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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
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A013.佳境IN

果てのダンジョンも後半戦に突入し、敵の種類も更に変わる。

その姿を現したり消したりする月相霊と名前表示されているレイスや、人工知能に絵を描かせた様な奇抜なデザインのマンデルゾンビ、地面や壁に埋まった多数の蠢く腕、スタックハンズ等である。


月相霊は出現している時は物理に弱く、消えている時は魔法に弱いとか。マンデルゾンビはEPを吸収する攻撃や信仰魔法を封じるスキル等の雑魚の割には強力なギミックを持つ。スタックハンズは単純に足止めが得意の様だが、そのプレイヤーの足をワラワラと掴みにかかる足止めを食らうと道中の地形トラップであろうスノーノイズの雪崩を回避できず、巻き込まれて大ダメージを受けてしまう。


3番目のボスの広間に至るまでにはレイドグループメンバーの装備はもうボロボロになっていたが。ギルマスが修理スキルを所持しているので、ボスの前で装備の修理タイムが訪れた。


装備の修理は生産スキルの各、金属、木工、裁縫を30まで上げないと出来ないので、取得している人はとても少ない。ギルマスは口さえ開かなければ献身的でマメな人なのだけどな、子も親に似てるしなぁ。と思いながらギルマスとコラーダを交互に見たら「先輩、邪念を感じますよ。」と少しコラーダに睨まれた。


相も変わらずサイケデリックカラーな世界を突き進み、大きな門を潜ると3番目のボス大広間に入る。その広間は今までで一番広く、そこにはズラリとバグかエラーかアンデットか、それらの入り混じった、ボーアレギオンと表記された敵が綺麗に整列して我々を待ち受けていた。その数は24体、24体の内一列6体ずつが赤、青、緑、黄色、というカラーリングになっている、次はチーム総当り戦か?


「私達の大冒険もかきょーにはいったんねお兄ちゃん!」とエリーンがガッツポーズを取り「次は死なない様にしないとなー。」とジノーとデビルの少女が話し合っている。女子勢は横繋がりを作るのが早いなと思いながらコラーダを見ると「佳境IN。」と小さく呟いているが、こいつは駄目だな。


「総当たり戦か、こういうのが我々らしくて良いな。むしろ独壇場じゃねえか。」とギルマスはニヤリと笑う。そこへにょっきり大臣が「ここにレバーが4種類ありますが、なんでしょうね。」と入り口すぐ横にあるレバーを指差した。


またギミック持ちかと思うが、逆にギミックの無いレイドクエストなんてここ最近では滅多に見ない。

「なに、我々の作戦はただひとーつ!」「「死んで覚えろ!」」という唱和の後に補助魔法が飛び交った。


一同は躊躇の無く敵集団へ突撃をする、まずは基本戦術でタンクやサブタンクの突撃と挑発スキルの開始、次にAoECCはんいあしどめを展開しDPS職が柔らかそうな敵へ突撃や射撃を集中させる。


それに対する敵の動きも単調なモンスターのそれではなかった。

敵は色別にチームで別れ、しかもよく見ると盾や岩というイメージがチラチラと蠢く個体があったり、杖や雷炎、槍や剣や弓、楽器や植物やZZZ、といったイメージの浮かび上がるゾンビ兵が居ることに気づく、敵もタンクやDPSやヒーラーに分かれているという事か。


それを感覚で悟った半数以上のメンバーはそもそも熟練の戦士だ。攻撃を加える敵を側面一つのチームに絞り、更にそのゾンビ兵達の柔らかいであろうDPSイメージを持つ炎と杖のゾンビ兵に集中攻撃を加える。

猛者達の猛攻により、ものすごい勢いでそのフォーカスされたゾンビDPSはMPを減らしていくが、途中でその集中攻撃を加えている敵チーム全てが盾や岩のイメージゾンビ兵に変わり、その防御力を桁違いにした。


