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破壊機械~白銀の四肢と世界の記憶~  作者: 祭 竜之介
火炎篇
30/48

【破壊戦争《クラッシュゲーム》】3

 銃弾は、真っすぐマモルの頭部に向かうと――――頬をかすめた。


 響き渡る銃声。その様子は戦闘投入室の最奥にある大モニター視聴室兼卵型機械調整室にいる4人にも見えていた。

「これが、破壊戦争(クラッシュゲーム)…か。」

ハカセが声を漏らす。銃声からグラフィックからそれが一ゲームにはもったいないほどの技術だった。

「おや、やはりやったことはありませんか?」

「うん。僕らは二人組(ツーマンセル)で動くからね、マモルンがやらなければ、僕もやろうとは思わないから。それに時々他のペアと組むけど、50人とか100人規模での集団行動も、今までやったことがないよ。」

「ほう…」

生返事の後、ボーガンは考えた。急なコウエンの宣戦布告とはいえ、宣言をしてしまった相手のことを調べないほど団長の右腕として無能ではない。"昔の職業柄"調べ物は得意だった。そんな彼が二人に対し調べた内容は一部ではあるが驚くべき内容だった。『Sランク生物を討伐、それもたった一人で行った少年・瀬戸守。そして、一つの”世界”を作り上げた男・博田高士。』その他数百の功績を残している二人。とてもコウエンの敵う相手ではなかった。そんな二人が今さらバーチャルダイブゲームなどで驚くなど、ボーガンからしたら面白くもあった。

「それに……」

視線を後ろに向ける。

 初めて見た小さい少年にも見覚えがあった。黒髪の少女にも。少年は、今回行われた試験で片割れを失ったのだ。ニュースとして連日報道されたが、なるほど、彼らと同行していたとは。とボーガンも納得の関係だった。不可解だとすれば"彼女"がこの場に同席していることだったが、

「不思議な団体(パーティー)ですね」

などと漏らす程度で済ませた。

「?今なんて?」

「いいえ、何でも」

          ★

 頬をかすめた弾丸。一瞬触れた熱は頬をかすめて数秒経った今でもジワリと脳に痛みとして伝う。

「いって…。でも痛いってことは、このゲームの特性って…。」

コウエンは理解した様子のマモルに対して、口角を上げつつ答え合わせをする。

「そうだよ。このゲームはダイブゲームの言う所のダメージ表示としてではなく、”痛み”として、脳に伝わる。そんでその感覚は今、現実のお前にも伝わっているはずだ。」

「つまり、現実でも痛みが残るんだな?」

「そ。んで、使った銃弾は再び補充の登録をしない限り、減り続ける。ゲーム内で使えなくなるんだ。」

「なるほど」

このゲームは現実の”質感”を再現したゲームじゃなく、現実の”感覚”を再現したゲーム。五感だけでなく武器の残弾まで再現できる――――超現実的(スパーリアリティー)設定。

「おもしれえ!」

つい頬が上がっている。ここまでの完成度、ここまでのゲーム性。なるほど、子どもたちがはまるもの無理はない。

「良い世界だな!ここ!」

「そう思うか、お前も!」

ちょっとうれしいわ。俺様も同じだから、ちょっとネジが外れた俺様らは、こういう世界でネジをはめ直すのが、一番性に合ってる。そうだろ?世界を背負う銀四肢のカガクシャ!!

「じゃ、とっとと始めるか。戦争(ゲーム)を!!」

「おう!早く終わらそうな!」

そんで、お前の―――――

「ぁあ、の前にだ、まずはお前の武器を見てみようか。」

「?武器?」

そう言えば、そのためにサナエのとこに行ったっけ。

「俺様の武器はこの銃たちだ。お前のはどれだ?ってことだよ!」

二丁の銃を構える。一丁はグロック、一丁は44マグナム。それを構えた少年は苛立たしげに振る。その後一つの銃をマモルの方へ向け、お前のを見せろと催促する。

「ああ、俺の武器な。」

憶えてる…よな?武器出す感覚。

 左肩まで右義手を上げると、斜めに振り下ろす。たちまち人差し指と薬指の中足骨にあたる部分が展開、中から蒼い剣が飛び出す。装備し、また開放して再確認できるがハカセの作ったものより若干太いし、重い。

