンから人型になるとご覧の通りに哀れなビキニアーマーですよ。」
「うほー!」「エリーンちゃんも大きくなったらこれくらいになるんですかね。」
「俺はビキニアーマーを着る妹に育てる気はない。」
「わたし、お兄ちゃんのそれ見てちょっと着てみたくなったよ。」
「親御さんが悲しむぞ、俺だって悲しむ。」
そんな中でダンジョンアラームが小さく鳴り響いた、お客さんの追加入りマース。
お客さんは引っ切り無しに訪れるダンジョンなので、アラームの音量は最小にしてある。四六時中こんな警報を大音量で聞いていたらダンジョン側だって嫌だ。
今回はどんな奴等かな、とアラームの鳴った地点をダンジョンカメラで会議室のスクリーンに映し出す。監視カメラにスクリーンなんてファンタジーも台無しである。その為に冒険者の夢を壊さない様にこの部屋はコアルームより頑丈に造られている。
「おお!コビット、ストライダー、アマゾネス、エルフのパーティーだ、珍しいいぃぃ!」
「すごい、冒険者っぽいよお兄ちゃん!」「彼等になんかの神の祝福あらん事をっす。」
「でも主人公種族がいないでありんす。」「んだな、ストライダーが及第点か?」
「姉御達、野暮な事言っちゃいけねえでやす。コビットもストライダーも生粋の主人公枠でやすよ。ファンタジーの原典にも書いてやす!」
と、皆が睡眠不足な為に論点や盛り上がり方がおかしい。
「こいつらの冒険、見たいなあ。」と俺は彼等の即全滅に向かわせない誘導を開始する。
「でもそろそろ寝ないとコアタイムで苦しむでやすよ。」とアレキシは現実的な意見を出す。
「後1時間だけっす・・・。」「こいつらで遊んだら、夕飯まで眠るか。」
まぁ、ダンジョンから見たら冒険者って完全な玩具だよね。と俺は思いながら新たなお客様のおもてなしへ向かった。
・設定
ステータス
キャラクタ名:グンベイ トータルLv14 パーティーのリーダーでおっさん枠、実は最年少。
種族:ストライダーLv5(人間種)
果ての民Lv2 火属性に高い耐性を得る、特殊なスキルを獲得する。
Lv0 熱き血潮 火属性の被ダメージを5%軽減します。
Lv1 冷静 混乱系スキルの持続時間を30%軽減
Lv2 忍耐力 処刑スキルの被ダメージを軽減。
信仰心Lv2 信仰魔法の威力にボーナスを得ます。
隠密Lv1
高機動Lv1 陸上の移動速度を上げる等のスキルを覚えます。
Lv0 ランニング 陸上移動速度5%UP
Lv1 疾駆 自身のみの陸上移動速度を一時的に100%UP
武装Lv2
信仰Lv1光神
Lv1 陽だまり 20m以内の味方のMPを徐々に回復するサークルを作ります。
変異先
イーグルスター→エルコンタール(信仰魔法と防御力にボーナスを得る。)
ニンジャ→ヤマクグリ(信仰心をバックアタックへ変異、攻撃力を強化。)
キャラクタ名:ノムラ トータルLv13 頭の悪そうなロールプレイ担当、実は一番頭が良い。
種族:コビットLv4(人間種)
臆病Lv2 回避率と逃走系スキルを得ます。
Lv0 小物 NPCモンスターと戦闘開始になる範囲が縮まります。
Lv1 逃げ足 敵が背中にいる判定時に移動速度が50%向上します。
Lv2 屈む 一時的に移動速度が50%下がる代わりに敵からの直接遠距離攻撃を35%の確率で回避します。
隠密Lv2 ステルス能力を大上昇します。
Lv0 何か動いたか? 遠距離から敵は自身を視認しにくくなります。
Lv1 忍忍 SPを使用して一時的に姿を消します。
Lv2 消音歩法 歩行音が消えます、走る時は聞こえます。
先見性Lv2 罠と敵の発見向上及び、新発見にアライメントボーナスを得る。
Lv0 見聞 新しい土地やダンジョン、建造物発見時にアライメントポイントを得る。
Lv1 スポット 敵や罠に敵味方に表示されるスポットマーカーを表示させます。
