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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
戦場の花を捕まえて
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005.ロド、装備をよくしてあげよう

 「本当にお疲れ様でした!」ブルークロック墓地の出口で愛微笑は二度目のお疲れ様宣言(別れの挨拶)をした。他の四人も「おつー」と唱和するがこんなやり取りも二度目だ。二重にしても挨拶は多くした方が人間関係に活気が出て良い事だとギルマスも以前言っていた。そして、各々はクエストをNPCへ終了報告し報酬を受け取る。

ネクロマンサーは「骨の収集ありがとうございます。それにお花もちゃんと捧げてくれて…。」等と謝礼の言葉を述べているが、返答内容に「そんなナイーブな精神ならネクロマンサーなんて辞めちまえ!」と「死者を弔うのはネクロマンサーといえど礼儀正しい行為です。」という選択肢が有ったので自分は容赦なく前者を選択する。どちらを選んでも別にクリア報酬は2ゴールドとハイクラスの指輪なのは変わらない、皮肉や嫌味を言った所でカルマが変わる事も無いしNPCの返答も「その通りですね…。」とどちらでも取れる返事をするだけだ。


ボス戦をけしかけてきたNPC幽霊の報酬は典型的な防衛職向きのセットアクセサリーだ、アクセサリは時計掃除報酬がレアクラスのネックレスであり、ネクロマンサーの手伝いは指輪であった。両方とも『譲渡不能』のステータスが付いている為にギルドや個人ショップで売り出しは出来ないが、このセット「踊る骸5セット」はアンドット系のダンジョンに篭れば揃いやすい部類なので、残り3点のパーツは取引可能属性が付いた物モンスタードロップや宝箱から出る物をショップで手に入れれるだろう。

このセットの効果は5点揃えると『刺突属性15%カット及び衝撃属性を受けた時に10%の確率でダメージシールド70MPを得る。』というレイピア(刺突属性100%)や槍(刺突80%衝撃20%)や弓(刺突属性100%)殺しの性能だが、自分はギルマスに頼んで作ってもらった生産クラフトセットの方が調整しやすいと考えているのでこれらを拾ってもNPCかショップ売りにする。

レジェンダリーやレリックランク(黄色いヤツ)のアクセサリだったら倉庫へ大事にしまっておくが、なにせこれはレアランク(青いヤツ)、弱くは無いけど自分の様なスキルカンストキャラでの最終装備には微妙だ。

「ありがとう、これでしばらくは子供達も苦労せずに済む…。」と言いながらボス戦を挑ませたNPC幽霊は目の前からスーッと消える。レアランク装備かー、やっぱり微妙だな。

しかし、愛微笑はこの装備が欲しかったらしく、NPCから受け取った直後にウキウキした顔でアイテム画面を漁るモーションを取っている。確かにバードやタンクといった一番落ちて(戦闘不能)はいけない役割ロールにこのセットは有りだろう、しかもこいつ初心者さんだろうし。

つまり、この愛微笑の反応とナイトウィンド、一人で殺れるもんの動きで彼等のストーリーは大体見えた。野良グループにしては腕前に差がありすぎる、なので自分は愛微笑達に尋ねる。


「もしかしてお三方は同じギルドでレルモンさんとナイトさんはアイさんの手伝いだったんですか?」と、それに対しレルモンの答えが「その通り、我等はギルド『いんぺりある苦労する』所属。もしあんたが西方にキャラを作るならいつでも参加を待ってるぜ!」と勧誘を受ける、この人はサブギルドマスターかオフィサーランクなのだろうか。

しかし、西方最大手のギルドの方だったか。三国でも有名な最大手ギルドでクリアに怪しい戦力で来るという事は『インペ』はそこまでギルドメンバー間の結束力は強くないのだろうなと思った。

