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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
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A011.ひゃっぺん死んで覚えろとさ

「え?24人レイドダンジョンですか。」果ての砂漠も大体見て回った俺達にギルドチャットにそんな報告が届いた。

レイドダンジョンは従来このゲームでは12人グループが対象であった、なぜなら12人までしかグループを組めなかったのだから。

しかし、今回のアップデートにより24人までのレイドグループが組めるように変わっていたらしい。

この発見に対し「12人から24人って戦力が2倍に見えるけど、明らかに難易度が2倍以上だよね。」という後ろ向きな発言が目立つが、俺もまさにその通りだと思う。


だが、冒険大好きっ子のギルマスがそれに挑まないはずも無い、すぐにそのレイドダンジョンを攻略すべくギルド内からメンバーを募集し始めたが、失敗を恐れてか攻略方法が出回ってから安定したクリアを目指したいのか、なかなか24人すら集まらない。


「いつもの威勢はどうしたー。」とギルマスは煽るも「人柱はちょっとなー。」という声が多い。

「闇雲へ向かう冒険と約束された人柱には天地程の差があるぞ!何せ前者にはロマンがあるのだから!」

とギルマスが励ますとギルド内からは12人の参加者が発生。


「うむむ、平日は駄目か?」とギルマスは唸り声を上げながら「んじゃ、もう野良募集しちゃうかんな!」と言い、ゾーンチャットで募集を開始した。


「お兄ちゃん、おもしろそうだから私達も参加しようよ。」とエリーンが参加希望の姿勢を見せるが、少し悩む。

エリーンはまず足手まといになる、ジノーは死なないように徹すればそこそこ強い、俺とコラーダは以前からあるレイドダンジョンの常連でもあるからいけるか?


「お兄さん、冒険しましょ?」「たぶん、笑って全滅出来る最初が一番楽しいよ。」

とのジノーとコラーダによる前向きな援護発言により考えた末。

「ギルマス、DPS2バード1タンク1で枠下さい。」と伝えると「おほ、んじゃ@8募集すりゃいいんだな。」と言いゾーンチャットに募集を継続した所、一瞬で埋まったらしい。


その集まり具合を見ながら「冒険心の強い奴は意外と分散するもんだな。」とギルマスはぼやいていたが、集まった野良メンバーはどいつもどっかで見たことある様な奴等だ。


まず目立つのがデビルの少女、こいつは最近よく見かける愛微笑という奴だ。そのデビルの少女は俺と目が合ったときに少しビクリとしたが会釈をして「よろしくおねがいしましゅ。」と舌を噛んだらしい発言をした。

以前フライパンで殴り倒したのがそんなにトラウマだったのかな。こちらも挨拶で返しておく。


デビル少女の連れはいつものダークエルフ一人とローランダーが二人。ってあれは!

ピエロの様な格好をしたよく分からないスキル構成で西方一の有名人、にょっきり大臣じゃないか。

にょっきり大臣はマギラ2の動画配信をしたり、最近まではウォーデルタ地帯の『皇帝』ですらあったので今や西方で一番有名だ。

その実力も折り紙つきで戦場では常に最前線に立つ指揮官なのだから弱いはずがない。

大臣はレイドグループへ合流すると、うちのギルマスと何やら話し合いをし始めた。


大臣と、その隣に居るオレンジ色のショートカットヘアのローランダー女はマリッドという名の戦士で、戦場にて西方ではコラーダと並ぶ人気の戦士だ。その戦士はこちらに歩み寄ってから。

「あら、コラーダちゃんと果たし状君じゃない、よろしくね。」とエア握手をしてくるので、

それに「こちらこそ、よろしくお願いします。」とエア握手で返す。


「お兄ちゃん有名人なんだね!」とエリーンが目を輝かせて言ってくるが、個人的には微妙な名声なので触れないで欲しい。

そのお兄ちゃんという言葉に反応したのか、砂漠も終わり、地面が星空の様な表示でバグなのか木なのかよくわからないオブジェクトがいっぱいある風景の彼方から、グループ集合地点であるダンジョン入り口の方へついに奴等がやってきた。


基本的に半裸、マントは着用、頭装備だけ鳥頭兜バシネットかペスト医師マスクをかぶる変人が三体が出現した。


小さい獣人がこのスタイルなのはまだ可愛いもんだ。その、がりるんさんは良いんだ、この人は所属ギルドがノーザンライツと永久凍土の掛け持ちだから身内だし。

トロルバードのハッチマンさん、彼もトロルという種族だから変態的格好でも不気味の谷現象は起こらないのでセーフ。


問題は、こいつだ。

「お兄ちゃんをお兄ちゃんと呼ぶ黒猫少女はお兄ちゃんの何でおじゃるか?」とエリーンに近づくノーマッド最大身長と最大幅の体格でマッチョボディ。心に七つの傷を持つ男!その名をSevenchar!


