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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
戦場の花を捕まえて
17/95

第一部完.二人のカーテンコール

娘から電話が掛かってきた、滅多に無い事だったので驚きガラケーを耳に当てるとすごい怒声が聞こえてきた、それは罵声でもあった。

支離滅裂気味で錯乱した様な説明を聞く限りでは、それは懇願の類であると察知できた。

怒鳴り声や乱雑な言葉は本心を隠すハリネズミの衣だろう。


「ずいぶん不器用に育ったな。」という感想を持ったがそれを口に出すと「あんたがまともに育てなかったからだろ!」とキツイ一事を言われるに決まっているから押し黙る。

金の稼ぎは有っても家に戻らず親としての愛情育てて暮らせる事は出来なかった自覚はある、私もそれほど万能でもなかったのだから。


娘はとある少年を合法的に観察したいらしい、変わった趣味だ、ストーカーじゃねえか。

冷静に考えると自分が運営している敵ギルドの新人少年に惚れ込んだちょっと変わった話にも見えるが父親としての思考で考えてみると結構複雑な心境だ。

しかし、娘は不器用な性格だけにここは応援したい。

娘はやらんぞ!みたいな古風な考えは持たない、だってこいつの将来まともな旦那見つけれなさそうだもん、少し道は曲がっているが娘の人生経験の為だ、ここは一肌脱ごう。

ゲーム的にもおもしろいしな。


そして娘よ、お前が仮想世界在住悪魔メフィストフェレスの子である事に目覚めの時が来たな、今までお前の世界は灰色だったろう?よくわかるさ、若い頃のパパもそうだったからな。

現実を侵食し灰色の世界を狂気の色で染め上げるが良い、それが幸せを掴む道の一つだ。


*

「ギルマス、随分と気の長い茶番を用意しましたね。」

ギルドホーム会議場の一席で一人王座に着き魔王の様に踏ん反り返るドワーフへ自分は挑む様な目で問いかける。この人わざと悪役っぽい椅子まで用意して何やってんだか。


ドワーフの男は悪びれる気もなく口を少し曲げた、笑いでは無く「なんだ今更かよ。」と言った風な顔に見える。

案の定「今更ジロー。」とギルマスは呟いた後に「女の子って精神年齢育つの早いけど歪むのも早いよな、あいつぁ今までほぼ一人で生きてきた、それが心のスパルタ教育になったのか殻に篭るようになったのかは親でも分からんのよ、上辺だけは今まで完璧だったからな。」と珍しくギルマスが弱音じみた事を吐いた。


「数年ぶりじゃよ、あいつがワシに『お願い』をしてきたのは、どうしてもお前さんと接点を作りたかったらしい。自分で言えばいいのに。正面からぶつかるよりもワシを頼りにしてきやがった、根性なし娘め。」ドワーフのやり切れないといった顔。


「あいつはちゃんと笑い、ちゃんと怒れ、ちゃんと悲しめる奴ですよ。ギルマスが思っているより普通の女の子に俺は見えま。HMD越しでもちゃんと分かりますよ。後、ギルマスの基準で人を比べたら駄目です。」自分の顔も今は複雑な心境を表していると思う。


「泣いたり笑ったり出来る様にしてくれたのはお前さんだよ、この茶番が不愉快だと思っていたら謝罪するが、まずはその言葉と現在の状況を作ってくれた事に感謝をする、ありがとうB太。」


大の大人から真面目に感謝されたのは初めてだ。

しかし、今の自分には怒りも感慨も無くただロドリコという形の穴が心に出来、その隙間に愁いを感じるだけだ、相棒を友人を永遠に失った?