「うわ、かてえ!」「タンクイメージは落とし難いか。しかも回復してるぞ。」「放浪熱は無効の様だ。」

と各々がざわめく中で、後方のデビル少女と一緒に音楽スキルを演奏しながら高みの見物を決めていたギルマスが。

「あ、レバー動いた。」と言い次に「よし、デビ子、ちょっとそれ適当にいじってみろ。」と遊び半分か本気か分からない要請をデビルの少女へ投げかける。


デビル少女の愛微笑は「え?失敗だったらどうするんですかー。」と嫌そうにしているが。

「男は度胸、女は愛嬌。つまり後者は愛嬌あれば全て許されるんだ、さあレバーをぐいんぐいん倒せ。」とギルマスは悪い顔をしながら愛微笑に迫る、あれはハラスメントぎりぎりですね。


「どうなっても知りませんよ。」と言いながら愛微笑は嫌そうな顔でレバーを適当に操作した所、ゾンビ兵のイメージ表示ががらりと変わった。

先ほどまで集中攻撃していた敵のチーム一つ全てがタンクイメージに変わってしまっていたので、前線は次の敵チームに攻撃を集中していた、そこへ味方前衛組は放置していた横のタンク群がいきなりDPSイメージに戻ったので激しい挟撃を受ける。


「まずい、立て直せ。タンクは挑発を優先してくれ。」とキールさんが叫ぶ。その叫びを聞いた俺やSevencharはコマの様に回転しながら挑発スキルを敵のDPSイメージ兵へ乱発する。

現状、純タンクはこの二人だけである、なんちゃってタンクの人も自分のMPと相談しながら敵のタンクイメージ兵に対し挑発をぶつけてくれる。


現状では戦闘不能が味方から出てはいないが、まず最初にターゲットを背負う俺が潰れそうだ。

しかし、妹やジノーやコラーダにカッコ悪い所は見せたくないさ、男の子だもの!

後は…集団戦対応のタンクと単体ボス対応のタンクって装備全然違うんだよなあ。


「ちょっとピンチか?歌でも歌おうか?」とギルマスが余裕そうにこちら激戦を音楽スキルの届くギリギリから見守っているが。

「やめてください、貴方のギルド以外でそのノリに付いて行ける人は普通いないんです。」とにょっきり大臣から突っ込まれた。

「だって普通に戦うの飽きねえか?」とギルマスは本当に余裕がありそうだ、あれが後方支援職特有の気楽さであり、最前線で苦しむ人々との差だ。


なれど同じバードでもあるが攻撃能力を有するキールさんやハッチマンさんはスカルドとして今も最前線で斧や鈍器等の得物を振るう。

ギルマスはソロだと戦闘能力がほぼ無いので、それもまたこういう所では人柱なのだろう。だから余裕でも許されるのだ。

何より、レイドクエストで全員がギスギスしたロールプレイになると全員の心に皺が寄ってしまうので視点の違うロールプレイヤーというのは大事だ。ギルマスは戦士ではなく内政官の意味合いの方が強い。


「レバーはデビっこが操作してくれるから、まずは最初の1チームを削りながら動けー。リソースはどんどん消費していいぞ。敵が減って新しいギミックが出るならその時はその時だ、火力の出し惜しみをするな。」


とギルマスは戦闘方針を指示しながら。「おいデビっこ、今集中している敵を全部DPSにするレバー操作の法則を見極めてくれ。」と大体丸投げ、愛微笑は「えーと、えっと。」と最前線とレバーを交互に見ながらレバーを操作する。あいつ意外と賢いのか、ちゃんと集中攻撃を加えているチームがタンクイメージ以外に変わっている。


こちらから執拗に集中攻撃を加えていた敵チームが後退をし始め、そこへ他の敵チームが味方の前線隊の間に割り込もうとする、数は少ないが敵も挑発やCCも使ってくる様なので壊滅直前の敵チームの後退を許してしまう、味方はそのまま逃げようとする敵へ突撃を加える。すると、後方バード二人の音楽スキルの範囲外に出てしまう事になる。