「これだよ。《(ブルー)大剣(ソード)》」

「おお!素直にかっけーじゃん!」

「サンキュ」

太陽も注いでいるため、目元まで持ち上げてギラつかせた。

          ★

 破壊戦争(クラッシュゲーム)。今、大中小を問わずすべての”団”に所属する子どもたちの間で絶大な人気を誇る戦闘ゲーム。設備と軍備がそろい、少しの電子知識があればプレイすることが可能なゲーム。それは使用された武器のダメージ、そして武器を使用する人間のダメージまでも再現されるゲームだった。

 今、それをプレイする人間が二人対峙している。距離にして20m。

 一人はゲームの保有者である赤の領地・火炎団(フレイムレッド)の団長・赤囲紅炎(あかいこうえん)。地下へと続く広大な領地を治め、統率する団長。

 一人はこの世界の数%の天才と呼ばれる頭脳。世界第2位の少年・瀬戸守(せとまもる)。白の領地の中に住居を構え、その中の分団長・(ホワイト)巨兵(ゴーレム)の双子を義姉妹(いもうと)に持つ四肢と頭部の1/3が機械で構成される少年。

 二人の間を埋める風は砂埃や枯れた草を混ぜながら流れていく。モニター越しにも伝わる”一人の”緊張。見ている四人のうち三人も切迫した空気に息をのむ――――そう、未だ現実では今後の展開にさして緊張していないメガネが一人いるのだ。今戦場においては、平時とさして変わらない様相でそこに立っている少年がいる。

「…………………はぁ。」

無言からの深い深いため息。そして同時に落とす重たい肩。

(マモルンのあの顔…多分、何も考えてないだろうな~。)

心当たりがあった。あれはたしか5年前だ。マモル達が二人で仕事を始め、2位にまで順位を上げるきっかけとなった事件に遭遇した日のこと。あれはS級機械の討伐で四苦八苦していた軍の作戦会議に出席した時だ。

 破壊機械暴動事件を生き残った大人が”建前上”努力しているところに居合わせた二人。二人の登場により机に広げた図面からアドバイスを得ようとしていた軍の人々だったが、数分前に突入した中規模軍隊の30分にも見たいない壊滅で絶望しきっていたためか覇気がなかった。その時、マモルは机に近寄り、広げた図面の一部を義手で指さしてこういった。

『ここ壊せばよくない?俺が真っすぐ突っ込むよ、』

その単純な作戦とも言えない考えに、軍の人々は口を開けっぱなしだった。

「……今だってどうせ、同じこと思ってるんだろうな~。」

つまり同じ様に、何も考えてないんだろうなあ。何せ戦争は素人だし、駆け引きとか丸でないんだろうなぁ。まあとにかく、と下がった目線を上にあげ、外面の中へ注視することにした。

          ★

 二人の間に流れた時間は、刹那的だったはずだ。最もコウエンの感覚としては、数分以上そうしていた気がする。が、今はそんな緊張は振り払うべきだ。目の前にいるのは、その体格の数十倍以上ある大きさの機械ですら壊してしまえるほどの人間だ。

 二丁の銃に力を込め、振りあげる準備を行なう。目の前の半分ほど頭部が白髪の少年はどう行動するかわからない。しかし、備わった武器が剣である以上近づく必要がある、距離を詰められる前に銃で撃てば彼の勝ち。距離の部はこちらにある。つまり後は宣言すればいいだけだ。

「じゃ、戦闘―――――」溜めて、意識をマモルの正中線に集中、神経を研ぎ澄ます。「―――――開始だ!」

筋線維に力を入れ、二丁の銃をかざす。真っすぐに腕を伸ばし、銃口を少年に向ける。―――――――「―――――――なっ…!?」――義手が目の前にあった。

          ☆彡

「じゃ、戦闘―――――

赤い髪の少年が戦闘開始の宣言をしようとしている。マモルはそれが全力を出す合図だと思い、義足を限界まで縮める。引きバネを伸ばし、機構を駆動させ、いつでもモーターを限界まで動かせるように脳に命令を送る。あとは少年があと一言を口に出せばマモルはいつでも動かせる。ただ、”近づけばいいだけ”。

