第十五話(再会)
誰もが、ぼくを遠巻きにして見ていた。
昨日の、《ギター大好き!!の集まり》でさえそうだった。
『アズミ…死んじゃうなんて…』
『なんか言動おかしいよ?>亮平』
『亮平、寝てないんじゃないのか?もっと落ち着いてから話そう』とケンタまでもが言った。
そのとき、誰か知らない人物からメッセージが届いた。
驚いたことに、それはコージだった。彼は、ハンドルネームを変えて、このチャットルームにやって来ていた。
『アズミは残念だったな』
ぼくは、彼がなにを言い出すのかと身構えた。
『みんなには信じてもらえないだろうけど』とコージは切り出した。
『俺は、サヤのことをいちばんに想っていたんだ』
「……」
『でも、俺はそこらじゅうの女に声をかける悪い癖があってな。じつは俺らしくないけど、彼女が死んだあと、俺は走る車に飛び込んじまったんだ』
『え』
『酔ってたんだよ。それで、頭を打って病院で意識がないときに、あの世でサヤに会った。周りは夢だろうって言うけどほんとだよ。彼女はぼくを許してくれたかのように、ぼくに手を振ってくれたんだ』
『そうなのか……』
『すまん。一言、なにか言いたくてな』
――それじゃあ、ぼくも、死ねばアズミにまた会えるんだろうか?
ぼくは、ふと我に返った。
そして。
ぼくは、アズミのもとへ行くために、テーブルの上の睡眠薬を飲み干していった。
◇◇◇
……ぼくは、とてつもなく、美しい場所にいた。
いちめんの、黄金色の花の咲く野原。目のまえには、一筋の道があった。
ぼくは、なにも考えず、ただ、ふわふわとその道を歩いていった。
ふいに、目の前にキラキラと光る川が現れる。ぼくは、驚きで目を見張った。
川の向こうに、アズミがいる!!
「アズミーーー!!」
ぼくは大声で叫んだ。
アズミは口で「亮平」と言ったが、その声は聞こえなかった。
アズミは、やさしくぼくに手を振ってくれた。柔らかな、その手つき。
ぼくは、アズミのもとへ行こうと、川に向かって走り始めた。よく見ると、アズミの横に、ギターを抱えた女の子がいた。
「サヤ?!」
ギターを持った女の子はこくんとうなずいた。
「サヤーー!コージとここで会ったのかーー?!」
彼女ら二人は、すべてわかっている様子で、うんうんと笑ってうなずいた。
ぼくは、アズミを抱きしめたい一心で、急いで川のなかへ入っていった。アズミは、ぼくを見て、少し困ったかのような笑顔を浮かべた。
「まだ」とアズミの口が動く。
「まだ?!」
「まだ、駄目」
「駄目って、なんだ?!」
アズミが、いたずらっぽい顔でぼくの後ろを指さす。そして、またあの柔らかな手つきで、ぼくに手を振った。
――そのとき、巨大な力がぼくの背中を引っぱり、ぼくは、いきなり暗いトンネルのなかへ飲み込まれていった。
「アズミッ……!」