それともウチみたいに負けたら増援を呼ぶタイプだろうか、野良の乱入を気長に待つ気だったのか?ううむ、細かい背景が気になる。


「んじゃサヨナラっす。アディオッス。」とロドリコが召喚したリスに乗りながら去り行く3人の西方人達へ手を振りながら見送る。自分はそのロドリコに質問をする。「召喚60のサモンポータルは使えるようになったか?」と、するとロドリコは「実は5人で組んだ時にスターターパックの30分スキル上昇ブースト使ってたんすよ。勿論ばっち取れてまっす。」と口元をニヤリと吊り上げた悪そうな笑顔で言った。

「格闘と耐性スキルは?」と自分は続けて重要なスキルについて尋ねると、ロドリコはしょんぼりした顔に変わり「ペットやタンクさんにターゲット任せてばっかなので耐性はまだ30までしか上がってないっす…でも格闘は70まで上がったっすよ!」と後ろ向きから前向きな表情を作る姿は実に喜怒哀楽激しい。

「30に70か、微妙だけどそろそろ装備をまともにしようか。」自分はロドリコを次なる段階へ導かなければならない、らしいからな。

「おお、ついに装備パズルのはじまりっすね。」ロドリコがMMORPGお馴染みのミニゲームへ挑む姿勢をみせるが。「しかし、困ったな。」と自分は考え込む。「何が困るんすか先輩。」とロドリコが尋ねてくる。

自分は頭の中でロドリコのスキル上げ作業を日頃見ながら考えていた事をなるべくゆっくりとロドリコへ分かりやすく伝える。「ロド、お前はウォーデンだな?」「うっす、先輩やっと「ロド」って呼んでくれたっす、嬉しいっす。」そこ重要なのか、しかも『照れ』モーション取るとかあざといわ。


自分はロドリコに念を押す。「今まで聞いた話だと、上げているスキルは信仰、召喚、格闘、弓、天然と耐性だ。」ロドリコは首を上下に振りながら「うっす、そうっす。」と『ペコペコ』のモーションをする。

「全部100にしたら戦術と他の料理100や冒険や錬金が上限700だと取れんぞ、特に生産にはもう手出しが厳しい状況になってる。」と自分は今恐らくしかめ面をしているだろう、ここからの話をするのは結構シリアスな問題になるからだ。

「う、弓は70で止めて天然と耐性と格闘も80くらいにして調整するっす。」ロドリコは多少察したのか『グヌヌ』といった表情に変わる。

「このゲーム本当にいやらしいスキルシーソーだな、上限760から780無いと完璧なウォーデンは難しい、いっそ弓落として錬金と投擲に、いや天然があるから弓は欲しいか。かといってウォーデン最強の象使いは落とせないし。」


うーんと悩んでいる自分の悩みにロドリコはあっさり答える「お金払ってスキル上限開放すればいいんすよ。」南無阿弥陀仏!その選択は重有料サービス地獄への序曲オーバチュアである!しかし、自分から「お前金出して強くなれよ。」とは言えなかったので、安堵と驚きの様な感情を胸に「上限開放、結構高いぞ。」と呟く。

ロドリコは首を傾げて「いくらっすか?」と聞いた。

その暗黒クエスチョンマークに対して自分は出来るだけ恐ろしい顔を作り今度はマシンガンの様な早口で言葉を紡ぐ。


「まず、上限700から710までが1000円かかる、710から720が2000円、720から730が4000円、ここまでは納得出来る。しかし、ここからが地獄だよ、730から740が8000円、略して進むぞ、12000円16000円20000円25000円30000円40000円ここまでで上限800なのに更に最高上限は900でそれを達成したプレイヤーは数人実在する。さすがに800以降の必要金額はぱっとでない。だって無理だってあんな金額、ギルマスですら800上限だしそれでもすごいと思うよ。」と噛まずに言えたのはそれ程鬼気迫る問題であるからだ。


「先輩は確か740っすね。」とロドリコは値踏みする様な視線で自分をつま先の下から眺めてくる、実にいやらしい人の見方だ。

「実は760くらいまで上げようかなとは悩んでいたんだ…。」正直に言う、こいつに見栄を張っても仕方ない。それに対してロドリコは容赦なく「カモっすね。」と言い放つが、こいつはたまに辛らつな奴だ。

