第十三話(アズミの消息)
ぼくとアズミは、毎日連絡を取り合っていた。
しかしある日突然、アズミからの連絡が途絶えた。
「アズミ、どうしたんだ…?」
ぼくは、起きているあいだ中、気になってそのことばかりを考えていた。
あの、厳しい父親が、彼女のケータイやパソコンをも奪ってしまったのだろうか。
『最近、アズミ見てない?』
ぼくは、《ギター大好き!!の集まり》の常連たちに尋ねた。
『あれ?アズミと一緒に住んでたんじゃないの?>亮平』
『理由があって家に帰ってるんだ、いま』
『え〜〜〜そうだったんだ』
チャットルームの常連たちは、急に興味をそそられたようだった。
『連絡がつかないって、そりゃケータイ、壊れたんだろ、ふつーに』
『じゃ、なんでこの部屋に来ないわけ?』
『パソコンもバットで殴られて、とかー』
そんななかで、ケンタがぼそっと書き込んできた。
『アズミちゃん、このまえ、なんかの曲をリクエストして帰っていったよ』
『このまえって、いつ?』とぼく。
『えっと、ここ2・3日前って話じゃないなあ。いつだったかな』
『とにかく、ここに来たら、ぼくが心配してるってこと、伝えてくれないかな』
ぼくはそれだけをケンタに書き込んで、死にそうに疲れた身体を、布団の上にばったりと横たえた。
アズミ…、どうなっちゃったんだ?ぼくは心配でたまらない。きみの、元気な声が聞きたい。
頼むから、ぼくの電話に出てくれ。――
◇◇◇
だが、アズミからの返事は、さらに2日経っても来なかった。
ぼくは、仕事どころではなくなった。仕事を休んで、ぼくはアズミの所持品のなかから、彼女の住所の手がかりを探し始めた。
――もう、なんだっていい。あのカミナリ親父にどなられたって。
念のため、ぼくは幽閉されているアズミのために、相当量の薬を用意していこうと思っていた。こっそり渡す機会があれば、これで彼女は眠れる。
「でも、今度会ったら――」
ぼくは、覚悟していた。
「もし、今度会ったら、ぼくは、アズミを奪って帰るかもしれない――」
ぼくがアズミのコートのポケットを調べていたそのとき、待ち焦がれていたぼくのケータイが鳴った。
――アズミだ!!
「アズミ、どうしたんだよ!!」
ぼくはほとんど、ケータイに向かって絶叫していた。
「心配しただろ!!」
だが、電話に出たその声は、アズミとは別の女性の声だった。