表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

第六話(禁じられた遊び)

ぼくら二人は、まるで悪だくみをして遊んでいる子どものようだった。

病院でお互いの視線を見つめあい、手をつないで薬局へ歩いていく。

二人でおずおずと。禁断の甘い蜜への道のりを。


ある日、ぼくらは最後の薬局を出てから、いつものように手をつないで歩いていた。すると、アズミが突然言った。

「ねぇ、ちょっとカラオケにでも行かない?」

「カラオケ?」

「たまには、わたしにも歌わせてよ」

「それもそうだな」

「ちょっと、見せたいものもあるし」

「へぇ。なんだろ」

ぼくは呑気に彼女についていった。そしてぼくらは、駅前にあった一軒のカラオケ屋に入っていった。

部屋のソファに座ると、アズミはさっそく、《見せたいもの》をバッグから取り出してきた。

「なにこれ?」

「スニッフ。スニッフの道具だよ」

ぼくは、目を大きく見開いた。

「アズミ――、なんでこんなもの、持ってるの?」

「なんでって。ネットで売ってたから」

「おまえ、それ自分で使う気で買ったの?」

「えっ……」

ぼくは、激しく動揺した。

「――っ、おまえ、バカか?!」

思わず、ぼくは大声で叫んでいた。

「バカって」

「こんなもんで、薬吸うつもりでここに来たのかよ!!」

アズミの身体が、ビクッと響いた。

「だって…、鼻から吸うと、薬が長持ちするって書いてあったから…」

「怒ったの?亮平」

「当たり前だ!!」

「わたし…、わたしたちが、少しでも薬を減らせたらと思って」

アズミは、もう、半泣きだった。声がぶるぶる震えていた。

ぼくは、悲しさを抑えきれず、その道具を荒々しく壁へ投げつけてやった。ガシャンと音がして、それらは床に無残に散らばった。

「ごめん…。亮平。ごめん」

アズミの目から、涙がぽろぽろこぼれた。

「アズミ、もう二度とこんなことしないって、ぼくに約束してくれる?」

「うん」

「頼むから」

「ごめんね…亮平」

アズミは、泣きやまなかった。ぼくは、やりすぎたかなと思い、彼女に謝りたい気持ちになってきた。

「…アズミ。もう怒ってないから」

「亮平」

突然、アズミの両手がぼくの腕をつかんだ。

「亮平、お願い。わたしを嫌いにならないで」

「嫌いになったりなんかしないよ、アズミのことは、絶対。…」


それは、ほとんど告白だった。ぼくらはお互いに見つめあった。アズミの瞳がうるんでいた。

ぼくは、アズミの手を、ぼくの腕からそっとほどき、ぼくの両腕で彼女の肩を包み込んだ。

やがて、アズミの顔をこちらに向かせると、震える身体を落ち着かせるように、ぼくは彼女に口づけた。――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