自分は『天を仰ぐ』モーションをして「高級量産品ミドルハイスペックのHMDを買った時点である程度の出費は覚悟していたが、ゲーム内サービスもお金かかるよなあ…。」とよく雲が作りこまれた空へ向かい嘆いた。



収穫の月16日、ロドリコの耐性スキルをそのままブルークロック墓地に出現するゾンビやスケルトンといった雑魚モンスターにタコ殴りにされるといった手法を用いて40までには引き上げた。

この作業には結構時間がかかったが、耐性スキル80はPvPにおいて必修なので早めに上げても損は無い、そもそも戦い方からして上がる要素がほぼ無いので耐性スキルは無理やり上げないといけない。


たまにはボスの方へも足を向け、他のグループや野良集団が集まったらそいつらに乗じて殴りかかり平等に分配されるドロップからレアの時計帽子を狙うも二匹目のドジョウとはいかず、結局ドロップはしなかった。しかし、良い素材アイテムは手に入っているのでそれは将来的に役立つだろう。


「サモンポータルっす!」ロドリコが転送魔法を発動させ、二人はその楕円形の光の中へ吸い込まれに行く、行き先はギルドホームだ。実はロドリコの耐性上げ中がすごい暇だったので開始と同時にギルマスへ囁き文字チャットで依頼をしておいた。


「ウォーデン向けで格闘70と耐性40の装備を全身作って貰えませんか。」と、するとギルマスからすぐ返事があった。

「わかった、40分はかかる。しかし、耐性40とはずいぶん甘やかしてる様だな。」とこれは皮肉なのだろうか判断しかねる、「いえ、ロドのプレイがうますぎて全然被弾しないんですよ。こいつ本当に初心者ですか?」と自分が初日から気になっていた疑問をぶつけるが、

「本人がそう言ってるんだからそうだろうよ。素材はギルド倉庫から使うから金もいらん。」とギルマスは素っ気無く返事をした。

「わかりました、我々が手に入れた素材をギルド倉庫に入れておきます。」と「貢献してタダで貰いませんよ。」アピールはしておく、これ大事。でも、人によっては「背中ログで語れ。」と言う人もいた。

「うむ、戦闘ドロップ素材は集めるの面倒だから助かる、デザインはどうする?」自分は少し考えて答える。「あざとい感じを強化しませんか?」とすごい曖昧だが通じるだろうニュアンスでデザインを決定して貰う。「良し、それで行こうかの。」とギルマスからの通信終わり。


ギルドホーム内の大広間へ着くと自分はロドリコへ「後10分位スキルで悩んでてくれ、ちょっとしたサプライズがあるから。」と伝えた。ロドリコはペコリと頭を下げた後に大広間中央の暖炉を囲む安楽椅子の一つに飛び乗った。隣にはチビパンさんとキールさんが座っている、超ベテランな二人の間だぞ、よくそんな位置に座ろうと思ったな、アピールなの?


新登場のキールさんはあまり戦争には出ないが博識である。曰くギルマスが「30年ぶりに再会した、わしのネットゲー師匠じゃよ。」との事なので高齢者の部類であるはずだ、階級もサブギルドマスターである。

安楽椅子に沈み込んだロドリコが悩んでるように見せかけて独り言を周りに聞こえる様にを呟く、するとキールさんとチビパンさんが「ウォーデンのスキルか。」と反応をする、あざとい。

「ボク初心者なんすけど、スキル上限枠上げた後に戦術と冒険と料理と錬金どれか取るか組み合わせないといけないんすよ。隣にいる二人の最古参メンバーは「ふむふむ」と相槌を打った後に答える。


キールさんは「戦争に行かないなら冒険がファーストキャラにはおすすめだ、素材や収集品のドロップ率上がるしスキル100のタイクーンが実に強い、ウォーデンの様なEPSPバランスが取れるキャラは錬金よりも冒険が良い。」と答え。


