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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
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A015.にっちな村

「お兄ちゃん、ハウジングだよ!」と追加マップ果ての砂漠クエスト制覇実績を手に入れた頃に妹はいきなり叫びだした。

「相変わらず藪から棒を突き出すのが好きだな、伏兵マニアなの?」と、俺は妹がハウジングに興味を持ち出した経緯を聞いたら。「動画で見た!私もハウジングの匠になりたい!」と続けるが、これにはまた横に居るコラーダと俺でアイコンタクトを開始する。「とおっしゃっていますが。」「現実を教えるいい機会っすよ。」「暗殺の次に修羅道なんだけどな、ハウジング。」とアイコンタクト終わり。


「お兄さん、私も素敵なお家を作ってみたいです。」とジノーもそれに便乗してくる、うーむ。

「分かった、『作るのは良い』ぞ。だけど、その後はどうするか自分で決めてくれ。」

「わーい、素敵なお家に囲まれてみんなで仲良く暮らすんだ。」と妹は夢見がちだが、ここが剣と魔法の世界であり、ハウジングゾーンのフェーダワールドが法治国家では無い事を知って貰う良い機会だ。

平和と法治がいかに偉大かを教えてくれるコンテンツなんだろうなと俺はこのゲームのハウジングシステムに思う。


修羅の世界、フェーダワールドへ4人は足を踏み入れた、俺は生産用の秋田犬みたいな見た目の獣人サブキャラで来たが、他の3人はいつものキャラで来た。生産キャラがいないと家が作れない訳ではないが、一部の施設には生産スキルが必要なのだ。


南方首都、表の世界とは違い石造りの建造物だらけのフィルモアはウチのギルドが制圧したままである。ウチのギルドから見て2番の脅威であった西方王国領を陣取るゴリラシマムラァ連合とは現在もまだ休戦中、これを生かすしか今回のハウジング計画は成立しない。


「さあ、お兄ちゃん!私達の約束の地を求めて旅に出るんだよ!」と妹は何処かを指差し叫ぶが、

ジノーが「この場所に家を建てるのは駄目なんでしょうか。」と真っ当な意見を口にする。

それに対して俺は「駄目だ、ここは資源の確保で競争率が高い上に襲撃率が高い。他に移動する。」と言いながらワールドマップの西側のやや南を共有マーカーで表示する。


そのマーカーの位置を見てジノーはまた真っ当な意見を口にする。

「お兄さん、作った家や村は襲撃されるとも聞いていますが、南方の最南端に家を持つ方が良いんじゃないですか?」とジノーは悪くない考えをするが、それが一番怖い。


「端っこの隠れ里風にすると援軍の到着が遅れるんだ、山賊の行動範囲をなめない方がいい。後は、ウチのギルドはこの世界ではそれ程強くないので、いざという時に対処が遅い。」と俺は西方王国の首都ローラントから南西にマーカーの位置を少し修正した。

「あ、ここって以前フェーダ来た時に哨戒基地があった所っすね。」とコラーダが相槌を入れてくれるが、ここには以前来た時に確かにゴリラの基地があった。


正直、ギルド『ゴリラゴリラゴリラ』は裏世界では最強の部類に入る勢力だ、しかもあいつらの良い所はプレイヤーを襲撃する事は有っても放火活動はしない。知恵という物を投げ捨てるプレイスタイルだからだ。

火も使わないしドアロックのピッキングやハッキングも行わない。彼等との和平協定が何時まで続くか不明だが、彼等の防衛網に飛び込んで何食わぬ顔をして家を作る方が自ギルド領より安全なのだ。

もし、和平協定が切れる頃には妹とジノーもハウジングに満足するか、コツを覚えるだろう。


その約束の地という奴になるだろう土地を目指して4人は進む、道中に林があれば斧を全員が手に持ち、木を切り倒し木材を得て、岩山があればつるはしで岩と鉄鉱石を集め、獣がいれば狩りをして毛皮と獣脂を集める、小川や崖があれば粘土を集め、野生の麻が生えていればそれを集める。


ウチのギルド、永久凍土の支配下にある地域でも山賊はよく見かける、東隣が完全に山賊ギルドの縄張りだからだ。それに比べてこの周辺に山賊は見当たらないので戦闘は起こらなかった。今回はまず二人には家を作るコツと防衛の仕方を覚えて欲しいので道中の危険性は出来るだけ回避したい。


時より、遠巻きにゴリラ達がこちらを伺う事があったが、こちらのギルドタグを確認すると興味なさげに去って行った。


ゴリラ達の哨戒基地の西側、以前ロドリコと逃げ込んだ森の近くに一同は着く。

「まずは家を作る『練習』から始めてもらう。」と俺は言いながら妹とジノーへ集めた木材の半数以上とオブジェクト設計図を渡す。

「うーん?まずは何をすればいいんだろう?」と妹とジノーは首を捻っているが。家の基本は土台作りからだ、それを設計図の中から見つけ出して自分なりに覚えて欲しい。最初に答えを言うと、色々な建設可能オブジェクトに目を通す事が無くなるので、困る妹達をスルーして俺とコラーダは家以外の施設の建築を開始する。