―――――開始だ!」

コウエンが銃を向けている。直線状にいる限り、引き金を引けば近づくマモルには当たる――――――近づくマモルを捉えられれば、それで終わることができるはずだった。

          ☆彡

 一瞬の空白の間。モニター越しの彼らの誰も驚きの言葉すら発することは無かった。

「い、今、消えました…よね?」

サンカが赤の領地にはいって数分ぶりに言葉を発した。この会場でマモルの速さをとらえきれる人間は居なかった。

 ハカセはため息を吐く。内心(やっぱりかぁ~やっぱりそうなったかぁ~)そんな風に困惑していた。

「一瞬、明らかに消えた。おそらく紅炎もそう錯覚するでしょう。」

「具体的には、マモルンのあれは”消えるほど速い移動”ってだけなんだけどね。」

「現実にあり得るんですか?マモル兄貴がいくら速くても人間の視界に捉えきれないなんて…。」

 信じられない三人はカイトの言葉に賛同して首を上下に動かした。ハカセはこういう時自慢げに話すとこが多かったが、今回は少し違ったようでこめかみに手を当てて説明を始めた。

「具体的には”努力”とちょっとの手品要素があるんだよ」

「「「手品要素?」」ですか」

「うん。例えば今回、マモルンは剣を―――正確には右腕を置き去りした形で走り出したはずだよ。暗めの服を身に着けてるマモルンにとって蒼い剣というのは目立つポイントだからね。そして無意識のうちにそれに一瞬でも気を取られれば、本気の一歩で8メートル以上移動できる彼は、もう近づいたも同然。二歩目でもう8メートル。距離的に考えて三歩目でブレーキを掛けなきゃいけないはずだよ」

そして、

「多分、さっきのマモルンは時速にして200km、それを初速から出してるから、とてもじゃないけど目では追えないよね。」

「しょ、初速から…ですか…」

目の前で対峙したコウエンなら、それが【加速】ではなく【瞬間移動】をしているように感じられたはずだ。

「………しかし…」

ボーガンには一つ疑問が残った。しかしまだ些細な、言及するには情報が足りない疑問だったため、口にはまだ出さないでおいた。

          ★

何が起こった……?

 全く理解できなかったコウエン。ほんの一瞬、一瞬だけで目の前に銀色が広がり、その後、信じられないほどの強風。髪は当然、身体ごとよろけそうなほどの風だった。ただ、弾丸を当てれば終われるそれだけの勝負だったはずだった。真剣勝負において、物語的な駆け引きや思考時間が遅延するなどは起こるはずがなく、日々の訓練とシュミュレーションによる反射神経のような一瞬の交わりで決するはずった。

 事実としては勝負は一瞬だった。もっともコウエンの思い描いていた結果とは対象であったが。

「ど、どうやった?」

「?」

何を言ってるのか分からないと言った表情の後。

「ただ近づいただけだ。」

確信をもって答えたマモル。

「!(嘘つけッ!ただ近づいただけの人間が消えたように見える程加速できるはずがねーだろ。こちとら全神経集中させてたんだぜ!?)」

「これで、終わりでいいか?俺はもう無駄な戦闘はしたくねーんだけど?」

手を引っ込めるマモル。離されて初めてわかるが顔の前に広げられていた義手は、左手だった。

「くッ!」

悔しさに奥歯を噛みしめる。

(剣で俺様を斬れば、それだけで決着はついたんだ。なのに……!)

顔を上げ、マモルに向き合う。

「斬れ!」

叫ぶ、銃はこの際、脱力して構えようとしない。

「これは戦争だぞ!!」

コウエンが叫ぶ。が、マモルの回答は単純だった。

「俺はそんな気ねーよ、アホ」

「!!!!ッ!!」

―――――銃を電子情報へと変え、しまう。そして次に電子情報へ訴えた武器は――――――。

 左腕をマモルの方へ伸ばし、ガソリンがタンクに詰まった砲銃(フレイムガン)を召還。右腕には真っ赤な盾、手首と肘辺りに固定器具を通した壁盾(ウォールガード)を召喚。銃身を通すための隙間があるU字型の盾に砲銃をのせる。

