第十七話(最終話)
退院してからすぐに、ぼくは《ギター大好き!!の集まり》に顔を出した。
『亮平ーーーー!!』
『退院ヽ(〃'▽'〃)ノ☆゜'・:*☆オメデトォ♪』
『もう、大丈夫なのか??』
ぼくの入院のことは、ケンタを通じて、みんなが知っていた。
『じつは、みんなで反省してたんだよ。アズミちゃんが亡くなったとき、もっと亮平になんか言ってやればよかったって』
『大丈夫だよ』
ぼくは笑った。
ミルクもいた。彼女は、おずおずと『オメデト♪』と書いてきた。ぼくも、『アリガト♪』とかわいく書いておいた。
『あっ、そうだ!>亮平』
唐突に、ケンタが書き込んできた。
『アズミちゃんが最後に来た日にリクエストした曲、思い出したよ。エリック・クラプトンの』――
『”Tears in Heaven”だろ?』
ぼくは、小さく笑ってしまった。
これは、アズミからのプレゼントだ。そう思った。
◇◇◇
アズミが亡くなってから、ぼくは彼女に線香の一本もあげていなかった。アズミの両親から、ぜひ来てくれと言われていたが、なぜかずっと保留にしていた。
…たぶん、自分のなかで、アズミの死を認めたくない気持ちが、まだどこかにあったんだろう。
「ようこそ。どうぞ」
アズミの両親は、一人娘を失って、絆を深めたかのようだった。ぼくは、彼らに招かれて、アズミの遺影のある部屋へ入った。そこには、満面の笑みを浮かべるアズミの姿があった。
ぼくは、線香をあげて、アズミに手を合わせた。
「アズミ。ぼくのこと、これからもずっと見ててくれよ。…」
ぼくは、こころのなかで、彼女の手をぎゅっと握った。
外へ出ると、そこには11月の高い空が、目もくらむほどに大きくひろがっていた。
あのどこかに、アズミはいるんだろうか。
アズミは、ぼくに生きていかなきゃいけないんだと教えてくれた。
ぼくは、いつのまにか、あの曲を口ずさんでいた。
ぼくらは、いつでも会える場所にいるんだ。
アズミ、好きだよ。
あのとき、ぼくに手を振ってくれて、ほんとうにありがとう。
(了)
一度完結してから、第十六話が完全に抜けていたことに、9日も経ってから気がつきました。
その間、読んでくださった方は、なんのことかわからなかったのでは…。反省です。悲しい。