駄目だ、お前は絶対に妹に近づくな。と思い俺は二人が接近する前に割って入ると。

「お兄ちゃん、このへんたいさんと友達なのー?」とエリーンが言うがやめてくれ、こんな友達はいない。いらない。投げ捨てる。


それを見てSevencharはポンと手を叩くモーションをしてから。

「つまり黒猫なお姉ちゃんでおじゃるな?」と意味不明な供述をした。

エリーンの方も「へんたいさんの弟が出来た!」とよく分からないはしゃぎ方をし始めた。

「お姉ちゃん!」「オトウトよー!」とエリーンとSevencharがヒシと抱きしめあう光景は俺にとって悪夢以外の何物でもなかった。そいつ絶対お前の二倍以上の年齢だよ妹よ。


最後の野良一人は、これもどこかで見たオークの人だ。何処で会ったか思い出せないが、キャラ名表示を見るとアルカントスと書かれている。どこで見たんだったか。


「よし、24人揃ったから入るか。」とギルマスが号令を掛けて一同はダンジョンへ入る。

その『果て神の深海』ダンジョンに入ると出迎えてくれたのは、サイケデリックなカラーリングの空と壊れた液晶画面の様なマーブリングカラーの大地であった、実に目が疲れるダンジョンだな。


入り口のすぐそばにクエスト受注のNPCが居たので皆が受ける。

内容は、果て神の深海が南より侵食し始め北上し世界を覆いつくす、それにより世界が滅ぶ前に封印を施せというものらしいが。そういうスナック感覚で世界を滅ぼすのはやめて欲しいもんだ。


目が疲れる世界を24人が走り道中の雑魚敵を轢き殺す、と思ったらこれが結構強い。敵はやや大きめな四速歩行ロボットっぽい奴と以前に苦戦した液体金属スライムと『'|}O%5/\σ』みたいな名前のモザイクが襲い掛かって来る。そう言えば果て神の魔法って『バグらせる』というトリッキーな魔法だからこういう敵もありなんだろうか。


液体金属スライムの弱点は冷気と雷だったらしい。グループチャットではそういった情報交換が激しく行われているがそれだけの余裕がまだあるのは良い事だ。道中でエリーンが何回か倒れたけど。


道中にはこれといったギミックも無く大広間らしい所へ到着、恐らく第一のボス部屋がここだろう。

広間の中央には巨大な金属らしい球が鎮座していて。

周囲の地面には、クジラ、ライオン、ゾウ、鳥、木、虫?、人間、イガグリ?の様な模様のあるタイルがボスを囲むように描かれている。


「作戦ターイム。」「プランなーし。」「んじゃ取りあえず突っ込むか、どうせ地面のタイルがギミックだろ。」「後、このクエストは現在録画中ですよ。」


なに、録画されているならヘマは出来ないな、過去にレイドクエストで大失敗をした人の動画が後世に残り笑いものにされた例はいくつもある。それだけは避けたい!


全員が補助魔法をかけ終わると同時にメンバー達はボスへ殺到した。その瞬間に金属球のボスはその姿をグニャリと変え、イガグリの形をした。


それを見た一部のメンバーは咄嗟にイガグリ模様の描かれたタイルの上に移動した。俺もそれに続くが、この行動が正解である確証が持てないので移動せずにまだ中央のボスへくっついたままのメンバーには黙っている。

そのまま敵を殴り続けるエリーンや他の頭あったかいメンバーに忠告をせずに観察、恐らくはあいつら死ぬだろうな。

しかも、ボスは現在ダメージが通っていない無敵状態だ、この無敵解除のギミックもあるのだろう。


と思っていたら案の定、自分達の立つイガグリタイル以外の地面が青白い光を一瞬だけ大きく放ち、タイル外に居たメンバー達はタンクを除いて全滅した。

「やだああああ!」「やっぱほぼ即死か。」「え?何今の。」「タイル優先かあ。」と戦闘不能になったメンバー達から溜め息の様な声が響く。

あれ?タンクがぎりぎりで生き残るって事は嫌な予感しかないぞ。


するとそのタイミングでベチャリという音をしながら液体金属スライムが2匹、空から降ってきた後に姿を変える。これらのスライムは、人間、クジラ?の形に変形した。


イガグリタイル上の味方以外はほぼ全て全滅してしまったので、ボスは生き残りの居るイガグリのタイルまで近づいてくる、ボスがイガグリ状態のままでイガグリタイルに侵入するとボスの青白いバリアが消えてダメージが通る様になった。