違う、戦いはこれからだ。

「まずはあいつを取り戻します、もう根回しは終わっているのでしょう?」

ギルマスはニヤリと笑い「完璧なデートスポットを用意してある、うまくやれよ少年。」と言った。

その声に自分はきびすを返し答える「まずは友達から、ですよギルマス。」


まずはコラーダの構成を考えその対策を練る、ギルマスと話をする前に一通のメールが届いていた、送り主はコラーダ。


『先輩へ。今まで騙していてごめんなさい、この件は全て私のわがままから起こりました。大勢の人を巻き込みました。でも皆優しく協力的だったので罪悪感がとてもありましたが、ここ数ヶ月と今は私が望んだ時間でした。自分の楽しみの為に人を騙す私を先輩が嫌いになるのも覚悟しています。でももし、私のわがままにまだ付き合って頂けるなら三日後にあの日の様な決闘のお相手をして頂きたく思います。場所はウォーデルタだそうです。他には私はずっと先輩を観察していたので動きや癖、スキルや装備の構成は暗記しています。これではフェアじゃないので、私は前回戦ったままの構成で先輩に挑もうと思います。果し合いを、これで私達の旅を完結させましょう。』


スキル調整用の狩場でメールを読み返し呟く「まだ終わってないさ、始まったばかりだろ。」

それから二日間、自分は『紛争の道』ダンジョンへ篭った。合間にはギルマスに協力して貰い装備も一部変更した。今度はリソース重視とやや防御よりの構成にする、これは片手武器と投擲攻撃のみだと手札を見切られやすく持久戦で弱いという事をSevenchar戦で学んだからだ。


萌芽の月1日、果し合いの日、ウォーデルタ地帯皇帝城よりやや南の草原。

そこには様々な顔があった、見知った顔、トロルドワーフ獣人ノーマッドデビルダークエルフオークエルフ変なエルフ、変人集団、仮面の男、ギルドの身内や旅先で出会った人々が自分達を囲む様に声援を投げかけてくる。「張った張った!一口金貨10枚だよ。どちらか勝つかに張らないか?」「頑張れよ少年!」「お兄ちゃん!」「ちょっとロマンチックですよね、これ。」「そうかぁ?」

「お手だし無用!」とピエロ顔の男が叫ぶ。「無粋な輩には退場願うぞ。」と仮面の男と緑髪のエルフが周囲を睨みつける。


<にょっきり大臣と!カラシニコブの!ウォーデルタ動画配信!>

(パチパチパチ、ドンドンドン、パーフーパーフー)

「こんにちは、にょっきり大臣です。」「カラシニコブじゃ。」

「ビータ君の長かった果し合いの旅が今決着を迎えようとしています!ご覧ください、観衆も大分集まっていますよ。」

「これで重くなって回線落ちしたら笑うわ。」

「カラシさんは夢がないなあ、所で今日は素敵なゲストをお呼びしました。」「ほう?」

「今回のゲストはなぁんと!ギルド『ノーザンライツ』のマスター天帝☆黄龍さんでぇす!」

「…」

「相変わらず無口な奴じゃな。」

「この勝負、決闘までに準備期間がありましたが二人の構成にどういう変化があったでしょうかねえ、どう思いますか黄龍さん!」

「ケモショタ優位だけどノンケカミングアウトだから合法ケモショタ。」

「噂通りに考えが読めない人ですねえ黄龍さんは。」

「それほどでもない。」

「人の会話というのは大体ランダムだって説に納得しそうじゃよ。」

「聞いた話によると黄龍さん、今回はゲストとしてだけではなく賞品も用意するスポンサーにも着くと仰られましたが、賞品ってなんですか?」

「賞品はウォーデルタ皇帝城、少年が勝てば永久凍土へ進呈、コラーダ嬢が勝てばピータンパーズへ進呈。」

にょ&カラシ「「マジか!?」」


人の輪の中で二人は遠目に見つめあい、そして歩み寄る。

コラーダ、お前ちょっとキャラクター美化しすぎじゃないか?

先輩はゲームも現実も変わりませんね。

おい、口元がだらしないぞ。

先輩がそんな目で見るからですよ。

目を逸らしたらどうする?

