第四節
視界に入る、純白の髪。
ぴょこんと横に跳ねたクセッ毛が、少女だと確信付ける何よりもの証拠だった。
そうでなくても、姿形は見覚えが有る。
(何故こんなところに……というか、寒くないのか? ところどころ露出しているのに、寒がる様子もないな……)
少年は、しばらく息を潜めていた。
だが、彼女は木の上で立ち尽くし、何もしようとしない。自然と一体となったかのように、只々明後日の方向らしき場所に向いていた。
月の明りもまた、彼女を照らす。
その光景を見て、何故だかは解らないが彼女のことを見て、少年はポロッと口から言葉が溢れた。
―――〝第二の月〟
ザッ!
彼女はその声のもとに振り返る。
すかさず少年も、「しまった!」という顔をしながら身を隠す。
「……、」
少女は少しの間その場所を見つめたが、何もないと知ると木から木へと飛び移り夜街へと消えていった。
「……ハァ」
少年が、また大きくため息を吐き捨てて、その場所から出てくる。
「まったく……というか、何故俺は隠れたんだ? 隠れる必要もないはずなのに」
条件反射だったのだろうか、シャドウはフムッと息を吐き捨て髪をかく。
(でも……)
何かはわからない。
それが何かだと理解できる理由もない。
だが。
何故か。
彼の生きてきた世界の一部に、彼女と重なる何かを見た気がした。
「……ん?」
ふと、街の端の方に向かう人影を目にする。
少女とは違う三人ほどのその人影は二〇代後半程の男性組で、まるで農作業を終えた老人のように腰や脚をいたわりながら歩いている。何かしらの雑談をしてはいるようだが、その声は遠すぎて彼の耳には届かない。
シャドウは遠目で彼らを見ていたが、少し歩いた先に彼らは電気の灯った一軒の店に入っていった。
「……、」
店に入るのを見届けると、何事もなかったかのように彼自身の帰路についていた。