これでボスの無敵解除か、これだけのギミックなら楽か?と思ったが、その瞬間に後から追加で出てきたスライムから強力な遠距離単体攻撃が連打される様になった


あ、まずいと思った所でSevencharが雑魚敵2匹に挑発を入れてターゲットを一身に持つ、それを見た俺はボス単体のターゲットを挑発を使い受ける事にした。まさかこいつとコンビプレイをする日が来るとはな。


恐らく三国一硬いタンクとも言われるSevencharがみるみる内にそのMPを削られていく、奴はダメージシールドや光神魔法でうまくやりくりしている様だが、あのままでは恐らく沈むかもしれない。

雑魚敵に対するギミックもあるのだろうと考えた所でSevencharが突然イガグリタイルから抜け出し、イガグリタイルのすぐ横にあるクジラのタイルへ移動した。するとSevencharのMP減少が緩やかになり、タンクとして安定しだした。


そうか、雑魚敵の攻撃もタイルが関係するのか。という事がこれにより察せられる。

しかし、あいつ変態の癖に賢いし機転が利くな。


つまりギミックは、と思った瞬間にまたボスがグニャリと姿を変え、今度は鳥の形に姿を変えた。

鳥のタイルはここより正反対の位置、そこへ急いでボスを引っ張りながら移動して範囲攻撃を回避しなければならないが、雑魚敵を放置しているとタンクの被ダメージに回復が追いつかなくなるのでボスを引き回しながら雑魚処理優先か?


鳥に変形したボスを鳥のタイルまで引っ張り攻撃を開始するも、そもそも最初の範囲攻撃で10人くらい倒れているのでリソースが危うい。


生き残りが全力でタイルまで移動してから直後に鳥タイル以外の地面が発光し大ダメージをタイル外のメンバーに与える、今度それに巻き込まれたのはSevencharただ一人だが、奴はそれを予め張っていた2枚のダメージシールドで防ぎきった。すげぇ、あれで変態じゃなかったら完璧超人だな。


と思っていた所へまた追加でスライムが空からベチョリニチャと降ってきて、その追加の2体は、ゾウ?と木の様な形に姿を変える。


ああ、これでギミックは確定だ。と思った頃に、追加の雑魚敵からの攻撃が味方のヒーラーを潰し、DPSを蹴散らし、タンク二人を追い詰め始めた。そう、残りはもう俺とあの変態のみが生き残った。


「お兄ちゃん、死んでも一緒だよ!」と変態が気持ち悪い事を口走る。

その発言に俺は「断固お断りだああああ!」と言いながら前のめりに倒れた。


その後全滅した24人は作戦会議、というより、俺が見たギミックの説明をする。

「まず、ボスは変形したらその変形後に合うタイルへ運ばないとダメージは通りません。」

「「ふむふむ。」」

「移動後はタイル外へ強力な範囲攻撃が一回出ます、その後に雑魚が2体湧くみたいです。」

「「ふむむ。」」

「雑魚はボスの形態の隣タイルのタイプに変形するので、サブタンクがそれを挑発し、隣のタイルへ移動するとサブタンクの被ダメージが軽減するので、その雑魚を優先的にDPSが攻撃し、雑魚を処理したらボスへ攻撃。」

「「ほほう」」

「後はボスの変形に合わせてタイル移動のループで勝てるんじゃないでしょうか。あ、質問は受付けません。」


この説明に熟練者はあっさりと理解してくれる様なざわめきを示してくれる。

「脳筋には勝てぬ仕様ですな。」「DPS不足だとサブタンクがAoEはんいこうげきに巻き込まれる。」「大縄跳びというより追いかけっこか。」「ボスが変形したら合図を出さないといかんな。」


あ、そういえば今動画で録画されているのか、もしギミックの当たりが違ってたら恥ずかしい説明をした事になる。畜生、だから俺より明らかに古参や熟練者がギミックについて黙っていたんだな。


他の問題は、この説明でエリーンみたいな子が理解と対応ができるかどうかだ、レイドクエストは暗記力もそうだが、アクションゲーム化しやすいので一部のゲーム操作が苦手の人が切り捨てられてしまう。そこが嫌な所なんだがなあ。強い人間が2倍働けば良いだけなんだけどね。


「よし、次言ってみよう。昔の人もこう言ってた。レイドダンジョンは100回死んで覚えろってな。」

とギルマスが歯を見せながら笑い。音楽スキルを演奏し始めた。

小話

・本作品の趣旨

この作品は『末期のネットゲー感』を出したくて書いているので、書いてる方も精神ダメージが大きかったり思い出に圧殺されそうになります。

希望に溢れる新世界も好きですが、終わりかけの世界で曲がった人達と出会う楽しみというのも詫び寂びだと思います。

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