Lv2 探究心 一時的に自身には敵の攻撃力と防御力を色で判別する事が可能になります。
バックアタックLv2 敵の背面へ強力な攻撃を加えます。
武装Lv0 武装の幅が広がります。ただしコビットは靴を装備出来ません。
信仰Lv1機械神
Lv1 マシンボルト SPを使用して敵へ遠距離攻撃を加えます。兵器攻撃。
変異先
ウェイファーリング→セイン(全体的にパワーアップ)
ロストコビット→イレイサー(ステルスとバックアタック特化)
キャラクタ名:ラニ トータルLv14 オネエ口調のアマゾネス男、タンク職をグンベイに代わって欲しい。
種族:アマゾネスLv7(人間種)
戦士の誇りLv1 MPが減るほど防御力が向上します、最前線にいる時にステータスボーナスを得ます。
Lv0 勇猛 最前線にいる場合にステータスを向上します。
Lv1 負けず嫌い 最大MPが50%を切った時のMP自然回復量50%向上。
破壊衝動Lv2 攻撃力にボーナスを得ます。
Lv0 乱暴者 物理、魔法攻撃力2%向上。
Lv1 ウサ晴らし 攻撃スキル使用時MPが3%回復。
Lv2 執着 連続して同じ対象の敵に攻撃時3%のダメージボーナスを得る。
野生Lv0 モンスター属性の敵へ高いボーナスを得ます。
高機動Lv1 陸上の移動速度を上げる等のスキルを覚えます。
Lv0 ランニング 陸上移動速度5%UP
Lv1 疾駆 自身のみの陸上移動速度を一時的に100%UP
武装Lv2
信仰Lv1策神
変異先
ヒエロコス→ハーモニアン(戦士の誇りが大強化)
エリュシヌン→戦巫女(高機動を信仰心へ変更)
キャラクタ名:里里トータルLv17 Lv上げをしたいが周囲の人間関係に振り回される少女。
種族:エルフLv7(人間種)
森林魔法Lv1 森林魔法を覚えます。
Lv0 ルートウィップ 遠距離敵単体に無詠唱の斬属性魔法攻撃を加えます。
Lv1 縛り草 遠距離敵単体の足止めをします。
風魔法Lv3 風魔法を覚えます。
Lv0 ウィンドナイフ 遠距離敵単体に風属性魔法攻撃を加えます。詠唱1秒。
Lv1 エアーマン 自身や敵味方を後方へ吹き飛ばします。詠唱なし。
Lv2 強風 設置型視覚妨害を吹き飛ばし解除します。
Lv3 ジャミングエアフロー 飛行ユニットの進路を大きく逸らします。
妖精 エーテルにボーナスを得ます。
自然崇拝Lv1 地形効果を大きく受けます。
Lv0 融和 非戦闘時のMPEPSP自然回復速度を5%向上します
Lv1 土地勘 次に発動する地形に合った属性攻撃を一時的に威力増加させます。
武装Lv3 装備品の幅が広がります。
Lv0 基本防具 皮装備の防具を着用出来ます。
Lv1 初心 弓、片手武器、盾の効果が向上します。
Lv2 受け流し 皮と金属防具装備時に敵の直接攻撃を装備点に応じて回避します。
Lv3 着慣れ 皮装備の防具を装着時に自然回復マイナス効果を軽減します。
信仰Lv2光神
Lv2 集中光 敵単体遠距離攻撃。ダークストーカーへスタン3秒と大ダメージの光線が天から降り注ぎます。その他には中ダメージとフラフラ状態を付与。
備考:ギルドユニグロ所属
・ゴキブリが出て筆者が心臓麻痺を起こしかけたのでバルサン炊いてきます。
キャラクターシートはバルサン収まったら書きます。
なおゴキブリはハンマーで叩き殺しましたが、オーバーキルにならず微妙に生きていたので奴等の恐ろしさを感じました。
午後5:30、バルサンという名の戦火に焼かれた安アパートはメギドの丘の如くに長年付き添ったハエトリグモの死体が苦しみ息絶える光景しか残さなかった。エアコンの排水ドレンが怪しいな、ハッカ油塗らないと。冒険者組のLvとステータスをプレイヤーらしく改定、Mobキャラはあまり作らない主義。