それに対してチビパンさんは岩のこすれるような声で「料理100のアクアビッテはいいぞ、何せ他のプレイヤーにモテる。」と意見した。そして二人の意見で一致しているのが、「「戦術スキルは他の奴が大体持ってるから別に取らないで良い。」」との事。


そんな話をしているとロドリコが突然「うぉぉ!」と驚き出した。自分はそれが何か知っていても内心ニヤリとしてわざと尋ねる「どうしたロド?」。


ロドリコは興奮しながら叫ぶ「ギルマスからメールで全身装備セットがみっちり入ったのが来たっす!何このサービス!」その言葉を聞いたチビパンもキールもニヤリとした顔を作った、これは一部大手ギルドがよく使う、初心者さんにパーフェクトクラフト装備を送りつけてギルドとゲームの泥沼にハメ込むハニートラップである。自分も初心者の頃にそれを食らった、そして抜け出せなくなった。


チビパンさんがその岩声で「良かったな!装備に困ったらいつでも頼むと良い、私もクラフトキャラクタは持っているから私に依頼してもいいぞ。」とトロルなりの笑顔を作った。

ロドリコはフンスフンスと興奮しながら「先輩、早速試し斬りっすよ!辻斬りの旅にでましょう。」と物騒な発言をするが、その逸るロドリコに自分は質問する。「で、セット効果は何だった?」ロドリコは胸を張り答える「戦神の囃子声とデビルサマナーという2セット10パーツです!」


その言葉に他の3人は異口同音に「「無難だな」」と言った。

スキル設定

・料理スキル100アクアビッテ

ショートカットスロットに『マイジョッキ』という物を入れて料理100持ちのキャラクターに近づきマイジョッキを使用するとマイジョッキが『アクアビッテ』というアイテムに変化する、これを使用すると瞬時にMPEPSPが50%回復し、更に自然回復力も3種10%5分UPするという壊れスキルである。使用クールタイムは5分。使用後『アクアビッテ』は『マイジョッキ』へ戻る。

ちなみに料理スキル100を達成すると背中の専用コスチューム『ビールサーバー』が手に入る。

元ネタはアロ○ズオンライン


・冒険スキル100タイクーン

達成者のMPEPSPの最大値を5%増やす常時発動パッシブスキル



セット装備

・『戦神の囃子声』セット:パーツ3点4点5点と揃えると攻撃力が上がるDPS職ではベタなセットだがかなり強い、1点落としたりの調整がしやすい。


・『デビルサマナー』セット:3点でスキル消費10%カット、4点で召喚詠唱時間30%カット、5点で召喚ペットの攻撃力UP。召喚職で廃人以外は大体これ。


スキル構成

・ロドリコ

狩神信仰80 召喚魔法60 格闘70 天然60 耐性40 弓50 現在はグラップラーとディヴォーティークラス。

信仰は神を選んだ時点で上昇開始を始めるので一番上げやすいスキルとも言われている。


・B太

戦神信仰100 強化魔法100 片手武器80 盾80 投擲50 戦術80 耐性80 冒険者80 錬金術90のスキルトータル740

構成はタンクに近いが装備が全て攻撃的、投擲と冒険者を上げるために追加でスキル上限を上げるかとても迷っている。


・カラシニコブ

死神or時空or心神信仰100 強化魔法50 盾80 音楽100 耐性80 戦術100 冒険者100 料理100 金属30 木工30 裁縫30のスキルトータル800

バードとしての仕事よりも戦線維持や冒険の便利屋タイプ、信仰は戦争に行くかダンジョンに行くかでコロコロ変えている。生産活動は専用のサブキャラ2体で回している。スキル上限は「これ以上上げたら娘に殴られる。」と言っている。


・余談:装備ハニートラップ

MMORPGを彷徨う筆者はギルマスをする時によくこの手を使う、最大手ギルドの運営経験は3回あるが、これを使うと本当に対象のユーザーはゲームと世界に愛を感じるみたいだ。筆者は今までにこの手を400回以上使っている。


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