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白の物語  作者: 甘味しゃど
第五章 静寂 ???.
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第六節

 地中深く。

 その男、銀霊シャドウは埋もれていた。

「……ッ」

 四肢が動かなかった。

 全身に未だ走る激痛に、土砂と瓦礫で圧迫されたその身体は、まるでコンクリートにでも漬けられたような錯覚を覚えた。

 上の方では、微かに轟音が響いていた。

(桁違いだ……)

 思った。

 その一撃だけでも、きっと全力ではないのだろう。

 それだけで、彼は聖人と云う者の片鱗を深く体に味わった。

 だが、彼に残っていたのは恐怖ではなかった。

(真正面に戦ってもまず勝ち目はないんだろうな……だが、逃げれば復活するのか……)

 敵に何の意思があって転生し、何故目につくものを破壊し始めたのかは知らない。

 だが、それでも後に響きうる破滅を防ぐに越したことはないと、ただ淡々と彼は結論を出しているだけだった。

 問題はそこからだった。

 どうやって倒すか。

 方法はない。

 だが、倒せないという事実が肯定されたわけではない。


(ここで手を抜くのは……後悔するな)

 圧迫されていた右腕を、強引に動かし始める。

 傷からは血が噴き出し、瓦礫の突起でさらに傷が付くも、それを無視してでも服の中に手を突っ込み、或る物を取り出していた。

 それは一つの、液体の入った試験管だった。

(持ってくれよ……)

 口へと運び、蓋を空け、飲み干す。

 一気に躊躇いもなく、微かに入ってくる土も無視して、飲み干した。


 四肢が、肉が、躍動し始める。

 彼の体に、再度力が漲る。


(……さて、死を覚悟しようか)

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