俺達がまず作るのは、少し開けた位置に放火が不可能な石造りの小さな小屋、というよりも監視塔に近い物を作成する。

その塔の三階建てで、頂上には展望窓と銃眼を備え、一階には復活地点リスポーンポイントとなる祠を建てる、二階は建物の耐久力を上げるコアを配置、このコアをいじる事で建造物の耐久力や改築可能フラグが出る。


何の神だか分からない神様の石像を立てた後に、その隣に移動用の転送施設を作り、自軍首都フィルモアからの一方通行パスを俺の持つギルド権限で繋げる。

転送施設を両通設定に出来るのはマスターかサブマスターだけだ。もし、ここが敵に乗っ取られた時に首都への橋頭堡にされると困るので一方通行とする。


そして、ドアは鍵式ではなく、5桁の暗証番号制のドアにした。このマジックナンバーロックはハッキングされて侵入される可能性もあるが、この塔は将来的に一番出入りが多くなる施設なので物理鍵は使えない、そもそも物理鍵は味方が倒された時に鍵を奪われると悲惨なので一箇所にしか使う予定は無い。


これらの施設は予めプリセットされたデータがあるので、コラーダとの多少の意見食い違いがあったものの、重要拠点の一つとして完成した。

まだ設計図を見ながら唸っている二人を尻目に俺とコラーダは次の施設を作成開始する。


次に建てるのもまた石造りの建造物だが、今度はとても小さくコンパクトにまとめる、役割は物資の集積所。

この施設だけはドアの鍵を物理鍵にし、その合鍵は一番生存力の高いコラーダにだけ持たせる。倉庫は基本的にいざという時にしか使わない。


俺とコラーダはその施設を完成させると、次に林の近くに粘土からかまどを作り始め、木材を木炭に変える作業を開始する。これにはコラーダに担当して貰い、並列して4つのかまどを作り、その中に木材を投入し着火する。木炭を得ないと鉄鉱石が加工出来ないのでこれはとても重要になる作業だ。木炭作成には待ち時間があるので、暇になったコラーダは林の中へ動物を求め狩りへ出かけた。


エリーンとジノーはここにきてやっと土台を作り始めたらしいが、角度や位置の問題で揉めている。そうだ、日当たりも考慮すると良い家が出来るぞ、このゲームの光源処理は素晴らしいからな。


俺はその間に、隣村にあたるゴリラの前哨基地へ向かい、税金や防衛援助の折半に向かう。

プレイヤーの多い時間帯のコアタイムにはやや早かったが、運良く前哨基地にはゴリラが居た。

そのウータン種のゴリラーマンさん曰く「ウキー、税金とかめんどくさいからエルフ達に聞いておくウホ。家は好きに建てて良いゴホ。」と返事を得たので家の建築自体はそのまま続行許可は得た。


問題は税金がいくらかになるだろうかだが、フェーダワールドで金貨は意味が無いので恐らく物納だろう。基本は岩か鉄で払う事になるので、まずは木炭から鉄の生産を急がなければならない。


隣村から戻ると少し小高い位置に屋根の無い木の壁が出来ていた。あの状態で工事が止まるという事は、恐らく何階建てにするかで揉めているのだと思う、その気持ちはよく分かる。


以前、試しに何階建てにまで出来るか挑戦した時は木造の63階建てのビルが出来たもんだ。

個人的には木造は4階建てから少し違和感を覚えるし、広く面積を取り過ぎるとこれもまた違和感を覚える家になる。


「お兄ちゃん、家なんて言わないで村にしようよ!」

「最初は一つの家にみんなで暮らす事にしようとしたんですけど。家の趣味が微妙に合わなくて・・・。」

と案の定食い違いがあったらしい。それはバーチャルも現実も同じ問題だ、気にするな。


既に有る小高い丘に一軒家を建ててしまうと周囲の家で景観問題に不都合が出て、次の家が遠くに建てる事になる、すると今度は家を守る防壁が広くなり高コスト化か再開発を強いられる。まさに利便性における建築史の基本だ。


二人の後先を考えない村づくり計画には目を瞑り、資材の計算と時間を計算する。

「それじゃ村にするか、必要資材がべらぼうに増えるな。」と俺は妥協する、村の位置も悪くないしな。

「それじゃー村の名前決めようよ!村の入り口にアーチを作ってそこに村の名前を彫刻するの!」

「村の名前かー、位置的に勢力の隙間、ニッチな場所だから。にっちな村なんてどうだ。」

「「ださい・・・」」と俺は女子勢から駄目出しをされた。

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・ハウジングについて

既存様々なハウジングシステムを見てきましたが、その中で一番精神的にきついだろうけどバランスの良いハウジングを採用、そのゲームはRust。家の襲撃や奪い合いや嫌がらせの応酬ではこのゲームが一番よく出来ていると思う。おもしろいかどうかは別とする。

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