勿論全力で頭を叩き割ります。

時間をくれたから一撃でやられるほどやわではないさ。

私の剣がそれを試すでしょう。

視線での会話はお互いの歩み寄りで終わりを告げる。


周囲がシンと静まり二人の優しい時間をくれる。

「先輩、さあ踊りましょう、私を捕まえて。」と言いながら彼女は笑い優雅にロングソードを構えた。


俺はその声に『一礼のモーション』で応え「では、踊ろうか!」と決意の眼差しと愛刀『スズメバチ』を構え挑んだ。

筆者より、ヒロイン黒幕のすごい遠まわしなボーイミーツガールがだぁい好きなので書いてみました。


『自分と僕と俺の狭間』

10代後半から20代前半の男は一人称が安定しません。

僕というには歳を取り、俺と言うには心が定まらず、自分と言うには堅苦しいがこれを使う。

拙者とかそれがしとか小生と言う奴はちょっと痛い、好きだけど。


『ちょっと歪んだ少女』

若い娘の精神年齢は男より遥かに進んでいます。ただ、曲がるのも早いです。

若い娘さんは10代から大人びて20歳前に大きくカーブします。

男の子の性癖が曲がるのは大体20中盤から30代までです。

問題は曲がり具合ではなく、それをどこでどこまでカミングアウトするかが幸せに生きる道だと思います。


本作品の登場人物は主人公二人以外実在したモデルがいます。サブタイトルも会話内容もゲームシステムもぜーんぶ筆者が見た作品や経験のオマージュです。

実はこの作品にオリジナリティがあまりなくて、マニアックなネタの寄せ集めなんですが、追跡は難しいと思います。

スキルリスト?ああ、やっこさんなら死んだよ。近い内にもうちょっと完成させておきます、そうなると最初から手直ししたくなる。


最後に、人と言う字は支えあっていますが、少し曲がっています。そういうことです。


めんご、やっぱまた余談。

・コラーダの最終ロングソード

ティソナという剣らしい、元ネタはスペインの英雄エルシッド持つ剣の一振り。実在するしスペインの軍事博物館に有ったらしいが今は移転したとか。『物干し竿』?ああ、やっこさん死んだよ。


筆者の雑談になるがエイジオブエンパイア2のシナリオでエルシッドの存在を知った。丁度その頃中2と病だった筆者はそれのお陰でメガテンからの神話マニアから世界史マニアへ転向を果たす。

16年後、スペイン語ペラペラでコロンビア大好き(コロンビアはスペイン語圏)日本人のおっちゃんと仕事をする事になった時「真宮さん!スペイン語文化系の話で百年の孤独以外で知っていると言えばなんですか?」

と聞かれたときにふと「エルシッドとエルナンコルテスと狂女王フアナかなあ。」と答えた、コロンビアおじさんはスペイン本土自体には詳しくなかったのでその後にコロンビア友達(元嫁の姉、この人も歪んでるな)

にそれを話した所「マニアック過ぎるよ。」と返答があったらしい。「「エールシィィッド!」」


ステータス

コラーダ 種族レース:ローランダー女


時空信仰100 両手武器100 弓80 投擲40 天然90 戦術80 暗闘50 耐性80 冒険80 錬金90 トータル790

対人に特化された構成である、瞬間攻撃力よりもヒットアンドアウェイと暗殺が得意。


B太ver.2 種族レース:ノーマッド男

戦神信仰100 強化60 二刀80 片手武器60 盾80 投擲40 戦術80 耐性80 冒険80 錬金90 トータル750

二刀流始めました、防具をバランスよりにして一部スキルを減らし手札を増やす方向の対人向け。


セカイケイの為の伏線

二人は紆余曲折ありながらも後年に結婚し子供を儲ける。

その生まれた子供も立派なネットゲー廃人に育ち、

更にその子供からバイオテクノロジー進歩からの高齢出産で二人からすると孫が生まれる、本作主人公二人の孫娘に当たるその子は「美礼みれい」と名付けられたらしい。


真面目に作った作品だけあって後書き長い。


10/10 改定 痛々しい表現も後書きも自戒として残すとする。

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