それを見たギルマスは「やべえ、デビっこ。ここでレバー操作頑張れ、死ぬなよ!」と言いながらこちらへ向かってくる。「ええ!?一人ぼっちでレバー操作やだああ!」と愛微笑が泣き言を言っているが、ちゃんとその場でレバーを操作している所はなかなか肝が据わっている。


「キール!10番と20番の演奏頼む!」とギルマスは叫びながら後方よりこちらの群れに飛び込んで来た。それを見て攻撃隊に加わっていたをしていたキールさんは斧から楽器へ得物を持ち替え、音楽スキルを演奏し始め後方に少し下がる。


バードが1抜けた状態になり態勢がほんの少し乱れた頃に「あーん、ごめんなさいー。」と言いながらジノーが事故死。そこへギルマスがすぐに駆け寄り、音楽スキル『励ましの歌』で蘇生にかかる。指揮官が最前線に出る事態は少しまずい。だが、集中攻撃を加えている敵チームの一つはもう既に半壊している。


挑発の切れ目による事故死が味方からチラホラ出る様になり、少し居た堪れない気持ちになるが、流石に8体くらいの敵を引き付けているので挑発の切れ目は発生する。

敵に挑発後の耐性が付与されないのが救いだが、挑発スキルにもリソースは必要だ。既に俺は自作ポーションをがぶ飲みモードである。


遂に敵の1チームが壊滅する、すると残り3チームの敵が少し赤く輝くエフェクトを発生させMPと防御力が上がった気がする。

やはりそれに気づいた人は多かったらしく「一つ潰すと残りが強化されるタイプだぞ!」「集中攻撃する敵チームは全滅させずに少し残せ!」と各々が冷静に分析してくれる。流石は歴戦の戦士達。


敵からの火力自体は1チーム壊滅により低くなった物の、今度は敵が範囲攻撃や範囲CCを増やし始めた。

これにより戦闘不能よりもリソースの減少が大幅に増える。熟練した戦士達は隙を見てアクアビッテをギルマスの背負うドリンクサーバーから補充したり。ポーションの飲ませ合い等して回復を図る。

こういう長時間の乱戦に慣れていないジノーやエリーンは何度か倒れてしまうも、蘇生係りに回っているギルマスに叩き起こされる。


二人は居た堪れない気持ちになっているだろうが、これを敬虔だと思って乗り越えて欲しい。

倒れたことに対して「ごめんなさいー。」とエリーンやジノーが発言をするとギルマスが「謝ってる暇があるなら、より生き延びる事を考えろ。」と激励を飛ばす、ギルマスが珍しくギルマスらしいぞ。

俺にはそんな余裕はないから二人を信じるしかない。


敵からの範囲攻撃が増えてきたのでタンクは味方集団より距離を取るように移動した。メインタンクの変態もそれに合わせて良い位置取りをしてくれる、不本意だが以心伝心だ。


これによりタンクさえ沈まなければパターンがハマったと言えるだろう。攻撃隊は敵のチームを残り1-2匹まで削り、残りは放置し他のチームを削りに行く、その戦法でなんとかボスは倒しきった。最後に生き残った一匹が巨大化して単体ボスに変化したが。メインタンクが硬すぎるのでこれは無意味な抵抗だ。


「今度は全滅なしの一発クリアか。」「ギミック的にパンチが弱かったのでしょうかね。」「いや、レバー操作してたデビっこが意外とうまかったからじゃろ。」「えへへ、レイドクエストで褒められたの初めてです。」と和気藹々で余裕が浮かぶ。

そこへギルマスがいやらしい顔を作り「デビっこは棒の扱いに長けていらっしゃる。」と発言したが。

「「はい、ハラスメントでBAN。」」と周囲から響く様になじられた。ギルマスの株価は上下が激しい。



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