「遊んでるんなら、死ね!!」

トリガーを引く。真っ赤な炎が銃口の倍以上の質量で噴き出す。円錐状のそれは前にいたマモルを包むように放出したはずだ。が、炎が終わった後、隙間から覗くコウエンは、再び目を見開く。マモルは50メートル向こうにいた。

「なんで、そんなところに居やがる。どれだけはえーんだよ!」

「ま、炎を避けるためにがんばって移動したからな!」

首元に手をやる。「?」とマモルは違和感を覚えた。

「あれ?ゴーグルねーな。おいコウエン、どうすりゃ出せるんだ?」

「て、てめぇ、……寝てる時から付けてたんなら、意識すりゃ出て来るよ」

ったく、調子狂うぜ。

「意識…ね」

ゴーグルをともかくイメージしてみる。情報の粒である光の結晶が集束し、形を成す。それが一瞬の出来事であり、ゴーグルはフィット感抜群で現れることとなった。

「お、本当だ!」

首元にあったゴーグルを目元へ移す。右の機械部分のジョイントとゴーグルの柄に備わった接続パーツがつながる。

「よし、準備オッケー。もうちょっと本気出せるぜ!」

「出せるぜ、か…」

今までのは多分、動きにズレがないかの実験だったのだろう。証拠に、義手で空を切るように殴る仕草を続けているマモルは、小さな声で「よし、動作に異常なし。ラグもねーし、スゲーな」と言っている。皮肉かとツッコミたくなるほどだが、その空を殴る拳一つ一つが目に見えない速度で動かされていた。音速を越えた音だけでしか速度を測る術がない。

「やっぱふざけてるよ。その性能…」

うつむきがちに目線は下へと下げる。分かってた、実力差は。分かってた、こいつが強いこと。俺様とは違う余裕に満ちたを顔をしているお前が、少しだけだが、うらやましい。俺様は―――――

「俺様は、お前を破壊戦争(クラッシュゲーム)初心者の”挑戦者”だとは、思ってない」

「おう。俺も、お前がこれで終わりなんて思わねぇ!そうだろ??」

「ああ!そうだよ!!」

再び顔をあげ、両手に召還したのは多重銃口砲(ガトリングガン)だった。

「くらえや!!」

抉るような銃口の音。それが連続しておき、銃弾は放出された。

「――ッグッウ!っがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

二丁のガトリングガンは地面に固定器具、両腕に衝撃緩和の固定ロックがかかっている。が、それでも腕への刺激は収まらない。叫ぶことでその痛みを分散させ、標的にだけ狙いを定める。

 マモルへと飛来する銃弾。改造済みのガトリングガンから放たれるその一弾一弾が装甲車を貫ける経口と威力を持っていた。それが人に向けていい弾ではないこと、そして掠りでもしたらその個所がたちまち抉れるのは目に見えること。人間が対人間に向けていい武器ではない。

(―――このスピード、威力で撃たれたら、そら死ぬわなぁ)

普通の人間なら、な。

 空を切る音。蒼い一閃は正確に、そして確実に銃弾を斬っていた。

「あいにく俺は、その速度(せかい)は慣れてるんだよ。」

ゴーグルに搭載され今マモルが行使している機能は減速(スローモーション)機能だった。

          ★

「全て…全て……切り裂きましたね」

サンカの困惑。そこまでの対応力があるなら《地鳴りの森》にてサンカが動くまでもなかったかもしれない、と少し落ち込みそうになった。

「まあ、あの子はそれだけ速く動けるからねぇ」

「やはり、おかしい」

ボーガンが、ハカセの回答に疑問を呈した。

「なぜ彼はあそこまで"反応できる"?」

「…ま、それは思うよね。じゃ、その解答は、カイト君に頼もうかな」

「え?ボクですか?」

「うん。分かるだろう?」

試しているわけでもなく純粋に、彼はこの答えがわかっているのをハカセは確信していた。

「え、っと、それはマモル兄貴の右の機械部分が重要だと思います」

「機械部分。ですか」

「人間がいくら速く動かせる丈夫な機械を搭載しても、脳がそれに反応できなければ意味がない。義眼でもいいですがそもそも”見えなければ、意味がない”。ですから、兄貴はゴーグルで見えるようにして、そして機械化さてた脳で常人より早く信号を送り、義手たちを動かしているんでしょう。」

