第四節
バギィッ!!
ゾンビが地面を踏みぬき、勢いよく走り出す。
パンッ! パンッ! パンッ!
それと同時に、乾いた音と共に銃弾が発射される。閃光の出来たその銃弾はどうやら魔術の類の弾丸らしく、青い閃光が敵を狙う。
だが、相手は聖人だ。
それもゾンビという難点もあった。
例え銃弾を喰らっても痛みはなく、寸分減速を測れる程度だった。
ガスッ! ガスッ!
と、ゾンビの体を削る。
だがその勢いは留まる事なく彼女へと近づいていた。
「十分だ」
落下する。
シャドウの体が、ゾンビめがけてその上空から落下してきたのだ。
「―――ッッ!?」
ナイフを深々と胴体に刺し込み、その勢いのまま地面へと押し潰す。
だが、グオンッとゾンビの腕がシャドウの襟元を掴むと、上下逆転させるかのように半回転を入れて彼を地面に叩きつけた。
ドゴォッ!!
「ガハッ!?」
ゾンビの攻撃は止まない。
振り上げた拳の腕には、筋肉が再生しつつあった。
その膨張した筋肉と共に、振りかざされた腕が彼の腹部めがけて炸裂した。
ドゴォォォォンッッ!!
……静まり返った。
銀霊シャドウに、蟹股でのしかかっていたゾンビだったが、ルナが直後に見たものはゾンビの下にはシャドウがおらず、ただ大きな穴が空いているに過ぎなかった。
「……ッッ!!?」
グワリッと、瞳孔が開くほどに彼女は大きく目を見開いていた。
どうなったか解らなかったが、その状況に少しづつ脳が追いつき始める。
そして、放った解答は呆気なくも非情なものであった。
(……ケタ違い…!!)
力が圧倒的であった。
速さが圧倒的であった。
その存在が、余りにも規格外であった。
希望も光もない。
ここから始まるのは、絶望的な悲劇の幕開けだと……そう思わざる得なかった。