幸い、義肢たちはどれだけ無理しても壊れない仕様ですしね。カイトはそう言葉を結んだ。

「合格!というか、正解だよ。百点満点!」

「えへへ、ありがとうごさいます!」

「つまり、人間が出す生体電気の倍以上の電気信号を放出しているってことですか!?」

ボーガンの驚愕。常に微量の電気拷問を受けているのと現象はさして変わらないからだ。

「ま、そうなるね」「そう、なりますね」

二人は淡々と答えた。その痛みや体にかかるリスクを考慮した上で、である。まあ、マモルならやるだろう程度の反応だった。

          ★

「ぜ、全部切るか…普通…。」

「お前が正確に俺を狙うから、全部切るしかなかったんだ」

「さらっというなよ…」

全部切るとか。

「にしてもやっぱ、すげーなあ、早苗(あいつ)の作る剣は」

丈夫だし、見た目も良い。ハカセがサナエから買った料理包丁を絶賛するわけだな。

 マモルはブンブン音を立てて剣を振るう。

―――――プロテクション初期動作クリア。降り出し時の動作➡問題(クリア)なし。切れ味➡問題(クリア)なし。真剣、開放します。

そう音声が鳴り出したと同時に剣は水平に割れ、中から収納された刃が出現。面積が始め見たときの3倍ほどの大きさになり、長さも倍ほどになった。

「「なッ!!?」」

驚きの変化だった。というか発注した以上の効果を発揮した。

「なんだこれ!?確かにハカセのより重たかったけど、それに確かにこれこそ機械剣って感じだけれど!?」

それでもこの変化、困惑しないわけがない。

          ★

 モニター越しにマモルが困惑しているのを見ているハカセ達。丁度そのタイミングを待っていたかのように、サンカの個人ネットに着信が鳴った。

「あ、ちょうどナエちゃんです。お風呂で交換しておいてよかったです。」

「ほう。はやく説明してもらおうか。」

剣の変化はハカセも聞いていない事実だったようで、やはり少なからず動揺している。

「はい」

着信に出た。

『あ、サンちゃん……こんにち…は。お久しぶり、です』

「はい。久しぶりです。というかまだ、一日も離れてないですよ?」

『あ、そう、だったね。それで、今、機械剣…作動の通知来たんだけど………マモ君…戦って、る?』

「ええ、戦ってます。あ、そうだナエちゃん、よろしければお仕事モードでお願いします。ハカセさんたちに説明したいので」

『うん。分かった、よ』

テンポが遅いのは慣れたが、コウエンが銃を撃ちマモルが剣で切る構図がさきほどから展開されている以上、早めに観戦に映りたかった。

『おう。変わったぜ!』

「はい。ありがとうございます。」

正確には変わったわけではなく、性格が変わっただけなんですが……寒。

『んで、早速本題だが、マモ君の剣は単純(シンプル)で作りやすかったんだがな、どうもボクの創作意欲が刺激されてな。石も余ってた、ボクも作りたい、ついでにマモ君を驚かせたいの3つの欲がそろっちまってな、サービスしちまった!』

「ああ!驚かせたい、がメインでしたからマモルさんにも説明書とか送らなかったんですね」

『ザッツライトだ!真の《(ブルー)大剣(ソード)》が解放されたらこっちに通知されるようになってたからな、今説明したってことだ。じゃあ、この辺でボクはお暇するよ。じゃあな』

「はい。またお邪魔させてもらいますね」

『おう!いつでも来いよ!』

電話は切られた。

          ★

「と、いうことらしいです。」

「「自由だな!!」」

困惑、同様。そして驚き、いろいろ言いたいことがあるが今さらな気もしたため、カイトとハカセはそれ以上言わなかった――――そんな時だ。

 地鳴りのような爆音がモニターから漏れだす。

「「「「!」」」」

四人が注視する画面の奥。そこには真っ赤な炎と灰色の煙で染まった画面と肩で息をするコウエン、そして左半身の服および義手と肩の皮膚の一部が焦げているマモルの姿があった。

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